著者
桑原 康人 石野 明美 桑原 典枝
出版者
日本獣医腎泌尿器学会
雑誌
日本獣医腎泌尿器学会誌 (ISSN:18832652)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.20-22, 2019 (Released:2019-04-03)
参考文献数
3

伴侶動物の尿道閉塞や膀胱麻痺に陥った症例に対する尿路変更術として、口径約1 cm程度の腹壁膀胱瘻設置術が実施されてきたが、瘻孔の早期閉塞や尿路感染が問題であった。今回、従来法よりも大きな口径で腹壁膀胱瘻設置術を行ったところ、上記問題の解消に有効であったので報告する。
著者
田村 賢 杉山 耕平
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.29-37, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
22

カキ殻の有効利用法を開拓し,廃棄カキ殻の利用価値を向上させるために,本研究ではカキ殻粉末が陶器釉薬として容易に利用できるよう,施釉・焼成方法を確立した。ハンマーミルを用いて作製されたカキ殻粉末が市販の精製 CaCO3 粉末の代替品として釉薬の原料に使用できることを確認し,カキ殻粉末と粘土の混合系においてカキ殻粉末が過不足なく粘土と反応し,質の良いガラス層が得られる配合割合と焼成条件を明らかにした。鉄分や他の不純物元素を少量含んでいる天然粘土 (信楽粘土) とカキ殻粉末の混合系ではカキ殻粉末の配合割合が 30 wt% と 33 wt% のものが焼成温度1,200℃で溶融する。このうち,流動性に優れるのは 30 wt% のものであった。この配合割合 30 wt% のものを釉薬とし,実用品 (皿) として造形した素焼き基材の表面に塗布して焼成 (1,250℃で 1 h 保持) した結果,高い表面品質をもつ製品が得られた。
著者
井上 善文
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1163-1167, 2009 (Released:2009-12-21)
参考文献数
12

インラインフィルターを、感染予防目的に使用すべきかについての議論がある。0.2μmのフィルターも仮性菌糸を伸ばして増殖するCandida albicans の貫通を阻止できないという報告がある。これらの問題に対し、臨床をシミュレートした実験を行った。その結果、流入側が孔径の大きな多孔質層、流出側が孔径の小さい緻密層から構成された非対称膜から成るフィルターではCandida albicans の通過を阻止できないことを証明した。さらに、対称膜から成るフィルターは7日間、Candida albicans だけでなく、細菌の貫通も阻止できることを証明した。アミノ酸を含むTPN輸液が微生物増殖の良好な培地であることは明らかである。完全な輸液の無菌調製ができていない場合には、感染予防を目的としたインラインフィルターを使用することが、理論的にも適正な管理方法であると思われる。
著者
井原 雅行 徳永 弘子 中島 知巳 猿渡 進平 後藤 裕基 梅﨑 優貴
出版者
特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構
雑誌
人間中心設計 (ISSN:18829635)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.28-37, 2023-03-31 (Released:2023-04-16)
参考文献数
18

This paper introduces the person-centered care principle, which prioritizes individuals’ values and preferences, and employs it to build a methodology for designing a novel person-centered care service. According to the person-centered design principle, we designed the processes of empathy and definition in design thinking which focus on unexpected behaviors and the backgrounds of care recipients. Those processes were conducted with care workers as a series of workshops. Though the workshop design had problems of comprehension of the unexpected behaviors and empathy with the backgrounds, the qualitative analysis on the workshop participants’ comments revealed the two effects: verbalization and visualization, and shared viewpoints among the workshop participants. This study contributes to a design field by the following three values; the employment of the person-centered care principle to a design field, the practice of the person-centered designed processes with care workers as a case study, and the evaluation of those processes by qualitative analysis.
著者
平岩 洋美 福嶋 友美 大西 文子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-57, 2008-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

本研究の目的は、乳幼児の採血・注射における親の同席の現状と親の同席に対する看護師の認識の把握および親の同席に対して小児看護としてどのような取り組みがされているかを明らかにすることである。調査期間は平成17年8月3日〜9月7日。調査方法はA県内にある9施設の小児科に勤務している看護師226名に対し、自作の質問紙調査を実施した。結果は、(1)親の同席が必要であると考える看護師は約3割であった。(2)親が同席できる選択肢を持つ病棟は約7割であり、増加傾向にあった。(3)看護師は経験年数に関係なく、親の同席がない場合と比較し親の同席がある場合は精神的負担・緊張を多く感じていた(p<0・0001)。(4)親の同席への取り組みは看護師同志の意見交換が最も多かったが、看護師が役立つと考える取り組みは医師との意見交換・話し合いであった。
著者
永井弘人
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

目 的 広汎性発達障害を含む自閉症スペクトラムの生徒の中には,描画作品に精緻な作品を制作する生徒がいる。最近は,「アウトサイダーアート」という呼び名で,社会的に美術作品としてその価値が認められるようになった。美術を担当する教師として,生徒の「表現」を支援する立場の者として社会的認知は誠に喜ばしいことである。 しかし,その美意識に対する違和感や能力のアンバランスを常に感じてきた。 本事例は,教科学習においてインサイダーの表現技法を身につけるチャンスは十分にありながら定着は困難であった。現在の表現能力において,立体物は極めて精緻である一方で,描写については,モデルを見て描けないが,興味のあるキャラクターのイラスト模写は上手である等の特徴の背景について作例の比較を通して考察した。方 法対象 年齢 18歳 性別 男子 障害名 広汎性発達障害① 立体図1の立体作品は,大きさ・タテ5.7㎝×ヨコ2.8㎝×高さ6㎝ 素材は信楽の粗めの陶芸用粘土。指だけで,へらは使用せず7分程度で制作した。② イラスト模写図2は,対象の好きなアニメキャラクターを,印刷物を見て模写した。書き直すことは少なく,キャラクターの台詞を口にしながら40分で仕上げた。③ モデルスケッチ図3は,同じクラスの男子をモデルにして描いた。何から描いたらいいのか分からず,輪郭や顔のパーツなど指示した。80分かかった。結 果 対象の指先の巧緻性については,鉛筆の持ち方及び握る,つまむなどの微細な動作に問題はない。イラストの模写ではキャラクターの特徴を見事にとらえており描写能力は高い。しかし,モデルを前にすると各パーツの形,大きさ,位置などのバランスをとることや描写に稚拙さが目立った。これは,輪郭線 (Outline) を意識して描くことは困難であるが,描かれた線を手掛かりにすれば高い描写力を示すことができるという特徴を示す結果となった。考 察 三浦 (2010) によれば,自然界に輪郭線はなく,輪郭線を描写するには,「面」と「面」との色や明るさの異なる境界に生じるエッジの抽出が必要となる。本事例の作品比較の結果より,このエッジの抽出が困難であることから輪郭線や「面」を意識することも困難となっていることが推察される。「面」をもとに立体感や写実性を表現する者が感じる違和感の発生はここにあり,対象生徒がアニメ・漫画のように線で表している作品に関心が向きやすいこと,そしてイラストの模写とモデルのスケッチの描写力の差もエッジ抽出能力の差が背景になっていると考察する。文 献三浦佳世 (2010). 電子情報通信学会 知識ベース 知識の森 感覚・知覚・認識の基礎, 第10章 絵画の知覚・認知, 1-6.
著者
苫米地 誠一
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.123-166, 1991-03-31 (Released:2017-08-31)

石山寺の校倉聖教中には『三昧耶戒儀』(一本は『三昧耶戒』)と称する、平安中期から鎌倉にかけての四本の写本が存在する。この四本はうち二本は同本であり、実際には三種であるが、共に前段に三昧耶戒に就いての解説を、後段には三昧耶戒作法を置き、実際の灌頂に際して三昧耶戒授戒に於る戒体として用いられたものであろう。そして此等の前段の三昧耶戒に就いての解説は、一本は『平城天皇灌頂文』第二文であり、一本は『三昧耶戒序』であり、もう一種二本は新出の文献である。又、後段の三昧耶戒作法は「秘密三昧耶仏戒儀」又は「授発菩提心戒文」と称しており、現行の『秘密三昧耶仏戒儀』と『三十帖策子』所収の『授発菩提心戒文』との中間的な内容であり、現行の『秘密三昧耶仏戒儀』の成立・伝承の過程を明らかにする資料となると思われる。今回は此等の写本を翻刻し、広く学界に紹介しようとするものである。