著者
中橋 雄 寺嶋 浩介 中川 一史 太田 泉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.373-382, 2010-02-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は,「電子黒板を活用して学習者が考えを説明する学習活動」で生じる相互作用を調査し,学習者同士の思考と対話を促すために教師が行った指導方略をモデル化して捉えることを目的としたものである.学習場面をビデオで撮影するフィールド調査により,学習者および教師の発話と行動について分析を行った.その結果,教師の指導方略として,「対話のための場を整える」,「説明方法を指導する」,「自らモデルを示す」,学習者の説明に対して「受け答える」,「思考を促す問いかけをする」といった事象のカテゴリーが生成された.そして,それらを構成する要素の中には,<提示画像を準備する><説明を書き込むよう注意する><印の付け方を注意する><色を変えて比較させる><書き込みを保存させる><立つ位置の見本を示す><身振り手振りの見本を示す>といった電子黒板を活用することによる特徴的な所作・動作を伴う事象が確認された.

1 0 0 0 OA 農夫症の研究

著者
松島 松翠 寺島 重信 磯村 孝二 市川 英彦 横山 孝子 大柴 弘子 井出 秀郷 萩原 篤 清水 博昭 白岩 智恵子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.135-144, 1969-03-01 (Released:2011-02-17)

長野県南佐久郡八千穂村の三部落から, 40才代及び50才代の男女113名を選び, 2年間にわたって農夫症々候群を中心に追跡調査を行なった。そのうち4回全部検診及び調査のできた81例について, 次のような結果を得た。1) 労働時間は男に比べて女に多く, かつ逆に睡眠時間は女の万に短かい, とくに40才代にかいて著明である。あきらかに女の万が過労状態であるといえる。また疲労の自覚症状や一般的健康状況, 検査結果, 有病率なども一般に女の万に悪い。即ち女の万が健康障害が多い。2) 農夫症総点数は, 一般に40才代より50才代が, 又, 男より女に多く, 農繁期に増加している。最近2年間の経過では, 男女とも増加しているが, 女の万が増加率が高い。3) 農夫症総点数は, 耕地面積 (一人当り) の多いほど, また乳卵摂取量の少ないほど高い。4) 農夫症総点数は, 疲労の自覚症状 (とくに身体的症状)、有病率と著明に相関している。また諸検査結果 (血圧, 血液, 肝機能等), 心電図, 胃レ線, 腰部レ線結果による異常と若干の相関が認められる。5) 以上の点から, 農夫症は慢性疲労状態, 不健康状態, 疾病状態を表わす一つの健康示標であるといえる。これを減らしていくためには, 農家の生活及び農業全般の根本的な改善がなされなければならない。
著者
西村 珠美 菅野 輝哉 相馬 幸太 川村 慶 伊藤 亘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,不動・安静臥床による合併症として呼吸器・循環器・運動器・消化器・皮膚など多臓器,さらには精神機能への影響が挙げられている。里宇は座ることの効果として上記臓器機能の向上・改善の他,局所圧迫の軽減や日常生活動作(以下ADLとする)・介護負担の軽減,社会参加の促進を加えている。我々は病棟と連携し,特に廃用症候群によりADLの低下をきたしやすい高齢者に対する離床の促進に日々取り組んでいる。しかし食事等病棟での離床場面では肘かけ椅子の代用として,本来は短時間の移動を目的とした道具である普通型車椅子を用いていることが多い。多くの高齢者は加齢変化により姿勢保持能力が低下し,重力に負けた結果潰れた姿勢となってしまう。頭頸部は前下方に落ち込み,その代償として臀部を前すべりさせ,上肢の自由度も制限させてしまっていると考える。加えて,普通型車椅子は多くの高齢者の身体寸法にそぐわず経年劣化が問題となる。また材料や時間,技術不足により,現状では対象者の個別性に配慮したシーティングは困難である。今回我々は「キャスパークッションZAFU」(以下ZAFU)を用いて円背高齢者のシーティングを行い,同クッションの効果検証を目的に,本研究を実施した。【方法】普通型車椅子に一般的なウレタンクッション(以下一般とする)とZAFUを用いてのシーティングを実施し,座圧・車椅子座位姿勢(矢状面・前額面)と,上肢の運動機能評価として食事(摂食量・時間・姿勢)の3項目について二者間の比較を行った。座圧はPalm Q(ラック株式会社製)を使用し,両坐骨~仙骨,尾骨の座圧を5ブロックに分けて測定した。対象者は脊柱後弯位で円背を呈した80代の女性。介入時の病棟ADLはFIM65点,基本動作軽介助レベルだが臥床傾向,病前より食事への関心は強く,食事時間は離床可能であった。【倫理的配慮,説明と同意】倫理的配慮として,対象者の家族に本研究の趣旨説明を十分に行い,同意書に署名を得た上で実施した。【結果】座圧:一般では座圧計140.2,測定部位での最大差41.1(mmHg)に対しZAFUでは座圧計55.1,最大差14.3(mmHg)とZAFUの座圧の低下および分散効果を示した。座位姿勢:一般では頭頸部が重力に抗せず屈曲し,正面を見るために努力的な頭頸部伸展を行っている。胸郭は前下方に沈み込み,バックレストにもたれていなかった。ZAFUでは頭頸部・肩甲帯・胸郭が矢状面上で一直線上に位置し,頭頸部の支持における努力性は見られなかった。食事:両者全量摂取可能だが,一般ではは右肘を支点としており,リーチ動作での有効なアームは右前腕以遠に制限され,左上肢の使用は見られなかった。スプーンで次々に口に運び,皿の手前側には食塊が残っていた。一方ZAFUでは右上肢のアームが延長,箸を併用し皿の隅の食塊をきれいに集めることができた。また左上肢の協力動作が生じた。食事時間は両者ともに適正な時間内であったが,ZAFUでは同席の他患者と会話したり,周囲を気に掛ける様子が見られた。【考察】ZAFUでの座圧の低下について検討する。ZAFUでは坐骨受けで臀部の前方への滑り出しを止めて座面での荷重が向上し,骨盤がバックサポートにもたれている。下部体幹の重みをバックサポートで受けることで,胸郭全体の下方への潰れが止まって頭頸部のアライメントは胸郭上方となり,頭頸部の支持性向上につながったと考える。一般では,下部体幹が骨盤より上位の身体の重み乗せられず座面に体圧が集中し,臀部は前方に滑り仙骨への剪断力を増加させる。対象者は円背のため抗重力位での頭頸部の保持能力が低下し,臀部を前にずらし頭頸部が下方に落ち込むのを回避していると考える。さらに体幹は腹側で弛緩し背側は伸張されているため筋出力のバランスが破綻し,安定性の低下をきたす。一般の食事場面では努力的に頭頸部を伸展位に保持,左上肢の協力動作は乏しく,膝やアームレストに押し付けて姿勢保持を行っている。前方へのリーチでは体幹の左側屈・回旋で代償している。上肢を姿勢保持に積極的に使用することで上肢の自由度が低下し,食事動作に影響したと考える。ZAFUでは頭頸部の安定保持から,上肢の自由度を高めてリーチでの前方への重心移動が可能になったと考える。【理学療法学研究としての意義】ZAFUを使用し簡便なシーティングを行い,クッションの即時効果を検証した。今回の検証により,円背高齢者の姿勢保持能力の低下による弊害を解決する一手段として,ZAFUの有効性を示唆された。今後は嚥下機能への影響および主観的評価も加味し,効果検証を進めたい。
著者
櫻井 智章
出版者
京都大学 (Kyoto University)
巻号頁・発行日
2009-01-23

新制・課程博士
著者
田中 直美 牛膓 昌利 牛膓 真美 坂本 あづさ 稲田 美帆 河原 俊 長谷川 拓馬 持田 美香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0836, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】車いす座位姿勢の評価・シーティングを行う際,骨盤を起こし,水平,前後傾中間位とし,その上に胸郭・頸部・頭部が位置すると考えられている。しかし超高齢者は座位保持能力の低下により,骨盤を起こした姿勢では重力に抗することができず,頭部にかかる重力ストレスにより頭部が前下方へ落ちこみ,臀部が前方へ滑りだす姿勢を取ることが多い。骨盤を起こした姿勢が本当に安定した座位姿勢となっているのか疑問に感じる。そこで,シーティングの新しい考え方である,骨盤の後傾をゆるしもたれることで身体の物体的な安定を図る,脳性麻痺児・者を中心とした理論及び技法のキャスパー・アプローチ(以下,CASPER)に基づき,車いすシーティングを実施し,超高齢者への有効性を検討した一症例について報告する。【方法】普通型車いすでの一般的な座位姿勢(以下,非介入)と三角クッションを使用しCASPERを実施した座位姿勢(以下,介入)の二者間で開始座位姿勢,座位保持可能時間(バイタル変動をアンダーソンの基準に基づき終了),姿勢変化の3項目を比較した。対象は98歳認知症女性。コミュニケーション困難。介入当初BIは0点。【結果】開始座位姿勢:非介入;胸郭と仙骨が背もたれと接触し,頭頸部は右前下方へ傾く。介入;胸郭下部,坐骨がクッションと接し胸郭,頭部は一直線上に位置する。座位保持可能時間:非介入;平均3分53秒。介入;平均13分41秒。姿勢変化:非介入;頭頸部は右前下方へ倒れるまたは左情報へ伸展。右回旋は可能だが,左回旋は正中を超えなかった。約3分経過後から頭頸部の右屈曲が強まる。声かけに対して発声により反応するが,検者と視線を合わすことはなかった。介入;頭頸部が自由に全方向へ可動し,正中に戻ることも可能。全方向からの声かけに対して検者と視線を合わせ,言葉で返答することが可能。【結論】非介入で垂直に設定された骨盤は後方へ倒れようと不安定で,背もたれが上部胸郭と仙骨の倒れを固定する。上方の頭頸部は重力により前下方へ落ち込む。そのため臀部を前方へずらすことで頭頸部の落ち込みを回避していると考えられる。この座位姿勢では頭頸部の落ち込み回避のために筋力が必要であり,頸部回旋の自由度を減少させると考える。介入では,骨盤を後傾位に設定するが,坐骨を座面に設置した三角クッションに乗せることで臀部の前方への滑りを固定した。また,後方へ倒れる胸郭の重みを背もたれに設置した三角クッションで受けることで胸郭から下方が安定し,上方の頭頸部の支持性が向上したと考えられる。そのため,座位保持に必要な筋力が減少し,楽に座ることができた。また,声かけなどの刺激に対して,多様な反応を示すことができたと考える。今後,対象者数を増大,評価項目を検討し,高齢者に対する座位保持理論を系統化していきたい。
著者
山本 晃之 根岸 健一 木下 果鈴 福井 絢子 上村 直樹 青山 隆夫
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-26, 2019-05-31 (Released:2019-06-21)
参考文献数
7

Objective: It has been recognized that most medical institutions preferred the printed medium for their information sheets for patient education of inhaler usage. However, some questions have arisen. In a case where patients are not sufficiently informed of drug administration guidance due to limited information with only pictures and text, they might not be able to obtain a proper understanding. Contrarily, it is assumed that video medium, with audio and visual elements, is a format for education conveying a larger amount of information. We conducted comparative research regarding patient’s degree of understanding of inhalation guidance, comparing two groups of print- and video-medium-based instructions for inhaler usage and examined how effective two types of media explanations were on patients.Methods: Research participants were thirty persons visiting Jinjo Pharmacy, who were randomly assigned to the print medium group and the video medium group. After one group read and saw an explanation sheet of an inhaler where the maker wrote inhalation instructions and the other group watched an instruction video, the two groups practiced inhaler usage. Evaluation was performed with specified items and comprehensive assessment, and in addition, the time required for inhalation was measured.Results: Score of the evaluation score was statistically significantly higher in the video medium group than in the print medium group in score of specified items and score of comprehensive assessment, and was also significantly shorter in the operation time of the inhaler.Conclusion: This study clarified that the video medium group had fewer improper inhalation occurrences and shorter operation time and, therefore, showed the effectiveness of the video medium. It is recommended that the video medium should be actively utilized,which could improve patient medication adherence. Accessibility is required for patient education to achieve inhaler techniques by watching video-based instruction.