著者
Kosuke Takahashi Shohei Nobuhara
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2018-CVIM-212, no.39, pp.1-16, 2018-05-03

This paper addresses the use of mirror reflections for camera calibration. Camera calibration is an essential technique for analyzing the geometric and radiometric relationship between a 3D space and a 2D image. Most conventional camera calibration methods are based on a fundamental assumption: a camera can directly observe a reference object of known geometry. However, there are cases in which this assumption does not hold in practical scenarios. One approach to camera calibration in such cases is the use of a “mirror” as a supporting device. A mirror generates a virtual reference object that can be expressed using a small number of parameters. In addition, the 2D projection of the reflection object is equal to that of the known reference object from the virtual viewpoint. This paper utilizes these features and tackles two challenges of the geometric camera calibration; the first challenge is the intrinsic camera calibration when a known reference object is not available and the second challenge is the extrinsic camera calibration when the camera cannot directly observe a known reference object due to a physical constraint on the imaging system. The proposed algorithms introduce novel constraints, kaleidoscopic projection constraint and orthogonality constraint, which are hold with the mirror reflections for solving these problems. Evaluations with synthesized and real data demonstrates that the proposed algorithms can work properly and report the robustness of it in comparison with conventional methods.
著者
河村 暁子 Akiko Kohmura
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2006-03-23

設計・試作したアンテナの動作解明や,不要な電磁波放射源の特定及び評価・対策のために,金属線上の電流分布を推定する技術が求められている.このような電流分布推定の要求は,例えば付属回路の動作不良のような実用の過程で起こる問題によるものであり,計算における理想状態のシミュレーションだけでは解決できず,測定による検討が欠かせない.しかしながら,金属線にセンサなどを接触させれば本来の振る舞いを妨げることとなるため,直接的に測定することが難しい.本論文では,近傍磁界の測定結果からアンテナがある一定周波数で励振された場合の電流分布の振幅と位相あるいは実数部と虚数部(複素電流分布)を推定するための手法を提案し,具体的な検討をシミュレーション計算と測定により行い,推定法の有効性を確かめることを目的としている.本論文で用いる複素電流分布推定法の基本原理は,% 方程式より導かれる微小電流要素がつくる近傍電磁界の式に基づく.対象とする電流を,均一な電流分布を持つ微小セグメントの集まりとすれば,近傍磁界はそれぞれのセグメントがつくる磁界の和として表わされ,電流とその近傍磁界は連立- 次方程式の形で関係付けられる.よって,近傍磁界の振幅と位相の分布を測定すれば,電流と磁界の関係式を解くことで複素電流分布を推定できる.この推定法では,電流と磁界の関係式の逆問題を安定に解くために,できるだけ誤差の少ない磁界データを適用することが重要となる.そこで,近傍磁界測定のための磁界センサとして,シールデッドループ構造の. 出力磁界プローブを新たに導入する.この微小ループプローブは,ループ面内でほぼ無指向性であることから,電流分布推定の目的に適している.さらに,このプローブの計測用アンテナとしての特性である磁界複素アンテナ係数"" % ' & ( # の新しい決定法を提案する.磁界複素アンテナ係数は,到来磁界とアンテナの出力の比であり,この係数を正しく決定することは,磁界を適切に測定し正確な電流分布を推定するために重要である.提案する方法は,プローブ全体の等価回路表現に基づき,ループ部の実効長を計算し,出力ポートの反射係数を測定することにより,簡単にアンテナ係数を決定できる.電流分布推定を実際に行うにあたり,検討の第- 段階として単純な構造の線状ダイポールアンテナのアンテナエレメント上に存在する電流を対象とした推定について述べる.特性を決定したシールデッドループ構造の. 出力磁界プローブを用いて近傍磁界の測定を行い,複素電流分布を推定した.近傍磁界の測定に際し,プローブは対象とする電流に影響を及ぼさず,かつ十分な感度の出力を得られる位置で走査する必要がある.その適切な走査位置や間隔を,プローブ形状を考慮し実効長の定義より磁界分布を求めるシミュレーション計算により検討し決定した.推定した電流分布に対し,分布の形状だけでなく絶対的な値を含めた妥当性の確認を,モーメント法による理論的な電流分布(理論電流分布)との比較より行った.このとき,近傍磁界の測定にネットワークアナライザを用い,ダイポールアンテナの励振電圧を理論電流分布と等しい条件で比較できるようにする手法を開発した.比較の結果,本論文で提案した電流分布推定法が,複素電流分布の実数部・虚数部の形状のみならず絶対的な値まで推定できることを確認した.さらに,複素電流分布推定法の妥当性を確認できたことをふまえ,ダイポールアンテナの給電線路の外導体上に漏洩する電流の推定を行った.これより,本推定法が漏洩電流のような微弱な電流に対しても適用可能で,アンテナの動作解明や不要電磁波の放射源の特定に有効であることを明らかにした.最後に,本推定手法の対象を. 次元的に分布する電流に拡張するための検討を,. エレメント八木アンテナを対象に行った.近傍磁界測定において微小ループ構造の磁界プローブに多方向から合成された磁界が到来しても,ループを垂直に貫く方向の磁界成分のみが測定されることを考慮すれば,本推定手法が適用可能であり,各エレメント上の複素電流分布を求められることを示した.この結果は,プリントアンテナなどを対象とする一般的な. 次元電流分布推定の基礎となり得るものである.
著者
宍戸 明美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.105-124, 2010-07-31

本稿ではソーシャルワークは果たして専門職か,という古典的な疑問を軸に専門職ソーシャルワークの成立過程を概観し,その過程で現れる矛盾を捉えながら根本的な課題を提示してみようとするものである。専門職として成立したソーシャルワーカーの養成教育,特にソーシャルワークの定義にある「相談業務」と「連携」業務を担う背景を検証し,袋小路にあるソーシャルワーカーに求められる機能を問い,そしてそのための体系的な教育カリキュラムの必要性を述べている。
著者
安武 芳紘 小田 謙太郎 吉田 隆一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.579-589, 2008-02-15

分散環境では複数のプロセスが通信をするため,メッセージの全順序保証を利用した通信は不可欠である.また,さまざまな実行環境が存在し,環境はたえず変化するため,最適な全順序保証プロトコルをあらかじめ選択することは困難である.そこで,環境変化へ動的に適応する全順序保証プロトコルが求められる.従来の適応的全順序保証プロトコルは悲観的全順序保証プロトコルを基盤にしている.そこで本論文では悲観的手法に加えて楽観的手法も対象とした適応方法を提案する.適応方法を楽観的手法にまで広げたことにより,異なる手法のプロトコルを動的に選択し環境変化に適応することが可能である.2 つの手法のコストを比較した場合,楽観的手法はメッセージの送信頻度に影響を受けやすく,悲観的手法は通信遅延の影響を受けやすい.適応的選択は,時々刻々変化する実行環境に対して,順序付けコストが最小の手法を選択することになり,これを実現するために,それぞれの手法に対して順序付けコストを評価し比較する方法を提案する.また,メッセージの全順序保証を維持するため,楽観的手法を考慮したプロトコルの切替え方法を提案する.例としてTime Warp とABCAST を対象としたコスト評価・比較,切替えについて具体的に述べ,本方式の有効性をシミュレーションにより検証する.
著者
河島 茂生
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第25巻, no.第2号, pp.1-15, 2013-03

本論文は,オートポイエーシス論に基づきながら,ネットゲーム依存の問題を検討している。これまで心理学的もしくは精神医学的なアプローチでの取り組みがなされ,対策も講じられてきた。しかし,情報学の基礎理論でもあるオートポイエーシス論を援用した分析はほとんど見られない。そこで本研究は,オートポイエーシス論の視座からネットゲーム依存を考察することにした。この方法を採ることにより,人間の心理において現実と虚像の境界が原理的に曖昧である点が指摘でき,またネットゲームだけにのめり込む危険性も考察することができた。さらには,インターネット依存から身をかわす一契機を見出すことが可能となった。
著者
長谷部 礼 西本 一志
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-94, no.8, pp.1-7, 2015-03-05

ブレインストーミングに代表される既存の発散的思考技法は,アイデアを発想する手段として企画や開発を行う場面で多用されている.しかし,このような技法を用いても,思考者が自分の固定観念から脱却することは容易ではなく,固定観念の外側にある新奇なアイデアを得ることは依然として難しい.この問題に対して本研究では,代表的な発散的思考技法であるブレインストーミングを,アイデア生成の手段としてではなく,思考者が持つ固定観念を発見する手段として使用し,その結果をもとにさらにアイデアを拡げることを支援する,新規な発散的思考技法 BrainTranscending を提案し,ユーザスタディによりその効果を検証する.
著者
中村 好則 NAKAMURA Yoshinori
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.15, pp.69-78, 2016-03

平成26年6月24日に閣議決定した世界最先端IT国家創造宣言において「学校の高速ブロードバンド接続,1人1台の情報端末配備,電子黒板や無線LAN環境の整備,デジタル教科書・教材の活用等,初等教育段階から教育環境自体のIT化を進め,児童生徒等の学力の向上と情報の利活用の向上を図る」ことが,さらに「これらの取組により,2010年代中には,全ての小学校,中学校,高等学校,特別支援学校で教育環境のIT化を実現するとともに,学校と家庭がシームレスでつながる教育・学習環境を構築し,家庭での事前学習と連携した授業など指導方法の充実を図る」ことが述べられ,政府主導で教育の情報化が進められている。また,文部科学省では,平成26年度にICTを効果的に活用した教育の推進を図ることを目的に,教育効果の明確化,効果的な指導方法の開発,教員のICT活用指導力の向上方法の確立を図るためにICTを活用した教育の推進に資する実証事業を行い,成果報告書や手引き書を公表している(ICTを活用した教育の推進に資する検証事業,2015)。さらに,総務省でも,平成26年6月から「ICTドリームスクール懇談会」を開催し,教育分野におけるICT活用の推進に取り組み,平成27年4月に中間取りまとめを公表している。これらのことからも,教育の情報化は着実に進展している。しかし,学校現場ではどうだろうか。文部科学省や総務省,県や市などの研究指定校や先進的に研究に取り組んでいる学校だけがICTを活用した実践に取り組み,それ以外は従来からの指導とあまり変わらない現状があるのではないだろうか。特に,数学指導においては,ICT活用よりも,紙と鉛筆による指導こそが重要だという教師の思い込み(固定観念あるいは素朴な考え方)がある(例えば,中村2015a)。中学校においても,電子黒板やパソコン,タブレット等のICT 環境が徐々に整備され(平成26年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果,文部科学省2015),それらを数学指導においても有効に活用することが求められている。しかし,数学指導において「なぜICTを活用するのか(ICT活用の目的)」,そのために「どのようにICTを活用するのか(ICT活用の方法)」が,学校現場において十分に理解されていない。そこで,本研究では,中学校学習指導要領とその解説及び教科書を基に,数学指導におけるICT活用について検討し,中学校の数学指導におけるICT活用の方向性(目的と方法)を明らかにすることを目的とする。そのために,平成20年版の中学校学習指導要領とその解説におけるICT活用に関する記述内容を調査する(第2章)とともに,中学校数学の平成27年検定済みの教科書におけるICT活用の取り扱いを分析(第3章)し,それらを基に中学校の数学指導におけるICT活用の方向性を考察する(第4章)。最後に,本研究のまとめと課題を述べる(第5章)。