著者
姫野 俵太 栗田 大輔
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.878-884, 2016

リボソーム上のタンパク質合成は開始コドンに始まり,遺伝情報に基づいたペプチド伸長サイクルの繰り返しを経て終止コドンで終了する.翻訳の終了にあたっては,ペプチド解離因子(RF1またはRF2)が合成されたポリペプチドをtRNAから切り離す.しかしながら,さまざまな原因により(場合によっては計画的に)タンパク質合成を途中で中断せざるをえない状況に追い込まれることがある.たとえば,mRNAが翻訳中に切断を受けて3′側を失うと,リボソームは終止コドンに出会うことなしにmRNAの3′末端に到達してしまう.この場合,ペプチドの解離が行われないため,リボソームはそこで立ち往生することになる.こうした状況を解消すべく,細胞はリボソームレスキュー機構(翻訳停滞解消機構)を備えている.細菌のリボソームレスキュー機構として最初に見つかったのはtmRNAとSmpBによるトランストランスレーションである.ほぼすべての細菌はトランストランスレーション機構を必ずもっているが,それ以外にも2つのリボソームレスキュー機構が存在することが明らかになってきた.本稿では,これら3種類を中心に細菌のリボソームレスキュー機構について概説する(図1).
著者
新倉 聡 松浦 誠司
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.211-220, 1999-12-01
被引用文献数
2

日本における栽培ダイコンの採種関連形質に関して遺伝的変異を知る目的で, 在来品種を中心に23品種群219系統を用い, 自家不和合性遺伝子S, 自家不和合性程度ならびに一莢粒数を調査した.検定交配ならびにPCR-RFLPによりS対立遺伝子はS^<201>〜S^<237>の37種類が同定された.S対立遺伝子の種類から供試品種群の類別を数量化理論IV類からの主成分分析より試みた結果, 形態形質や古来の地理的分布により従来類別されている品種群との対応は認められず, S遺伝子は日本の栽培ダイコン系統分化に対してほぼ中立であったことが示唆された.自家不和合性程度は, 人工開花自家受粉を行った交配花数あたりの結実莢数, すなわち自殖結実率で評価した.供試系統には0%から100%までの遺伝的変異が認められたが, 品種群間の差は認められなかった.また蕾受粉における一莢粒数では, 0.9〜6.2粒までの遺伝的変異が認められた.なお, これら3形質間には相関関係は認められなかった.以上の結果を基に, ダイコン遺伝資源における採種関連形質評価の重要性と, これら形質の選抜上の留意点について考察した.
著者
伊木 惇 亀井 清華 藤田 聡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2461-2475, 2014-11-15

ecサイトにおける商品のレビューは,商品購入の意思決定に大きく関わり,価値ある情報として注目されている.一方で,ステルスマーケティングを目的とした,レビュースパムと呼ばれる信頼性の低いレビューの投稿が問題となっている.既存研究では,レビューの文章などから,それらスパムを検知する取り組みが行われてきた.しかしながら依然として,すべてのスパムの検知は難しい.さらに,レビューを読むユーザ自身が判断するにも,信頼性を判断するための情報は十分でない.また,ユーザは,ウェブ上の情報に対して,ある程度信じやすいという報告もされている.そのため,ユーザが信頼性を意識し,判断するための機構が必要である.よって,本稿ではecサイトにおけるレビューを対象とした信頼性を判断するための支援システムを提案する.具体的には,レビューの信頼性を表す指標として,類似性,協調性,集中性,情報性という4つの信頼性指標を定義し,各指標ごとのスコアを求める.そして,レビューごとにそのスコアを可視化して提示する.それにより,ユーザ自身に信頼性を意識してレビューを読むように促すとともに,信頼性判断がしやすくなるよう支援を行うことが可能となる.本研究では,これらの指標を用いた判断支援を行うシステムを構築し,評価を行った.その結果,提案システムにより,ユーザの信頼性に対する意識を促すとともに,有効な判断支援が行えることが確認できた.
著者
仲地 正人
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.9, 2004

【はじめに】<BR> 当センターでは脳性麻痺児に対する下肢痙性減弱の目的で機能的脊髄後根切断術(以下、FPR)に注目し2001年より導入した。2003年8月までに県立那覇病院で21例の児にFPRが実施された。今回、FPRを受けた児の保護者に対しFPRの満足度、術前・後の変化点の認識および感想についてアンケート調査し若干の知見が得られたので発表する。<BR>【対象】<BR> 当センターで理学療法を受けている入所、通所、外来児でFPRを受けた児21例(男児11例、女児10例)。タイプ別では痙直型16例、混合型5例であった。手術時の年令は3歳3ヶ月から8歳(平均61.9±19.3ヶ月)であった。術後期間は3ヶ月から35ヶ月(平均13±9.7ヶ月)であった。GMFCSによる分類ではレベル1が3例、レベル3が3例、レベル4が11例、レベル5が4例であった。<BR>【方法】<BR> アンケートは術前・後の変化点、FPRに対する感想について空欄への記入式とし満足度については選択式にしてその理由を記入してもらった。またGMFCSに基づいてレベル分類を行い各レベルにおける運動機能の改善点を列挙した。<BR>【結果】<BR>1,手術を受けて良かった点としてGMFCS別でレベル1群では立位、歩行、階段昇降でのバランス向上、レベル3群では坐位・立位姿勢の安定、歩行補助具を用いた歩行の安定性向上、レベル4群では寝返り・起き上がり動作の円滑性、座位の安定性向上、レベル5群では背・腹臥位、座位がリラックスして行える事に満足している傾向にあった<BR>2,その他の良かった点として股関節の痛み、衣服の着脱、上肢の操作性、口腔機能、発声・発語、睡眠中の姿勢、排尿・排便、感覚などにも改善が得られ満足している傾向にあった<br>3,手術を受けて悪かった点 痙直型1例にバニーホッピング時に股関節が過外転位となり移動速度が低下した。痙直型1例に術後1年で尖足が再発している。混合型1例にATNR出現時に体幹の反り返りが目立つようになった。<BR>混合型1例に下肢に軽度の不随意運動が増加した。尿・便失禁が生じたが術後6ヶ月時より改善した。<br>4,術後に生じたその他の変化点 痙直型1例に足の血色が良くなり発汗が多く見られるようになった。痙直型1例に触感覚が敏感になりカーテンなどが足に触れると大笑いするようになった。5,手術を受けての満足度では21例中、6例(29%)が大変満足、13例(61%)が満足、2例(10%)がどちらとも言えない、不満は0%であった。<BR>6,FPRを受けての感想では術前出来なかった動作が術後可能になり本人に自信が付いた、何でも自分でやろうとするようになった、姿勢や表情が良くなっているということが挙げられた。<BR>【考察】<BR> 今回、FPRに対し「大変満足している」あるいは「満足している」と答えた保護者は19例で全体の90%%にあたり満足している点は術前すでに獲得していた動作の円滑性や姿勢の安定性向上、術前には出来なかった事や見られなかった事が術後可能となった事であった。「どちらともいえない」と答えた保護者は2例10%でその理由は痙直型では術後一年で尖足が再発している。混合型ではATNR時に体幹の反り返りが目立つようになったであったが痙直型では寝返り・肘這い動作がスムーズになった、箸、スプーン、書字動作が向上した。混合型では股関節を痛がるしぐさが無くなった、物を触ろうとする動きが増えた、喃語が多くなった、リラックスして眠れるようになったなどの改善点もあり手術を受けて良かった点と悪かった点を相殺することでこの様な回答となっていると考えられる。手術を受けて悪かった点としては痙直型2例でバニーホッピングでの移動速度の低下、術後1年で尖足が再発した、混合型2例でATNR出現時に体幹の反り返りが目立つ様になった、下肢に軽度の不随意運動の増加が見られた事が挙げられた。<BR>【まとめ】<BR>1,FPRに対する親の満足度を調査した。<BR>2,FPRを受けた21例中19例(90%)で満足している傾向にあった。<BR>3,手術を受けて良かった点として動作の円滑性や姿勢の安定性向上、二次的効果として股関節の痛み、衣服の着脱、上肢の操作性、発声・発語、口腔機能、排尿・排便、感覚等にも改善が得られ満足している事がわかった。<BR>4,手術を受けて悪かった点として痙直型2例にバニーホッピングで移動速度が遅くなった、術後1年で尖足が再発した。混合型2例にATNR出現時に体幹の反り返りが目立つようになった、下肢に軽度の不随意運動が増加した。
著者
藤井 瞬 井ノ原 裕紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1619, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】交通事故による右小指切断再接合後の指尖壊死となった本症例が壊死部再切断を通知された後,理学療法士かつ保存療法を望む患者として提案した内容が医師の治療方針に影響を与えた経験を報告する。【症例提示】29歳男性。診断名:右小指切断中型バイク直進運転中,反対車線から右折してきた自動車と衝突し,前方へ体を投げ出した。衝突の際,バイク右ブレーキレバーの変形に伴い,小指を巻き込み引き抜き損傷のように遠位指節間関節(以下DIP関節とする)より離断した。2014年8月X日,同日マイクロサージェリー実施。尺側固有掌側指動脈のみ切断指と縫合し,橈側固有掌側指動脈,周辺静脈,内外側側副靭帯,深指屈筋,指伸筋は縫合出来ず未実施。K-wireにて末節骨と中節骨を固定。同日からX+3日まで上腕までシーネ固定。その後,近位指節間関節(以下PIP関節とする)伸展位のまま中節指節関節(以下MP関節とする)までのアルフェンスシーネ固定へ変更。X+49日より就寝時以外は皮膚保護剤のみに変更。【経過・方法】経過:手術日より5日間はプロスタンディンと生理食塩水を6時間毎交互に静注し,同時にワーファリンを1日3回内服。X+8日で退院。その後,週一回の外来通院を実施。現状では再接合部は壊死しているが感染症状はない。方法:湿潤療法および週3回40分以上の経皮的電気刺激療法を患部に直接実施。外来での週1回の消毒と管理(退院後から継続)。健康状態管理として週3回以上の15,000歩,ビタミンC摂取を注意して実施する。関節可動域練習:X+30日後よりPIP関節最終可動域で30秒持続を可能な限り実施。統計処理はMicrosoft Excel 2014を使用し,優位水準を5%未満とした。【結果】(初期)→(X+60日)※初期評価は疼痛評価と切断指状況のみ。疼痛検査:Numerical Rating Scale(以下NRSとする)断端先端部:安静時(4)→(1)。運動時(PIP屈曲時)(4)→(4)。PIP関節:安静時(0)→(0)。運動時(屈曲endfeel時)(8)→(7)。遠位切断指:(暗紫色,指型は残存)→(黒色,軟部組織が萎縮し指型から尖端に変化)近位切断指:(暗紫色,炎症所見著明)→(鮮赤色~赤色,炎症所見軽度)Arc Of Motion(AOM)(右小指):MP屈曲120°伸展-5°,IP屈曲100°(pain+)伸展0°。握力(kg)5回平均:右21.28±2.672,左:32.08±2.487。ピンチ力(*10.0kgf)10回平均:(右手)母-示:3.52±0.51,母-中:2.78±0.57,母-環:1.82±0.139。(左手)母-示:3.79±0.42,母-中:3.44±0.63,母-環:2.72±0.13。ピンチ力検定(t検定)左右:母-示:p<0.05,母-中:p<0.01,母-環:p<0.01。ADL制限:自動券売機のおつりが取りにくい,おつりを落とす。血液データ(事故後4時間値→X+7値)CRP:0.1→0.1,WBC:11270→6800。【考察】本症例の切断指は重度挫滅であり,再接合する確率は5割程度手術直後に医師から通知されている。マイクロサージェリーでは尺側固有掌側動脈のみの接合であり,深指屈筋,指伸筋,内側外側側副靭帯,周辺静脈の縫合は実施していない。切断指の状態は悪く退院時には既に壊死状態であり,断端形成のための再手術を考えておくようにと医師より打診があった。本症例は可能な限りの指延長を望んだことから,自ら情報を集め医師の指示に追加して断端面に対する電気刺激療法を提案し,その治療効果に関して医師に説明後,了承を得た事から治療を開始することになった。しかし,感染症等が発覚した場合は早急に手術をするとの条件もあり,身体面のリスク管理が必要と考えた。そこで,免疫力を高めるため,また末消循環を促すために軽度の身体活動として15,000歩を全身運動として取り入れた。その結果,X+61日のX-Pより骨髄炎の問題はなく,肉芽が末節骨中間まで発生している状況であるため,現在は再手術の緊急性はなく,指尖が自然脱落する治療方針に変化し,治療を継続することとなっている。しかし,感染症などの身体症状が生じた場合は緊急で手術をする状況は変化していない。今回の経験に関して,発症時期から早期であったこと,症例の年齢,職業から考えた事から可能な限りの指の延長を望んだ患者としての意見と,理学療法士としての意見を元に医師と治療方針を相談出来た事で希望に合った治療が可能になり,心身共に良好な状態が維持出来ていると考えられる。本人のQOLとって,望まない状況からの脱却はなされ,良好な結果で生じているのは事実である。【理学療法学研究としての意義】保存治療を望む本症例が医師の治療方針に対して,理学療法士かつ患者として治療方針の意思決定に関与出来た事例である。
著者
三好 準之助
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-28, 2013-03

1.『日本語の和らげ表現 ―語用論的試論―』の構成 1.1.第1 章「言語の和らげ表現」について 1.2.第2 章「日本とは?」について 1.3.第3 章「日本語の和らげ表現」について2.日本語の和らげ表現手段について 2.1.ぼんやり型 2.2.遠回り型 2.3.隠れみの型3.拙著の説明原理の検証 3.1.ポライトネス関連の研究について 3.1.1.ポライトネスの普遍性について 3.1.2.発話の姿勢について 3.1.3.発話行動の協調について 3.2.社会構造の特徴と和らげ表現 3.2.1.中根理論について 3.2.2.相手中心主義の解釈 3.2.3.ウチとソトについて 3.3.日本語のポライトネス研究について 3.3.1.配慮表現について 3.3.2.和らげ表現に関連した研究のいくつか 3.3.3.言語行動と和らげ表現4.和らげ表現研究の今後
著者
比屋根 直美 赤嶺 大志 宮城 淳 溝田 弘美 又吉 清子 運天 智子 仲地 正人 渡慶次 賀寿 新里 真由実 大城 由美子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.76, 2003

2000年11月から2002年11月までに10名の脳性麻痺児に対して機能的脊髄後根切断術を実施した。タイプは痙直型両麻痺9名、混合型四肢麻痺1名。股関節亜脱臼は3名4股、術前運動機能は臥位1名、這い這い3名、バニーホッピング2名、四つ這い3名、独歩1名、術後期間は平均14.6ヶ月であった。術前後で痙性の程度(Ashworth scale)・関節可動域・粗大運動能力尺度・Migration Percentage(MP)を評価し、独歩例は観察による歩行分析を行った。<BR>下肢の痙性は、Ashworth scaleの平均でみると全症例で軽減しており、術後1年以上経過している5名も維持されている。関節可動域は、股関節外転8名、伸展5名、膝窩角5名に改善がみられ、足関節背屈はfast stretchでは全例改善しているが、最大可動域では3名で改善し、過背屈はなかった。粗大運動能力尺度は術後1_から_3ヶ月は低下することもあるが、多くは3_から_6ヶ月で術前の状況に回復、もしくは若干の伸びがみられた。MP50%以上の股関節亜脱臼は術後2名2股になった。独歩可能な1名の術前後の歩行を比較すると、尖足歩行は残っているものの膝・足関節の動的関節可動域は改善し、歩幅が大きくなった。
著者
青柳 志織 川合 康央
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

インターネットコミュニケーションは情報化社会において日々進化している.これらのコミュニケーションの中で,「ネットスラング」と呼ばれるインターネット独自の俗語がしばしば使用されている.本研究では「(笑)」や「w」等,4種類の笑いを表現するネットスラングに着目し,それらの意味用法が同じかどうかを明らかにすることを目的とした.笑いを表現するネットスラングを比較することによって,笑いの種類と笑いの対象が各スラングで異なる傾向があることがわかった.
著者
藤井 小羊 吉田 真司 呉屋 和美 石川 あずさ
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.27, 2008

【はじめに】<BR> 近年、脳性麻痺児治療でKetelerは、ICFでの活動や参加の観点で両親、子どもと協同して目標設定する過程を述べている。<BR> 今回、機能的脊髄後根切断術(FPR)後の痙直型両麻痺児に対する目標設定と治療継続により日常生活動作改善が得られたので報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 6歳1ヵ月。在胎28週、体重1,140gで出生。粗大運動能力分類システム(GMFCS)レベル4。MRIで両側側脳室後角にPVL所見あり。<BR> 平成19年4月12日、満5歳1ヵ月時、FPR施行。<BR>【目標設定】<BR> 家族の要望を聴取し、家族と協同して、1.円滑な床上移動、2.歩行器歩行の獲得、3.椅座位での円滑な両手活動、4.靴下及び靴の着脱を目標に設定した。<BR>【評価】<BR> 1.姿勢筋緊張:左上下肢により高緊張が見られた。上部体幹の屈曲に伴い、両上肢は肩関節屈曲・内旋、肘関節屈曲、両下肢は伸展・内転・内旋方向への高緊張が見られ、手関節、手指の選択的な運動が困難であった。<BR> 2.運動機能:バニーホッピングでは、上部体幹の屈曲に伴う両上肢の引き込みにより頭部から左前方へ崩れる傾向が多かった。また椅座位での机上活動では体幹が安定せず、空間操作は難しかった。<BR>【経時的評価】<BR> 術前、術後1ヵ月から1ヵ月毎にGMFM-88を実施、測定毎に各領域の%点数とGMFM-66を算出した。同時に術前、術後3ヵ月毎にPEDIを実施、測定毎に機能的スキルの各領域の尺度化スコアを算出した。<BR>【治療】 <BR> 下部体幹を基点に、自己身体軸を中心とした座位及び立位活動で、手関節、手指の選択性と視覚との協応を促した。課題は粘土を包丁で切る等、両手動作課題の中で利き手と非利き手の関係を意識した。<BR>【治療目標の達成度】<BR> 運動機能:床上での姿勢変換が安定し、歩行器歩行では円滑な下肢の分離性、交互性が得られ、室内では実用的になった。術前、術後12ヵ月のGMFM-88の各領域での%点数を比較すると四つ這いと膝立ち領域で45.24%から73.81%、立位領域で7.69%から25.64%、GMFM-66では43.79±1.05から48.97±1.17へと向上し、統計上有意差が認められた。<BR> 日常生活動作:入浴では椅座位にて、身体を完全に洗えるようになり、更衣では靴下及び靴の着脱が可能となった。術前、術後12ヵ月のPEDIの機能的スキルでの各領域の尺度化スコアでは統計上有意差は認められなかったが、セルフケア領域は61.8±1.6から63.2±1.7、移動領域は40.3±2.3から42.4±2.3、社会的機能領域は65.1±1.6から66.2±1.7へと向上した。<BR>【おわりに】<BR> 今回、痙直型両麻痺児に対し、一定の機能的改善が得られ、一部の日常生活動作改善が得られた。それらを日常生活に定着させるにはその機能が実際に遂行される環境が必要であり、将来を見据えた治療を展開していくことが今後の大きな課題である。
著者
熊倉 功夫
出版者
筑波大学
雑誌
歴史人類 (ISSN:03854795)
巻号頁・発行日
no.15, pp.p155-197, 1987-03
著者
Tomoki Yoshida Shuichi Hirono
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.546-555, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
32
被引用文献数
13

We report a three-dimensional quantitative structure–activity relationship (3D-QSAR) analysis of CDK2 inhibitors using fragment molecular orbital (FMO) calculations and partial least squares (PLS) regression. In our analysis, fragment binding energies of individual amino acids and fragment binding energy of a single ligand in a protein–ligand complex are evaluated by FMO calculations and used as descriptors in PLS regression to estimate biological activities of the ligands. The analysis was applied to the system of CDK2 protein and its inhibitors and the effectiveness of the method was tested. Application of the 3D-QSAR model demonstrated that it offered good predictive ability and was able to predict not only biological activity of ligands but also identify important amino acid residues which could be targeted in order to improve ligand activity.
著者
岡部 多加志 小林 俊恵
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.71-76, 2006 (Released:2008-01-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

当院におけるアルツハイマー型認知症例に対する音楽療法について紹介した.軽度の認知症を伴ったアルツハイマー型認知症の患者10名(平均年令73.1歳)を対象として,小グループによる活動的音楽療法を1回60分,週2回のペースで6ヶ月間施行した.音楽療法終了後,異なった複数の評価方法を用いて効果の判定をした.音楽療法士による評価および高次大脳機能検査では,それぞれ半数以上の症例に改善効果を認め,お互いの判定結果には有意の相関性がみられた.ヘッドホーンを介しての音楽刺激によるデジタル脳波記録では,症例個々の好みの音楽に対するα反応性が良く,同時に好きな音楽を聴くことによりαリズムの速波化が認められた.
著者
松田 美穂
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.29-35, 2001-12

介護老人保健施設において開設より5年に亘り音楽療法を実践した。施設の入所定員は100名,通所リハビリテーション定員は25名で,平均年齢は83.6歳,現在の平均要介護度は入所2.9,通所2.0である。初年度の音楽療法実施回数及び述べ参加人数,平均参加率は106回,3571名,79.4%で,4年目は128回,7055名,86.1%であった。他のリハビリテーションやレクリエーションに比べ音楽療法は参加率は非常に高かった。音楽療法を通して痴呆の問題行動の軽減や日本の伝統文化との融合にも取り組んできた。その一例として入浴拒否者に対し「風呂嫌いの歌」を創り,共に合歌することによって入浴拒否の軽減をみた。更に音楽療法を句会の参加と投句の動機付けに用い,参加者の維持,継続と投句の増加,質の向上を得た。また継続して投句されている方では,一般の方,痴呆の方を問わず長谷川式簡易知能評価スケールでの低下が認められない方が多かった。以上のことより音楽療法の有用性,癒しの効果を体験し,その可能性を確信するに至った。しかし入所者の聴力結果の結果からは,調査を行った46名中16名に両耳に中度(聴力レベル50&acd;70dB)以上の難聴が認められた。聴力に障害のある人が多いことを考慮すると,補聴器の使用やプログラムの内容について更なる検討が必要となろう。
著者
木村 大毅 Chaudhury Subhajit 成田 穂 Munawar Asim 立花 隆輝
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.4P3J1002, 2019 (Released:2019-06-01)

画像を活用した異常検出手法は数多く提案されている.その中でも,通常クラスについて十分に学習された生成モデルから再構成誤差を算出して,それを基に検出する手法は代表的である.ところが,従来のGANを用いた手法では,局所解への収束やノイズへの頑健性が問題となる.そこで本稿では,条件付き生成モデルとなるVAEGANからの再構成誤差を活用する手法を提案する.また,モデルから注目領域を算出し,重み付けを行う手法も提案する.そして,ノイズを含んだ複数の画像データセットを用いて比較実験を行い,提案手法が従来手法よりも高い精度で異常を検出できることを確認した.
著者
飯野 なみ 西村 拓一 福田 賢一郎 武田 英明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1K3J401, 2019 (Released:2019-06-01)

本稿では,ギター奏法知識におけるオントロジーと手続き的知識の併用による知識の構造化について考察する.我々はこれまで,社会活動一つである楽器演奏に着目し現場の知識を収集・体系化してきた.中でも奏法の種類が多いクラシックギターを取り上げて,ギター奏法オントロジーを構築した.しかし,複雑な記述形式を持っているために分野の専門家にとって理解し難いという課題がある,本研究では,ギター奏法オントロジーと手続き的知識の併用による知識の構造化プロセスを設計し,オントロジー専門家と分野の専門家が取り組むための要件や技術などを明確にした.さらに分野の専門家に対するアンケート調査から,本プロセスの有用性を確認することができた.