著者
上久保 靖彦 足立 壯一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本申請では下記A・Bプロジェクトを連動させて ○p53非依存性細胞死・細胞周期停止誘導を可能とする抗腫瘍コンセンサス配列の探索とそのターゲッティング法の提唱 ○MTp53難治性造血器悪性腫瘍及び固形腫瘍(膵臓癌・食道癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)等制圧を目指す新規スーパーエンハンサー制御システムの確立を目的とした。A:人工転写因子ライブラリーを用いた抗腫瘍コンセンサスの同定 B:スーパーコンピュータシミュレーションによる創薬計算・スーパーエンハンサー制御低分子(FactorZ制御低分子)の同定とp53非依存性細胞増殖抑制メカニズムの解明A:ライブラリーより、MTp53難治性造血器悪性腫瘍(AML)と固形腫瘍(膵癌、大腸癌、MRT、Her2胃癌(Sci Rep. 2018)、悪性グリオブラストーマ、髄芽腫、神経芽細胞腫、CRPC-DNPC:外科的治療不応性AR-・NE-DN 前立腺癌)を効果的に抑制するいくつかのHIT-PI-Pを抽出し、そのバリデーションを行った。各種癌腫HIT-PI-P投与下でのアポトーシスアレイの施行し、各種癌腫で新規の腫瘍アキシスを同定した(Cancer Sci. 2018)。AMLのMRD(微少残存病変)を消失させるために、骨髄環境を制御可能なPI-Pを同定し、さらにそのメカニズムを解明した(Blood Adv. 2018)。B: 膵臓癌・大腸癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、Complex karyotype AML、骨肉腫、MRTにてスーパーエンハンサー制御低分子HITをそれぞれ複数個抽出した。またHIT低分子がターゲットする遺伝子を各々の癌腫より同定した。A,Bで対象とした癌腫におけるTCGC症例GSE解析を行い、悪性化のメカニズムに重要なOncogenic Profilingを完成した。
著者
大武 由之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.797-803, 1982-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
25

黒毛和種の去勢牛からの撓骨,〓骨および肋骨の各3点,食肉工場で豚枝肉から取り除いた上腕骨,大腿骨,肩甲骨,腰椎および肋骨の各3点,計24点の試料から,それぞれ骨髄脂質を抽出して試験に供した.試験した牛および豚の骨髄脂質は,ほとんど中性脂質から成っていた.牛骨髄脂質のおもな脂肪酸はC16:0,C16:1,C18:0およびC18:1で,とくにC18:1に富み,撓骨と〓骨のC18:0含量の少ないことが注目された.撓骨と〓骨との脂肪酸組成は類似していたが,肋骨は撓骨や〓骨に比べて,中性脂質ならびにリン脂質のいずれにおいてもC18:0が多くC18:1が少なかった.豚骨髄脂質のおもな脂肪酸はC16:0,C18:0,C18:1およびC18:2であって,中性脂質にあっても,リン脂質にあっても,解剖学的部位がちがっていても,それらの脂肪酸組域は比較的類似していた.概して,骨髄のリン脂質は中性脂質に比べてC16:1とC18:1が少なく,C20:3,C20:4,C22:5やC22:6などの多価不飽和脂肪酸が多かった.また,牛の骨髄脂質は豚の骨髄脂質よりもC16:1,,C18:1および飽和脂肪酸が多く,C16:0とC18:2が少なかった.牛骨髄のトリアシルグリセロール(TG)は,C16:0とC18:0は1-位置に多く結合し,C18:1は2-および3-位置に多く,C18:2は2-位置に多く存在していた.その結果,橈骨と〓骨とのTGの2-および3-位置は,90%近くが不飽和脂肪酸から成っていた.豚骨髄脂質ではC14:0,C16:0およびC16:1は,2-位置に多く結合し,一方C18:1は1-と3-位置に多く,C18:2もC18:1に似て1-と3-位置に多く存在していた.それらの結果,牛骨髄脂質とは対照的に,豚骨髄のTGでは2-位置は大部分飽和酸で占められ,3-位置は大部分不飽和酸で占められている.
著者
藤原 聡史 福井 康雄 伊達 慶一 齋坂 雄一 上月 章史 尾崎 和秀 中村 敏夫 志摩 泰生 西岡 豊
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.679-682, 2015-07-31 (Released:2015-10-31)
参考文献数
19

症例は84歳女性で高血圧症,関節リウマチ,逆流性食道炎がありcelecoxib,lansoprazoleなど内服中であった。発熱,下痢,血便が出現し,発症から17時間後に前医で腹膜刺激症状を指摘された。腹部単純CTで穿孔性腹膜炎が疑われ,当科に紹介された。腹部CTで結腸脾弯曲部からS状結腸にかけて壁外にair densityを伴う全周性の壁肥厚を認めた。虚血性腸炎による後腹膜穿通と診断し緊急手術を施行した。手術所見では下行結腸壁が菲薄化,穿孔しており,穿通部位を切除しハルトマン手術を施行した。病理組織学的検査でcollagenous colitisと診断された。celecoxib,lansoprazoleの内服を中止し,術後12ヵ月以後再燃なく外来経過観察中である。
著者
井上 薫
出版者
奈良大学文学部文化財学科
雑誌
文化財学報
巻号頁・発行日
no.3, pp.15-26, 1984-03

戒・定・慧の関係を仏典の経へ仏の説法を収録した書)律(仏が制定した修行規則を集めた書)論へ仏弟子や高僧が経典の内容を研究・解釈したところを記した書)の関係にあてはめると、定は経にあたり、戒は律に、慧は論に相当する。欽明天皇七年へ五三八)に仏教が百済から公的に伝わると、戒律も学ばれ、百済は律師を日本にたてまつりへ敏達天皇元年、五七二)、善信尼らは百済に行き戒律を修めへ用明天皇二年、五八七)、道光は唐から『四分律』を舶載しへ天武天皇六年、六七八)、『依四分律鋤撰録文」を著し、道融は唐の道宣の『四分律行事抄』を講義した。『四分律』は小乗戒へ自分だけ悟ればよいとする修行の方式で、大乗戒〔自分が悟るだけでなく、他人も悟らせることを理想とする修行方式〕に対する語)を内容とする四大戒律書へ『十調律』『四分律』『僧祇律』『五分律』)の一つで、後秦へ三八四~四一七)の仏陀耶舎・竺仏念らによって漢訳され、四〇巻本や六〇巻本などがある。大宝「僧尼令」の原典の一つに『四分律』が用いられていることが指摘されている。このように戒律は修得されていたが、戒律制度が不備で、三師へ授戒する戒和上・掲磨師・教授師各一人。掲磨は授戒や峨悔などの戒律に関する作法)、七証へ受戒を証明する僧七人)をそろえなければならないし、授戒の儀礼や結界登壇を行なう施設などを整えなければならなかった。天平五年(七三三)の遣唐使へ大使多治比広成、副使中臣名代)に従って入唐留学した栄叡・普照へともに興幅寺僧)・理鏡らは研究と戒師招請の任務を負ことになった。戒師招請は元興寺の隆尊が発案し、知太政官事の舎人親王に献策したことによると『東大寺要録』にみえるへ知太政官事は百官を統轄する官職。大宝令における太政大臣の任務規定が抽象的であったため設けられたという)。
著者
小川 正人
出版者
東京大学大学院教育学研究教育行政学研究室
雑誌
東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要 (ISSN:13421980)
巻号頁・発行日
no.16, pp.2-12, 1997-03

This paper tries to clarify a purpose and problems of the corporate study. In recent years, the policy of the teacher compensation is drawing attention as one of the means of carrying forward teacher abilities improvement and the school improvement in America, England and Japan. In this paper, first, it surveys the background where the problem of the teacher compansation surfaces as the policy problem in Japan. Second, it examines the problem of the JINNJIIN-system which has a big influence to fix a teacher compansation. Then, third, it puts the problems of the teacher compensation sysytem on the intcrvicw-survcv of the teacher-relation erouns.
著者
後藤 久貴 宮副 誠司 江崎 宏典 松本 武浩 八橋 弘 井上 長三 古賀 満明 矢野 右人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.701-703, 1999-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

症例は32歳,女性.発熱,両側季肋部痛を呈し来院,炎症所見以外に腹部エコー, CT等の画像検査では腹痛の原因を確認できなかったが,腹腔鏡検査にて肝周囲に典型的なviolin-string状の線維性癒着を認め,腹痛は,既往歴と併せ,クラミジア肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)によるものと診断した.癒着の切離にて腹痛は消失,診断,治療に腹腔鏡が有効であった.クラミジア感染症の増加に伴い,腹痛の原因疾患としての本症に対する認織は重要となると考え報告した.
著者
荒井 昌海 松尾 浩一郎 田口 知実 森田 英明
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.52-60, 2020-06-30 (Released:2020-07-23)
参考文献数
30

目的:今回われわれは,老人介護保健施設において,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理によって入所者の口腔環境が改善,維持されるか,日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT)を使用して,後ろ向きに検討した。 方法:2016年9月から2年間,某歯科医院による訪問歯科診療への同意が得られた介護保険施設の入居者と介護者を対象とした。1カ月ごとにOHATを用いて対象者の口腔環境が評価され,評価に基づいた口腔機能管理シートが作成された。この管理シートを基に,介護者への口腔ケアの教育と歯科衛生士による専門的口腔衛生処置が実施された。2年間を通じて入所していた患者を通期群とし,介入の途中で入所または退所した者を含めた全患者を全体群とした。OHATスコアの半年ごとの変化を検討した。 結果:通期群42名と全体群96名のOHATスコアは,初回評価時では,通期群で中央値(四分位範囲)が3(1~4),全体群では3(1~5)であったが,半年後には,通期群で1(0~3),全体群でも2(0.25~3)と有意に低下し,2年後には通期群で1(0~2),全体群でも1(0~3)と低値が維持された。 結論:本結果より,入所者が変化していく介護保険施設で,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理により,入所者の口腔環境を改善させ,継続して維持できることが示唆された。