著者
安保 寛尚
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.21, pp.107-142, 2014-01

キューバでは1886 年に奴隷制が廃止され、1902 年の独立後、法的には国民の平等が達成されたが、黒人は変わらず人種差別を受け続けていた。ニコラス・ギジェンの『ソンゴロ・コソンゴ』は、白人の価値観が支配するそのような社会において、実際には黒人の要素が深く混ざり合っており、キューバの精神は混血、すなわち「ムラート」であるという考えを提起する革命的な詩集であった。そしてそのような思想が最も反映されているのが≪到着≫である。これまでの先行研究において、この詩はアフリカ人のキューバへの到着と見なされ、時に白人に対する黒人の勝利を歌うものという解釈がされてきた。しかしながら、この詩の背景に見えるのは大西洋を渡ってキューバに至る航海ではなく、山から都市への下山である。また、キューバの向かうべき将来に人種的統合を見据えるギジェンが、人種主義に対する人種主義を訴えているとは考えにくい。そこで本稿は、キューバの山/森が持つ歴史的・文化的象徴性に注目する。そこはかつてスペイン人に抵抗する逃亡奴隷が集落を形成した場所であり、現在も黒人にとってアフリカとの交信が可能になる聖域である。すなわち到着者には、アフリカの遺産を受け継ぐ逃亡奴隷の姿が見えてくるのだ。こうして浮かび上がるアフリカとキューバを結ぶ想像の地図の分析を通して、新しい「混血」の共同体形成を提起するギジェンの詩的プロジェクトを明らかにする。
著者
前川浩一編著
出版者
三文々司
巻号頁・発行日
1993
著者
高松宮家 [編]
出版者
高松宮家
巻号頁・発行日
vol.第9輯 昭和16年, 1941
著者
杉浦 真治 深澤 遊 山崎 一夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.143-144, 2002
参考文献数
6

Platurocypta punctum (Stannius) (Diptera: Mycetophilidae) was firstly recorded from Japan based on the adult specimens emerged from a fruiting body of Fuligo septica (L.) (Myxomycetes: Physarales: Physaraceae). We observed the larvae feeding on spores within the fruiting body at Kamigamo Experimental Forest in Kyoto, central Japan. P. punctum may be closely associated with slime molds.
著者
内山 貞三郎 Uchiyama Teizaburo ウチヤマ テイザブロウ オオミヤ マユミ
出版者
大阪大学文学部
雑誌
大阪大学文学部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-328, 1952-09-15

NOTE:参考文献等は別書誌(関連情報を見よ)
著者
王 海冬 宮崎 清 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.45-54, 2008-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

中国の少数民族のひとつであるオロチョン族は、狩猟を生業とした移住生活のなかで、きわめて特徴的な生活文化を形成してきた。なかでも、白樺の樹皮である「樺皮」を材料としたさまざまな生活用具には、彼らが長い歴史のなかで培ってきた生活の知恵が豊かに内包されている。本稿では、伝統的な樺皮活用品に関する資料の収集に基づき、機能による分類を行い、形状、材料、作り方、内容物の相互関係から、伝統的な「樺皮」を用いたものづくりの意匠特質を考察し、以下の特質を導出した。(1)白樺を不必要に伐採しないことや枯らさないための掟が遵守されており、樺皮活用品にはオロチョン族の自然と人間の「共存」「共生」を願う生活哲学・生活文化が表出している。(2)日常生活用の樺皮活用品は使い方と機能により「住」「行」「遊」「食」「衣」「業(狩猟)」「業(採集)」「神」の8つに分類される。共通する特徴は、「変形しない」「割れない」「防湿性が高い」「軽量である」「耐久性が高い」などである。(3)樺皮活用品は単に日常生活に必要で欠かせないものであるのみならず、それにはオロチョン族の人びとの審美意織や生活理念、信仰などの諸側面における象徴的意味が包含されている。
著者
冨田 尚吾 鈴木 一 秋山 一男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.430-438, 2002
参考文献数
22
被引用文献数
2

成人気管支喘息患者127名においてコマーシャルベースの4種のゴキブリ抗原液を用いて皮内テストを行った.またCAP-RAST法にてゴキブリ特異的IgE抗体を測定した.使用したゴキブリ抗原液に対する即時型皮内反応陽性率は10.2〜12.6%であり,CAP-RAST陽性率は12.6%であった.ゴキブリに感作された喘息患者6名にゴキブリによる抗原吸入誘発試験を施行したところ2名に即時型気道反応,1名に遅発型気道反応を認めた.末梢血白血球ヒスタミン遊離試験においても陽性例を認めた.RAST抑制試験にて2種のゴキブリ(American cockroach, German cockroach)の間には共通抗原性の存在が示唆された.またダニ抗原によってもゴキブリRASTは抑制される例がみられ,一部ダニとの共通抗原性も示唆された本邦においてもゴキブリアレルゲンの関与した喘息症例は少なからず存在し,注目すべきと思われた.
著者
Ting-ting Liang Li-tao Tong Dong-hui Geng Li-li Wang Xian-rong Zhou Hua-yin Pu Wei Jia Qing-ping Wu Jun-rong Huang
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.909-922, 2019 (Released:2019-09-04)
参考文献数
58
被引用文献数
11

The objective of this research was to evaluate the effect of wheat gluten on gut microbiota from hamsters and also analyse whether alterations in microbiota could result in wheat gluten’s lipid-lowering properties. Four weeks male hamsters were divided into 3 groups (n=10). Two hypercholesterolemic groups were fed for 35 days with hypercholesterolemic diet, containing 20% (w/w) wheat gluten or casein. Wheat gluten significantly reduced serum total cholesterol (TC), low density lipoprotein cholesterol (LDL-C) concentrations, and also decreased the liver total cholesterol (TC), free cholesterol (FC), cholesterol ester (CE), triglycerides (TG) concentrations. Wheat gluten group had a higher fecal lipids, total cholesterol (TC) and bile acids (BA) than that of casein group (p < 0.05). Moreover, wheat gluten significantly increased total short-chain fatty acids (SCFA) concentrations in feces. Sequencing of 16S rRNA gene revealed that intake of wheat gluten decreased the relative abundances of Firmicutes and Erysipelotrichaceae, but to increased the relative abundances of Bateroidetes, Bacteroidales_S24-7_group and Ruminococcaceae. The lipid lowering properties of wheat gluten was associated with the lower ratio of Firmicutes/Bateroidetes, the lower of the bacterial taxa Erysipelotrichaceae and the higher of the bacterial taxa Bacteroidales_S24-7_group and Ruminococcaceae. These results suggest that wheat gluten modulate cholesterol metabolism by altering intestinal microflora.
著者
本間 清一 頼澤 彩 村田 容常
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

コーヒーの試料として大量に入手でき、保存ができるインスタントコーヒーを選び、コーヒー亜鉛複合体を以下のとおり調製した。pH4.0,10mMのヘキサミン緩衝液(10mM KClを含む)にコーヒーを溶かし、終末濃度20mMになるようZnCl_2を加え、生じた沈殿を集めた。沈殿の1%アンモニア可溶性画分を(Sample AP)した。ApをAmerlite410とAmberlite IR120にかけ、水と1%アンモニアで溶出し、Zn含量の高い画分を塩酸で酸性にして生じた沈殿を遠心分離した。この沈殿物質をセルロースカラムにかけイソプロパノール-1%アンモニア水の系で展開し、混合比3:2で溶出される画分が最もZn-キレート能力の高い(-log kd=8.6×10^<-9>)画分(Ap-V)であった。の分子サイズは48kDで構成成分は30.4%のフェノール、糖とアミノ酸がそれぞれ3%と4%、ケルダール法による窒素含量が10%を越えた。リンが殆ど検出されなかったのでZn-キレート性成分の形成にメイラード反応とフェノール化合物の酸化分解や重合の関与を推定した。高分子のAp-V画分の構成成分を推定するために、アルカリ溶融分解を行い中性と酸性画分に主要な分解物が回収されてくることを確かめた。3D-HPLCとLC-MSによる解析の可能性を見いだした。キレート成分の生成する要因を調べるためコーヒー生豆の熱水抽出液乾燥粉からインスタントコーヒーと同様にキレート成分を精製した。Ap-V全量中の亜鉛含量は生豆よりインスタントコーヒーの方が多かったが、1g当りの亜鉛含量は生豆の方が多く、生豆は多くのZnをキレートすることが示唆された。インスタントコーヒーのAp-Vは、470nm吸光度が高い値を示し、生成に焙煎が関与している可能性が高い。生豆のAp-Vでは280nmの吸収も確認され、また生豆試料をトリプシン処理したもののキレート能を比べるとAp-V全量中の亜鉛含量が極端に減少したことから、生豆の亜鉛キレート性成分は約13,000Dと約10,300Dのタンパク質である可能性が示唆された。コーヒーを飲む時、乳脂肪やタンパク質の多いクリームを加えて飲むことが多い習慣をふまえ、熱いコーヒーにミルクを添加したサンプルからAp画分を調製したところ、コーヒーのみから調製したAp画分より亜鉛含量が低かった。そのため、乳成分はコーヒー成分と複合体をつくることにより、コーヒーのキレート作用を抑制することがあると考えられる。
著者
中尾 善信
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.159-160, 1978-04-30 (Released:2008-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
尾本 恵市
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.14, pp.197-213, 1996-07

本論文は、北海道のアイヌ集団の起源に関する人類学的研究の現況を、とくに最近の分子人類学の発展という見地から検討するもので、次の3章から成る。(一)古典的人種分類への疑問、(二)日本人起源論、(三)アイヌの遺伝的起源。まず、第一章で筆者は、人種という概念を現代生物学の見地より検討し、それがもはや科学的に有効ではなく、人種分類は無意味であることを示す。第二章では、明治時代以降の様々な日本人起源論を概観し、埴原一雄の「二重構造説」が現在の出発点としてもっとも適当であることを確認する。筆者は、便宜上この仮説を次の二部分に分けて検証しようとしている。第一の部分は、後期旧石器時代および縄紋時代の集団(仮に原日本人と呼ばれる)と、弥生時代以後の渡来系の集団との二重構造が存在するという点、また、第二の部分は、原日本人が東南アジア起源であるという点についてのものである。筆者の行った分子人類学的研究の結果では、第一の仮説は支持されるが、第二の仮説は支持できない。また、アイヌと琉球人との類縁性が遺伝学的に示唆された。第三章で筆者は、混血の問題を考慮しても、アイヌと東南アジアの集団との間の類縁性が低いという事実に基づき、アイヌの起源に関する一つの作業仮説を提起している。それは、アイヌ集団が上洞人を含む東北アジアの後期旧石器時代人の集団に由来するというものである。また、分子人類学の手法は起源や系統の研究には有効であるが、個人や集団の形態や生活を復元するために、人骨資料がないときには先史考古学の資料を用いる学際的な研究が必要であると述べられている。