著者
岡田 弘司
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.23-30, 2022-03-15

医療では傷病などにより心身の状態を著しく崩した者に治療やケアを行うことが多く、危機的状況に陥った者といかに適切に関わり、その者の回復や安寧に繋げていくかが重要な課題となる。Fink,S.L.(1967)の提唱した危機モデルは危機克服のためのプロセスを①衝撃、②防御的退行、③承認、④適応の4つの段階で示した理論であり、かねてよりその有用性などが本邦においても注目されていた。本研究ではここ5年間に本邦で発表された当危機モデルに関する最新の研究を検索し文献考察を行って、当危機モデルの適用性についてなど検討した。その結果、事例研究を中心に看護系の分野で多くの論文が発表されていることが確認され、癌や難病など厳しい病状にある患者やその家族に対し当危機モデルが活用され、適切な介入や有効な支援の実践などに寄与していることが明らかになった。また当危機モデルの用い方は様々であるが、中でも当危機モデルを多職種連携やチーム医療の観点で見ると公認心理師に期待される役割も想定され、プロセスの段階を同定する心理的アセスメントやプロセスの進展を支援する面接の施行などが大切になると考えられた。また公認心理師が当危機モデルの検証や発展のための研究に従事することも意義深いと思われた。
著者
Akinori MORI Yuma MICHINOBU Akira MIYATA Takehiko MATSUMOTO Shoji MATSUURA Mikinori TSUIKI Takatoshi ARITA Mariko SHIMIZU Ryusuke HATANO
出版者
Japan International Research Center for Agricultural Sciences
雑誌
Japan Agricultural Research Quarterly: JARQ (ISSN:00213551)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.349-356, 2022-10-01 (Released:2022-11-05)
参考文献数
13

In 2015-2016, we investigated the farmland management procedures used on dairy farms in Japan using a mail-back survey. In Hokkaido, 98% of the surveyed farms had meadows, 53% had pastures, and 49% had forage crop fields. In all other prefectures, 19% of farms had meadows, 10% had pastures, and 90% had forage crop fields. The median area of each field category per farm was greater in Hokkaido than in the other prefectures. In all places, the application rate of organic fertilizer decreased in the following order: forage crop field > meadow > pasture (37, 8.7, and 2.7 Mg-manure ha−1 y−1, respectively, in Hokkaido). In forage crop fields, organic fertilizer was applied at lower rates and inorganic fertilizer was applied at higher rates in Hokkaido than elsewhere (37 vs. 69 Mg-manure ha−1 y−1 and 42 vs. 22 kg-N ha−1 y−1 respectively). In meadows, organic fertilizer was applied at lower rates in Hokkaido (8.7 vs. 14 Mg-manure ha−1 y−1); however, inorganic fertilizer was applied at similar rates. The annual rate of grassland renovation with full-inversion tillage in 2006-2010 was 3.0% in Hokkaido and 1.3% in the other prefectures. In both regions, manure was intensively applied during grassland renovation.
著者
高岡 宣子 長尾 匡則 梅澤 光政 西連地 利己 春山 康夫 小橋 元
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.133-142, 2017 (Released:2017-03-30)
参考文献数
45
被引用文献数
2

目的 わが国においては再生産年齢非妊婦および妊婦の血中ビタミン D 濃度の分布はまだ明らかにされておらず,周産期と次世代の影響に配慮した妊婦および再生産年齢女性におけるビタミン D 不足の基準値はまだ設定されていない。そこで,本研究では,再生産年齢女性の血中ビタミン D 基準値設定に向けた研究の基礎資料を得ることを目的として,日本人の再生産年齢女性の血中ビタミン D 濃度の分布に関する研究文献の系統的にレビューを行った。方法 対象文献の収載期間は1963年から2015年までとした。医中誌 Web および PubMed でキーワード「日本」,「ビタミン D」,「女」,「妊婦」を含む対象文献の抽出を行った。対象文献に対して年齢,性別,日本人,データの有無,重複の有無の精査を行った結果,18件が採用された。続いて再生産年齢の非妊婦(13件22グループ)と妊産褥婦(6 件 8 グループ)に分け,年齢,測定時期および測定方法により血中ビタミン D の平均値の分布を検討した。結果 日本人再生産年齢の非妊婦に関する13件22グループのうち,10グループ(45.5%)の血中25(OH)D 濃度の平均値は20 ng/ml 未満,21グループ(95.5%)は30 ng/ml 未満であった。一方,非妊婦に比べて妊産褥婦の血中25(OH)D 濃度が低く,妊産褥婦においては妊娠初期(5-10週)の 1 グループ以外はすべて血中25(OH)D の平均値が20 ng/ml を下回っていた。結論 再生産年齢の日本人女性の血中25(OH)D 濃度が,特に妊産褥婦において低値である可能性が示唆された。再生産年齢女性の血中25(OH)D 濃度についてはまだ研究が少なく,更なる研究が必要である。
著者
松浦 直毅 戸田 美佳子 安岡 宏和
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.100, pp.29-33, 2021-12-31 (Released:2022-12-31)
参考文献数
16

アフリカにおける生物多様性保全の歴史は19世紀後半にまでさかのぼり,時代ごとの社会背景や国際情勢を反映して理念や方法が変化してきた。近代以降のアフリカは保全という問題とつねに対峙してきたといえ,生物多様性保全というテーマは,現代のアフリカが直面している課題を分析し,将来を展望するうえで不可欠であるといえる。そこで本稿では,要塞型保全から住民参加型保全,そして新自由主義的保全という保全パラダイムの変遷についてまとめるとともに,保全政策の名のもとでおこなわれる土地収奪や地域住民への暴力行為などの保全をめぐる現代的問題について述べる。アフリカの保全政策がかかえる課題として,地域住民の生活や文化が軽視され,政府や国際機関が主導するトップダウン型の構造が維持されてきたことが挙げられる。この課題を解決し,効果的な保全活動を進めるためには,「順応的管理」の理念にもとづき,「参加型モニタリング」の手法による自然資源管理の体制を構築することが重要であり,現場に根ざした地域社会の深い理解とその実践への応用を特徴とする日本のアフリカ研究が果たす役割は大きいといえる。
著者
村上 周三 吉野 博
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
vol.325, pp.104-115, 1983-03-30 (Released:2017-08-22)
被引用文献数
2 3

住宅の気密性能に関する昭和36年以後の研究報告を一覧にして表-1に示す。わが国ではすでに大正13年に野村が, また昭和3年に大谷が室に存在する隙間の換気に及ぼす影響を実験的に検討しており, 隙間の量を部位別に目測し, その結果を示している。渡辺は, それらの結果を基に, 室容積1m^3当りの隙間面積が, 木造真壁造の和室では構造が粗の場合90cm^2以上, 中の場合60〜50cm^2, 密の場合30cm^2以下であり, コンクリート造の洋室では, 10〜15cm^2であることを述べている。その後, 昭和36年に, 前田, 石原等はコンクリート造集合住宅を対象として部位別の気密性能を減圧法(後述)により初めて定量的に測定した。最近では, 楢崎等が単室及び数室の気密性能及び防音実験住宅の気密性能を, 筆者らは各種住宅25戸を対象に, 市川等は集合住宅を, 浅野は各種住宅10戸を, 旭ダウ(株)の研究グループは北海道の断熱改修もあった。これはサッシの隙間の約3倍の量に達する。また, 3つの集合住宅における部位別のαAを比較した結果, 目につかない隙間は28〜126cm^2と大幅に異った。(3)建物に設置された後のサッシの気密性能は, 本来備わっているはずの性能よりもはるかに劣ることがある。今回測定した中では, Q_<l0>が, 性能試験値の6倍に達するものもあった。(4)住宅全体の気密性能を, 単位床面積当りの隙間の相当開口面積によって表し, 既往の測定結果を含めてグレード表に位置づけた結果, 各国における気密性能の水準が明らかとなり, わが国における気密性能の目標水準を設定するための手がかりを得ることができた。(5)気密性能の異なる3つの集合住宅において, 既設の台所換気扇を運転し室内圧を測定したところ, αAが2.4cm^2/m^2である防音気密住宅の場合, 排気量360m^3/hで-12.8mmAqにも下がった。この住宅で便所系統の換気扇を同時運転したところ, 便所系統のダクトから逆流が生じた。気密住宅において, 逆流やドア開閉時のトラブルを考慮して, 室内圧低下を-4mmAq程度にとどめるためには, 給気ダクトの径を175〜200mmにする必要のあることが, 実測及び数値計算より明らかとなった。
著者
島 憲男
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.25-48, 2021-07-30

本論考では,対格目的語が文の主要な文肢(項)として含まれているドイツ語の3 構文(結果構文・Resultative Konstruktionen,結果挙述の目的語・Ergebnisobjekte,同族目的語・Kognate Objekte)を取り上げ,これまでの構文研究の個別成果に基づき異なる構文間の共通性・関連性を横断的に捉えることを目的とする。今回の構文横断的な分析は,より一般的なメカニズムから個別の構文やドイツ語文法の全体像を捉え直すという試みであり,個別の構文研究の際には意識されにくい構文間の共通性や関連性,差異などの関係性を捉えようとする試みでもある。
著者
湯浅 恭史 中野 晋 岡野 将希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_217-I_226, 2019 (Released:2020-03-12)
参考文献数
6

平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている. 本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.
著者
マクマレイ デビッド David McMurray
出版者
鹿児島国際大学大学院
雑誌
鹿児島国際大学大学院学術論集 = The IUK graduate school journal (ISSN:18838987)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-11, 2021-11-30

This research investigates the current use of ellipsis abbreviations in English haiku. In the linguistics field, ellipsis means the practice of omitting words from sentences. The ellipsis indicates abbreviation of a missing statement, especially a complex syntactic simplification. In the literary field, ellipsis can refer to [...] punctuation marks. Poets use ellipsis in different ways than writers create prose in English. The rhythm of English poetry can be paused with punctuation marks such as commas, semicolons, hyphens, exclamation marks and dots. The Japanese use of cutting words can be emulated in English haiku using... (dots) at the end of the first or second lines. This study found that haikuists use linguistic and literary examples of ellipsis in unique ways and new styles — differently than novelists or traditional poets.
著者
磯田 桂史
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.615, pp.199-206, 2007-05-30 (Released:2017-02-25)
被引用文献数
2 1

In the Meiji Era Japan tried to modernize herself adopting advanced industrial technologies of Europe and America. Thus, many cotton spinning mills were built as one of the main industries. However, it has been an open question how these mills were planned actually. The author discussed construction of the cotton spinning mill of Kumamoto Boseki Co. Ltd. in Kumamoto, which has been supposed to be built in 1896, transformed as a shoe factory later and then finally demolished in 2003. He made his own measurements and drawings and researched the original export documents at Lancashire Record Office in UK. Comparing the drawings, English documents, and the other information, he cleared the followings; 1) the mill was originally built in 1894 and extended 1896, 2) the machinery was imported from an English maker of cotton spinning machinery, Dobson & Barlow Ltd., and 3) the plan of the mill was evidently based on the drawings which the company made.
著者
Shizuka Sasazuki
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.611-612, 2016-12-05 (Released:2016-12-05)
参考文献数
4
被引用文献数
9 10