著者
今村 文彦 杉浦 康平 齊木 崇人 松本 美保子 山之内 誠 黄 國賓 さくま はな 尹 聖喆 曽和 英子 Fumihiko IMAMURA Kohei SUGIURA Takahito SAIKI Mihoko MATSUMOTO Makoto YAMANOUCHI Kuo-pin HUANG Hana SAKUMA Seongcheol YUN Eiko SOWA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

本報告は、アジアンデザイン研究所の活動としてアジアの山車文化についてデザイン的視点から調査、研究を進めるものである。研究所では開設以来、アジア各地域でみられる祭礼の多様な山車の造形的特徴、象徴性、世界観、その仕組みと社会や環境との関係性などについて、継続的に取り組んできた。2013年度は第2 回国際シンポジウムを開催した。アジア各地に分布する舟形の山車とそこにみられる蛇や鳥のモチーフやデザインの象徴性、神話性をめぐって、ミャンマー、タイ、日本からの報告を中心に活発で意欲的な議論を重ね、アジアの山車の構成原理についての興味深い知見を得ることができた。さらに山車イメージと密接に関連する山や木の造形を巧みに表現しているインドネシアの影絵ワヤン・クリに用いられるグヌンガンについて、現地で調査を実施し、その造形的特徴、使用法や構成原理等が明らかになった。また日本で活躍するバリ島の人形遣い(ダラン)を招き、バリ島のワヤン・クリについての研究会および上演会を開催した。これらの一連の活動により、アジアの山車と山、木などとの関連性について把握し、アジアのデザイン語法を解明する手がかりを得ることができた。
著者
澤田 吉孝
雑誌
京都学園大学経済経営学部論集
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-45, 2018-03-10

本稿の目的は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻後に実施された米国の量的金融緩和政策(QE政策)の有効性を定量的に分析することである。QE政策の第1弾(QE1)は2008年11月から2010年6月まで、第2弾(QE2)は2010年11月から2011年6月まで、第3弾(QE3)は2012年9月から2013年12月まで、そして2014年1月から同年10月まで緩和逓減が実施されている。米国のQE政策は20008年11月から6年間に渡って実施されてきたわけだが、この時期のデータのみを用いて回帰分析を行った場合には推計結果にバイアスを生じる可能性がある(小標本問題)。日本経済のQE政策を分析したHonda and Tachibana(2011)は、この「小標本問題」を回避するために、ダミー変数を用いて標本期間の拡大を行っている。そこで、われわれは彼らの方法を応用し、米国における金融政策の全体的な経済効果と、その波及経路を分析する。構造型ベクトル自己回帰モデル(SVARモデル)を用いた分析を通じて、次の3点が明らかとなった。第1に、QE政策は株価チャンネルを通じて生産高を増加させる。第2に、QE政策は、ボラティリティ指数で表される投資家の市場に対する不安感を緩和させ、株式に対するリスクテイクの向上につながる。第3に、生産高を増加させる効果は、QE3が最も大きく、次いでQE1が続く。つまり、これらの結果は、米国のQE政策が景気低迷を緩和する手段として有効であったことを示唆している。
著者
住澤 知之
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-4, 2018-02-28

In our previous report, it was suggested the daily ingestion of dried-bonito broth might increase the human serum adiponectin levels. Anserine(β-alanyl-3-methyl-L-histidine), which is water-soluble antioxidant, is present at high concentration in the muscle of migratory fish such as bonito. Therefore, we investigated whether anserine is involved in the increase of blood adiponectin. The measured amount of anserine in the dried-bonito broth ingested at one time was 12.0 mg and 12.9 mg. Fourteen healthy female subjects ingested a commercially available health food supplement of a fish peptide mixture containing 10% of anserine for 2 months. The amount of anserine taken at one time was 20 mg. Measurement of serum adiponectin concentration was performed before and after the ingestion periods. Although the amount of ingested anserine was larger than that of intake of dried-bonito broth, no significant secretion enhancement of adiponectin was observed. Therefore, anserine may not be involved in increasing adiponectin levels in human serum.
著者
長崎 雅子 松岡 文子 山下 一也 Masako NAGASAKI Ayako MATSUOKA Kazuya YAMASHITA
雑誌
島根県立看護短期大学紀要 (ISSN:13419420)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.9-17, 2006-12-25

20歳以上の非医療従事者269名に死生観に関するアンケート調査を実施した。その結果、死はマイナスイメージで回避できない自然現象ととらえて、心の準備が必要と考えている人が多く、死の準備教育の必要性が示唆された。また、死をタブー視する傾向は、60代以上に多く、時代的背景の影響が見られた。死に対する不安は身体的苦痛などの現実的なことが多かったが、20~30代は「自己の存在消滅」など認識面の不安が多かった。死を意識するきっかけとしては、「大切な人の死を通して」が最も多く約6割であった。50代以上では、体調、加齢をきっかけとして死を意識し、かつ、それに伴う具体的な行動が見られ、死の準備状況の進展がみられた。20代では臓器移植賛成、提供してもよいが約8割であった。性差では女性の関心が高く、死を意識した行動が見られた。
著者
香曽我部 琢
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.171-180, 2016-01-29

本研究では、保育者が熟達者へと成長していく過程で、自らが所属する実践コミュニティとどように相互作用してきたのか、その実相を明らかにし、保育者の成長に与える実践コミュニティの影響について総合的に検討を行う。具体的には、保育者の自己形成について、実践コミュニティがどのような影響を与えてきたのか、SCAT (Steps for Coding and Theorization)によって得られた構成概念をもとに対話的自己モデルを構成し、分析を行う。その結果、実践コミュニティの変容が、(i)保育実践コミュニティの成員性の獲得期、(ii)同じ保育所の保育士との保育実践コミュニティの活性期、(iii)他の保育所の保育土や保護者へと保育実践コミュニティの拡大期、(iv)保育実践コミュニティと保育研究会の融合、地域住民と自然環境の内含期、以上4つに時期区分できることが明らかになった。そして、保育者の実践コミュニティが、特定の仲間を軸に量的、質的な両面からの影響を受けて、自らの保育実践コミュニティにおいて組織アイデンティティを強め、さらにナレッジ・システムを構成することが示唆された。
著者
井垣 宏 齊藤 俊 井上 亮文 中村 亮太 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.330-339, 2013-01-15

我々は受講生のプログラミング演習時におけるコーディング過程を記録し,可視化して講師に提示するシステムC3PVを提案する.本システムは,ウェブ上で動作するオンラインエディタとコーディング過程ビューから構成されている.オンラインエディタは受講生のコーディングプロセスにおける,文字入力,コンパイル,実行,提出といったすべての行動を記録する.コーディング過程ビューは課題の進み具合いや受講者の相対的な進捗遅れを可視化して講師に提示する.講師はあるエラーに関して長時間悩んでいる受講生や全体の進捗と比較して遅れている受講生をC3PVによって確認し,個別指導といった支援につなげることができる.本研究では実際にC3PVを学部1年生が受講するJavaプログラミング演習に適用し,C3PVによって可視化されたコーディング過程を利用した受講生対応を行った.その結果,コーディング過程ビューに基づいて対応した45件中38件(約84%)において,実際に受講生がサポートを必要としていたことが確認できた.
著者
平澤 真大 小川 祐樹 諏訪 博彦 太田 敏澄
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2011-DBS-153, no.13, pp.1-8, 2011-10-27

インターネットの普及によって,ニコニコ動画のような動画共有サイトの需要が高まり,結果多くの動画コンテンツが蓄積されている.これら蓄積された動画コンテンツの中には多くの人には知られていないが,視聴した際に多くの人の興味・関心が湧くコンテンツが多く埋もれていると考える.我々はソーシャルノベルティのある動画を 「社会的には知られていないが,より多くの人が興味・関心を持つコンテンツ」 と定義し,ソーシャルノベルティのある動画を発見するため 「もっと評価されるべき」 タグに注目した.本稿ではソーシャルノベルティのある動画発見のため,「もっと評価されるべき」 タグの分析と,それを用いた機械学習の精度分析の結果を報告する.
著者
沼崎 拓也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1030-1033, 2018-10-15

高等学校の新しい学習指導要領と解説が公表された.高等学校の情報科では,共通教科「情報I」「情報II」では高度化したうえに内容が多岐にわたる.また専門教科では「情報セキュリティ」の科目が新設されるなど,新たな分野を指導する能力も要求されている.しかし,現在高等学校で情報科を担当している教員には,短期間の研修で情報の免許状を取得した者も多く,このままでは新学習指導要領での教育を十分に行うことが難しいと考える.新学習指導要領の実施までに,さらなる情報科教員の育成と採用,また現職教員への研修も必要とされることをふまえて,現職教員として情報処理学会に協力してほしい点について述べる.
著者
アリザデ メラサ
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1029, 2018-10-15

筆者は英語圏への留学等を想定した実践的な英語の運用能力の養成を目標とした授業のオンラインコースのデザイン・開発・実施・評価に関する研究を行なっています.リスニングやリーディングの学習が中心だったこれまでの「実践英語e-learning」というオンラインコースを,4技能をバランス良く学習し実践的な英語を修得できるようオンラインコースを改善しました.本授業は2017年度の春学期より開講され,コースが受講生のニーズを満たし,実践的な英語スキルが向上したことを確認しました.また,クオリティ・マターズ(Quality Matters)コースデザイン評価を受け,現在はコースがHigher Education Course Design Rubric(第5版)のすべての基準を満たしています.
著者
隅谷 孝洋
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1034-1037, 2018-10-15

著作権法で,学校での授業で必要な場合には他人の著作物を無断で複製して良いとされている.2018年度,「教育の情報化に対応するため」このルールを補強する法改正が行われた.そこでは授業の過程で必要な公衆送信が可能になったが,教育機関を設置する者はそのために権利者に対して補償金を支払うこととなった.本稿ではこのことについて概略を紹介する.
著者
渡辺 敬介 金子 知適
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.158-162, 2017-11-03

本論文は,将棋における勾配ブースティング木を用いた局面評価関数を実証する.現在,殆どの将棋プログラムでは線形モデルを用いた評価関数が使用されている.一方で,機械学習分野では様々な非線形モデルを用いた手法が提案されており,これらの手法をうまく将棋に適用できれば既存手法より正確な評価関数を作成できると期待される.本研究は,勾配ブースティングを用いることにより評価関数の改善を試みた.1手当たりの探索局面数を固定して対局実験を行った結果,提案手法は基本手法に対して勝率6割以上で勝ち越し,提案手法が有力な手法であることが示された.しかし探索速度では提案手法に従来手法に大きく劣り,さらなる改善が必要であると考えられる.
著者
齋藤 繁
出版者
弘前学院大学社会福祉学部
雑誌
弘前学院大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:13464655)
巻号頁・発行日
no.13, pp.15-36, 2013-03-15

芥川龍之介の最晩年の作品に焦点を当てて、彼の他界に至る経緯を主として作品を通して考察を試みた。「歯車」はこれまで諸家による評論が繰り返しなされ、百家争鳴に近い論争を引き起こした作品である。 筆者は彼の最晩年の創作活動が前衛的芸術活動であると見做し、「歯車」は写実主義やロマン主義の文学とは異なる新しい文学運動の一つの試みであり、彼の文学の代表的作品であると考える立場から、作品中に散見される精神病理学的表現を再評価してみた。 芥川龍之介は永い間歯車の幻視に悩まされ、発狂の予兆と感じて悩み続けていたが、それは眼姓片頭痛、または閃光暗点と云う病気で、精神病理的な症状としての幻視とは異なるものであった。レエンコオトの男と僕の歯車の幻視体験を度々登場させることが、怪奇的な心理的空間を醸成することに役立っていたことは事実である。それにしても最初に芥川自身によってつけられた題名「夜」か「東京の夜」が、正当な命名と見做されるであろう。日常性を超えた異次元的、怪奇的精神世界、現実と非現実、日常性と非日常性、条理と不条理とが混然一体となった生活空間の構成を図ったとすれば、内なる心の闇の表現に或程度成功していると考えられる。 しかし彼は慢性的な神経疾患である神経衰弱を患い、メランコリックな精神状況の中で創作活動を続けていたのである。早世に至った動機は依然として明らかではないが、心身の消耗の極みが推定される。
出版者
BOC出版部

特集 長谷川テルを辿る旅 今こそ長谷川テルの勇気に学ぼう/岩垂弘テルの軌跡を辿り、戦争阻止の誓いを新たに長谷川テルを辿る中国の旅 その概要長谷川テル・暁子の足跡(年表)長谷川テルと有事法制―日中戦争反対を叫んだラジオ放送の主に想う/坂井尚美自分を確かめる旅/有元幹明「平和」と「人権」を考えた旅/岩田淑子長谷川テルと日中交友について/竹内康長谷川テルの魂にふれて/田村豊死者と出会う旅/橋本幸子前事不忘、后事之師/芹澤礼子母に、そして良心に恥じない生き方を続ける/長谷川暁子「旅のスコア」/西原東洋子「失くした二つのリンゴ」を朗読して/木田日登美遥かなる大地を訪れて/西村雅芳<詩>失くした二つのリンゴ―病床にて/長谷川テル歴史の見方が変わった旅/宮崎和子長谷川テルを辿る旅に参加して/宮本兼次反ファシズムを貫いた「長谷川テル」に逢う!/宮原進意義ある旅の体験/山口鞆絵「戦争」を問う旅/斎藤千代旅行業に関る者として/西島善治旅を企画して/澤田和子めじゃーなりすとのめ 取材中の疑問から生まれた連載/佐藤圭子ぐるーぷ紹介 戦争を許さない女たちのJR連絡会/中国残留婦人交流の会読書室 赤い夕陽と黒い大地 ほかあごらめいと さわやかで頼もしい憲法の守り手 木瀬慶子さん語りかけたいあなたへ 49 ため息/大里知子TOPICS 松井やよりさん、女性平和資料館を呼びかけ/東京都に初の女性区長ほか集会から 日米地位協定改定と損害賠償法制定を考える合同会議 ほか;あごらのあごら 『あごら』やめるな!の声が殺到/新入会員からほか目次で振り返る『あごら』30年(7) (1986年12月~1987年12月)
著者
広瀬 正幸 伊藤 琢巳 松原 仁 Masayuki Hirose Takumi Ito Hitoshi Matsubara
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.452-460, 1998-05-01

Several techniques have been developed to solve puzzle problems in conventional AI, but there are few attempts to compose problems automatically by computers. Tsume-Shogi, a mating problem of Japanese Chess, is a kind of puzzles that is created and solved according to specific rules. This paper presents a system to compose Tsume-Shogi problems by reverse method. The search space increases enormously when the reverse method is adopted, but we can reduce it by using some constraints. We conducted several experiments with our method to compose Tsume-Shogi problems and showed that our system could compose some good short Tsume-Shogi problems and some special Kyuku-Tsume problems.
著者
麦島 剛 上野 行良 中村 晋介 本多 潤子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.85-91, 2006-11-30

軽微な犯罪の早期解決がそれより重大な犯罪を抑止するという考え方を割れ窓理論 (broken windows theory)という。現在では、環境悪化放置の防止が地域の犯罪の抑止となる、 という観点から議論されることも多い。この理論の実践は1990年代半ばから米国において警察主導の取り組みとして始まった。最近は、日本でも地域住民主体による落書き防止などの取り組みとして盛んになっている。本研究は、地域環境悪化の放置および地域に立地する各種施設と、中学生の非行容認度との間にどのような関係があるのかを検討し、非行防止対策への手がかりとすることを目的とした。 福岡県内の中学2年生と矯正施設入所等中学生に対し、質問紙により以下の点を調査した。1)校区の悪化環境の放置に関する認識について、2)校区に立地する各種施設について、3)非行の容認について。その結果、悪化環境が放置されていると考える中学生は非行の容認度が高いことが示唆された。いっぽう少年院等の中学生は、悪化が放置された環境で暮らしていたと考える率が低かった。自らの住む環境の悪化が放置されていると感じるとき、中学生は非行を絶対悪だと考えなくなるが、放置状態に対して無頓着になると、実際に非行を犯す可能性が高まるとも考えられる。また、校区に、ギャンブル場などがあると答えた中学生において非行を許す程度が高かった。さらに、どんな施設であっても、立地する場合に環境が悪化していると認識する率が高かった。 以上の知見を踏まえると、落書きやゴミ放置などの公衆ルール違反を即急に解決することは、中学生が非行を許さないと考えることにつながる可能性がある。犯罪の低減と同様、割れ窓理論にもとづく具体的な取り組みが非行防止の一助となると考えられる。