著者
山岡 一平
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.83-89, 2011-04-10
参考文献数
24

麻酔薬は体温の恒常性を破綻させ, 体温低下をもたらす。手術時の低体温は種々の合併症とも関連し, 予防策の一環にアミノ酸が混和された輸液製剤が投与される。ラットを用いた本研究では, 麻酔状態でアミノ酸液を持続静脈内投与した場合, 1) 覚醒下に比べて血中インスリン濃度と翻訳開始因子のリン酸化の度合いを著しく上昇させて骨格筋のタンパク質合成を刺激すること, 2) このインスリン高値が骨格筋タンパク質合成, エネルギー消費と腹腔内温度の連関上昇に寄与することを明らかにした。また, アミノ酸投与により筋原線維タンパク質の分解が亢進し, タンパク質代謝回転の向上が体温制御に深く関わることを傍証した。また, 体温保持には分枝鎖アミノ酸群が必要であり, なかでもイソロイシンは血糖調節やエネルギー代謝制御能を有することを示した。これとは別に, 食餌タンパク質が, 深部体温の概日変動の形成に深く関わり, 活動期と非活動期で独自の調節系により緩衝していることを見出した。これらの知見は重要な生命兆候である体温の制御の一端をアミノ酸が負うことを示したものである。
著者
山下 裕司 川崎 由明 坂本 一民
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理 (ISSN:24328731)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.71-75, 2018-03-11 (Released:2019-12-26)

界面活性剤は、化粧品を構成する化学物質の1 つであり、化粧品において主に洗浄、乳化、可溶化を目的に用いられる。化粧品のように不特定多数の人が長期間にわたって使用する場合、その安全性は製品に訴求される最も重要な要素である。現在、既定の試験法によって化粧品原料と製剤の安全性が評価され、用途に適した界面活性剤が利用されるが、微妙な有害作用や副次的な皮膚への影響など、従来の試験法では予知できない可能性がある。本稿では、軽微な皮膚ダメージの1 つとして角層細胞間脂質(SCL)構造の乱れに焦点を当て、電子スピン共鳴(ESR)法より得られたオーダーパラメーター(S)と皮膚刺激、および皮膚バリア機能との関係を説明する。
著者
高須 久 湯本 繁子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.381, 1961 (Released:2014-08-29)

界面活性剤と化粧クリーム及び軟膏基剤 近時,化粧品,概要医藥品等による皮膚障害が非常に多くなつて来た.これ等化粧品及び市販外用医藥品は比較的医学知識の少ない人達によつて使用されるものであるが,又一方医家の指示の下に使用される軟膏剤に於いても必ずしも無刺戟であると断定し切れない.これ等について後述する様な理由からその基剤成分について化粧クリーム同様,今一度の檢討を要するのではないか.筆者の一人は化粧品技術にたずさわつているものであるが,刺戟作用という面に於いて共通の軟膏基剤を含めこの問題を取り上げて行きたいと思う.軟膏基剤については古来色々な分類方法が云われて来たが,現在一番常識的に我國で認められているのは小堀等によるもので,1)油脂性基剤,2)乳剤性基剤,3)水溶性基剤,4)懸濁性基剤の4つに大別される.この内乳剤性軟膏は一般に吸水性,浸透性という面ですぐれた作用を持つが,樋口等,土肥等は刺戟性という面に於いて劣るのではないかと報告している.又,化粧クリームについては,その皮膚障害に関する報告が多いが,その原因として明確にされている事が非常に少ない.中村の統計によると,化粧クリーム中特に高率の皮膚障害を起しているものはいわゆる藥効美白クリームと称せられているもので,次に多いものがコールドクリーム系の油分の多いものである.佐野等の統計によつても特種成分の混入はその刺戟性を増している.その様にこれ等特種成分の混入されているものは皮膚障害をなくす事は無理であるし,当然それ等は化粧品ではなく医藥品として用いるべきである.しかし一般の化粧クリームではそれが日常反復し長期に亘つて使用されるものである爲,たとえそれが健康な皮膚を対象とするものであつても軟膏基剤と同じく可及的に無刺戟でなければならない.しからばそれ等化粧品の皮膚障害の原因として解明されているものはと云えば皆無に近く,中村は藥効クリームは別として一般のクリームについては化粧品原料の粗悪によるものではなく,原因のほとんどは皮膚側の感受性にあると云つている.しかし化粧クリームは軟膏基剤と異なりその成分に欠くべからざるもの,即ち香料がある.例えばその一例としてベルロック皮膚炎は,その原因がベルガモット油中のテルペン類又はそれに類した精油の作用によるものと云われている.又一般に化粧品がその原因とされているRiehl氏黒皮症についても種々の見方がある.事実,化粧品に用いられる香料の成分中には多くの刺戟誘発物質が含まれているし,それ等に関して古来多くの研究が爲されているが,これ等に関する文献考案は外池による香料と色素沈着を主題とした研究報文中になされているのでここに於いてはふれない.この様にこれ等香料その他化粧品の多種多様に亘る成分中,障害の真の原因を探索する事は容易な業ではない.しかし比較的処方の單純な軟膏基剤に於いてすらその剤型(油脂性,乳剤性)の差異によつて刺戟性の多少が出る事は重大な意味を持つてくる.土肥,宮﨑の言及しているごとく界面活性剤が問題になるのではないか.即ちそれ等乳剤性軟膏と化粧クリームと共通した成分の再檢討,言いかえれば乳剤性軟膏が刺戟が多いという問題である.この基剤は舊来の基剤と比較して内容成分としての油脂には大差なく,その顯著な差異は界面活
著者
小池 ユリ子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.181-190, 1992

本稿は平成4年度科学技術週間行事,科学技術情報講演会の再録である。テレビのニュースキャスターとして過したこの4年間の世界の激動を,ニュースを伝える側での様々なエピソードを披露しながら述べた。またソ連崩壊後の世界秩序の再構成に向けて始まった様々な動きを,演者の専門分野であるアラブ,イスラム地域を中心に自身の予見も含めて述べている。最後に,今世紀初めの新聞記事「二十世紀の予言」を引きながら,21世紀に向かってより高い望みと豊かな発想を持ちたいと希望を述べた。
著者
黒田 敏数
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.34-42, 2021-09-30 (Released:2021-12-14)
参考文献数
19

Operant conditioning has not been well adapted to social behavior despite a growing interest among behavior analysts. This is due in part to technological limitations in measuring social behavior, especially in real time. This paper presents a summary of three of the present author’s attempts to adapt computer vision technologies to the study of social operant behavior of zebrafish (Danio rerio). Experiment 1 examined whether the location of a single zebrafish in a three-dimensional (3D) space could be tracked in real time. In Experiment 2, locations of two zebrafish were tracked simultaneously. A transparent partition was placed between the two fish to aid in their identification. A food reinforcer was delivered when the two fish approached one another across the partition. Experiment 3 examined whether it is possible to track multiple fish without such a partition. Results of these three experiments were promising, suggesting that computer vision can be useful in the study of social operant behavior.
著者
国里 愛彦
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.50-53, 2021-09-30 (Released:2021-12-14)
参考文献数
12

Computational psychiatry is an interdisciplinary field that applies computational approaches to the research of mental disorders. The four types of generative models used in computational psychiatry and the benefits of using generative models were explained. As an example of computational psychiatry research, a latent cause model in the return of fear was explained. Latent causal models are generative models of the process by which organisms infer latent causes from observed data, and can explain fear conditioning. As the future challenges in computational psychiatry, the making open of data, analysis codes, and materials and methods for accumulating knowledge about computational psychiatry were discussed.
著者
藤井 秀樹
出版者
一般社団法人 日本高圧力技術協会
雑誌
圧力技術 (ISSN:03870154)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.154-161, 2004 (Released:2004-09-15)
参考文献数
5

Activities of Cryogenic Materials Working Group (Task 10) in the WE-NET program are introduced with emphasizing on mechanical properties of metallic structural materials used in liquid hydrogen and compressed gaseous hydrogen. Regarding the evaluation of properties in liquid hydrogen, mechanical tests were conducted mainly using the newly designed and installed facilities for mechanical testing in liquid hydrogen. Austenitic stainless steel plates of 5mm in thickness and their welds processed with TIG, MIG and FSW showed excellent mechanical properties at cryogenic temperatures, while the thicker weld metals processed with multi-layer deposition sometimes exhibited lower toughness in cryogenic circumstances. Regarding gaseous hydrogen, SUS304L showed clear hydrogen environmental embrittlement (HEE) even at room temperature, while SUS316L showed no HEE at room temperature although some ductility decrease was recognized at low temperatures. All kinds of steels tested, including plain steel, low-alloyed steels and stainless steels, exhibited considerable hydrogen absorption when the specimens were exposed at 54°C for 1000h in compressed hydrogen gas at 27MPa pressure. In case of stainless steels, plastic deformation at room temperature enhanced this tendency.
著者
佐藤 幸徳
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.315-319, 2016

高島屋新宿店で2015年5月28日から6月2日までの6日間,「研究心と豊かな発想で生まれた,大学のおいしい成果を一堂に」と謳われた第8回「大学は美味しい!!」フェアが,NPO法人「プロジェクト88」(代表理事高橋菜里氏)主催のもとに開催され,全国大学34校が参加した。秋田県立大学も純米吟醸「究(きわむ)」を出展した。林農水大臣,石破地方創生大臣,安倍昭恵首相夫人他も臨席され好評であった。これまで大学発ブランドの日本酒を比較した報告は無かったので調査し読者の参考に資する。
出版者
[製作者不明]
巻号頁・発行日
0000
著者
持田 誠 百瀬 邦和
出版者
浦幌町立博物館
雑誌
浦幌町立博物館紀要
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-37, 2020-03

ウズラ Coturnix japonica はキジ科ウズラ属に分類される小型の草原性鳥類である。もともと伝統的な狩猟鳥だったが、明治中期から家禽としての飼養「養鶉」がはじまり、一般には鶏卵と並んで食用卵として広く知られている(奥山 2005)。しかし、野生のウズラは、全国的には1960年代から狩猟シーズンの捕獲羽数が減少傾向にあり、特に1980年代に激減した(木村 1991)。一方、北海道での最多捕獲年代は1960年代と、本州以南よりも遅かったが、やはり以後同じような減少傾向にあるとされる(奥山 2004)。筆者のうち百瀬は、2019年夏に、浦幌町の静内川沿いでウズラに遭遇した。浦幌での確認事例は近年きわめて少ないので、記録として報告する。
著者
土井 美枝子
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_26-39, 2010-12-10 (Released:2011-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

The aim of this paper is to examine the formation of university students’ environmental consciousness and behavior. A survey has been given to university students in Japan, China and Malaysia. Those university students’ consciousness and behavior toward the environment are divided into “Environmental consciousness and behavior in daily life” and “Consciousness and behavior to solve environmental issues.” Then, comparative analyses have been conducted. The following were the results: 1) Many of the students have concern for environmental problems and also possess thorough knowledge of them. 2) There is a gap between student’s “Environmental consciousness and behavior in daily life” and “Consciousness and behavior to solve environmental issues.” 3) Students’ consciousness and behavior for environmental problems are related to personal attributes and experiences.
著者
中丸 聖 谷村 裕嗣 宮本 真里 四十万谷 貴子 長野 奈央子 寺井 沙也加 槇村 馨 久米 典子 清原 隆宏
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.139-143, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1

2014年 1 月から2018年 6 月までの 4 年半に関西医科大学総合医療センターにおいて経験した10例の早期梅毒患者についてまとめるとともに,梅毒の最近の動向について考察した。当該地区においても梅毒患者は増えており,男性 6 例,女性 4 例とやや男性優位であった。風俗店に通う青壮年男性が多かったことは,全国的傾向に合致していた。男性同性愛者および HIV 重複感染例は皆無であった。 硬性下疳 3 例,丘疹性梅毒 2 例,梅毒性乾癬 1 例,膿疱性梅毒および扁平コンジローム 1 例,ばら疹 3 例と極めて多彩な臨床像を呈していた。ほぼ全例に対してアモキシシリン内服治療を選択し,ほぼ全例で STS 抗体価の速やかな低下とともに臨床的治癒が得られた。なお,今回は晩期梅毒を除いた集計とした。梅毒の多彩な臨床症状と梅毒血清反応の複雑な動きを十分理解することは皮膚科医の大きな責務であり,病院内において今後ますます主導的役割を果たすことが求められる。 (皮膚の科学,18 : 139-143, 2019)