著者
渡邉 英博
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.89-105, 2013-09-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
120
被引用文献数
1

夜行性で雑食性の不完全変態昆虫であるワモンゴキブリ(Periplaneta americana)は高い匂い識別能力と匂い学習能力を備えた昆虫である。また,その実験学的な扱いやすさから過去四半世紀の間,嗅覚の神経機構を探る電気生理学研究や解剖学研究,行動実験に広く用いられてきた。ワモンゴキブリは二本の鞭状の長い触角の表面に存在する,三種類の形態学的に異なる嗅感覚子によって,外界の匂い分子を取得する。これらの嗅覚情報は一次嗅覚中枢である触角葉を構成する205個の糸球体の時空間的な応答パターンに符号化され,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で異種感覚情報や記憶情報と統合される。本稿ではワモンゴキブリの嗅覚情報処理機構について触角嗅感覚系での嗅覚受容から,触角葉での一般臭の匂い情報処理機構について報告する。続いて,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で,これらの匂い情報がどのように処理されているのかを,最近の解剖学研究を中心に紹介する。現在,昆虫を用いた嗅覚情報処理機構の研究は遺伝学を中心にモデル生物であるショウジョウバエを中心にミツバチ,カイコガなどで目覚ましい発展を遂げている。これら完全変態昆虫の嗅覚系とワモンゴキブリのような不完全変態昆虫の嗅覚系を比較し,相同点,相違点を見出すことにより,昆虫の脳進化を理解する一助になるだろう。
著者
館田 晶子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.87-107, 2005-03-15

本稿は、フランスにおいて外国人に認められる憲法上の権利のひとつである「通常の家族生活を営む権利」について、家族の再結合を中心に検討を加えるものである。フランスの憲法院は、1993年に移民法を審査した判決の中で、外国人に認められるいくつかの権利を憲法上の権利であると認定した。その中のひとつである「通常の家族生活を営む権利」は、従来からコンセイユ・デタなどでその権利性は認められていたものの、憲法院判決によって初めて権利が「憲法化」されたものである。これは外国人の私的および家族的生活を尊重すべきことを内容とするものであり、それを具体化する制度のひとつとして、「家族の再結合」が出入国管理法制に定められている。「家族の再結合」による入国および滞在は、その要件が緩和されることになるが、ただし、重婚の家族の場合などフランスの公の秩序に合致しないような家族形態の場合には入国および滞在が制限されることも、憲法院判決により認められるところとなった。また、不法入国のもととなる偽装結婚を排除するために、婚姻後一定期間の滞在資格取得を制限するなど、婚姻に対しても若干の制約が課されている。このような憲法院および行政の態度に対しては、公の秩序の維持を根拠に外国人の個人的権利を制限することの正当性が問題とされている。移民の受入国への統合という観点から、入国・滞在法制において個人の私生活を尊重することは、大きな意味を持つであろう。
著者
松田 央 Hiroshi MATSUDA
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.115-137, 2004-12-20

Friedrich Nietzsche (1844-1900), a German philosopher designates European Nihilism (der europaische Nihilismus) which is a radical character in the western occurrence, a spiritual movement in the long-range western history, according to Heideggerian interpretation. Nietzsche thinks that Christianity is the origin of European Nihilism and it created European moral values. The Christian morality was the highest value to the European traditional culture. However according to Nietzsche's view, the aim of the Christian morality, namely kingdom of God is not yet achieved and the European morality is never improved. Accordingly there appeared atheism that denies God's existence. Nietzsche talks of 'God's death' in "The Joyful Knowledge (Die frohliche Wissenschaft)", the number 125. Nietzsche denied the Christian God and developed Perspectivism, named the eternal recurrence to endure European Nihilism. He tried to conquer himself and experience the eternal joy which was the affirmation of his life. Moreover he created a new god, named the superman (Ubermensch) which is the subject of the conquest of the self, and proclaimed 'the God's death' to revive truly human beings. However we must notice that Nietzsche's thought of the superman has its source in Christian God-man thought.
著者
敦賀 健志
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-30, 2019-01-01 (Released:2020-01-15)
参考文献数
9

市販の電子部品を利用した簡易的な筋電計の製作方法と実際の計測結果および具体的な活用事例について紹介する.筋電位は非常に微弱なため電気的に増幅するアンプと,特定の周波数帯域の信号を抽出するためのフィルタが必要となる.本稿では機能を増幅に特化している計装アンプと,回路構成が非常に簡単なRCフィルタを採用して筋電計の製作を行った.実際の計測ではノイズの混入が見られたものの,筋電位の有無が十分に確認できる結果を得た.また,活用事例として製作した筋電計を筋電位スイッチとして利用を試みた.筋電位の有無によって電動モータのON/OFFを制御するプログラムを製作し,その実用性を確認することができた.
著者
白石 涼 佐藤 圭祐 千知岩 伸匡 吉田 貞夫 尾川 貴洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2021

<p>【目的】大腿骨近位部骨折患者を対象に,腹部Computed Tomography(CT)の大腰筋面積で推定した骨格筋量と機能的予後の関連を調査した。【方法】回復期病棟に入院した113 名を骨格筋量減少群と対照群に分け,患者背景,機能的予後を比較した。Functional Independence Measure(以下,FIM)利得を目的変数とした重回帰分析を行い,骨格筋量との関連性を検討した。【結果】平均年齢は83.5 ± 8.3 歳,男性35 名,女性78 名であった。骨格筋量減少群は56 名だった。骨格筋量減少群は対照群に比べ,高齢で,痩せており,入院時認知FIM,退院時FIM 合計,FIM 利得が有意に低かった。多変量解析で,骨格筋量減少とFIM 利得に有意な関連を認めた。【結論】大腿骨近位部骨折患者における大腰筋面積で推定した骨格筋量減少は,機能的予後不良と関連することが示唆された。</p>
著者
鈴木 登
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.34, pp.173-183, 1984