著者
清水 俊
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
no.1, pp.146-156, 2006-03

本稿では、ハンス・ヨナスの『責任という原理』において、ヨナスが責任をどのようなものとして捉え、そして私たちが何をしなければならないと考えていたかを明らかにする。そのためにまずヨナスの形而上学的な論理を明らかにし、その後に今日の科学技術文明において求められる責任原理による倫理学の必要性について検討する。
著者
本武 陽一
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

近年発達を続けるDeep Neural Networks(以下,DNN)が,与えられたタスクを達成するために必要なデータセットの情報を,その分布を多様体としてモデル化することで抽出する機能を持つことが示唆されている.また,DNN技術の有用性の確認とともに,多数の研究者・技術者が各種のDNNアルゴリズムの開発やパラメータチューニングを行なっている.この状況は,各種データセットに対する多様体構造についての莫大な知見が蓄積されつつあることを意味する.本研究の目的は,その取り出された複雑な形状を持つ多様体構造を,解釈可能な形で抽出する手法を提案することである.具体的には,物理学においてネーターの定理として知られる,系の対称性と系の保存量を結びつける技術をヒントとして,多様体の座標変換に対する対称性とその意味づけを行う手法を提案する.提案手法を中心力ポテンシャルにしたがって運動する物体の時系列データに適用した結果,角運動量保存則に従う対称性を抽出可能なことが確認された.
著者
大槻 知貴 菅谷 信介 大西 佑紀
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

推薦システムを構築する際には、行動ログからユーザおよびアイテムの潜在的な特徴を推測する(協調フィルタリング)と同時に、それらの既知の属性を考慮に入れることが不可欠である。2つの両極端なアプローチ間を自然に補間するため、特に行列分解を拡張する形で、多数のモデルが提案されてきた。本研究では、深層学習技術と高確率的プログラミングソフトウェアの近年の発展に基づいて、非常にシンプルかつ簡潔な実装でありながら、柔軟かつ過学習に対して頑健な(非行列分解型の)モデルを提案し、実サービスのデータに対して性能を評価する。また、提案モデルの予測値と組み合わせ最適化問題を用いて作成された配信計画を実サービスに対して適用し、特定の指標に有意な改善が見られることを示す。
著者
ガルシア G.W. バプチステ Q.S. アドグワ A.O. 加国 雅和 有嶋 和義 牧田 登之
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.55-66, 2000
参考文献数
20
被引用文献数
1 14

ヨーロッパ人が入る前には南米, 中米およびカリブ海諸国の一部ではアグーチが重要な蛋白資源であった。最近トリニダード・トバゴではアグーチを飼育繁殖して食肉その他として利用するようになっている。飼育に重要な餌付けのために, 消化器官の解剖学的知見が必要であるが, これまでの文献は, 数少なくまた, 胃, 腸など個々の部分について述べているので, 本報では全体を概観して口腔, 食道, 胃, 小腸, 大腸, 各部分の構造と長さおよび相対的重量を記載した。材料はトリニダード島南部のハンターから入手した10頭のアグーチを用いた。現場で採材後凍結し, 解剖はそれを解凍して行った。歯式は1013/(1013)=20で, 犬歯と前臼歯の間隙が広い。食道は長さ15.4cm, 直径0.5cm位で, 胃の長さは平均13.8cmであった。小腸の長さは全体で700±124cmであった。十二指腸と空腸の直径は1.4cmで回腸の直径は0.4cmであった。大腸のなかで特徴的なのは盲腸でその頭部の直径は4.2±0.8cm, 尾部の直径は2.4±0.4cmと太く, 胃よりやや小さい程度で, 盲腸の長さは平均22.5cmであった。結腸の直径は近位部は2.4±0.9cmとやや太いが遠位部は1.3±0.4cmと細くなっており, これは直腸とほぼ同じ太さである。結腸と直腸の長さは117±2.5cm。肛門腺が一対みられ, 長さ1.8〜3.0cm, 幅1.3〜1.8cm, 重さ1.3〜3.5gであった。左側の腺の方が右側よりも重い。アグーチは小腸が長いのが特徴で, 絨毛の密度の比較解剖学の材料に好適である。今後の盲腸, 肛門腺の比較解剖学的研究にも役立つであろう。
著者
清水 直子 田代 雅文 須加原 一博
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.138-141, 1998-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
8

異型狭心症の治療中に, 腹痛や腹部膨満などイレウス症状を繰り返し, 腹部症状が狭心症発作を誘発する症例を経験した. 持続硬膜外ブロックによって腹痛や腹部膨満などのイレウス症状はもちろん, 狭心症症状も著明に改善した. しかし, 硬膜外注入を停止するとイレウス症状の増悪だけでなく狭心症発作が頻発するため, 2カ月以上にわたって持続硬膜外ブロックによる管理を必要とした. 入院が長期にわたるため, 外泊および外来通院による管理を余儀なくされた. 硬膜外カテーテルの長期留置による効果の減少, 注入時の背部痛などが生じ, カテーテルを抜去せざるをえなくなった. 保存的治療にて症状が改善せず, 最終的に手術が施行された.
著者
望月 美也子 長谷川 昇
出版者
岐阜女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本邦において、女性の平均寿命が83歳を越え、閉経後女性人口が急増しているため、閉経後女性のquahty of life(QOL)の改善と更年期の諸症状を緩和させるかどうかを本研究の目的とした。平成16年度は、雌Zuckerラットの卵巣を摘出し、高脂肪食を摂取させることにより、更年期モデルラットの作成を試み、卵巣を摘出したラットの血清エストロゲン量の低下を経時的に確認して、更年期モデルラット作成法を確立した。平成17年度は、確立した更年期モデルラットを使用し、脂肪蓄積を促進させる緑茶カテキンを投与することで、更年期モデルラットの脂肪組織重量が増加するかどうかを確かめた結果、コントロール群と緑茶カテキン投与群の間に、摂食量、飲水量の有意な差がみられなかった。また、体重増加量をコントロール群と比較しても、ほぼ同様の傾向を示したが、コントロール群と緑茶カテキン投与群の子宮周囲脂肪組織重量に有意な差がみられたことから、緑茶カテキンの投与が、子宮周囲の脂肪組織重量に影響を及ぼす可能性が明らかとなった。そこで、平成18年度は、卵巣を摘出し更年期となったSD更年期モデルラットを、緑茶カテキン投与群、緑茶カテキン投与+運動群、非投与+運動群の3群に分け、運動負荷を与えた際の、骨代謝への効果を明らかにすることを目的とした。ランニングトレーニングは、実験動物用トレッドミルを用いて持久走的運動を行わせ、更年期を考慮し、傾斜6度、30m/m,1h/d,5d/wから速度と時間を徐々に増加させ行い、血清エストロゲン量をELISA法により経時的に測定し、大腿骨を破断して骨強度を測定した。以上の結果を総合すると、緑茶カテキンの投与と運動負荷が骨形成に有効であることが示唆され(論文執筆中)、本研究の結果を若手研究(B)に発展させ、更年期モデルニットを用いたトレーニング効果を詳細に明らかにしていく予定である。
著者
金山 和彦 Kazuhiko KANAYAMA 新見公立短期大学美術教育学
雑誌
新見公立短期大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.45-52, 2002-12-25

具体美術協会とは1954年関西において吉原治良を中心に結成された前衛美術集団をいう。吉原の「オリジナル性」に着目した指導方針により,具体美術協会集団は,タブロー作品をはじめ,野外・舞台を用い,アクションやハプニングなどを実験的に引き起こし,激しい身体性・触角性・物質感・強い精神性を素養とする作品を発表した。その後,具体美術は,吉原の死をもって1972年に解散したが,初期メンバーの独創性や後期メンバーのテクノロジー的要素がそれぞれに評価され,分岐した形で今尚,具体美術協会は存在している。本稿においては,1950年代以降,このような具体美術協会メンバーの新規な表現作品が,当時のアメリカにおける抽象表現作品群と質を異にし,国内の幼児・児童美術から触発され,また影響を与えていたことについて言及したいと考えている。尚,幼児教育との接点については以下の調査項目を挙げた。[○!1]具体美術メンバーによる児童誌『きりん』へのコメント内容について[○!2]嶋本昭三氏の児童・障害児美術観[○!3]具体美術協会の作家が関与した幼稚園