著者
横林 結 森 理恵 YUI YOKOBAYASHI RIE MORI
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 生命環境学 (ISSN:18826946)
巻号頁・発行日
no.61, pp.9-17, 2009-12-25

アジア太平洋戦争敗戦後の1950年前後の日本において, 洋裁・洋装の普及過程で注目された「直線裁ち」は, 洋服地と洋裁技術のないままに, 「和服」地と和裁の技術をもって洋服を身につける, という困難な課題に対する解決策であった。またそこに西洋の洋服とは違う, 「日本人に合った洋服」が求められることにもなった。本研究では, この時期に, 多くの服飾関係者や一般の人々が, 「日本人にとって洋服とは」という疑問につきあたり, 「和服」と洋服との折衷とも言える「直線裁ち」に活路を見出そうとしていたということ, また, 洋服に「和服」の手法を取り入れるという方向と, 「和服」に洋服の手法を取り入れるという方向との双方向があったことを明らかにした。加えて, 和服がほぼ儀礼服と化した現在と異なり, 1950年前後の時期は, 「日本人にふさわしい衣服」についての議論が活発であり, 「和服」と洋服のあり方や両者の関係についてもとらえ方が流動的であることを明らかにした。
著者
鷲野 翔一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.2_13-2_20, 2007-10-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4 3

日本のITSについて若干の歴史的概観をした後,第3開発分野である安全運転支援システムの普及が芳しくないことを示し,その原因の一つに安全運転支援システムのコンセプトに問題があることを示す. 従来のコンセプトはドライバの運転負荷を少なくする形式のコンセプトで,どちらかと言えば,自然科学者が作ったコンセプトであった.しかし,よく調べると,運転負荷が増える方が事故も少なくなり,燃費も良くなるというデータもあり,交通心理学者をはじめとする社会科学者がこの現象に注目している.交通事故は注意をすればなくなるという簡単なものではなく,統計的な現象としてとらえる方がよいという説明もなされつつある.こういった社会科学者の力とITSの技術者が結集して安全運転支援システムのコンセプトを早急に作り,システムの開発と今後普及を図るべきことを述べる.
著者
初宿 成彦
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.71-89, 2019-03-31

ハルゼミはマツ類につくセミで,かつては大阪府では丘陵地から山地にかけて広く分布するセミとして知られていたが,1970年代から顕著になった松枯れにより衰退した.2000年頃からインターネット媒体により,市民からハルゼミの鳴き声の情報を蓄積してきた.これらにより,大阪府では山地に細々と残る程度にまで減少していることがわかった.人為が影響する前には海岸部や平野にも広く分布していたこと,2030年頃までに大阪府からは絶滅することが推定される.
著者
明仁 藍澤 正宏 池田 祐二 岸田 宗範 林 公義 中山 耕至 中坊 徹次
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
2019

<p>Hybrids of <i>Rhinogobius biwaensis</i> and <i>Rhinogobius</i> sp. BF were identified in the ponds of Sento Imperial Palace, Kyoto City, Japan, from microsatellite and mitochondrial DNA markers. Mitochondrial DNA analysis indicated that five of seven <i>Rhinogobius</i> specimens had <i>R. biwaensis</i> haplotypes, the remaining specimens having those of <i>Rhinogobius</i> sp. BF. In DAPC and STRUCTURE analyses based on microsatellite data, all specimens examined showed intermediate status between <i>R. biwaensis</i> and <i>Rhinogobius</i> sp. BF, the two species being considered to have formed a hybrid swarm in the ponds because genetically pure individuals of either were not found. This is the first report of recent hybridization under field conditions in <i>Rhinogobius</i> fishes from Japan, confirmed by nuclear and mitochondrial DNA data. Hybrid <i>Rhinogobius</i> specimens from the ponds had 5–17 predorsal scales, an intermediate range between those of non-hybrid <i>R. biwaensis</i> (0–6) and <i>Rhinogobius</i> sp. BF (11–20). However, in appearance they were more similar to <i>R. biwaensis</i> than <i>Rhinogobius</i> sp. BF, having bluish-white distal coloring anteriorly on the first and second dorsal fins, a reduced reddish longitudinal band on the anal fin, and lacking yellowish dorsal and posterior margins on the caudal fin. However, they differed from <i>R. biwaensis</i> in having a narrower white posterior caudal fin margin. Further morphological differentiation of the hybrid specimens was not apparent.</p>
著者
浅田 隆
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-19, 1973-12

輝く星! 見なさい。青い水底の静寂の中で。仰げ。瞬く鈴蘭、おお、無限大の宇宙の。(第二連・四行略)聞きなさい、心の耳を傾けて。幽玄な星の囁き―神秘な。青白い沈黙。ゾッとする冷気の厳粛。おお、超自然!!(「秋の夜の星」)
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。
著者
福留 範昭 亘 明志 Noriaki Fukudome Watari Akeshi 強制動員真相究明ネットワーク事務局 長崎ウエスレヤン大学 現代社会学部 社会福祉学科
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-25,

本稿_<(1)>では、朝鮮人強制労働被害者の遺骨問題を、「記憶」と「記録」をキーワードにして社会運動論的観点から考察している。韓国では、「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」が設立され、強制動員真相究明の事業が開始された。その一環として、強制動員被害者の遺骨の収集と返還の活動がある。日本政府は、日本に残された強制動員被害者の遺骨の調査と返還に協力を約束した。本稿では、先ず日韓政府によって60年間放置されてきた遺骨に対する事業が始まった経緯を概観した。そして、日本政府が行っている遺骨調査の進展状況を眺め、調査の問題点を指摘した。さらに、この遺骨調査の持つ意味を踏まえ、調査が実りあるものになるために、何が必要であるかを考察した。
著者
岡﨑 一
出版者
首都大学東京人文科学研究科
雑誌
人文学報 表象文化論 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.514-10, pp.13-60, 2018-03-20
著者
Yoshihiro Yoshimura Takahiro Bise Fumihiko Nagano Sayuri Shimazu Ai Shiraishi Makio Yamaga Hiroaki Koga
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
Progress in Rehabilitation Medicine (ISSN:24321354)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.20180011, 2018 (Released:2018-05-18)
参考文献数
53
被引用文献数
1 43

Objective: The aim of our study was to investigate how systemic inflammation relates to sarcopenia and its impact on functional outcomes in the recovery stages of stroke. Methods: A retrospective cohort study was performed in consecutive patients admitted to convalescent rehabilitation wards following stroke. Patients with acute or chronic high-grade inflammatory diseases were excluded. Systemic inflammation was evaluated using the modified Glasgow Prognostic Score (mGPS). Sarcopenia was defined as a loss of skeletal muscle mass and decreased muscle strength, with the cut-off values set by the Asian Working Group for Sarcopenia. The primary outcome was the motor domain of the Functional Independence Measure (FIM-motor). Univariate and multivariate analyses were used to determine whether mGPS was associated with sarcopenia and FIM-motor at discharge. Results: The study included 204 patients (mean age 74.1 years, 109 men). mGPS scores of 0, 1, and 2 were assigned to 149 (73.0%), 40 (19.6%), and 13 (6.4%) patients, respectively. Sarcopenia was diagnosed in 81 (39.7%) patients and was independently associated with stroke history (odds ratio [OR] 1.890, P=0.027), premorbid modified Rankin scale (OR 1.520, P=0.040), body mass index (OR 0.858, P=0.022), and mGPS score (OR 1.380, P=0.021). Furthermore, the mGPS score was independently associated with sarcopenia (OR 1.380, P=0.021) and FIM-motor at discharge (β=−0.131, P=0.031). Conclusion: Systemic inflammation is closely associated with sarcopenia and poor functional outcomes in the recovery stage of stroke. Early detection of systemic inflammation and sarcopenia can help promote both adequate exercise and nutritional support to restore muscle mass and improve post-stroke functional recovery.
著者
渡邉 剛
出版者
早稲田大学本庄高等学院
雑誌
教育と研究
巻号頁・発行日
vol.37, pp.19-32, 2019-03-15