著者
朴 君 小川 貴弘 長谷山 美紀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.5, pp.823-834, 2015-05-01

本論文では,走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscop,SEM)で撮像された画像を用いた生物の分類法を提案する.提案手法では,生物学者が構築した分類体系に注目し,各ノードにその下位のノードへの分類を行う分類器を割り当てることで,決定木を構築する.これにより,構築された決定木を用いて生物の分類が可能となる.このように,生物の分類に有用な分類体系の構造を導入することで,画像特徴のみに注目する生物の分類法と比較して,高精度な分類が期待できる.また,提案手法では,更なる精度向上のため,以下の二つの処理も導入する.まず,分類体系において,画像特徴が類似する異なるノードに注目した決定木の変更を行い,誤分類を抑制する.次に,同種の生物の異なる撮像倍率の画像に対し,モーフィングを施すことで学習データの充足を行う.以上によって,提案手法では,SEMで撮像された生物の高精度な分類が可能となる.本論文の最後では,提案手法の有効性を確認するための実験結果を示す.
著者
今野 海航 園田 潤 金澤 靖 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J98-C, no.5, pp.87-95, 2015-05-01

FDTD (Finite-Difference Time-Domain)法を用いた実環境における電波環境解析を実現するために,撮影した対象環境中の物体までの距離情報が直接得られる深度センサと,三次元点群処理のライブラリであるPCL (Point Cloud Library)による三次元復元技術を応用した実環境FDTD数値モデル構築システムを開発する.本システムは,(1)深度センサで測定された距離情報からPCLにより深度センサを基準にした相対座標を取得し,(2)得られた相対座標と対象環境中の基準平面から深度センサの傾き角を算出することで対象環境中の水平垂直面を基準にした絶対座標を計算し,(3)ポイントクラウドデータが存在する三次元セル上に電気定数を与えることでFDTD数値モデルを構築するものである.本論文では,実際に室内二つの対象環境でFDTD数値モデルを構築し,三次元座標の精度や処理時間を評価している.
著者
藤原 一毅 鯉渕 道紘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1903-1912, 2013-08-01

スーパコンピュータの大規模化が進むにつれ,通信遅延が並列アプリケーションの性能に及ぼす影響が無視できなくなっている.このため,高次数スイッチを前提とした低遅延なネットワークトポロジーの活用が注目されている.これまでの研究で我々は,ランダムなショートカットリンクをもつトポロジーが低遅延性の点で優れていることを明らかにした.このようなランダムトポロジーは,一方で,ハイパキューブなどの規則的なトポロジーに比べて配線が非常に長くなるという問題を抱えていた.本研究において我々は,(1)不均一なランダムショートカットリンクを単純なトポロジーに付加し,(2)ラックレイアウトを施設配置問題として最適化することで,低遅延性を維持したまま総配線長を最大29%削減できることを示す.
著者
谷 賢太朗 伊藤 尚 前田 義信
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.3, pp.274-283, 2015-03-01

災害時に教室から多数の生徒が避難する場合,被害を小さくするには全員が避難を終えるまでの時間(避難完了時間)を最小にすることが重要である.そのための方法は,1)避難者自身の行動方法を変えること,2)教室の空間構造を変えること,の2点である.本研究では,前者の観点から避難者が進路を譲り合うことを考慮し,理論計算によって2人の避難者の衝突状態が解消されるまでの時間を最小にする譲り合い確率が=-1であることを示した.続いてマルチエージェントシミュレーションによる2人以上の避難者の教室からの避難について考察し,避難完了時間が最小となるのが近傍であることを示した.更に後者の観点から教室の出口の広さや数を2ヶ所に変えた場合についても調べ,避難時間が短縮されることを示した.出口の数を2ヶ所にした場合,出口間の距離が近すぎると避難時間が増加することが示唆された.
著者
小泉 悠馬 伊藤 克亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.3, pp.492-500, 2015-03-01

連続励起振動楽器の演奏音の音量変化を,音量記号などに起因するベースラインの大局的変化であるダイナミックスと,発想記号などに起因する局所的変化であるアーティキュレーションに分解する手法を提案する.ダイナミックスとアーティキュレーションの生成過程をそれぞれ和分プロセスと遷移型自己回帰モデルで表現し,遷移型線形動的システムを用いて音量軌跡を分解する.評価実験では,MIDIを用いて作成した人工データと,プロ奏者とアマチュア奏者の音量軌跡の分解実験を行った.人工データの分解実験では分解の標準絶対誤差が1.06dBであり,MIDIでのメゾピアノからメゾフォルテの音量差約4dBよりも小さい誤差で分解できることを確認した.また実演奏音の分解実験では,演奏技術による2要素のバリエーションやばらつきなどの演奏/習熟度解析が行えることが示唆された.
著者
武藤 佳恭 山本 浩之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.12, pp.1316-1321, 2013-12-01

本論文は,(1)床発電の研究のはじまり,(2)床発電の実証実験と床発電商品としての実施例,(3)熱海市での温泉排熱を利用した温度差発電,(4)ロウソク熱を使った温度差発電,(5)たき火熱,薪ストーブの廃熱,バイクマフラー廃熱,懐炉(カイロ)廃熱などを利用した温度差発電,(6)自然廃熱を利用したマグマ熱発電まで網羅的に紹介する.エネルギーハーベスティングまたはパワーハーベスティングの研究は,新産業創出に貢献できるものと著者らは期待している.関連する測定技術や性能向上のための技術問題についても簡単に述べる.上記のうち,(1)〜(5)は,実証実験,(6)は日本国が実施すべきマグマ熱発電の概要を説明する.
著者
新田 幸司 大坐畠 智 加藤 聰彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J98-B, no.2, pp.141-152, 2015-02-01

ネットワークエミュレーションでは,実システムから送信されるパケットを実時間以内に処理し,通信相手に届ける必要がある.そのため,処理の高速化のため並列・分散処理が可能なエミュレータが開発されてきた.並列・分散処理が可能なネットワークエミュレータでは,各端末の無線エミュレーションを独立した論理プロセス(LP: Logical Process)として分割し,並列に実行することで,性能の向上を実現している.並列・分散処理を行った場合でも,単一でエミュレーションを行った場合と同じ結果を得るため,LP間で影響のあるイベントの実行時に同期が必要となる.並列・分散エミュレーション環境では,無線LANを用いて通信を行う端末の間でフレーム衝突やMAC層の再送のイベントを実行する際,同期をとらずにそれぞれの受信側で独立して実行した場合,エミュレーション結果が端末間で異なる問題がある.本論文では,端末間(LP間)でのエミュレーション結果が異なる問題を改善するために,フレーム送信端末側で情報を付加し,かつ,1ホップ内の全ての受信端末に対して動作決定の判断に必要な情報を事前に共有させておくことで,受信端末に対してのフレームの同時受信・再送のイベントの同期をとる方式を提案する.ネットワークエミュレータEMANEに提案方式を実装し,評価を行う.
著者
苅込 正敞 西村 崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.9, pp.738-751, 2014-09-01

移動通信システムの基地局アンテナでは多くの場合,垂直面内指向性の主ビームにチルトをかけてサービスエリアを調整している.そのチルト角はトラヒックの変動に対応して遠隔で,または現場で制御できることが要求される.チルト角を電気的に調整するための移相器は100〜500Wの耐電力で,低損失,低PIM特性が要求され,アンテナレドーム内部に収納できるよう小型・軽量でなければならず,基地局アンテナのキーパーツの一つであると言える.こうした移相器には各種のタイプが開発されており,同軸管型,誘電体装荷型,摺動回転型といったタイプがある.これらの移相器のうちで基地局アンテナに実際に適用されていると思われるタイプについて,その構造を述べ,特徴を考察した.次いで著者らが開発した移相器について,その構造・特性を述べた.更に移相器のみを用いてアレーアンテナ全素子の励振振幅並びに位相を制御する方法と8素子での全素子制御の計算例を示した.
著者
有賀 治樹 西山 乘 橋本 学 長田 典子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.2, pp.328-330, 2015-02-01

複数の指先の追跡を最適経路決定問題として扱い,解析的DPTにより得られた追跡経路から運指を認識する手法を提案する.複数物体の相対的な位置関係の連続性を評価することにより,特徴が似た物体を同時に追跡できる.実験により,運指認識成功率98%を確認した.
著者
Masashi SUGIYAMA Ichiro TAKEUCHI Taiji SUZUKI Takafumi KANAMORI Hirotaka HACHIYA Daisuke OKANOHARA
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E93-D, no.3, pp.583-594, 2010-03-01

Estimating the conditional mean of an input-output relation is the goal of regression. However, regression analysis is not sufficiently informative if the conditional distribution has multi-modality, is highly asymmetric, or contains heteroscedastic noise. In such scenarios, estimating the conditional distribution itself would be more useful. In this paper, we propose a novel method of conditional density estimation that is suitable for multi-dimensional continuous variables. The basic idea of the proposed method is to express the conditional density in terms of the density ratio and the ratio is directly estimated without going through density estimation. Experiments using benchmark and robot transition datasets illustrate the usefulness of the proposed approach.
著者
伊藤 昌毅 川村 尚生 菅原 一孔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2327-2339, 2013-10-01

本論文では,走行中の路線バスの位置情報を取得するバスロケーションシステムの開発について述べる.バスロケーションシステムは,バス停においてバスの到着を知らせるなど公共交通の利便性を高めるために用いられているが,運用コストの問題で小規模な都市での実現は困難である.本論文では,スマートフォンを車載器として利用することで,導入や運用コストを抑えたバスロケーションシステムを実現した.開発システムは,バスの位置情報をユーザに提供するだけでなく,既に運用中のバスや鉄道の経路案内サービス「バスネット」と連携することで,バスの遅れを考慮した経路探索を実現するなど,公共交通の利便性を高める情報基盤として機能している.開発したバスロケーションシステムは,鳥取県のバスを対象に運用を続けており,アクセス数などの運用状況やそこから得られた知見についても紹介する.
著者
渡邊 栄治 尾関 孝史 小濱 剛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1725-1728, 2014-12-01

本論文では,e-Learningにおける受講者の取り組みを明確にするために,ノーティングの動作を分析する.まず,ペン先を検出するための手法及びノーティング動作を分類するための手法について述べる.つぎに,ノーティング動作の検出結果から,ノートだけでは抽出できない受講者間の差異を明確化できることを示す.
著者
藤田 和之 高嶋 和毅 伊藤 雄一 大崎 博之 小野 直亮 香川 景一郎 津川 翔 中島 康祐 林 勇介 岸野 文郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.120-132, 2013-01-01

我々は多人数でのコミュニケーションを支援するための情報環境Ambient Suiteを提案し,検討を進めている.Ambient Suiteは部屋全体が入出力機能をもったシステムであり,様々なセンサにより会話の状態を推定し,また,この状態に応じて,床や壁に配置されたディスプレイ群を連携させて様々な情報を表示することで会話の活性化を目指す.本研究では,Ambient Suiteを立食パーティの場面に適用したAmbient Party Roomを実装し,これを用いた初対面の男女6人による会話実験を行った.この結果,本システムが会話の状況を十分に推定可能な性能を有し,情報提示により会話を活性化させられることが分かった.
著者
林 勇吾 井上 智雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.1, pp.76-84, 2015-01-01

本研究では,学習者ペアが協同で行う説明構築活動においてPedagogical Conversational Agent (PCA)をアドバイザとして用いた際の効果的なインタラクションのデザインについて検討する.過去の研究では,学習者の認知的負荷の増大に伴ってPCAへの注意が低下するという点やPCAの存在感の欠如の問題点が指摘されている.そこで本研究では,PCAに対する社会的存在感を促進させる方法として,複数のPCAの利用が説明活動におけるインタラクションを活性化できるかを実験的に検討した.実験の結果,複数のPCAを用いた学習者は,単独のPCAを用いた学習者よりも概念に対する深い理解を構築することができていた.更に,複数のPCAを用いた場合,(1)ポジティブな励ましを行うエージェントと(2)具体的な説明の仕方を教示するエージェントに役割を分散させた場合において,インタラクションが活性化することが明らかになった.異なる役割を担う複数のPCAを利用した本研究の結果は,協同学習支援システムの設計におけるデザイン手法に重要な示唆を与える.
著者
伴野 明 勝山 一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.214-224, 2015-01-01

最近,映像に香りを付加する研究が進展している.香りの付加で重要となるのは,香りの知覚である.映像と一体的に香りを提示しても利用者が香りを知覚しなければ香り付き映像コンテンツの価値は高くない.そこで,香りの知覚率を高める研究が幾つか行われてきた.しかし,利用者へ吸気センサや香り提示装置を装着するなどの従来法では,香り知覚率が高くても装着感があるため自然さに問題がある.現実空間では香りは風に乗って運ばれる.香りは環境を知る重要な手掛かりを与えるため,人は風を知覚したとき,それまでの呼吸パターンを変化させ,効率的に香りを嗅ごうと吸気している可能性がある.そこで,本研究では,顔に空気触覚を提示し,これに連動して香りを提示すれば香りの知覚率は向上すると言う仮説を設定し,これを検証する実験,及び,そよ風が吹く映像コンテンツと空気触覚の連動による香り提示実験を行った.その結果,空気触覚を提示すると,条件反射的に吸気動作が生じる場合があること,このタイミングで香りを提示すると香りは高い頻度で知覚されることを明らかにした.
著者
三原 鉄也 永森 光晴 杉本 重雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.1, pp.29-40, 2015-01-01

昨今の専用のドローイングソフトウェアやモバイルディバイスの普及に伴い,マンガの制作と流通はディジタル環境に移行しつつある.マンガが内包する情報やマンガの内容に関連する情報はコンテンツ本体のデータからの参照が困難であるためディジタル環境におけるマンガの情報の利用は充分に行われていない.そこで,我々はこれまでにディジタル環境におけるマンガの効率的な利用のためのメタデータの開発を行ってきた.本論文では,我々が先に提案したマンガメタデータフレームワーク(MMF)とそれに基づくメタデータによるマンガのアクセスと制作の支援手法について述べる.本研究では,Linked Open Dataを利用したメタデータの効率的な開発とそれらを利用したマンガのアクセスと制作を支援するためのシステムを構築し,ディジタル環境におけるマンガのメタデータの有効性について考察した.
著者
井関 洋平 川西 康友 椋木 雅之 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.236-249, 2015-01-01

様々な環境に設置された防犯カメラで観測された人物画像の特徴量は被写体の姿勢,照明などの撮影条件によって大きく変化する.そのため,特定人物画像検索における人物画像の特徴量比較には,撮影条件が異なれば(1)本来外見が類似している同一人物の人物画像の特徴量間の距離が大きくなる,(2)本来外見が類似していない別人同士の人物画像の特徴量間の距離が小さくなる,という二つの問題がある.従来提案されてきた適合性フィードバックでは,問題(1)には対応できるが問題(2)には対処できない.我々が提案する条件分割型適合性フィードバックでは,撮影条件を分類してフィードバックすることで,各撮影条件の画像特徴量が混合されることを回避し,問題(1)(2)の両方に対処できる.複数の防犯カメラ映像に対して人物画像を検索し,通常の適合性フィードバックと比較することで本手法の有効性を確認した.
著者
武川 直樹 佐々木 寛紀 木村 敦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.1, pp.93-102, 2015-01-01

本論文では,会話の順番交替時の沈黙場面において見られる音声フィラー(「えーと」,「うーん」など)と動作フィラー(髪にさわる,顎に触るなど)に着目し,これらのフィラーが沈黙の状況を修復するための役割を調べる.人同士の会話の観察結果に基づきCGキャラクタの会話シーンを作成し,作成した動画シーンを刺激として沈黙中のフィラーが伝える意味を第三者が主観評価し,沈黙におけるフィラーの役割を明らかにする.評価の結果,フィラーの表出は会話の継続に向けての誠意を示すとともに,次の話者が誰になるかを予測させることが示唆された.この成果は会話エージェント・ロボットが人と会話を行うときにより適切で丁寧な応対をするための動作デザインの第一段階として寄与するものである.
著者
宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.3-16, 2015-01-01

近年,構成主義における学習評価法としてピアアセスメントが注目されている.ピアアセスメントでは,評価の信頼性が評価者の特性に依存する問題が指摘されている.この問題を解決するアプローチの一つとして,評価者の特性を表すパラメータを付加した項目反応理論が提案されてきた.しかし,ピアアセスメントでは,評価者数が学習者数と同程度まで増加するため,パラメータ数に対してデータ数が少なくなり,既存モデルでは高精度なパラメータ推定が期待できない.そこで,本論では,通常の項目反応理論について,できる限り評価者パラメータ数が少なくなるように評価者パラメータを付加した,ピアアセスメントのための新たな項目反応理論を提案する.提案手法の特徴は次のとおりである,(1)既存モデルより高精度なパラメータ推定が可能である.(2)評価者特性として評価の一貫性と厳しさの影響を反映した学習者の能力推定が可能である.(3)学習者の正確な能力推定が期待できる.更に,本論では,シミュレーション実験及び被験者実験により提案手法の有効性を示す.