- 著者
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末田 航
味八木 崇
暦本純一
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.1465-1474, 2011-04-15
モバイル機器では,位置情報を利用したアプリケーションが多用されている.GPSなどの位置測位手段から得られる緯度経度は,数値情報でありそのままでは利用者にとって直感的ではないので,それを住所や番地の表現に変換するリバースジオコーディングが必要である.しかし,現状のリバースジオコーディングでは行政的な地番に基づいて変換を行うため,モバイルアプリケーションを利用する利用者の主観的な空間意識とは必ずしも一致しない(たとえば「表参道」「ハチ公前」のような表現は地番ではないため利用不可能だった).本研究では,インターネット上の緯度経度情報付きの大量の写真とそのタグを実世界での集合知と見なし,それを集積・解析することで,人々の主観的な感覚に合致したリバースジオコーディングを自動的に行う「Social Reverse Geocoding」(SRG)を提案し,その構築の方式と,モバイルアプリケーション応用例を示す.SRGでは,統計学的手法であるカーネル密度推定法とSVMを用いることで,都市生活者としての利用者の空間意識により近い空間語とその範囲を自動推定する一連の方式を提案している.そして各種モバイル使用下での位置情報表現がより自然になり,また位置情報つき写真への自動タグレコメンデーションや,ライフログのサマライズが可能なアプリケーションを提案実装した.また,提案手法の都市計画やマーケティング分野への有効性を検証するために,従来手法による認知地図との比較,今後解決すべき問題と,関連分野への応用について議論する.