著者
澤田 次郎
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University : Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.19-76, 2020-03-25

本稿は1880年代における参謀本部の対清情報活動の実態を,福島安正中尉(のち大尉)を主軸に据えて考察するものである。そこでは主に以下の3点を検証した。第一に軍事関連施設の偵察である。まず福島は北京から内モンゴルを,ついで杉山直矢少佐とともに,①上海─南京,②煙台─天津を旅行し,兵要地誌調査を行った。第二に清国社会の観察である。杉山と福島はそうした過程で農民,商人から官吏に至るまで,さまざまな人々に接触し,自国と清国の違いを実感した。第三に北京での清国軍のデータ収集である。公使館付武官となった福島は,清国軍の最新データを収集することに努め,重要文書を入手して大量の資料を日本にもたらした。以上の三つの段階をふまえて,また他の派遣将校たちの情報収集と合わせて,日本陸軍は日清戦争の約10年前から清国軍の全体像をほぼつかむようになっていたのではないかと考えられる。
著者
山田 純生
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1399-1410, 2012-11-10

はじめに 心臓リハビリテーションは,これまで急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI),あるいは急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)や心臓血管外科術後患者が主な対象とされ,特にAMIに対する運動リハビリテーション介入はほぼ確立されたプログラムとして臨床に普及が進みつつある.一方で,最近,心臓リハビリテーション対象に加わった慢性心不全(chronic heart failure;CHF)は,病態が多岐にわたる分,詳細な病態評価に基づき介入を個別化することが求められるが,その具体的な方法論は示されておらず,運動リハビリテーション介入をCHFの管理方策として位置づけする障壁ともなっている. そこで,本稿では,AMIについては長期予後を改善する考え方を述べるにとどめ,主にCHFの運動リハビリテーション介入による予後改善効果の基本的考え方を,心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing;CPX)の予後指標と関連づけて解説したいと思う.
著者
花井 滋春
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-20, 2020-03-19

これまで、橘長盛、直幹、忠幹等の生没年については、忠幹の没年を除いては長い間、未詳とされてきた。しかし、本稿では、兄直幹の申文から、父・長盛の没年を延喜十六(九一六)年、兄・直幹の誕年を昌泰元(八九八)年に特定することでき、そこから拾遺集忠幹歌の詠歌時期が延喜十六年頃もしくは天暦九年頃の二期、つまり忠幹の十代後半もしくは五十代半ばである可能性を指摘することができた。 この所詠時期に年齢を当て込み、且つ拾遺抄・集の詞書を検討する時、当該歌が巷間に歌語りされて伊勢物語に取り込まれたとする従来の考えが必ずしも妥当性を持たないことが明らかになる。かくして、拾遺抄・集から伊勢物語へ、あるいは忠幹周辺の限られた情報源から伊勢物語へという経路を再考する必要が生まれることとなる。
著者
桑田 千尋 佐藤 勉 池田 利恵
出版者
学校法人 日本歯科大学東京短期大学
雑誌
日本口腔保健学雑誌 (ISSN:24347108)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-32, 2019 (Released:2020-01-24)
参考文献数
10

近年,健康寿命を延伸させることの重要性が大きく叫ばれ,国民の健康に対する意識が一段と高まってきている.健康を保持・増進させるためには,規則正しい食生活習慣を身に付けることが極めて重要であると考える.発酵食品は,比較的古くから健康によいと考えられている.そのなかで,乳酸菌は発酵食品に利用されている代表的な細菌であり,免疫賦活化作用,整腸作用およびコレステロール低減作用を有することが知られている.歯科領域では,う蝕や歯周病細菌に対して増殖抑制作用を示すことが報告されており,その効果を利用した様々な乳酸菌配合の口腔ケア製品が開発・市販されている. 本研究の目的は,市販のオーラルケア用乳酸菌含有食品のStreptococcus mutans(S.mutans)とCandida albicans(C.albicans)に対する増殖抑制効果を検証し,口腔ケアツールとしての有用性を検討することである.具体的には,3種類の被験食品を溶解させて被験食品溶解液を作成し,その一定量を添加した培養液中でのS.mutansとC.albicansの増殖能を測定した. その結果,乳酸菌含有食品を掲げて市販されている食品でも,S.mutansやC.albicansの増殖に及ぼす効果については,違いがあることが示された. 今後は,効果の持続時間や口腔内疾患を有する患者を対象とした検討のほか本研究で使用したS.mutansやC.albicans以外にも歯周病菌に対する増殖抑制効果の有無といった検討を行うことも重要である.
著者
松浦 祐司 宮城 光信
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.41-43, 1999-01-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9

通常の石英ガラス光ファイバーでは伝送することが困難な紫外・可視・赤外レーザーの大エネルギーパルス光を伝送するための中空光ファイバーを紹介する.エキシマレーザー用中空ファイバーはガラス細管の内面にアルミニウム薄膜をMOOVD法によって形成することによって製作される.また, Nd: YAGおよびEr: YAGレーザー用中空ファイバーは,ガラス管内面にまず銀鏡反応によって銀薄膜を形成し,その表面に液相法によってポリマーを成膜することによって得られる.これらの方法によって製作された中空ファイバーは,各種レーザーに対して低損失性を示し,大エネルギー光パルスの伝送を可能にする.

1 0 0 0 名古屋叢書

著者
名古屋市教育委員会 編
出版者
名古屋市教育委員会
巻号頁・発行日
vol.第24巻 (雑纂編 第1), 1963

1 0 0 0 OA 懐中重宝記

著者
大林静 編
出版者
青井三十郎等
巻号頁・発行日
1881
著者
小田嶋 裕輝 河原田 まり子
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-23, 2015-06-30

国内外における首尾一貫感を改善する介入に焦点を当てた文献を整理し,患者の首尾一貫感を改善する上で必要な介入の示唆を得ることを目的とした.2014年6月までに発表された文献を対象に,CINAHL,医学中央雑誌を用いて検索した.Patient, Sense of Coherence に,Intervention 又は Program の用語を含む海外文献を,また,患者,首尾一貫感に,介入又はプログラムの用語を含む日本語文献を検索した.目的に該当した文献として,国内文献3件と海外文献5件を本研究に活用した.いずれの研究においても,介入前後で首尾一貫感の得点は有意に改善したことを報告していた.患者対象の研究内容は,患者の抱える具体的な問題や,健康的な生活習慣の維持に必要なことなどに焦点を当てていた.患者以外を対象とした研究内容は,禁煙という具体的な問題に焦点を当てるものや,具体的な焦点は定めず,健康増進のためのプログラムとして実施するものがあった.これらの支援には,患者が疾患をコントロールしながら生活していけるように支えること,患者に対する治療の選択肢や体の状態に関する理論的な情報提供をすること,患者の思いを分かち合えるようにすることなど,首尾一貫感の下位概念に即した支援の性質が認められた.患者の首尾一貫感を改善するためには,首尾一貫感の下位概念に即して,疾患コントロールのための療養生活支援,治療や体の状態に対する情報提供,患者との思いを共有する支援が必要であることが示唆された.
著者
大野 希一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、以降SDGs)」は、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標である(外務省のパンフレットより)。この計画では、「持続可能で強靭、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の総合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことをビジョンに、国連に加盟している193の国々が2030年までに達成すべき17の目標が掲げられている。この計画の前身である「ミレニアム開発目標(MDGs)が、主に発展途上国を対象に設定された目標で、国連の専門家が主導で実施されてきたものであったのに対し、SDGsは先進国自身もこの目標達成に向けて積極的に取り組むことや、国全体で取り組むことが推奨されている、という点が特徴である。17の到達目標は、それぞれがさらに実施すべきターゲットに細分化される。全部で169あるターゲットの中には、ジオパーク地域が取り組んでいる活動に関連する項目も少なくない。たとえば目標6の中のターゲット「6.6 2020年までに山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う」、目標8の中のターゲット「8.9 2030年までに、雇用創出、地元の文化・産品の販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する」、目標13の中のターゲット「13.1 すべての国々において、気候変動に起因する危険や自然災害に対するレジリエンス及び適応力を強化する」などは、まさにジオパーク活動と直接的にリンクする。これら以外にも、ターゲットの中には環境保全や地域社会の維持に関する項目が複数掲げられており、防災対策や気候変動対策、循環型社会の構築や新たな市場の創出を通じて、持続可能な開発目標を達成しようという取り組みも、多かれ少なかれジオパーク活動にリンクする要素を含んでいるといえる。SDGsに関わるこれらの取り組みが、地域で展開されているジオパーク活動とどのようにリンクするかを把握することは、特にユネスコ世界ジオパークに認定された地域については今後重要になってくる可能性がある。今回のポスターでは、島原半島ユネスコ世界ジオパークが行っているジオパーク活動が、SDGsとどのような関わりを有しているかを紹介・議論する予定である。