著者
木村 汎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.24, pp.13-35, 2002-02-28

ロシア連邦を構成する八九の行政単位の一つであるカリーニングラード地方は、日本人にとり次の意味で無視しえない地域である。ソ連邦崩壊後リトアニアが独立国となったために、カリーニングラード地方は、ロシア本土から地理的に切り離された陸の孤島となった。モスクワの中央政府は、そのような境遇となった同地方に「経済特区」の地位を認めた。経済特区とは、関税・査証・為替通貨などにかんし優遇措置を与えることを通じて内外からの投資を惹きつけ、よって当該地域の経済活動を活性化しようとする工夫のことである。ソ連邦解体後の一九九一~九二年にかけて、ロシア連邦内には約十四ヶ所の「経済特区」が設立された。
著者
松谷 貫司 木村 昌弘
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2016-MPS-111, no.3, pp.1-6, 2016-12-05

ソーシャルメディアでは,ユーザは様々な情報を手軽に発信および共有することができ,ユーザが投稿したアイテムは,他のユーザからの共有や賛意メッセージなどのアテンションの数が増えるにつれてポピュラリティを獲得していく.最近 Shen ら [10] は,個々のアイテムへのアテンションの到着過程の確率モデルとして RPP モデルを提案し,それが既存のポピュラリティ予測法よりも精度が高いことを示した.本論文では,対象とするソーシャルメディアのアイテム群全体に対するアテンションの到着過程の確率モデルとして,ディリクレ過程と RPP モデルを融合した DPM-RPP モデルを提案し,アテンションダイナミクスの観点からそれらアイテム群の関係の分析を目指す.我々は,観測データに基づく DPM-RPP モデルの効率的な学習法および,DPM - RPP モデルによる各アイテムの将来ポピュラリティの予測法を与える.料理レシピ共有サイトの実データを用いた実験により,DPM-RPP モデルはポピュラリティ予測において RPP モデルを含む従来モデルよりも精度が高いことを示す.また,アテンションダイナミクスの観点における料理レシピ群のコミュニティ構造を明らかにする.

1 0 0 0 OA 2001 2 紀要8

巻号頁・発行日
2001-04-01
著者
鈴木 俊哉
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2012-DD-86, no.3, pp.1-10, 2012-07-12

広く使われる漢字の分類方式として部首・画数分類方式がある。現在普及している部首体系は康煕字典の部首分類、および、康煕字典部首を常用漢字字体に基いて縮約したものである。しかし、康煕字典以前の字書の部首分類は必ずしも康煕字典の体系と一致しておらず、また、特定の部首体系が支配的だったわけでもない。そのため、ある漢字がどの部首に配置されるかは必ずしも一定しておらず、しかも配置された部首の字形が似せられてしまうため、字書ごとに字形が異なるという状況があった。近年、漢字字典の収録字数を増やすために、それらの古字書から漢字を採集したため、実際には使い分けが不能であるにも関わらず、字書ごとに異なる部首に配置され、あたかも別字のように考えられて国際標準符号にとりいれられる問題が発生している。本稿では説文解字に存在したが、その後消滅した部首について、そこに含まれていた漢字がどのように分散し、漢字分類方式によって字形がどのように変化したかの調査結果を報告する。あわせて、国際標準における漢字統合規則の改訂の必要性について考察する。
著者
新目真紀 合田美子 半田純子 長沼将一
雑誌
情報教育シンポジウム2010論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, no.6, pp.127-131, 2010-08-11

本研究はICTシステムを利川した授業運営にeポートフォリオを導入した場合の活用支援に関する考察である.近年.多くの教育機関においてeポートフォリオの利活用が急速に拡大している.しかしながら,学習者がeポートフォリオを活用することで学習効果を向上させるために必要な要件は必ずしも明らかになっていない.そこで,本研究ではeポートフォリオを学習者が学習過程を記録して振り返りの場として用いた際の効果を検証する.その枯果,eポートフォリオを積極的に活用した学習者ほど自己効力感が高く,授業への満足度が向上することが明らかとなった.これにより,eポートフォリオを導入する際にはただ単に学習結果の格納場所として利用するのではなく,段階的な記録と振り返りの機会を増やすことが有効である可能性が示された.
著者
村田 志保
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.205-219, 2009-12-23

接頭辞「お」は、日本語の敬語体系に属しており、尊敬語、謙譲語、美化語に関係している。しかし、接頭辞「お」の付いた形(「おかばん」「お菓子」「おやつ」など)自体は、尊敬語、謙譲語、美化語ともに変化はなく、みな同じ形である。そのため、日本語教育において、接頭辞「お」を扱う場合、同じ形をどう教えるかが、問題となってくる。本稿では、日本語教育において、接頭辞「お」をどのように扱うとより学習しやすくなるのかを踏まえながら、接頭辞「お」の持つ用法分類を検討した。先行研究より接頭辞「お」は、一般的な敬語分類において、「尊敬語」「謙譲語」「美化語」に関連していることがわかっているが、実際の現場においては、「美化語」ではなく、「丁寧語」という解釈もある。このような扱いについて、敬語の5分類にこだわらず、接頭辞「お」の用法として学習者に説明するという立場から、「おかばん」などの語を代表とする[敬意の「お」]、「お菓子」などの語を代表とする[丁寧の「お」]、「おやつ」などの語を代表とする[名詞化した「お」]という三つの用法に分類するという仮説を提案し、それらについての検証方法を考察した。
著者
柳本 武美 Takemi YANAGIMOTO
出版者
総合研究大学院大学教育研究交流センター
雑誌
科学における社会リテラシー2;総合研究大学院大学湘南レクチャー(2004)講義録
巻号頁・発行日
pp.123-141, 2005-02-28

第Ⅰ部 科学原論 第6章 質の高い科学的証拠とその利用 柳本 武美[総合研究大学院大学統計科学専攻教授/統計数理研究所]
著者
佐藤公則 鹿嶋 雅之 中山 茂
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.112(2005-CVIM-151), pp.63-68, 2005-11-17

模造や改変が困難などの理由から、バイオメトリクス個人認証の研究がなされている。その生体的特徴情報とし ては、正面顔、目や網膜、最近では、手のひらの静脈の模様などが多く利用されている。本研究では、肉体的な特徴の-つである、横顔中の耳画像に注目する。耳の形も万人不同で、耳の長さおよび幅は16歳前後から安定期にはいり、形状が変化しにくい。また、表情や体調の変化などにも変化しない。本稿では、耳画像を利用した個人認証の研究を3つの手法で行なったので、それらを紹介することとする。
著者
白松 俊 池田 雄斗 後藤 誉昌 成瀬 雅人 伊藤 孝行
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2016-ICS-185, no.12, pp.1-7, 2016-12-06

大規模な合意形成やオープンガバメントを実現する上で,Web 上での議論は大きな可能性を秘めている.しかし,多数の参加者による議論内容を把握することは困難であり,未だ技術的な課題は多い.本研究では特に,多数の参加者が Web 上で議論する際,混乱することなく合意形成に至るために必要なファシリテーション機構の自動化を目指す.具体的には,(1) Web 議論システム COLLAGREE を用いた社会実験により収集した議論コーパスを分析し,ファシリテータエージェントの発話生成機構が満たすべき要件を検討する.また,(2) 共創的に市民が協働するプロジェクトを想定し,プロジェクトファシリテーションの観点から満たすべき要件を検討する.さらに,(3) 議会の議事録等を Web 議論の材料として用いる上で,満たすべき要件を検討する.
著者
平部裕子 荒川豊 安本慶一
雑誌
マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.6, pp.77-79, 2013-11-27

スマートフォンやタブレット端末の普及により,タッチ操作はユーザの間で共通の技術となっている.そこで著者らは,このタッチ操作を新たなユーザコンテキストの一つとして着目している.タッチ操作というコンテキストを用いることで,将来的にユーザの感情やスキルといったより取得が難しいとされるユーザコンテキストを抽出できると考えている.本稿では,Android 端末におけるタッチ操作ログを,全てのアプリケーションから横断的に取得し,その操作を分析 (分類),可視化するシステム TouchAnalyzer に関する報告を行う.
著者
樋口 雄彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.3-31, 2006-01-31

近代化を目指し幕府によって進められた軍制改革は維新により頓挫するが、ある部分については後身である静岡藩に継承された。士官教育のための学校設立という課題が、沼津兵学校として静岡藩で結実したのは、まさに幕府軍制改革の延長上に生まれた成果であった。その一方、軍制のみならず家臣団そのものの大規模な再編を伴った新藩の誕生は、幕府が最後まで解決できなかった大きな矛盾である寄合・小普請という無役の旗本・御家人の整理を前提になされなければならなかった。静岡藩の当初の目論見は、家臣数を五〇〇〇人程度にスリム化し、なおかつ兵士は土着・自活させるというものであった。しかし、必要な人材だけを精選し家臣として残すという、新藩にとってのみ都合のよい改革は不可能であった。実際には無禄覚悟の移住希望者が多く、家臣数を抑えることはできなかった。移住者全員に最低限の扶持米を支給することとし、勤番組という名の新たな無役者集団が編成されたのである。静岡藩の勤番組は幕府時代の寄合・小普請とほぼ同じものと見なすこともできる。しかし、すでに幕末段階において寄合・小普請制度には数次にわたり改革の手が加えられ、変化が生じていた。本稿では、主として一人の旗本が残した史料によったため、彼の履歴に沿って具体的に言えば、小普請支配組→軍艦奉行支配組→海軍奉行並支配組→留守居支配組→御用人支配組といった流れになる。もちろん、彼とは違う小普請のその後のコースには、講武所奉行支配組、陸軍奉行並支配組などがあった。静岡藩勤番組はこのような過程の果てに誕生したのである。小普請改編は、文久期の陸海軍創設から幕府瓦解前までは、軍備拡張の一環として推進された。そのねらいは、無役・非勤者を再教育・再訓練し、その中からできるだけ実戦に役立つ人材を確保しようというものであった。鳥羽・伏見敗戦後から駿河移住までの間は、軍事目的というよりも徳川家の再生に向けた取り組みの一環であった。従来からの小普請に加え、廃止された役職からの膨大な転入者の受け皿になったほか、逆に朝臣になる者や帰農・帰商を希望する者を切り離すための作業もこの部署が行った。このような系譜の上にできあがった静岡藩の勤番組は、決してかつての寄合・小普請制度ではなかった。勤番組には旧高三〇〇〇石以上の一等、御目見以上の二等、以下の三等といった等級が設けられ、支給される扶持米も旧高に対応し多寡が決定されていたが、上に大きく下に小さく削られた結果、全体としては低レベルで平準化されていた。藩の官僚制度は役職とそれに対応した俸金にもとづく序列が基本となっており、幕府時代の身分・格式はほぼ解消された形になっていた。負の遺産たる無役家臣集団は、静岡藩でも温存されたが、在勤(役職者)と非勤(無役者)という二分は、幕府時代に比べるとより流動性の高いものとなっていたはずである。能力さえあれば職務に就くことができる可能性を文武の学校(静岡学問所・沼津兵学校)への進学が保証したからである。勤番組という処遇は、原理上、越えられない壁ではなくなっていた。ただし、藩が存続したわずかな期間ではそれを実証することはできなかったが。
著者
田中 美栄子 Mieko TANAKA
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
非線形現象の数理
巻号頁・発行日
pp.51-58, 1997-03

田中美栄子[椙山女学園大学生活科学部生活社会科学科]
著者
板倉 則衣
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.42, pp.123-167, 2010-09-30

伊勢神宮は、天皇の即位ごとに天皇の皇女(内親王)または女王が選ばれ、伊勢神宮に奉仕した。こうした斎宮制度は、天武天皇の大来皇女がはじまりとされ、中断される時期はあるが、後醍醐天皇の祥子内親王までの六六一年間続けられた。
著者
宮腰 均 ミヤコシ ヒトシ Hitoshi MIYAKOSHI
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.48-56, 2013-06-30

ヒトデオキシウリジントリホスファターゼ(dUTPase)阻害剤は5-フルオロウラシルをベースとした化学療法との併用剤として現在の化学療法の治療効果を改善できる可能性がある。著者はdUTPase 阻害剤の開発を目的にウラシル誘導体のSAR 研究を行った。dUTPase を強く阻害できる骨格としてN-カルボニルピロリジンまたはN-スルホニルピロリジン構造を有するウラシル誘導体及び1,2,3-トリアゾール構造を有するウラシル誘導体を見出した。その中で、化合物14cは非常に強いヒトdUTPase 阻害活性(IC50 = 0.067 M)且つ良好な薬物動態プロファイルを有しており、in vitro においてはHeLa S3 細胞に対し、5-フルオロ-2’-デオキシウリジンの細胞増殖抑制効果(EC50 = 0.07 M)を、またin vivo においてはMX-1 細胞に対し、5-フルオロウラシルの抗腫瘍効果を劇的に増強した。また著者は化合物8a とヒトdUTPase との共結晶構造解析を行い、新規dUTPase 阻害剤のウラシル環と末端ベンゼンがそれぞれウラシルポケットと疎水性ポケットと相互作用し、且つスタッキングし安定化することでdUTPase を阻害していることを明らかにした。これらのデータから、見出した化合物14c は臨床においても5-フルオロウラシルのようなチミジレートシンターゼ阻害剤の治療効果を劇的に改善することが期待される。