著者
飯島 敏文
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.1-13, 2010-02-26

今年度の「全国学力・学習状況調査」結果がマスメディアを通して公表されたのは本稿提出の直前,8月27日のことである。時間的制約があるため包括的な検証を終えることはできなかったが,上記調査結果の国民に共有される認識については本稿に関わる重要な示唆を得ることができる結果が明らかにされたと考える。 「全国学力・学習状況調査」の目的は,まず「国が全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から各地域における児童生徒の学力や学習状況をきめ細かく把握・分析することにより,教育及び教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図る」ことであり,各地域にあっては「各教育委員会,学校等が全国的な状況との関係において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し,その改善を図るとともに,そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する」ためのものである。それゆえに調査結果は「各学校が各児童生徒の学力や学習状況を把握し,児童生徒への教育指導や学習状 況の改善等に役立てる」ために用いられるべきものである。調査に対して異論がないわけではないが,少なくともこの目的を実現するための調査は必要なものであると筆者は把握している。また,平成20年度の実施状況を踏まえた専門家会議2)でも,調査の実施の改善や調査の主旨の徹底が改めて確認されている。 昨今の社会的風潮は第三者に客観的に了解可能で且つ比較対照がしやすい数量的評価が望ましいものとされ,明確な数値を示すことのできない評価に対して「抽象的」もしくは「包括的」であって具体的示唆を得られないという批判が向けられることが多くなっている。その風潮の中にあって,公表された数値はまさに世間の求める数値であったのかも知れない。しかし,世間に示された数値はその数値のみが取り上げられ,その数値を導くに至った諸要因との関連が考察されるところまでに至ってはいない。 学習の成果を評価すること,そしてそれを数量化したデータとして示すことそのものに筆者は異論をはさむわけではない。しかし,データを利用する(その利用には「解釈」を含む)際に,望ましい扱われ方がなされない場合,データの意味を曲解したり,データから読み取るべき重要な観点や要素がないがしろにされてしまう恐れは常につきまとっている。The suggestion that is the pivot about theme of this report is shown to a "national scholastic ability / learning situation investigation" result announced on August 27 this year. Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology shows an intention of "the national scholastic ability / learning situation investigation" as follows. Purpose of the investigation ○Education and result and the problem of the education measure are inspected from the viewpoint of equality of opportunity of nationwide compulsory education and maintenance improvement of the standard by detailed grasp / analysis of scholastic ability and the learning situation of the child student in each area, and the improvement being planned. ○A continuous inspection improvement cycle about the education being established by each Board of Education and school grasp education and result and the problem of the education measure in relations with the nationwide situation, and a project doing improvement.○Each school grasps scholastic ability and the learning situation of each child student and makes use for the education guidance to a child student or improvement of the learning situation. The investigation enforcement subject is limited to national language and arithmetic / mathematics, but stand by "knowledge" and a question about the side of "the practical application" in they subject, and it is investigation to be intended that is main in analyzing habit and learning environment and Seki relations with the scholastic ability by inventory survey. This paper is written in a situation affirming Clause 1 of the investigation purpose mentioned above. But it is always fraught with danger the event leaves the will of the proposer and enforcement subject like every social phenomenon being so, and to go out alone. Unfortunately "the national scholastic ability / learning situation investigation was no exception, too". "Only numerical value" calculated in investigation attracts interest between the world, and it is done quotation unlike the figure of Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, and it is the fact that it cannot deny to have invited a result public, to recognize "the order" of the place that Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology denies. It is assumed that the numerical evaluation that the third person can understand is better, and the social trend of these days comes to tend criticism to be turned for the evaluation that cannot show a clear value. In the inside of the wind, the announced numerical value may have been right the numerical value that the world found. However, as for the numerical value shown to the world, only the numerical value is taken up, and connection with the many pivot that came to lead the numerical value does not reach it by a considered place. The pupose in this paper is to try the consideration of the situation by digital and a concept to be analog. The rating system that stood on the premise that there are the many factors that a digital evaluation has difficulty with and the many factors that an analogous evaluation has difficulty with must be developed.
著者
大門 皇寿 山沢 英明 坂東 政司 大野 彰二 杉山 幸比古
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.522-525, 2004
被引用文献数
5

背景. 健康成人にみられたトウモロコシによる気道異物の1例を経験した. 症例. 症例は38歳の女性. 生来健康で特記すべき既往歴や誤嚥の原因となるような基礎疾患はなかった. 数日間続く喀痰, 咳嗽を主訴に当科を受診した. 胸部X線写真にて右上葉の無気肺を認め, 胸部CTではさらに軟部組織濃度の結節を右上葉支に認めた. 症状出現前におけるトウモロコシ誤嚥の事実を聴取したため, これを無気肺の原因と疑い気管支鏡検査を施行した. 右上葉支には嵌頓したトウモロコシを認めた. 通常の生検鉗子では把持不能であったため, バスケット鉗子を用いて収納したのちに摘出した. 右上葉の無気肺は数日で完全に消失し, 症状もすみやかに軽快した. 結論. 健康成人においても稀ではあるが気道異物をきたすことがある. 画像上無気肺を認めた場合には気道異物も常に念頭におき, 詳細な問診を行い, 遅滞なく気管支鏡検査を施行することが重要である.
著者
井口 昌平
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.82-85, 1965-04-01

生活および生産活動と水との関係をますます詳しく関連づけて考えなければならなくなりつつあることを考慮して,hydrologyという科学にこれまでどのように定義が与えられ,また日本においてそれをどのように命名してきたかを系統的に解説する.
著者
日野 祥智
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.61, pp.72-79, 2011-12-26

脚本は、映画や放送番組の骨格でありそれ自体が貴重なメディアアセットであるにも拘わらず、映画や放送番組の完成と同時に捨てられる宿命を帯びてきた。本稿では、「脚本」という文化資源アーカイブの構築に着目し、その課題と未来展望を論じる。具体的には、東京大学大学院の馬場章氏の脚本アーカイブ構想、吉見俊哉氏の文化資源アーカイブ理論、小川千代子氏の記録のライフサイクル論の三種の先行理論を用いて、筆者の考える脚本アーカイブの新モデルを導き出す。このモデルに立脚し、脚本それ自体のデジタルアーカイブ化を一歩進め、脚本により作成された映画やテレビ番組の動画映像に脚本が持つテキスト情報を同時に見せることを可能とした著者開発の動画連動型脚本検索エンジンの機能及び特色を紹介し、脚本アーカイブの未来への展望を述べる。
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.57-59, 1994-03-31

テレビ東京「ときめきマリンII」のスタッフのご好意により, 沖縄県慶良間諸島に生息するウコンハネガイCtenoides ales (Finley, 1927)の発光をビデオテープを通じて観察することができた。発光は外套膜縁に沿って走る青白く光る筋が素早く明滅するものである。左右の外套膜縁の閃光状の発光はかならずしも同調しないので, しばしば交叉して稲妻のように見えることもある。従来, 二枚貝綱における発光はツクエガイ科のツクエガイGastrochaena cuneiformisとニオガイ科のヒカリカモメガイPholas dactylusとヒカリニオガイBarnea candidaにおける細胞外発光(発光液の分泌)しか知られていなかった。本種における発光は組織学的研究は行われていないが, 光の強さや筋状の発光部位の移動のす早い速度などからみて, 細胞内自家発光と推察される。このような形式の発光と, それが, ミノガイ科において見られるという事実はおそらく世界最初の発見と思われる。
著者
高橋 将一 小松 邦彦 松永 亮一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.59-61, 2001-05-15

子実の青臭み(豆臭さ、豆腐臭さ)発生に関与する酵素, リポキシゲナーゼL-1, L-2及びL-3の全てを欠失した大豆品種は, 飲用豆乳や豆乳を素材とするデザート類に対する加工適性が高いだけでなく、小麦粉、卵などの他の食品素材と一緒に用いた場合にでも、加工食品中の過酸化脂質の生成を低レベルに抑え、風味・食味に優れた大豆加工食品を得ることができるなど、従来の大豆にない優れた利用特性が認められる(西場ら 1993, 古田ら 1993, 須田ら 1993). これまでリポキシゲナーゼ欠失大豆として「ゆめゆたか(L-2, L-3欠)」(喜多村ら 1992)と「いちひめ(全欠)」(羽鹿ら 1997)が育成されているが, 両品種の栽培適地は南東北から北関東地域に限定される. 現在, 「いちひめ」は豆乳原料として栃木県のみで生産されているため, 不作になると, 当年度における実需者の必要量を満たすことができなくなるばかりか, 安定供給の不確実性が今後の需要拡大の大きな支障となっている. 安定供給を図ることが問題解決に重要であり, 暖地での栽培に適する品種育成が要望されてきた.

2 0 0 0 OA 山地農作法

著者
近野 英吉
出版者
社団法人 砂防学会
雑誌
新砂防 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.1948, no.2, pp.29-30, 1948-11-20 (Released:2010-08-06)
著者
川村 修 福山 喜一 假屋 洋人 弓削 嗣彦 日高 利治 園田 美由紀 新美 光弘 井上 達志
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-5, 1999-07-21

近年、低水分牧草をロールベールとし、ストレッチフィルムで被覆密閉して調製したサイレージを家畜に給与する体系が全国的に急速に普及しつつある。本報では、予乾したイタリアンライグラス(水分60%)を用いて調製したロールベールラップサイレージの発酵品質、飼料成分、調製に伴う成分損失、生産費および家畜生産性について、同時に刈り取ってそのままトレンチサイロに埋蔵して調製したサイレージ(水分90%)と比較した。その結果、発酵品質はロールベールサイレージの方が有意に高かった。細胞壁構成物質(NDF)含量および反芻胃内微生物によるin vitro消化性においては両サイレージで有意な差はなかった。ロールベールサイレージの調製に伴って8%の乾物が損失した。一方トレンチサイロでの乾物損失は29%であった。これを考慮して両サイレージの生産費を試算すると、ロールベールサイレージのほうが乾物1kg当たり23円安かった。未経産雌牛(ホルスタイン種×黒毛和種、14-16ヵ月齢)を用いた飼養試験では、乾物採食量はロールベールサイレージの方が多い傾向を示したが、日増体と飼料効率は同程度であった。日本家畜管理学会誌、35(1) : 1-5,1999 1998年10月30日受付1999年4月9日受理
著者
川内 規会
出版者
青森県立保健大学雑誌編集委員会
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-19, 2011-12

本研究は、震災直後の聴覚障害者の情報授受の問題と今後の課題を明確にすることがねらいであり、情報を伝える側と受ける側の両側面を通して、人と人の関わりをコミュニケーションの視点から考察するものである。震災直後では、人々は家族、知人の安否情報、避難情報、生活維持のための情報が絶たれたことにより不安が増大した。特に、聴覚障害者にとっては、健聴者の一番の情報源であるラジオが使用できず、また口頭で伝えられる情報も入らない。避難所では口頭の指示は理解できず、人とコミュニケーションをとりながら情報を得ること自体に難しさを感じ、不安と精神的負担が大きくなる。本稿は震災シンポジウムから得た聴覚障害者の意見と事前の質問紙調査の結果を通して、震災後の人と人との関わり、情報授受に関する不安と課題を再考する。また、「見えるラジオ」の現状を伝えるとともに、災害時に災害情報を正確に、迅速に、簡潔に伝える「やさしい日本語」が、外国人のみならず、聴覚障害者にも情報授受の観点から有効であることを提示する。This study aimed to clarify problems with giving and receiving of information by hearingimpaired persons after the earthquake disaster and to rethink interpersonal communication through information. After the earthquake, people were concerned about getting information on the whereabouts and safety of family members, friends and acquaintances, evacuation areas and the status of life lines. People received a lot of information from the radio and by word of mouth; however, hearing-impaired persons could not get such information. They had a hard time to get real on time information in the disaster area and shelters. Through questionnaires we got data from hearing-impaired persons who were in shelters and the disaster area. Responses from these questionnaires combined with information from the Symposium of Earthquake Communication clearly show the need to examine the giving and receiving of information after a disaster. We need to reconsider the use of "Mieru-radio/ teletext broadcasting." Furthermore, we suggest the use of "Yasashii-Nihongo /Easy-Japanese" during stays at shelters is not only beneficial for foreigners but also for hearing-impaired persons.
著者
金 慶珠
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本の新聞報道における韓国大衆文化関連記事の分析を通じて、いわゆる「韓流」をとらえる日本のメディアの視点を具体化することを目的としている。研究の結果、新聞記事の量的変動は産業レベルでの文化交流の指標とは連動せず、むしろ政治レベルでの葛藤等に連動していることが明らかになった。また、記事の類型分析においてもメディアの視点が最も顕著に反映される[意見提示型]の割合は最も低く、間接的な意見提示に留まっていることが明らかになった。
著者
高田 久美代 妹尾 正登 東久保 靖 高辻 英之 高山 晴義 小川 博美
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.598-606, 2004-07-15
被引用文献数
5 5

マガキ, ホタテガイおよびムラサキイガイにおける麻痺性貝毒の蓄積と減毒過程の差異を明らかにするため, 原因プランクトン<i>Alexandrium tamarense</i> の消長とこれら貝類の毒力と毒組成の推移を調べた。毒力の推移は貝種によって大きく異なり, マガキは<i>A. tamarense</i> が消滅すると1~2週間後に毒力が不検出となり, ホタテガイやムラサキイガイに比べて毒の低下が早く, 蓄積する毒力も最も低かった。毒組成の推移も貝種によって異なった。貝種による毒化と減毒の差異には毒組成の違いが関与していると考えられた。
著者
福田 泰雄
出版者
新日本出版社
雑誌
経済 (ISSN:04534670)
巻号頁・発行日
no.190, pp.100-115, 2011-07