著者
岩舘 康哉
出版者
岩手県農業研究センター
雑誌
岩手県農業研究センター研究報告 = Bulletin of the Iwate Agricultural Research Center (ISSN:13464035)
巻号頁・発行日
no.13, pp.69-159, 2014-03

2005年から2012年までの8年間にわたり,キュウリホモプシス根腐病の発生生態および防除法に関する一連の研究を行った。成果は次のとおりである。1. 病徴および発生実態 (1) 岩手県で本病は,2002年に県内58市町村のうち県南部の3市町で初発生が確認された。2012年には県内33市町村のうち県北沿岸部を除くほぼ全域にまたがる16市町村(2002年当時の市町村区分では29市町村)まで急激に発生地域が拡大した。本病の発生と連作年数の関係をみると,長期連作圃場だけでなく,新規作付圃場や作付5年以内の栽培歴の浅い圃場で発生する事例も多数認められた。本病による被害発生圃場における土壌消毒の実施割合は,2007年から2011年の平均で約40%であり,被害圃場の約60%では,土壌消毒を実施しないまま栽培が継続されていた。(2) 岩手県における主力の露地夏秋キュウリ圃場における本病の特徴的な病徴は,定植30日以降の収穫開始期前後から認められる萎凋症状と,根部での疑似微小菌核(Pseudomicrosclerotia)および偽子座(Pseudostromata)の形成であった。萎凋症状は,曇雨天後の晴天など宿主の水分ストレスが急に高くなる条件で発生が多かった。また,露地夏秋キュウリの場合,本病の被害は夏季高温年よりも夏季冷涼年に被害が大きくなるものと考えられた。(3) 圃場には本病類似の急性萎凋症状も同時に確認され,その原因は,1) キュウリ株の根群形成不良に起因するもの,2) 栽培・肥培管理に起因するもの,3) 病害虫によるものが認められた。病害虫によるものでは,キュウリモザイクウイルスとズッキーニ黄斑モザイクウイルスの重複感染,つる枯病,つる割病,疫病,ネコブセンチュウ害,黒点根腐病などであった。(4) 本研究中にキュウリ黒点根腐病が国内初確認された。本病の特徴は,地上部の萎凋と根部での子のう殻の形成であり,形態およびPCRによる同定の結果,病原菌はMonosporascus. cannonballusであることが明らかとなった。本病は自根キュウリでのみの発生確認であり,カボチャ台木を用いた接ぎ木栽培の場合は発生が認められなかった。
著者
志垣 賢太
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.E68-E73, 2004

高エネルギー原子核衝突実験による高温高密度パートン物質の探索に関して、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL) RHIC加速器における近年の実験的成果と現在進行中のプログラム、および欧州合同原子核研究機構(CERN) LHC加速器における次世代実験への取組みを紹介する。
出版者
秋田書店
巻号頁・発行日
no.1, 1990-12
著者
中村 仁 佐々木 厚子 相川 拓也 市原 優 田端 雅進
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.98, 2011

岩手県の栽培ウルシ林の衰退原因について紫紋羽病の関与が疑われている.日本では紫紋羽病の病原菌として知られる<I>Helicobasidium mompa</I>の他に,<I>H. brebissonii</I>が青森県に分布することから,当該ウルシ林で発生している紫紋羽病菌の種同定を行った.2009年および2010年10~11月に岩手県北部10ヶ所のウルシ林で採集した子実体60試料から得た分離菌株の形態観察を行い,一部菌株についてはrDNA ITS領域の塩基配列を決定した.また2011年5月にウルシ林3ヶ所で胞子形成している子実体を採集し,形態観察を行った.その結果,46菌株のうち32菌株(8ヶ所由来)が<I>H. mompa</I>,7菌株(3ヶ所由来)が<I>H. brebissonii</I>と同定された.<I>H. brebissonii</I>については青森県以外での初確認であり,本種は東北地方北部に分布していることが示された.残り7菌株(2ヶ所由来)については,上記2種とは異なっていた.本未同定菌は,酸性V-8ジュース寒天培地上では菌糸塊形成がまれで気中菌糸の少ない菌叢となり,オートミール寒天培地上では貧弱な菌叢生長を示すなど上記2種の培養菌叢と区別できた。子実体上では前担子器のない,2個の小柄を有する,湾曲した円筒状の担子器を形成し,担子胞子は無色,卵形~楕円形で,大きさは7.5-12.8 x 4.5-8 &micro;mであり,これら特徴は<I>H. brebissonii</I>とほぼ一致あるいはその範囲内であった.また,国内の他紫紋羽病菌との分子系統関係を類推するためrDNA ITS領域を用いた系統樹を作成した結果、<I>H. brebissonii</I>とは異なるクレードを形成した.<I>H. brebissonii</I>と近接した場所で発生している場合があり,生殖的な隔離が存在すると推察されたことから,本菌を国内既知種とは異なる種,<I>Helicobasidium</I> sp.と同定した.以上から,岩手県の栽培ウルシ林には,国内初確認の種を含む,<I>Helicobasidium</I>属3種が分布することが明らかになった.
著者
佐藤 豊三 小野 剛 田中 和明 服部 力
出版者
日本微生物資源学会
雑誌
日本微生物資源学会誌 = Microbial resources and systematics (ISSN:13424041)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.163-178, 2016-12

2011~2014年,小笠原諸島において採集した約300点の樹木等の罹病部や寄生生物から菌類を分離し,DNAバーコード塩基配列および形態により分類同定を行った結果,286菌株が124種に同定され161菌株が属まで同定された。これらのうち少なくとも37種は日本新産,20種・1亜種は小笠原新産であり,57菌種について延べ80種の新宿主が明らかとなった。新宿主には19種の小笠原諸島の固有種が含まれていた。一方,固有植物から分離された他の50菌株以上が37属に同定されたが,DNAバーコードを用いたBLAST検索などの結果では種まで特定できなかった。これらは新種の可能性も含めて分類学的所属を明らかにする必要がある。また,国内初確認13種および小笠原諸島新産菌1種は,熱帯・亜熱帯産の宿主から分離され,菌自体も熱帯・亜熱帯分布種であった。以上および既報から,小笠原諸島の菌類相には熱帯・亜熱帯要素が含まれていることが改めて認められた。
著者
岩間 俊太
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
no.70, pp.53-58, 2019-12

2017年6~8月,青森県つがる市のメロン栽培圃場1か所および五所川原市のキュウリ栽培圃場1か所において,根部の飴色~黒変腐敗を伴う萎凋・立ち枯れ症状の発生が確認された。被害株の根部の表皮内には直径0.1mm程度で黒色の微小菌核が多数形成されている場合もあれば変色腐敗のみの場合もあり,後者では室温で湿室状態に1週間程度保つことで微小菌核の形成が観察された。定法により病原菌を分離し,形態および生育温度特性を明らかにするとともに,培養した病原の土壌混和によるメロンおよびキュウリ苗への接種を行った。その結果,両作物に発生した症状は,Macrophomina phaseolinaによるメロンおよびキュウリ炭腐病であることが判明した。これらの病害は2001年に岡山県で国内初確認されているが,青森県での発生確認は本事例が初めてである。
著者
伊藤 太介 武田 一哉 板倉 文忠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.325, pp.59-64, 2001-09-21
参考文献数
10
被引用文献数
1

本報告では, ささやき声の音響特性と音声認識手法について述べる.データベースとして100名以上の話者が発生した6, 000文以上のささやき声, 通常発生, 顔画像を収録した.ささやき声と通常発声の比較では, 1)ケプストラム距離が有声音で4dB, 無声音で2dBであること, 2)ささやき声のスペクトルの傾きが通常発生に比べ緩やかであること, 3)1.5kHz以下のフォルマント周波数が通常発声に比べ高くなっていることが得られた.収録したささやき声から音響モデル(HMM)を学習し認識を行ったところ, 64%の単語正解精度が得られ, MLLRによる話者適応を用いた認識では, 単語正解精度が76%まで改善された.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1544, 2017-01-09

TBSテレビは2016年12月12日、同社が運営するニュース専門チャンネルの「TBSニュースバード」で放送したニュース番組の中からストレートニュースを厳選し、ストリーミング形式で配信するスマートフォン・タブレット向けのサービス「TBSニュースバードEverywhere」を開…
著者
宮城県教育委員会編
出版者
ぎょうせい
巻号頁・発行日
1975
著者
江村 義行
雑誌
情報と社会 = Communication & society
巻号頁・発行日
no.18, 2008-03-15

平成19 年のブルドックソース事件において東京地裁(6 月28 日), 東京高裁(7 月9 日), 最高裁(8 月7 日)は, 買収者出現後(=有事) に株主総会の特別決議を経て導入した敵対的企業買収防衛策(新株予約権を発行するもの) を肯定した。しかし, 防衛策に関する基礎理論研究が不足している。そこで本稿では, 新株予約権を用いた防衛策の可否を検討するため, 第一に法人が防衛策を行うことの可否, 第二に防衛策導入の決定機関, 第三に防衛策による株主の排除の可否について考察を行う。これにより以下のことが判明した。そもそも株式会社という法人が防衛策を行うことができるのか否かという問題については, 従来の敵対的企業買収に関する紛争事例(株式発行の場合) では, 法人が防衛策を行うこと自体, 否定的に理解されていた。しかし, 今日の敵対的企業買収に関する紛争事例(新株予約権発行の場合) は, ブルドックソース事件に代表されるように, 必ずしも防衛策を否定的に理解していない。濫用的買収者によって株式会社がその存廃に著しい影響を受けるときは, 自衛のために防衛策を導入及び発動することができると考えられる。そのような防衛策は株式会社という法人の意思に基づいて行われるものであり, その意思を形成する機関は株主総会である。防衛策を導入する際の決議要件は, 会社法上の少数株主の排除を可能とする他の規定との兼ね合いから, 買収者株主を排除する(持株比率を低下させる) こととなる防衛策の場合も特別決議が必要と考えられる。但し, 株主総会の特別決議により株主の同意を得て新株予約権を用いた防衛策を導入したとしても, 会社は濫用的買収者に対抗する場合に例外的に防衛策を行使するようにしなければならない。また, 株主総会は濫用的買収者の認定を正当に行う必要がある。会社は防衛策の発動にあたり買収者株主に経済的損失を与えてはならない。違反した場合は, 裁判所によって防衛策が株主平等原則違反及び不公正発行と判断されてしまう可能性を否定できない。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1618, pp.6-7, 2018-07-23

OTTを中心にスマホ向けの映像配信サービスが数多く拮抗している。そうしたオンデマンド型に加えて、NHKの常時同時配信が始まろうとしている。日本人のスマホ普及率は非常に高く、そこに映像を送ることで、特にテレビ離れが指摘されている若者層にもリーチでき…
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.593, pp.20-21, 2014-06-09

スマホ普及するも仕事への活用は進まず、本誌読者調査 ほかスマホ普及するも仕事への活用は進まず、本誌読者調査 スマートフォン(スマホ)を利用している土木関係者は以前より大きく増えたものの、仕事に活用している人の割合は依然として半数に満たないこ…
著者
栢森 良二
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.172-179, 2013-06-01 (Released:2015-02-25)
参考文献数
3

肘部尺骨神経障害 (ulnar neuropathy at the elbow: UNE) は手根管症候群についで頻度の高い絞扼障害である。同様に頻度の高いTh1神経根症, 手関節での尺骨管症候群との鑑別, あるいは神経根症を合併している二重挫滅症候群の診断には, 基本的な臨床所見が重要である。電気診断学はこれらの病歴や理学所見の延長線上にある。尺骨神経伝導のルーチン検査は, 健側と患側の尺骨神経を手関節, 肘下, 肘上で刺激して筋複合活動電位 (CMAP) と感覚神経活動電位 (SNAP) を導出して, これを比較することである。UNEでは患側SNAPは軸索変性の程度を反映して低振幅である。さらに肘下と肘上刺激によるCMAPの波形相違や, 肘分節間伝導遅延がある。上腕骨内上顆を挟んで4~6 cmほどの分節で, 5つの異なった主な病態がある。これを診断するために, 短分節刺激によるインチング法によって伝導遅延あるいは伝導ブロックの部位を特定する必要がある。