著者
黒田 朋斎 中尾 菜穂
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.15, pp.23-38, 2019-03

本稿では、ベトナムの中等日本語教育支援として2016年度末から2017年度にかけて全国の中学校および高校のベトナム人日本語教師を対象に、筆者らが定めた「教師の成長イメージ」にある「授業に慣れた教師」を「自立した教師」に引き上げることを目的として実施した全国研修およびそのフォローアッププログラムについて述べる。「学習者中心」をテーマとした全国研修の参加者(以下参加者)は、その後のフォローアッププログラムとして全国研修での学びを実践する公開研究授業、および全国研修非参加者(以下非参加者)との合同研修での報告、最終レポートの作成を行った。その結果、参加者の「学習者中心」の授業の実践を促すことができただけではなく、「学習者中心」のテーマが合同研修を通じて非参加者にも理解され実践につながる様子が見られた。本プログラムには教師の成長を促す一定の効果があると見られるが、その効果についてはプログラム実施を繰り返しながら継続して検証していく必要がある。
著者
中尾 有岐
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.15, pp.7-22, 2019-03

グローバル時代の社会では、多様な人々が英知を出し合い、新たな知を共に創ることを目的とした「共創型対話」が重要な役割を果たすと考えられる(多田 2016)。本稿では、共通言語が初級で多国籍の学習者集団において「共創型対話」は生まれたのかを、「にほんご人フォーラム2017生徒プログラム」の実践から検証する。実践デザインは、日本の学校教育の実践から得られた共創型対話を引き出すための教師の手立てと日本語教育の実践から得られた多国籍集団における困難点を踏まえて行った。その結果、最終課題を考える対話のプロセスから「共創型対話」が観察され、具体的な対話からは、共創型対話の姿勢や態度が観察された。また、ふり返りの記述から、言語能力が初級の生徒も共創型対話に貢献したという意識を持ったり、自己成長を感じたりしていることがわかった。引率スタッフや各国の教師のアンケートからも生徒の成長が示されていた。
著者
犬塚 潤一郎 イヌツカ ジュンイチロウ Jun-ichiro INUTSUKA
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要
巻号頁・発行日
no.45, pp.21-39, 2008-04

How have we received "actual feeling" from the images which we see in our media-society? There is more what we see through media than that with which we actually meet. Media technology fills society with signs through reproducing a sign from a sign. For this mediological inquiry, I refer to Benjamin's "The Work of Art in the Age of Mechanical Reproduction", comparing to other essays on photography as Barthes' and Sontag's, with the conceptual framework from Augustin Berque's mesological approach, which distinguishes three levels for the world; the earth, biosphere, and a level of milieu, and Jakobson's linguistic model of the sifter.
著者
犬塚 潤一郎 イヌツカ ジュンイチロウ Jun-ichiro Inutsuka
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-11, 2010-03-19

The theory of mediance, developed by Augustin Berque through synthesis of the ontology and the geography, inspired by the idea of Fudosei of Japanese philosopher and phenomenologist Tetsuro Watsuji, has a range to reorganize our relation to the environment, as called reconstituting the cosmos of human. In this essay, I will try to retranscribe his theory to solve the subject of modern society, especially focusing on the role of the university for solving the subject of business organizations and showing the draft of an educational program.
著者
松下 晴彦
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.83-91, 2010

古屋論文は、多くの課題を提示しているが、主要なテーマは1888年のデューイによる個体性、個と普遍(国家、社会)、民主主義の観念の検討である。古屋論文では「中心化と脱中心化」(モナドロジー)という方法をとるが、本稿では、観念の歴史(認識)という観点から、有機体的観念論期のデューイ思想の発展を辿る。すなわち「1888年のデューイというモナド」に焦点化するというよりも、初期デューイ思想の形而上学的・倫理学的展開において、ライプニッツや民主主義がどのように扱われたかという視点である。「個と普遍」論争については、古屋論文がライプニッツを起点としているのに対し、デューイ(タルド)とライプニッツを結ぶ線は、アリストテレスに行き着くこと、またこの観念史を19世紀末に受け継いだパースが個的なものに対し、「不確定なもの」から解釈している点を再評価する。
著者
小玉 重夫
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-36, 2010

物語を、他者との出会いと共同作業のなかでの語り直しのプロセスとしてとらえる場合、重要なのは他者の性格とその位置である。そこには、了解可能な他者と了解不可能な他者という、二重の他者性があり、この両者の関係をどのようにとらえるかが問題となる。この問題は、他者の側からだけでなく、他者を了解、あるいは不了解する語りの当事者=主体の側からも、深められなければならない。この点について近年精力的な問題提起を行っているジュディス・バトラーの議論をふまえていえば、他者からの問いかけに対する応答を迫られることによって、物語る主体が脱中心化されるという視点は、他者の他者性を徹底させるうえで、重要なてがかりを提供する。
著者
鈴木 惇 安部 恵 板垣 千尋 山田 正子 中澤 勇二 伊藤 晋治
出版者
修紅短期大学
雑誌
修紅短期大学紀要 (ISSN:13498002)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.57-65, 2007

ブルーチーズ(ゴルゴンゾーラ、ブルー・デ・コース、ロックフォールおよびスティルトン)における脂肪酸の分布状態を組織化学的方法により調べた。ブルーチーズにおける結晶性の構造物、脂肪およびタンパク質の基質は、脂肪酸の染色により染また。この知見は、遊離脂肪酸が結晶性の構造物、脂肪およびタンパク質の基質に分布したことを示す。カビが増殖した部位およびその周囲のタンパク質の基質は濃く染まった。カビが増殖した部位から離れるにつれて基質は薄くなり、染色されなくなった。結晶は濃く全体に染まった。表層が染まり内部が染まらない結晶が僅かにあった。全体が染まる脂肪球、表面の一部が染まる脂肪球および染まらない脂肪球が存在した。表面の一部しか染まらない脂肪球および全体が染まらない脂肪球の内部には、偏光装置による複屈折性が観察された。スティルトンは、カビが増殖した部位から広い範囲が染色された。ロックフォールとブルー・デ・コースでは、カビが増殖した部位およびその周囲が染まった。ゴルゴンゾーラでは、カビが増殖した部位が染まったが、染色される範囲は小さかった。スティルトンは、ほかのブルーチーズよりも脂肪酸が広く分布し、ゴルゴンゾーラは、ロックフォールとブルー・デ・コースよりも脂肪酸の分布は少なかった。ロックフォールとブルー・デ・コースの脂肪酸の分布は、同じ程度であった。

1 0 0 0 国語大辞典

著者
尚学図書編集
出版者
小学館
巻号頁・発行日
1988

1 0 0 0 OA 憲教類典

著者
近藤守重 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[64],
著者
八田 貞義 大橋 久治 龜山 良一
出版者
日本細菌学会
雑誌
実験医学雑誌 (ISSN:18836976)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-47, 1941-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
30
著者
山根 優一 吉田 英樹 森 聡 山田 将弘
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.248, 2016

<p>【目的】</p><p>近年,脳卒中患者に対する上肢への電気刺激療法として,末梢神経電気刺激療法(Peripheral nerve stimulation:以下,PNS)の効果が注目されている.下肢に対するPNSの報告は散見する程度で,感覚障害に対する報告も,我々が調査した限りではほとんどない.また,40分間以上の報告が多く,患者の体力面や集中力を考慮すると,臨床での適応は困難であることが多い.今回,重度感覚障害を呈した回復期脳卒中患者に対する短時間の下肢PNSと課題指向型練習の併用が,下肢の感覚障害と歩行能力に及ぼす影響をABデザインで検討したので報告する.</p><p>【方法】</p><p>症例は右視床梗塞で左片麻痺を呈した50代の男性であった.発症前より,糖尿病で両下肢に感覚鈍麻があったが,脳梗塞発症後,感覚障害の程度と範囲に増悪を認め,表在感覚は脱失していた.本研究開始時,発症後36病日経過しており,Brunnstrom stage 上肢Ⅴ,手指Ⅵ,下肢Ⅵで著明な麻痺は認められず,歩行は4点杖で自立していた.主訴は両下肢末梢の感覚脱失,立位・歩行時の膝折れ感であった.電気刺激装置は低周波治療機器(イトーESPURGE, 伊藤超短波社製)を使用した.電気刺激条件は対称性二相性パルス波,周波数100Hz,パルス幅250μsec,刺激強度は筋収縮が視覚的に確認できない感覚閾値とした.刺激部位は麻痺側脛骨神経とし,電極間距離5cmで電極を貼り付けた.治療時間は20分間とし,課題指向型練習を併用して行った.課題指向型練習は椅座位で,両足関節の底背屈運動を行った.評価項目は,足部触覚,振動覚,Functional assessment for Hemiplegic Gait(以下,FAHG),10m歩行の所要時間とした.足部触覚は非麻痺側大腿部を10とし,麻痺側の足背部,踵部,母趾球,小趾球の触覚をNumerical Rating Scale(以下,NRS)で測定した.振動覚検査は音叉(C-128Hzアルミ音叉,ニチオン製)を用いて,麻痺側大腿骨外側上顆を10とし,麻痺側内果をNRSで測定した.10m歩行の測定は,助走路と減速路をそれぞれ除いた10mの所要時間をストップウォッチで2回測定し,速かった方を代表値とした.研究デザインはABデザインを採用し,基礎水準期(以下,A期)を課題指向型練習のみとし,操作導入期(以下,B期)をPNS併用で課題指向型練習を行った.A期とB期の期間はそれぞれ1週間であり,計2週間の実施期間とした.治療介入は1日1回とし,週7日の介入とした.評価は介入前,A期終了後,B期終了後に行った.</p><p>【結果】</p><p>足部触覚は,介入前では足背部0,踵部3,母子球0,小趾球1,A期終了後では足背部0,踵部0,母子球0,小趾球0,B期終了後では足背部0,踵部2,母子球1,小趾球0であり,著明な変化は認められなかったが,足底の知覚領域が拡大したという内省報告が得られた.振動覚は介入前2,A期終了後3,B期終了後5であった. FAHGは介入前6点,A期終了後8点,B期終了後12点であった.10m歩行の所要時間は介入前23.88秒,A期終了後23.75秒,B期終了後20.75秒であった.</p><p>【考察】</p><p>結果より,PNSと課題指向型練習の併用は,表在感覚よりも深部感覚を優位に改善する可能性が考えられた.下肢PNSと課題指向型練習を併用したことで,20分間という短時間でも感覚野の興奮性が増大した可能性が考えられた. FAHGが改善した理由としては,下肢PNSに伴う麻痺側下肢の感覚障害の改善が考えられる.また,PNSでは運動野の興奮性が増大することも報告されている.下肢PNSにより麻痺側下腿三頭筋の筋出力が向上し,麻痺側下肢の荷重応答期から立脚中期にかけての下腿の前傾が可能となり,10m歩行の所要時間や歩行速度に変化を認め、歩行能力を改善したと考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は飯塚市立病院倫理審査会に承認を得て行った.症例には治療主旨,安全性と個人情報の取り扱いについて口頭と書面で説明し,署名にて同意を得た.</p>
著者
大和田 広樹 鷺池 一幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【目的】体性感覚障害は単独に存在しても深刻な運動障害を生じ歩行,ADLに影響を及ぼす。現在,脳卒中後の感覚障害に対する治療プログラムのエビデンスは乏しく,有効な治療法が確立されていない。近年の研究で末梢神経電気刺激(PSS)を用いることで運動野の機能的な変化が生じた報告があり,感覚野も可塑性変化を生じる可能性があると考えられている。今回,重度感覚障害を呈する脳卒中患者にPSS治療とトレッドミル歩行を併用し,感覚障害が改善した症例を経験したので報告する。【症例】初発の回復期脳卒中患者で50歳代の男性。診断名は中脳背側脳動脈奇形による脳室内出血。症状が緩和したことで脳動静脈奇形流入動脈閉塞術を施行したがその後に左中脳大脳脚の虚血を合併した。BRSは下肢VI。表在感覚は脱失,深部感覚は軽度鈍麻で異常感覚を認めていた。著明な高次脳機能障害がなく認知機能も正常,歩行,ADLは自立であった。【方法】研究デザインはシングルケーススタディのABAデザインを用い,基礎水準期(A期)にPSS治療のみを30分,操作導入期(B期)はトレッドミル歩行と同時にPSS治療を30分実施した。撤回期(A2期)はPSS治療30分のみを行い,各期間を2日間実施した。評価はそれぞれ視覚的アナログスケール(VAS)を用いて実施直後,5分後,10分後,30分後,1時間後に行った。評価結果が良好であった治療方法を選択し,継続して行い経時的な変化を検討した。PSSの設定は矩形波,周波数10Hz,Burstモード,刺激強度は2~5mAに調整し,刺激部位は腓骨神経領域とした。トレッドミルは歩行速度を3.5km/hに設定した。【結果】A期のVASは直後(2/10),5分(2/10),10分(0/10),30分(0/10),1時間(0/10)であった。B期では(3→2→1→1→1/10)と軽度改善と感覚の維持がみられたが翌日には消失していた。A2期では改善の程度はB期と同様であったが,時間の経過とともに消失した。内省報告と主観的な効果の期待値からPSS治療とトレッドミル歩行を併用したアプローチを選択した。最終評価では初回と比較して(0→4/10)と変化がみられた。【考察】PSS治療は反復刺激により対側感覚野の活動が長期増強様の過程によりシナプス可塑性変化を誘導し,触覚や知覚,感覚運動処理の変調が生じるとしている。トレッドミル歩行では内側一次感覚運動野と補足運動野の酸素化ヘモグロビン濃度が増加することを報告している(Miyai)。このことからPSS治療とトレッドミル歩行を併用することで入力される感覚量,筋活動量が多くなり一次感覚野のみならず,一次運動野や補足運動野,背側運動野が活性化し脳の可塑性変化を増長させ感覚障害が改善したと考えられた。本症例は回復期段階で経時的な脳の可塑性変化によるとも考えられた。しかし併用介入後に短期間で改善したことは興味のある結果となった。今後は症例を増やしPSS治療の刺激パラメーターを一定にするなど感覚障害への有効な治療法として検証していきたい。