著者
長谷川 美貴子 Mikiko HASEGAWA
出版者
淑徳短期大学紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
no.47, pp.117-134, 2008

最近、「感情を管理する労働」に対する関心が高まり、さまざまな議論がなされている。「感情労働」とは、サービス提供者側の感情を商品としてみなし、職務上望ましいと考えられる感情や精神状態に顧客が変化することを意図して、自分の感情を促進したり、抑制して感情表現の仕方をコントロールすることが、職務の中で課せられている労働のことを指す。わが国においては熟練看護師に関する研究が盛んに行われているが、同じ対人援助職である介護織に関する議論はほとんどなされていない。しかし、介護援助は「ケア」に特化した援助行為であることから、感情労働としての側面を有していることが考えられる。今回、介護学生の実習レポート『私の介護観』や実習中の直接面接方式による準構造的な聞き取り調査の内容分析から、「他者を援助する」という基本的な行為の中に組み込まれている感情管理の困難性が明らかとなった。
著者
庄司 順一
出版者
関西学院大学人間福祉学部研究会
雑誌
人間福祉学研究 (ISSN:18832741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-47, 2009
被引用文献数
1 1
著者
田川 佳代子
出版者
愛知県立大学
雑誌
愛知県立大学文学部論集. 社会福祉学科編 (ISSN:13425285)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.89-106, 2005-03-31

本研究は、ソーシャルワークが拠って立つ専門職としての基盤を下支えする価値や倫理について、現代的背景の脈絡において問い直すことを課題としている。ソーシャルワーカーは、市場における競合する個人主義を擁護する一方、もう一方で社会正義や平等を支持する、そうした福祉国家の本質にある反駁する価値の状況に身を置く。Banks(1995)が示す、ソーシャルワーク実践における「批判的反省」(critical reflection)を手がかりに、ソーシャルワーカーの役割における固有の複雑さや反駁について論じる。そして、専門職が倫理綱領を必要とする理由、その意義について述べる。さらに、利用者の権利への関心が高まるなか、ソーシャルワーカーの倫理的意思決定について検討する。ソーシャルワークの価値や倫理に対する関心や責任を喚起することには、ソーシャルワークの認識的視座に支配的な影響をもたらした実証主義の影響を顧み、個人の私的領域に押しとどめられてきた価値や倫理を、再びソーシャルワークの認識的視座に統合していく試みであることを論じた。
著者
角 能
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.103-114, 2008

This paper analyzes theoretically role sharing between public, private, family sector. Above all, this paper focuses on fairness on public burden on welfare state. And, this paper distinguishes between which sector people want to use and for which sector they support to expand government expenditure. In addition, from the view of what image they hold in their mind about three sectors, fairness on public burden is analyzed on this paper. Finally, four welfare state models, `large-scale welfare state model`, `welfare state asking for self-responsibility model`, `calculative welfare state model` and `generous welfare state model`.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1925年04月04日, 1925-04-04
著者
勝又 里織 松岡 恵 関根 憲治
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.317-326, 2007
被引用文献数
1

人工妊娠中絶術(以下「中絶」とする)を受けた女性が,中絶後に精神的に安定するためには,看護者のケアが必要とされている.しかし,一般に,女性に対する理解不足から,精神的な看護ケアは十分に行われていない.そこで本研究は,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情を明らかにすることを目的とした.対象は,都内産婦人科診療所で妊娠初期に中絶を受けた女性のうち,同意の得られた者とした.方法は,半構造化面接法と自己記入式質問紙調査とした.面接時期は,中絶後1週間を目安に1回60分程度行い,さらに同意の得られた者には,中絶後1カ月を目安に2回目の面接を実施した.分析法として,グラウンデッドセオリー法を参考に継続的比較分析を用いた.対象者は,未婚で子供のいない20-23歳の女性6名(そのうち4名は1回のみ)であった.分析の結果,中絶後1カ月以内の女性の,中絶に関連した認知と感情として,中絶の重さの自覚,ちゃんとしていなかった自分,これからの自分,二人の中絶,親への思いの5つのカテゴリーが抽出された.カテゴリーの経時的な流れは,手術後,【中絶の重さの自覚】をし,その後,内省を始めた.その中で,【ちゃんとしていなかった自分】を自覚し,同時に,相手だけでなく二人で一緒に考えようと,【二人の中絶】と思うようになった.そして,落ち込んでいるだけでは何も変わらないと,【これからの自分】のあり方を考えた.さらに,中絶後1カ月の時期には,【親への思い】を持っていた.中絶を受けた女性は,命を殺した重みから,それを隠したい経験と考えており,孤立しがちな状況にあると推察された.孤立は,自分の内面を統合させられないとされており,看護者は,女性が孤立することがないようにする必要があると考えられた.
著者
Takane IMADA
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES
雑誌
TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN (ISSN:18840485)
巻号頁・発行日
vol.8, no.ists27, pp.Tg_1-Tg_10, 2010 (Released:2010-11-23)
被引用文献数
1 1

This year will be a major milestone for JAXA with the launching of the new heavy rocket H-IIB and HTV (H-II Transfer Vehicle). Together they will form an important infrastructure for transporting supplies, equipment, and experiment modules to the LEO (Low Earth Orbit) station and will be the basic design of a manned spacecraft in the future. In the previous paper in ISTS in 2008, a preliminary study focusing upon the LES (Launch Escape System) and parametric analyses for its abort system was reported. The missing parts of a manned flight utilizing the combination of HTV and H-IIB are selected as the main structure in this paper. In addition, the progress made in spacecraft design is included along with its development plan in which important development items that have not yet been investigated enough in Japan are identified.
著者
髙坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.8, pp.123-136, 2015-03

本研究の目的は、少女向けコミック誌および女性向けコミック誌における恋愛行動・性行動の描写数をもとに、それぞれの特徴を比較し、また、前後の文脈をもとにキス場面の内容分析を行い、少女向けコミック誌および女性向けコミック誌における恋愛像、あるいは男性像と女性像の描かれ方を明らかにすることである。それぞれの恋愛行動・性行動の描写数から、少女向けコミック誌は恋愛関係が構築されるまでを描く傾向にあるが、女性向けコミック誌は関係構築以降の口論や別れまで描いている、告白や別れの場面では男性が主導権をもっている、などの特徴が見出された。また、キス場面の内容分析から、恋愛関係・夫婦関係以外でのキスも半数程度描かれており、男性が一方的に女性にキスをする場面が多数みられることも確認された。今後は、読者である子どもや青年が描写されている恋愛行動・性行動をどのように受け止め、感じとっているかを明らかにする必要があることが示唆された。
著者
福島 智
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-17, 1994-06-30 (Released:2017-07-28)

盲ろう児の言語発達における基本的諸問題について、先行研究の整理を通して検討した。盲ろう児の発達遅滞は、第1にあらゆる外部情報の不足、第2に言語的経験の不足、第3に知的・情緒的発達の遅滞という三つの層からなる構造を持っていると思われる。そして、これら三つの層の遅滞を克服するためには、とりわけ、第2の層に関わる困難に取り組むことが重要だと考える。また、触覚を用いた探索行動と、「身振り語」の使用は、初期の言語発達を促進する上で、本質的な要因だと考える。次に、盲ろう児の言語発達における「読み」の教育の意義と困難さについて述べたが、これまでのこの分野の研究はほとんど行われていない。盲ろう児に対する「読み」の教育は想像力の発達と密接な関連を持っている。そして、「読み」の教育は、次の諸点を考慮しつつ構想されるべきだと考える。それらは、1.「読み」の理解を助けるための手段、2.「読み」の素材、3.素材と盲ろう児の経験との関係、4.盲ろう児の経験の質、についてである。