- 著者
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本村 和久
- 出版者
- 公益財団法人 医療科学研究所
- 雑誌
- 医療と社会 (ISSN:09169202)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.23-32, 2019-05-24 (Released:2019-06-05)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
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沖縄県は39の有人離島があり,宮古島と石垣島,久米島にはそれぞれ県立病院や公立病院が設置され,16島に県立診療所,4島に町村立診療所が設置されている。16の県立診療所と2つの町村立診療所においては,医師の配置は1人だけである。16の県立診療所医師のほとんどは,沖縄県立中部病院や沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの後期研修プログラムの一環として赴任している。現在の医師養成が可能となっているのは,先人の離島医療に対する尽力があってこそと考えている。沖縄の近代医療史を振り返りながら,第二次世界大戦,沖縄戦で大きな被害を受けた沖縄の医療がどのように立ち上がってきたのかを考察し,その中で離島の医療を守ることが重視されてきた現状を報告する。沖縄戦後,米国統治下の厳しい医師不足,医療事情の中で,公衆衛生看護婦や医介輔などの医療職が沖縄の離島医療を支えてきた。医師養成を行い,離島の多い沖縄の医療を支える拠点病院としてスタートした沖縄県立中部病院では,教育システムを作り上げて人材の養成確保を図り,代診や遠隔医療などの支援体制を充実させてきた。派遣された医師は,離島という特殊環境下において,島民の医療を守り,地域包括ケアを実践している。