著者
仙北谷 英貴 山本 秀朗 党 偉栄 久保内 昌敏 津田 健
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.178-187, 2002 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ケミカルリサイクルを行う目的で3種類のエポキシ樹脂を80℃の4mol/1およひ6mol/1の硝酸水溶液により分解した.DDM (diaminodiphenylmethane) 硬化ビスフェノールF型エポキシ樹脂では, 樹脂は4molAで約400時間, 6mol/1で80時間の分解時間を要した.DDS (diaminodiphenylsulfone) 硬化TGDDM (tetraglycidyldiaminodiphenylmethane) 型エポキシ樹脂は, 4mol/1では約50時間, 6mol/1では約15時間で分解した.硝酸水溶液から酢酸エチルによって抽出された化合物の分析の結果, C-N結合の開裂とニトロ化が起こっていることが明らかになった.また, 一般的に耐酸性の高い酸無水物硬化エポキシ樹脂について, 樹脂主剤の化学構造の中にC-N結合をもつ無水メチルハイミック酸硬化TGDDM型エポキシ樹脂を硝酸水溶液で分解させた.4molA硝酸水溶液では約80時間, 6mol/1では約250時間で分解し, 本手法が酸無水物硬化エポキシ樹脂にも応用可能であることが明らかになった.分解生成物の分析結果から, 回収された分解生成物を再重合する目的であればビスフェノールF型エポキシ樹脂の4mol/1硝酸水溶液による分解が優れ, 単純に廃棄物処理するだけであればDDS硬化TGDDM型エポキシ樹脂を6mol/1硝酸水溶液で分解させる方法が最も適していることが明らかになった.
著者
松岡 雅雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.1030-1037, 2001-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia: ATL)が疾患概念として確立され4半世紀が経過し,その病因ウイルスhuman T-cell leukemia virus type I (HTLV-I)の発見から疫学的全貌,臨床像の広がりも解明された.しかし,その病態の分子機序,白血病化機構に関しては不明な点が残されているだけでなく,この予後不良な疾患に対する治療法の開発が急務となっている. ATLは感染から発症までをHTLV-Iプロウイルスという指標で解析可能であるため,リンパ系腫瘍の多段階発がん機構を解析する上で格好のモデルであり,その解明,治療法開発に有益な情報をもたらすことが期待される.
著者
篠原 鼎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.303-315, 1991-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23

1. 自律神経機能の検査法を纒めると, 次のようになる。1) 健常者の安静仰臥位におけるMとCV安静仰臥位は, 副交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位で, Mに異常があること自体, すでに自律神経の不均衡があると考えられる。Mの高値は, 交感神経の機能亢進型である。Mの低値は, 交感神経の機能低下型である。CVの高値は, 副交感神経の機能亢進型である。CVの低値は, 副交感神経の機能低下型である。2) 健常者の深呼吸負荷におけるMとCV安静仰臥位での深呼吸負荷は, より副交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位に比較して, Mが減少しCVが増加するのが正常で, Mの減少CVの減少と, Mの増加CVの増加と, Mの増加CVの減少は, 異常である。3) 立位負荷におけるMとCV立位負荷は, 交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位に比較して, Mが増加しCVが減少するのが正常で, Mの増加CVの増加, Mの減少CVの減少, Mの減少CVの増加は, 異常である。2. 健常者の年齢補正は, 次のようになる。1) 安静仰臥位における心拍数年齢補正式は,Y=126.153-16.187×LogeX(Xは年齢)。2) 安静仰臥位における変動係数年齢補正式は,Y=10.818-1.993×LogeX(Xは年齢)。3) 深呼吸負荷における変動係数年齢補正式は,Y=24.293-4.738×LogeX(Xは年齢)。4) 立位負荷における変動係数年齢補正式は,Y=7.398-1.277×LogeX(Xは年齢)。3. 一目瞭然であり, かつ全く新しいMCV図法を, 指尖容積脈波計に応用することにより, 安静仰臥位と深呼吸負荷と立位負荷の, MP-PとCVP-Pのデータを, MCV図にプロットすると, 交感神経機能や副交感神経機能の, 総合的な評価ができる。またMCV図法は, いろいろな負荷検査に対しても, 使用できるものである。ただし, 測定条件は心電図計よりも厳密にすることが大切である。
著者
安野 正之
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.i, 1997-06-15 (Released:2016-08-20)
著者
三木 敦朗 奥山 洋一郎 白澤 紘明 斎藤 仁志
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

森林管理を持続可能な水準に高めることが求められていますが、一方でそれを実行する市町村では人材確保が難しいという現状があります。行政担当者の意志決定を支援するAIシステムがあれば、担当者は住民や関係者との合意形成等に専念することができ、持続可能な森林管理と行政コストの圧縮が両立できるのではないかと考えます。本研究は、そうしたAIの可能性を調査・実験等によって検証します。また、こうしたシステムが導入されたとき、森林管理や合意形成のあり方がどのように変化するのかを、制度と人材育成の面からも検討します。
著者
林 大輔
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.36-40, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
20

母乳栄養とアレルギーの関係について多くの研究が行われ, 完全母乳栄養がアレルギーに防護的であると考えられていた. EAACIは食物アレルギー予防のために生後4~6か月の完全母乳栄養が望ましいとしている. しかし, 人工乳開始時期と牛乳アレルギー発症時期を検討した研究では生後14日以前に人工乳を開始した群で牛乳アレルギーの発症頻度が低下していた. また, 牛乳アレルギー児の哺乳状況の後方視的調査では牛乳アレルギー児で新生児期からの1日1回以上の継続的な人工乳摂取の頻度が低く, 卵アレルギー児の牛乳アレルギー併発と人工栄養の関係の調査でも牛乳アレルギー併発群では生後3か月以内の継続的人工乳摂取の頻度が低かった. これらの知見より新生児期からの継続的な人工乳の摂取が, アレルギー発症を予防する可能性が考えられる. 一方で母乳栄養には感染症やSIDSの予防効果などもあり, 継続的な人工乳の摂取がこれらにどのような影響を与えるかはわかっていない. 乳早期導入の効果・安全性の検証のためさらなる知見の集積が必要である.
著者
Aakash Agarwal Amey Kelkar Ashish Garg Agarwal Daksh Jayaswal Arvind Jayaswal Vithal Shendge
出版者
The Japanese Society for Spine Surgery and Related Research
雑誌
Spine Surgery and Related Research (ISSN:2432261X)
巻号頁・発行日
pp.2019-0041, (Released:2019-10-20)
被引用文献数
19

Introduction: Recent literature identifies similar failure rates such as anchor pull-out and rod breakage, but a higher unplanned revision surgery with MAGEC rods than with traditional growth rods. Besides known failure modes such as rod fracture, infection, etc., failure to noninvasively distract the rods was cited as the main cause of such unplanned surgeries. The source of these data ranges from multicenter cohort studies to singular case series. These studies included explanted implants that had undergone failure in distraction mechanism, rod fracture, or infection, or had reached their maximum length. Nevertheless, in addition to identifying the overall mode of failure, it is equally important to identify the large-scale incidence of exclusive failures in comparison with standard instrumentation failure modes in spine surgery.Method: The US Food and Drug Administration (FDA) Manufacturer and User Facility Device Experience (MAUDE) databases were searched for reports on MAGEC rods, and on standard instrumentation used for spinal fusion. The adverse events were recorded, tabulated, and analyzed.Results: A search of the US FDA MAUDE database yielded reports of 163 device-related adverse events. These included distraction mechanism failure (n=129), rod fracture (n=24), and minor voluntary reports of infection and tissue discoloration (n=10). For standard instrumentation usage in spine surgery, pedicle screw breakage post surgery (n=336), set screw damage during surgery (n=257), rod breakage post surgery (n=175), interbody cage breakage during surgery (n=118), and pedicle screw breakage during surgery (n=75) were identified as the top 5 failure modes.Conclusion: The study identified the distraction mechanism failure as the most common and growing complication associated with MAGEC rod usage in children with scoliosis, leading to unplanned invasive revision surgeries.
著者
安原 賢
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.786-798, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
38

化学工学の分野で塗布は重要な要素技術であり,日本の産業界ではVOF 法を用いた塗布ビードの自由表面解析が盛んに行われてきた。この解析手法にて,空気同伴,リビング,リビュレット,段ムラ,塗布エッジ膜厚不均一等の各種塗布故障が解析結果として再現された。また,これら塗布故障の発生状況と塗布条件の相関を定量的に整理したコーティングウィンドウにおいても,実際の塗布試験結果と良好な一致が見られた。このように,塗布解析を活用した塗布故障発生原理の解明,未知の操業条件における塗布故障発生予測が実用化され,近年では主に電子材料分野の塗布最適設計に役立っている。現状この分野では,スロット塗布方式による単層塗布が一般的だが,多層同時塗布技術の応用も期待されている。他方,製紙業界の分野では,流体構造連成解析によってブレード塗工挙動を表現し,ブレードやゴムロールという弾性体にニップされつつ塗工膜を形成する挙動が再現されたが,ここでは紙基材への染み込みまでは考慮しきれていない。但し,印刷プロセス解析では,染み込みモデルによってポーラスな紙面へ液体が染み込む挙動が既に再現されており,ブレード塗工との同時考慮が今後の課題である。また,流体粒子連成解析を応用した塗工液中の固体微粒子挙動の解明,更には粒子を数珠状に軟連結した微細繊維挙動解析による抄紙工程の繊維挙動解明も期待される。