著者
坂野 永理 大久保 理恵
出版者
岡山大学国際センター, 岡山大学教育開発センター, 岡山大学言語教育センター, 岡山大学キャリア開発センター
雑誌
大学教育研究紀要 (ISSN:18815952)
巻号頁・発行日
no.8, pp.179-190, 2012-12

本稿ではCEFR のスイス版自己評価チェックリストを使い, 岡山大学の日本語コース受講者86名を対象に,学期開始後から終了前の約3か月の期間で自己の日本語力の変化を感じているかどうか,またその変化はどの言語領域において現れるのかを調査した。調査の結果,初級,中級,中上級の全てのレベルにおいて,学生の自己評価の平均値が学期開始後より終了前の方が有意に高いという結果が現れた。また,各レベルの全ての領域で終了前の方が開始時より自己評価の平均値が有意に高く,全ての項目で終了前のほうが開始時より平均値が高いという結果となった。本調査により,受講生は学期終了時には自己の日本語力をより肯定的に評価するようになったことが明らかになった。
著者
小泉 京美
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.17-32, 2015

<p>記号活字やリノカットを駆使して視覚性を強調した萩原恭次郎の『死刑宣告』(長隆舎、一九二五年)は、これまで詩的言語の言語(symbol)から図像(icon)への移行を示す記念碑的詩集として捉えられてきた。だが、表現規範の革新を目指す前衛的な芸術運動を後押しした関東大震災という出来事に密着して考えるならば、『死刑宣告』は表象の秩序を根柢から揺るがす、より本質的な言語の変容を記録していたことが見えてくる。震災による活字不足と新聞紙面の混乱、震災を契機に普及した素材リノリウムとリノカットという表現手法、これらを取り巻く文化史的な背景を検証することで、その表現の独自性と詩の新たな読解可能性を開示する。</p>
著者
今田 純雄 鈴木 千尋
出版者
広島修道大学
雑誌
広島修大論集. 人文編 (ISSN:03875873)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.285-302, 2000-03-10

People differ widely in their reasons for drinking. This article reports on the development of a six-factor measure that assesses four enhancement and two suppression motives for alcohol drinking in adult male drinkers. Apart from the three traditionally accepted motives-social, coping and enhancement-sensory/cognitive pleasures were evaluated as further motives for the use of alcohol. Also, two distinctly different motives were shown to explain the suppression of the wish to drink. Comparison of undergraduate students with male adults showed different patterns of the motivational bases of alcohol use across two groups. Young people tend to drink for social and enhancement motives, although male adults use alcohol to cope with negative emotion and to gain sensory/cognitive pleasure. Data gained from female students suggests the sex difference as the causative factor in their suppression of drinking, when compared with males. These findings indicate the importance of taking into account these different motives to explain drinking behavior in natural settings.
著者
深田 祝
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.25-32, 1985

1958年5月から1969年10月の間に野外に於て,シマヘビ1434匹の体温を測定した。これらのデータを分析して次のことが判った。平均体温(28.7℃)は気温よりむしろ地温との相関が強かった。月別の平均体温をみると,3月(25.4℃)から6月(30.7℃)に向け漸次上昇し,6月から9月(30.7℃)までは8月(31.7℃)がやや高い外は有意差はない,そうして10月(27.7℃),11月(23.0℃)と下降する。各月の最高体温をみると4月(35.6℃)から10月(34,4℃)迄は,10月がやや低いほかは36℃内外を保っている。雌の体温(29.2℃)は雄(28.2)より有意に高い。また,胃に食餌を含有する蛇の体温(29.2℃)は胃が空の蛇(28.6℃)より有意に高からた。また,体温と地温の差および地温と気温の差の分布状態からシマヘビの体温調節について論じた。
著者
藤原 充 長谷川 優子 鈴木 啓介 内山 恵典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1268, 2012

【はじめに、目的】 院内における入院患者の転倒事故は、排泄への移動を契機に発生することが多いと報告されている。しかし、一般的に理学療法士が、患者に対して行う転倒リスク評価は、いわゆる"尿意がない"状態での運動機能評価に留まっている。先行研究では強い尿意は認知機能を低下させるとの報告もあることから、より現実に近い状況での転倒リスク評価を行うためには、"尿意がある"状態での運動、注意機能評価が必要なのではないかと考えた。本研究では健常成人男性を対象に、"尿意がない"状態と"尿意がある"状態での運動機能、注意機能を評価し、その違いの有無を明らかにすることを目的とする。【方法】 健常成人男性7人(平均年齢27歳)を対象に、尿意を感じない時点"尿意なし"と、強い尿意を感じる時点"尿意あり"における、運動機能と注意機能の違いについて検討した。評価項目としては、尿意に関するものとして、NRSとVASの評価、膀胱容量の測定を行った。運動機能については、10m歩行速度と歩数、左右の最大一歩幅、左右の握力を測定した。また、注意に関する課題としてTMTを施行した。プロトコールは、排尿後に尿意を感じない時点でのNRSとVASを評価し、TMT、10m歩行速度と歩数、最大一歩幅、握力を順次評価した。1Lの飲水後、尿意がNRS"8"となった時点で再度、同一評価を行った。なお、10m歩行テスト、左右の最大一歩幅、左右の握力は各々3回ずつ測定して平均値を算出した。尿意のNRS、VASは"0"を「尿意なし」とし、"10"を「最大に我慢した状態」とした。また、膀胱容量はブラッダースキャンを用いて評価した。評価結果について、尿意ありと尿意なしをSPSSver.19を用いて統計学的に検討した。統計学的手法は、対応のあるt検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の実施の先立ち、被験者に対して研究の意義、目的について十分説明し、口頭および文書による同意を得た。【結果】 最大一歩幅は"尿意なし・右"平均120.1±6.1cm、"尿意なし・左"117.8±7.9cm、"尿意あり・右"109.7±9.3cm、"尿意あり・左"108.9±9.6cmとなり、"尿意あり"で有意に低下した(p<0.05)。その他、TMT、10m歩行速度と歩数、握力については有意差を認めなかった。なお、"尿意あり"の状態でのVAS平均は、8.11±0.81cm、膀胱容量は平均367±100.2mlであり、自覚的、他覚的にも尿意を確認できた。【考察】 "尿意なし"と"尿意あり"の時点における運動機能、注意機能の比較では、"尿意あり"の状態で、最大一歩幅のみが有意に低下した。このことから、日常臨床で行っている転倒リスク評価の結果は患者能力の一側面であり、"尿意あり"の状態での評価では違う結果が生じることが示された。一般に最大膀胱容量は成人300~500mlで、尿意は膀胱容量が150~200mlで感じるとされている。しかし、通常排尿は前頭葉からの橋排尿中枢の抑制、自律神経による蓄尿反射と体性神経による外尿道括約筋収縮により抑制されている。尿意がNRS"8"の時点では、膀胱内圧が急激に上昇した状態と言えるため、随意的に外尿道括約筋の収縮を強め、腹圧を高められない状態での運動を強いられることになったと推測される。これにより体幹が安定せず、運動機能が低下したと考えた。今後の課題は、転倒リスク評価における適切な評価項目の選定と"尿意なし"と"尿意あり"で生じた違いに対する原因追究のための指標を用意することである。【理学療法学研究としての意義】 "尿意なし"と"尿意あり"の状態での運動機能、注意機能の違いを捉えることで、転倒リスクを評価する上での視点が増える。また、今回のように"尿意あり"の状態で、パフォーマンス低下が認められた場合、トイレ誘導に関して、失敗や転倒のない適切なタイミングを示すことができる。これらを通し、排泄を契機に発生している転倒事故を減らすことができるものと考えられる。
著者
花村 俊吉
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.12, 2005

ニホンザルの群れにいるオスは、群れを構成する多くの個体から離れているオス(周辺にいるオス)と、多くの個体の近くにいるオス(中心にいるオス)とに分化して観察されることが知られている。また、このオスの空間的位置は移行する。しかし、その分化機構や移行過程はよく分かっていない。本研究では、他個体との相互行為の積み重ねとしてオスの空間的位置の差異が観察されると考え、オスが他個体から離れることになる逃避、他個体の近くにいることになる近接に着目し、(1)周辺にいるオスがよく逃避しているかどうか、(2)オスの逃避の発端となる他個体の性、(3)オスの逃避に関わる他個体との相互行為、(4)オスの逃避の発端とならない他個体とその近接について検討した。<br> 2004年2月から8月までの7ヶ月間、嵐山モンキーパークいわたやまのニホンザル餌づけ群のうち、10才以上のオトナオス9頭を対象に個体追跡を行い、逃避、近接、攻撃などの他個体との相互行為、およびオスの空間的位置を記録した。空間的位置は、個体追跡中の瞬間サンプリングによって得た視界内の個体数などによって評価した。<br> その結果、よく逃避するオスとほとんど逃避しないオスがおり、(1)周辺にいるオスは中心にいるオスより頻繁に逃避し、(2)そのほとんどはメスとの相互行為が発端となって生じていた。その際、(3)メスの悲鳴によって第3者に攻撃されることがあり、こういった状況をもたらし得るメスから逃避していることが示唆された。また、(4)周辺にいるオスでも、毛づくろいや長時間近接をするメスからは逃避せず、それらのメスとの近接時には逃避頻度が低くなる傾向があり、特定のメスとの近接によってオスの空間的位置の移行が促される可能性が示唆された。したがって、オスの空間的位置にはメスとの社会関係が強く影響していると考えられる。また、観察可能なニホンザルの群れという境界についての再検討が要求される。
著者
奥 健夫
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.144-154, 2005-03-01

本研究では、量子論及びホログラフィック原理に基づく現代宇宙論の観点から、意識生命エネルギーのメカニズムに関する考察を行うことを目的とした。人間の意識生命エネルギー(ECL)を、ある波動関数で表わされるフォトン的な波動と考え、巨視的量子凝縮体への光の凍結物質化のメカニズムを提案した。意識場光がダークエネルギーダークマターに光凍結し、負のエントロピー形成から物質生命体における原子自己組織配列が生じると考えられる。ECLは、ボースアインシュタイン凝縮、フェルミ凝縮、量子エンタングルメント、トンネルフォトンなどの量子コヒーレント的性質をもたらしていると考えられる。またホログラフィック原理及び超弦理論から、宇宙の4次元時空の全情報が3次元境界面に記録され、そのコード情報もしくは余剰7次元がECLに対応する、意識⇒生命エネルギー⇒物質情報変換モデルを提案した。物質情報から見ると宇宙情報は、時間凍結した状態であろうと考えられる。
著者
高木 寛之 大津 雅之 田中 謙 高木 寛之 大津 雅之 田中 謙 TAKAGI Hiroyuki OTSU Masayuki TANAKA Ken タカギ ヒロユキ Takagi Hiroyuki オオツ マサユキ Otsu Masayuki タナカ ケン Tanaka Ken
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:21874344)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.125-137, 2017-03-16

本研究では、ソーシャルワーク実践現場として地域包括支援センターで活躍する社会福祉士と保健師に着目し、養成過程における地域アセスメントの視点の相違について明らかにし、今後の専門職養成への示唆を得ることを目的とした。その結果、地域アセスメントについて、両専門職養成課程において、語られる文脈に違いはあるものの、その項目については共通項を見出すことができ、地域の人々の状況や取り巻く地域資源だけでなく、文化やシステムの状況といった理解の必要性も重視していることがわかった。一方で、社会福祉士養成過程は、地域アセスメン項目やポイントを羅列するだけに留まり、保健師(看護師)養成過程では、地域をコアとサブシステムという構造的に把握し、データの例示と視点と判断・解釈の例示というそれらをより具体的に理解するための思考の枠組みと方向性を示している点に大きな違いがあった。
著者
姜 明采 Kang Myungchae
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
no.14, pp.275-319, 2017-03-20

大正期は、(短い間であったにもかかわらず社会全般に大きな変化をもたらしており、こうした変化に影響を受けた建築界でも、)新しい建築への数多くの試みとして様々な建築様式が登場してきた時期である。本稿は、こうした大正期における建築デザインの動向を検討するため、1924(大正13)年12月22日より1925(大正14)年2月28日まで実施された震災記念堂の設計競技に注目した。震災記念堂の設計競技応募図案は現在、全221案のうち設計競技の当選図案図集である『大正大震災記念建造物競技設計図録』に掲載された36案の当選図案と、震災記念堂の収蔵庫に収蔵されている39案の選外図案の75案が残存している。設計競技の当選図案とこれまで公開されていなかった選外図案の外観デザインを対象に、当時流行した建築デザインの要素とその傾向を考察することを本稿の研究目的とした。立面図や透視図などで外観の形状がわかる74案の応募図案を古典主義風、表現主義風、アール・デコ風、モダニズム風、和風、東洋風の6つのデザイン様式に分類し、各様式で最も多く見られたデザインの要素をまとめた結果、以下のことが明らかとなった。 まず、全体的な外観形状としては、不要な装飾的要素を抑え、ジッグラト風デザインや直線を多く用いて垂直性を強調した計画が多く見受けられた。また、ドーム屋根に左右対称の縦長開口部を多く用いた古典主義風の塔の形状とした「コンペティションスタイル」との類似性も見られ、すっきりしたモダンなデザインと均衡が取れた古典主義風デザインが共存していた様子がうかがえた。更に、その細部には、単純幾何学的装飾の反復と変形アーチの開口部などの装飾の要素を設けられ、設計者の個性を発揮したことが考えられる。こうしたシンプルな外観と個性的な細部装飾のデザイン要素から、大正期における建築デザインの動向が読み取れたと考えられる。In Taisho Period, architects conceived a variety of different styles, striving for new designs. This study take a close look at the Memorial Hall for Great Kanto Earthquake Design Competition held from December 22, 1924 to February 28, 1925, and attempt to reveal architectural trends in the era. Seventy-five of the 221 designs submitted to the competition have remained to date, with 36 contained in the collection of Designs Awarded in the Memorial Hall for Great Kanto Earthquake Design Competition ; 39 designs did not meet the award criteria but continue to be stored in the Memorial Hall Archive. So, this study analyzes the external appearance of the designs that are elected one and unselected one that have not been open to public viewing to examine the prevailing design elements and the design trend. The elevation and perspective plan of Seventy-five designs which shows the shape of the external appearance have classified 6types of design style ; Classicism, Expressionism, Art-Deco, Modernism, Japanese-temple Style, Oriental-temple Style, and clarified the most frequent elements in each style. First, lots of the external appearances of designs were appeared to restrain the unnecessary decorative elements and stack the floor like ziggurat style, also emphasize the verticality using the vertical line. And, there were also appeared ʻCompetition Styleʼ which is the classical tower shape using dome-like roof and the opening which are vertically symmetry. Therefore, it makes clear that Neat modern design and well-balanced classical design coexist in that time. Furthermore, it can be considered that designers demonstrate their individuality in details, like the repetition of the simple geometric design and deformation arch opening, etc. Thus, this study can be assumed to read the trend of the architectural design in Taisho period, the simple exteriors and unique details.2015年度奨励研究 成果論文