著者
諫早 勇一 Yuichi Isahaya
出版者
同志社大学言語文化学会
雑誌
言語文化 = Doshisha Studies in Language and Culture (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.69-87, 2011-08-25

ナボコフがゴーゴリ論の中で使って有名になったposhlostという語は、ゴーゴリ自身が自分の作品を論じるにあたって使った語だが、その後メレシコフスキイ、ゼンコフスキイらさまざまな批評家もゴーゴリの作品を論じるにあたって用いてきた。本論では、poshlostという語の意味の変化を追いながら、その意味の広がりを検討し、ナボコフの用法によってこの語を理解することの危険性を指摘した。
著者
玉置 了
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.59-82, 2020-09-30

[要約]本研究は,SNS の投稿への反応としていいねに着目し,画像投稿とテキストのみの投稿とでいいねが促される投稿の特徴を比較する。データは Twitter から Kyoto の語を含むツイートを獲得し,深層学習により観光に関するツイートを抽出した。本研究ではテキスト投稿と画像投稿の大小によりツイート4群に分け,LIWC2015を用いて使用単語を数量的に比較した。結果,いいねが多い投稿では画像とテキスト共通して感情的・認知的な語,動作や時間に関する語,一人称の代名詞の使用が多いものの,テキスト投稿の方がより出現率が高いことが示された。考察として個人の経験を示す投稿が多くのいいねを獲得し,さらに画像投稿は言葉で表現する傾向が弱く,画像表現がそれを補うこと,またその解明を研究課題として示した。[Abstract]This study focuses on Likes as a response to posts on SNS, and compares the text contents that prompt people to click Likes on posts with images attached and posts with only text. The data was obtained from posts about Kyoto from Twitter and extracted tweets about tourism using deep learning. This study classified tweets into four groups based on the size of the likes in text and image posts, and quantitatively compared the characteristics of the words used by LIWC2015. The results showed that posts that received more likes in text and image posts commonly used emotional and cognitive words, words about motion and time, and first-person pronouns, but the occurrence of these words was higher in text posts. The discussion suggests that posts that show personal experiences received many likes, and that image posts tend to be less expressive with words, and that there is a possibility of image complementation behind them, and that elucidation of the image representation is a research topic.
著者
佐々木 哲也 ササキ テツヤ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture Bulletin
巻号頁・発行日
vol.21, pp.193-206, 2021-03-31

2020年の新型コロナウイルス感染症(以下 、COVID-19と略記)の感染拡大を受けて、静岡文化芸術大学(以下、本学と略記)では、学内の感染拡大防止と構成員の安全確保のため、大学構内への立入制限、遠隔授業の実施、諸行事の変更等の対応をとった。学生支援の分野では「全学生に対して漏れなく学修機会を提供すること」を最重要課題とし、SNSやWEB会議システムを活用した学生支援や窓口業務の遠隔化・電子化等に取り組み、平常時の業務の改善や非常時の対応能力の向上に繋がる経験を得た一方で、非常時の学生支援に関する脆弱性や課題が明らかとなった。本稿では、COVID-19に関する対応を開始した2020年1月から、大学構内への立入制限を解除した同年9月までの間の本学の学生支援の取り組みを報告し、同年7月に実施した緊急学生生活調査の結果等からコロナ禍が学生にもたらした影響を論述する。さらに、OVID-19に関する対応の経験を踏まえ、非常時における学生支援の課題として「大学IRと統合的な危機管理体制の構築」「組織と情報環境のレジリエンスの向上」「学生の危機管理能力の育成」の3点を提示する。
著者
今井 昭彦
雑誌
常民文化
巻号頁・発行日
no.10, pp.25-53, 1987-03
著者
寺崎 正治 綱島 啓司 西村 智代
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.43-48, 1999-06-25

本研究においては, 主観的幸福感の構造について検討した, 367人の大学生に対して, 人生に対する満足感質問紙と感情の特性尺度を実施した.その結果, 人生に対する満足感評価は, 「活動的快」感情と正に相関し, 「倦怠」感情とは負に相関した.満足と感情測度の因子分析の結果, 単一の幸福概念が成立することが確認された.主観的な幸福感は人生に対する満足感, 肯定的感情, 否定的感情の部分的には独立している3つの構成要素から成る単一次元であると結論した.
著者
西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.175-194, 1991-11-11

弥生時代の遣跡から出土する「イノシシ」について,家畜化されたブタかどうか,再検討を行った。その結果,「イノシシ」が多く出土している九州から関東までの8遺跡では,すべての遺跡でブタがかなり多く含まれていることが明らかとなった。それらのブタは,イノシシに比べて後頭部が丸く吻部が広くなっていることが特徴である。また,大小3タイプ以上は区別できるので,複数の品種があると思われる。その形質的特徴から,筆者は弥生時代のブタは日本でイノシシを家畜化したものではなく,中国大陸からの渡来人によって日本にもたらされたものと考えている。また,ブタの頭部の骨は,頭頂部から縦に割られているものが多いが,これは縄文時代には見られなかった解体方法である。さらに,下顎骨の一部に穴があけられたものが多く出土しており,そこに棒を通して儀礼的に取り扱われた例も知られている。縄文時代のイノシシの下顎骨には,穴があけられたものはまったくなく,この取り扱い方は弥生時代に特有のものである。このことから,弥生時代のブタは,食用とされただけではなく農耕儀礼にも用いられたと思われる。すなわち,稲作とその道具のみが伝わって弥生時代が始まったのではなく,ブタなどの農耕家畜を伴なう文化の全生活体系が渡来人と共に日本に伝わり,弥生時代が始まったと考えられるのである。
著者
田村 光
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

The physical functionalities of various substances such as metals, uperconductings,and magnetic materials are governed by individual electrons and their interactions. However, it is difficult to exactly calculate the behavior of the quantum many–body systems containing over 50 particles with a classical computer, since the computational resource grows exponentially with the system size. Quantum simulation is an alternative approach to the many-body problems, which consists in building a well-controllable quantum system. The main objective of the quantum simulation is a deep understanding of many–body quantum phenomena ranging from dynamics of energy transport and particle localization to quantum–to–classical transition. To date, several platforms, from atoms and ions to superconducting circuits, have demonstrated the basic functionality of quantum simulation. The current challenges are not only to increase the number of particles but also to extend the versatility of the simulator. In this thesis, I describe the development of and scientifc results from a experimental platform for a versatile quantum simulation using laser-cooled Rydberg atoms. We create 2D arrays of optical microtraps using a spatial light modulator (SLM). Single87Rb atoms can be trapped in geometry-tunable and reconfigurable arrays with interatom spacings of a few micrometers. We first focused on one crucial prerequisite for the implementation of quantum simulation, i.e. detecting individual atoms with high efficiency. A fluorescence imaging yields single–atom–resolved information about the trap occupation and internal states of the trapped atoms. However, poor uniformity of trap–induced light shifts in arrays increases the detection error due to the variance of cooling efficiency and the photon scattering rate from each atom. Moreover, as each trap has a finite detection efficiency η, anN–atom system has an exponentially small detection efficiencyηN, that limits accuracy of experimental simulations. To overcome this issue, we have developed the novel optimization method to realize highly uniform holographic arrays of microtraps using in-trap fluorescence measurements. By applying this method to various arrays with up to N = 62 traps, the detection efficiency of all individual atoms, η62, can be improved from ≃ 55.0 % to ≃ 99.6 %. An optimization method such as the one presented in this work with holographic trap characteristics obtained by using in-trap atoms is useful for creation of finely optimized microtrap arrays. In order to generate strong interactions between atoms in arrays, we coherently laser–couple ground states to Rydberg states using a two–photon transition. The Hamiltonian of this system can be mapped onto spin Ising models in magnetic fields. In one experiment, we observe the collective enhancement of Rydberg excitations in the fully Rydberg blockade condition, where the interactions are much stronger than the laser–coupling. The Rydberg pair correlations we observe indicate strong correlations between nearby atoms, and blockade breaking arised from system edges. In a second experiment, we have implemented spin ising dynamics with opened– and closed–boundary conditions. We use an N = 5 1D array and an N = 6 ring array with nearest neighbor interactions, and measure the dynamics of spin densities, correlations, and all many–body states. The obtained results are in good agreement with numerical simulations for a short time and show that spatial localization of excitations appears in the 1D array, while the ring system has almost spatially homogeneous behavior. The experimental platform developed in this work has well–controllability rangingfrom atomic configurations to interactions, and pave the way for experimental investigation of synthetic or frustrated Ising magnets. 金属や超伝導素子,磁性体などの身の回りにある様々な物質の物理的特性は、物質中の個々の電子の振舞いやその相互作用により支配されている。しかしながら、このような複数の量子が相互作用しあう量子多体系は、粒子数がN = 50個でも現在のコンピュータでは厳密に解析することが難しいことが知られている。その理由は、粒子数の増加に対して系の取り得る量子状態が指数関数的に増大し、膨大な計算機リソースを要するためである。量子多体系を解析するもう一つのアプローチとして量子シミュレーションが挙げられる。量子シミュレーションは、中性原子・イオン・超伝導素子などの物理系を用いて量子多体系を記述するハミルトニアンを模擬的に再現し、個々の粒子の振舞いを実験的に解析する手法である。この手法により、未解決の物性の解明や物質の新たな機能探索が可能になるとして期待されている特に近年では粒子数の拡張だけでなく、量子シミュレータを構成する物理系の特色を生かし、粒子間の相互作用の相互作用パスや相互作用の大きさ、粒子配置などのパラメータの自由度の高い量子シミュレータの開発が着目されている。この技術により、多種多様な物質に対応させるだけでなく、対応物が存在しない系を実現することも可能になると期待されている。 本研究の目的は、冷却中性原子とリュードベリ状態間の大きな相互作用を用いて様々な量子多体系を再現可能な量子シミュレータの開発である。この手法の特徴は、リュードベリ状態間の大きな相互作用により各原子間距離を数μm以上離すことが可能となるゆえ、容易に単一サイトごとの観測・操作が実現できる点にある。さらに、空間光位相変調器(Spatial Light Modulator: SLM)によって生成された光マイクロトラップアレーを用いることで、プログラマブルに原子配置を制御することが可能となる。 本量子シミュレータの開発にあたり、我々はまず単一原子の観測効率に着目した。蛍光観測を行うことによって、原子配置や各原子に刻まれたスピンの状態を読み取ることができる。しかしながら、各サイトの光シフトの不均一性が生じると、原子の冷却効率や蛍光散乱レートにバラつきが生じ、単一原子の観測効率の悪化をもたらす。例えば単一原子あたりの観測効率がη= 0.99であっても、N= 50個の原子では指数関数的に観測効率が減少し、η50≃0.61となることが推測される。本研究では、実際のトラップ平面におけるをピーク強度のバラつきを単一原子から得られる蛍光を用いて均一化する手法を開発し、N= 62個のトラップ数においても全原子の検出効率η62を≃55 %から≃0.996 %まで向上できることを実証した。 数μm間隔のアレー状に並べられた単一原子間に強い相互作用を生成するために、我々は二光子遷移を用いて基底状態の原子をリュードベリ状態へのコヒーレント励起を行った。このようなリュードベリ原子系は磁場印加中のイジングスピンモデルにマッピング可能となる。一つ目の実験では、我々はリュードベリ原子間の相互作用が支配的な条件化において、リュードベリ状態への励起のダイナミクス測定を行った。ここでは、最大リュードベリ原子数が原子数Nに依存せず1個に制限されるリュードベリブロッケード効果や、N原子系のラビ振動が√Nに比例して増大する集団励起効果を観測した。二つ目の実験では、開境界条件および閉境界条件を有するスピン系のダイナミクスの実験シミュレーションを行った。ここでは、N= 5個の単一原子を一次元状に並べたアレーおよびN= 6個の単一原子をリング状に並べたアレーを用いて、スピンの密度分布やスピンスピン相関、多体状態のダイナミクスの測定を行った。得られた実験結果は、短時間領域においてイジングモデルの計算結果と良く一致するだけでなく、システムの境界の有無によってスピンの密度分布の局在化など系全体にもたらす効果を示す。 本研究で開発した実験プラットフォームは、個々の単一原子の高い制御性・観測効率だけでなく原子配置や相互作用領域の自由度を有し、幾何学的にフラストレートしたスピン系などの複雑なスピン系への応用が期待される。
著者
河辺 隆司 山本 倫也 青柳 西蔵
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.235-236, 2015-03-17

挙手は日常生活やグループディスカッションのような集団コミュニケーションの中で意思表示や意志確認の手段として度々使用されている。先行研究では身体的コミュニケーションの観点から挙手動作の解析や挙手の身体性を導入したロボットを開発してきた。しかし、集団コミュニケーションにおける挙手の効果については明らかになっていない。 そこで本研究では挙手動作の評価を行い、集団コミュニケーションにおける挙手の効果について解析を行っている。