著者
伊藤 知義
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル = Chuo Law Journal (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.47-78, 2022-03-31

The paper analyzes three recent "Anti LGBT Laws" in Hungary. lt focuses on their contents and the domestic reaction to harsh critiques by the EU headquarters in Brussels. Tue first statute makes it impossible for transgender or intersex people to legally change genders. The second item is the ninth amendment to the Constitution. lt says, "The mother is a woman, the father a man," thus effectively banning same-sex couples from adopting children. lt further declares that the state protects identification according to a child' s gender at birth. The third law imposes stricter actions against pedophile offenders and amends eleven child protection laws. Tue additions prohibit adults from facilitating access to pornography by people under the age of 18. They also prohibit adults from promoting or displaying (visualizing) deviations from the identity of the sex of birth, gender-change, and homosexuality to those under 18. The European Commission has condemned the laws as "anti-LGBT or homophobic" impairments of the fundamental human rights of LGBT people. The Hungarian government on the other hand describes them as "anti-pedophilia" or "child protection statutes that have no relation to the rights of adult LGBT people. Liberal segments of Hungarian society have echoed the Commission's criticisms. Conservatives have responded by branding Brussels as an arrogant colonialist infringing Hungarian sovereignty. They make the following arguments: The acts conform with the EU Charter of Fundamental Rights; LGBT people are not discriminated against in present-day Hungary; the essence of the laws is curbing pedophiliac actions; promotion of homosexuality is harming children; LGBT activists are not protecting minorities but rather attacking the majority. Hungarian Prime Minister Viktor Orban and his allies claim that Western Europe has abandoned real "European Values," which they say are based on Christianity and family. They contend that only Central and Eastern Europe maintain those values now. These two elements, they insist are among the basic values in the Hungarian Constitution of 2011, which they were responsible for creating.
著者
山口 豊 Yutaka YAMAGUCHI
雑誌
学校教育センター紀要 = Bulletin of School Education Center (ISSN:24353396)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.122-129, 2021-03-31

若年層を中心に同意・承認・確認を行う表現形式に,跳ね上げイントネーションを伴う「~くない?」というのがある。本来は形容詞型の活用を持つ語での使用であったが,形容詞型に限らず,動詞,名詞を前接することがあることが先行研究で報告されている。また,打消し語を前接して原因理由を述べる表現として「くて」という言い方も若年層を中心に見られるようである。そこでその実態についてアンケートを用いてそれぞれ前接する語の種類について調査するとともにそのような表現を用いることの要因について考察した。その結果,「くない?」が形容詞,動詞,形容動詞,助動詞,名詞,接尾語を前接とするのに対し,「くて」に前接するのは形容詞,動詞,形容動詞,助動詞と,「くない?」に比べて前接する品詞が限られていることが確認できた。
著者
西口 正隆
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature, Archival Studies (ISSN:24363340)
巻号頁・発行日
vol.52, no.17, pp.43-61, 2021-03-29

本稿は、土浦藩土屋家を事例に、大名家が所持する刀剣の管理方法や管理担当者、管理 記録作成の意義を検討するものである。これまで美術史以外の観点から分析されることが 少なかったが刀剣であるが、武器や鑑賞品としてのみならず、贈答品としても重宝された 代物であり、その贈答経緯や管理体制を分析することは重要である。そこで本稿では、土 屋家の腰物帳(刀剣台帳)を分析し、刀剣管理体制や管理者の職掌、刀剣の移動・移管経緯、 記録作成の特徴と意義の解明を試みた。その結果、①土屋家の刀剣は小納戸方道具掛が取 り扱い実務を行い、藩の上層役人である用人が統括していたこと、②腰物帳の作成と刀剣 管理は、代替わりを見据えて行われていたこと、③刀剣の主な移動契機は、α贈答・譲渡、 β姻戚・養子入りによる持参、γ当主・親類の持出しであり、α・βが約半数を占めること、 ④管理時には既存の腰物帳に追記・削除を繰り返すことで刀剣の所在や伝来を受け継いで いたこと、が明らかになった。 In this paper, we examined the significance of the management practice of a sword, the management person in charge and the management record making. Japanese swords were rarely analyzed from the angle besides the art history up to now. But it won't be only as a weapon and enjoyment items, and it's important to be the something who also came in handy as presents and analyze the present process and control system. So we analyzed Japanese swords ledger of Tsuchiya family, and elucidated a control system of swords, administrator's work, movement of swords, the transfer longitude and latitude, the feature of the record making and the significance. As a result, we elucidated the following 4 points. ①"Konando kata dougukakari" treated Japanese swords of Tsuchiya family, "Yonin" supervised it. ②Making of a ledger and Japanese swords management contemplated and did a head of a family change. ③Main movement opportunity of Japanese swords is the following three points:αpresent and transfer, βbringing by inlaw and an adopted child arrive, bringing by a head of a family and a relative. Among these β accounts for about half. ④Addition and elimination were repeated in a ledger of existence and existence of Japanese swords and introduction were inherited.
著者
齋須 直人 ザハーロフ ヴラジーミル
出版者
名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター
雑誌
Artes MUNDI = Artes MUNDI (ISSN:24321125)
巻号頁・発行日
no.8, pp.60-76, 2023-03-31

講演 ヴラジーミル・ザハーロフ「 人間の中の人間と小説の中の人間」エッセイ ヴラジーミル・ザハーロフ「 ドストエフスキーの偉大な五書」Доклад: В.Н. Захаров «Человек в человеке и человек в романе»Эссе: В.Н. Захаров «Великое пятикнижие Достоевского»
著者
小泉 直美
出版者
梅花女子大学・大学院児童文学会
雑誌
梅花児童文学 = The Baika Journal of Children's Literature (ISSN:13403192)
巻号頁・発行日
no.30, pp.26-39, 2023-03-15

平成期(1989-2019)の「ヘンゼルとグレーテル」の邦訳は現在106 話確認している。それらを分析すると、収録されている形態に変化が生じていることが判明する。昭和期には児童向け雑誌に多く収録されていたものが、平成期には雑誌での収録は激減し、読み聞かせ物語集への収録が増える。そこでは話が短縮され、子どもたちが鴨(家鴨)に救助される場面では、グレーテルの的確な判断を示す言葉が削除されている。女の子の賢さが描かれていないのである。一方、話は短縮されても「お菓子の家」は昭和期よりも華やかに描かれ強調されている。あたかもこの話は「お菓子の家」の話であるかのように、視覚的表現で読者に印象づけているのである。また原典では子どもたちが帰宅したとき母親は死亡しているが、平成期には「家出する」「実家に戻る」「父親に追い出される」という表現が出現する。子どもと両親との関係だけでなく、夫婦の在り方が児童書の中に組み入れられているのである。さらにパロディ版も出現する。平成期は昭和期からの読書推進活動が実を結んだ時代である。さまざまな方法で読書への興味を持たせようとしたことが読み取れる。
著者
飯野 守
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 = Information and Communication Studies (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.29-44, 2009-01-01

This article discusses the prominent cases of the federal courts of the United States in which the main issue is how parody is treated under U.S. copyright law. In the U.S., the defense of fair use is thought necessary to fulfill the purpose of protecting copyright "[t]o promote the Progress of Science and useful Arts," and a new work that uses the elements of the original work may weigh in favor of fair use if it is sufficiently "transformative." The United States Supreme Court defines parody as a derivative work which uses "some elements of a prior author's composition to create a new one that, at least in part, comments on that author's works," and the Supreme Court treats the parody work which is transformative as fair. The point is, parody that is sufficiently "transformative" is ategorized as a kind of comment, or a creative work, and its use of prior work is fair in case law of the United States. This article points out that the above point of view is very useful when we consider Japanese copyright law, especially when copyright infringement by parody is at issue.
著者
関沢 まゆみ
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.191, pp.91-136, 2015-02-27

1960年代以降,高度経済成長期(1955-1973)をへて,列島各地では土葬から火葬へと葬法が変化した。その後も1990年代までは旧来の葬儀を伝承し,比較的長く土葬が行われてきていた地域もあったが,それらも2000年以降,急速に火葬へと変化した。本論ではそれらの地域における火葬の普及とそれに伴う葬送墓制の変化について現地確認と分析とを試みるものである。論点は以下の通りである。第1,火葬化が民俗学にもたらしたのは「遺骨葬」と「遺骸葬」という2つの概念設定である。火葬化が全国規模で進んだ近年の葬送の儀式次第の中での火葬の位置には,A「通夜→葬儀・告別式→火葬」タイプと,B「通夜→火葬→葬儀・告別式」タイプの2つがみられる。Aは「遺骸葬」,Bは「遺骨葬」と呼ぶべき方式である。比較的長く土葬が行われてきていた地域,たとえば近畿地方の滋賀県や関東地方の栃木県などでは,葬儀で引導を渡して殻にしてから火葬をするというAタイプが多く,東北地方の秋田県や九州地方の熊本県などでは先に火葬をしてから葬儀を行うというBタイプが多い。第2,Bタイプの「遺骨葬」の受容は昭和30年代の東北地方や昭和50年代の九州地方等の事例があるが,注目されるのはいずれも土葬の頃と同じように墓地への野辺送りや霊魂送りの習俗が継承されていたという点である。しかし,2000年代以降のもう一つの大変化,「自宅葬」から「ホール葬」へという葬儀の場所の変化とともにそれらは消滅していった。第3,両墓制は民俗学が長年研究対象としてきた習俗であるが,土葬から火葬へと変化する中で消滅していきつつある。そして死穢忌避観念の希薄化が進み,集落近くや寺や従来の埋葬墓地などへ新たな石塔墓地を造成する動きが活発になっている。これまで無石塔墓制であった集落にも初めて石塔墓地造成がなされている。火葬が石塔その他の納骨施設を必須としたのである。第4,近代以降,旧来の極端な死穢忌避観念が希薄化し喪失へと向かっている動向が注目されているが,それを一気に加速させているのがこの土葬から火葬への変化といえる。旧来の土葬や野辺送りがなくなり,死穢忌避観念が希薄化もしくは喪失してきているのが2010年代の葬送の特徴である。
著者
遠藤 薫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.118-121, 2016-01-15

いま「カワイイ」文化に世界が注目している.なぜ,「カワイイ」文化に人びとは惹きつけられるのか.「カワイイ」といった感性的価値は,単なる表層的な感覚,社会や人生に重大な意味をもたない残余的な事柄と扱われがちである.しかし,本稿では,日本の「カワイイ」文化の系譜をたどることによって,それが通時的不変性と経時的可変性性の双方によって構成されていること,およびその本質が弱者や対抗者の包摂と異文化間のハイブリッドにあることを明らかにし,グローバリゼーション時代におけるその社会的意義について考察する.
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-26, 2015-03-13

近代以降の日本社会は「女同士の親密な関係」「女を愛する女」に対してどのような意味を与えてきたのだろうか。「女性同性愛」言説の変容をたどる研究成果を「性欲」の視点から整理することが本論文の目的である。ここで「性欲」の視点とは、大正期に定着してから現在まで様々な仕方で構築されてきた「性欲」という領域が、女性同性愛に関する言説をどのように枠づけてきたのか、反対に、女性同性愛に関する言説が「性欲」をどのように枠づけてきたのか、という視点のことをいう。したがって、本論文が注目するのは、「性欲」が女同士の親密性をめぐる経験や理解の仕方に関わっていることを示し得ているような研究成果である。この「性欲」の視点を軸にして、「女性同性愛」言説をめぐる歴史研究の現在における到達点と今後の課題を明らかにしたい。
著者
井原 今朝男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.121, pp.1-42, 2005-03-25

本稿は、あらたに発見された長野市の守田神社所蔵の新史料『鉄炮之大事』とセットで伝来した『南蛮流秘伝一流』の史料を翻刻・紹介するとともに、中世における技術と呪術の相関関係を考察したものである。第一に、『鉄炮之大事』は、天正十九年から、文禄三年、文禄五年、慶長十年、元和元年までの合計十五点の文書群である。これまで最古とされる永禄・天正期の火薬調合次第とほぼ同時代のものから、文禄・慶長・元和という江戸初期への移行期までの変遷を示す史料としては、稀有な史料群である。しかも、これまで知られている大名家と契約をとりかわした炮術師の炮術秘伝書よりも古い史料群であり、民間の地方寺社に相伝された修験者の鉄炮技術書としては、最古ではじめての文書群である。第二に、『南蛮流秘伝一流』は『鉄炮之大事』とセットで相伝されたもので、その内容は南蛮流炮術の伝書ではなく、戦傷者などの治療技術を記載した医書である。鉄炮の技術と医術とがセットで相伝・普及されたことが判明した。傷の治療法として縫合術や外科手術法が相伝されており、内容的にポルトガル医学だけではなく、室町期に日本で独自に発達した金瘡医学の要素が強く、両者の混在を指摘した。第三に、『鉄炮之大事』『南蛮流秘伝一流』には、火薬調合や膏薬製造など技術的薬学的知識が、呪法や作法によって神秘化・儀礼化され、呪術的性格をあわせもっていた。実践的戦闘法として活用された戦国期に近い天正・文禄年間ほど、技術的要素が濃厚であり、慶長・元和年間の近世社会になるほど、呪術的性格を強化しているという逆転現象を指摘した。
著者
岡田 精一
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.85-106, 1990