- 著者
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樽野 博幸
奥村 潔
石田 克
- 出版者
- 大阪市立自然史博物館
- 雑誌
- 大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
- 巻号頁・発行日
- vol.73, pp.37-58, 2019-03-31
ヤベオオツノジカ(Sinomegaceros yabei)は,オオツノジカ類の中でもアイルランド産のギガンテウスオオツノジカ(Megaloceros giganteus)と同等の体格を持つ大型種である.しかし,ヤベオオツノジカの完全な形をとどめた角化石は,これまでに1対しか発見されていない.この標本はオオツノジカ類としては小型のものであるが,それが本種の特徴と捉えられてきた.しかし,シカ類の角は年齢により大きくその形態を変えることはよく知られている.本稿では,現生のニホンジカとヘラジカでの研究例を参考に,日本各地から産出したヤベオオツノジカの成長に伴う角の形態変化について考察した.その結果,ヤベオオツノジカの角は,成長に伴い,眉枝や主幹掌状部が広く,主幹柱状部が太くなると共に,指状突起の本数が増え,最も体力が盛んな年齢では,かなり雄大な角を持つことが明らかになった.そして老齢の個体では,眉枝と主幹掌状部は狭くなり,指状突起は減少すること,主幹柱状部はやや細くなることが明らかになった.また,ヤベオオツノジカにおける主幹掌状部と眉枝の識別点についても論じた.そしてヤベオオツノジカの種の特徴を,角の形態に基づき再定義した.付録1および2では,大阪市立自然史博物館において復元・展示されている,熊石洞標本に基づく復元全身骨格と,生体復元像について,それらの基になった標本を示し,復元当時の見解に言及した.