著者
山岸 治男
出版者
大分大学教育福祉科学部
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-122, 2008-10

財政的に疲弊した米沢藩を上杉鷹山が立て直した史実については、今日広く知られるところとなった。特に経済人や行政関係のトップに評価され、今日の日本の行財政改革において、「鷹山に学べ」の声もあがっている。こうした評価の陰で、一般には十分認知されないが、鷹山の改革内容の一つに「福祉政策」の側面がある。この側面には、今ふうに換言すれば、人権尊重、弱者救済、住民参加等を基調とする「福祉政策」的発想がある。この発想こそが財政改革を成功させた要因である。The reform of the Yonezawa clan by Uesugi Yozan is widely known in Japan. He is especially highly-appraised for his approach for the reform by the economic world today. Then, if we take a closer look at it, we can notice that his reform includes an aspect of welfare policy as well. So we can set up the following keywords in the reform by Uesugi : Protection of human rights, Standing by the weak, and Citizen's participation in policy making.
著者
黄 順姫
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-33, 1996

本稿は相撲の場合競技者の身体がおのおのの民族の有する身体文化と深く関わりながら, 特定の競技の固有性の中で創出された文化の規律化されたものであることを分析してきた。具体的には力士の身体を「受容としての身体」「表出としての身体」「メタファーとしての身体」という枠組みをもうけ考察を行った。その結果次のことが明らかになった。すなわち, 「受容としての身体」について, 第一に, 日本の力士は阿うんの呼吸を特徴とする日本の相撲競技の立ち合の仕方を規範として受容している。第二に, 力士は土俵を通じて自己完成を行う相撲道を身体化する。第三に, 力士の身体への裸身信仰は日本の民族の身体文化と深く関係づけられている。<br>また,「文化の表出としての身体」について, 第一に力士の身体は彼が行った稽古の質, 量及び稽古への態度を表出する。第二に, 力士の身体における感情表出の仕方は相撲社会のなかで形成された相撲の文化を内面化していることを表す。第三に, 力士の身体の得意技, 型は彼の身体の特徴を反映し, 相撲に対する内面のあり方を表出する。<br>さらに,「メタファーとしての身体」について, 第一に力士の身体は「個人の身体」と「社会的身体」との「交差点」に成立する日本文化の遊びのフォルムである。第二に, 力士の身体は「政治的身体」として国際間の象徴的地位をめぐる象徴的権力闘争の桔抗の構図を表象している。第三に力士の身体についてアメリカでは「脂肉」「巨大性」「パワー」「破壊力」の規範化されたイメージが創出, 消費されている。以上「メタファーとしての身体」から次の結論をみちびきだすことができる。すなわち, メタファーとしての力士の身体は相撲の特性に由来し, 相撲世界の固有の論理を越え, 国際政治・経済の関連のなかで象徴的権力の維持, 再生産のからくり人形として操作されているのである。
著者
清水 市郎 志村 重顕 松原 知子 松川 忠文 相馬 正美
出版者
日本建築仕上学会
雑誌
日本建築仕上学会 大会学術講演会研究発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.63, 2007

都市再生機構(旧住宅都市整備公団)では、昭和52年度から屋根外断熱工法として、スラブ上に防水層を施工、その上に断熱材を施工し、保護コンクリ-トで押える「アップサイドダウン工法(USD工法 )」を採用してきた。本論文では、経年25年までに於ける、アスファルト防水層について、(財)国土開発技術センタ-「建築防水の耐久性向上技術」の診断方法に従って、防水層物性、基材物性、及びアスファルト物性についての調査分析を行い、USD工法の特徴について検討を行った
著者
森田 敏 白土 宏之 高梨 純一 藤田 耕之輔
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.102-109, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
29
被引用文献数
22 44

従来,水稲の高温による登熟不良現象については多くの研究が行われたが,高夜温と高昼温のどちらが主因であるかについては一定の結論が得られていない.本研究では,人工気象室を用いて,34/22℃(昼温/夜温)の高昼温区に対して,これと日平均気温が同じである22/34℃の高夜温区を設定し,22℃一定温度あるいは28/20℃(日最高気温/日最低気温)を対照区として,玄米1粒重と良質粒歩合について比較解析した.その結果,玄米1粒重は高夜温区においてのみ対照区より有意に低下した.一方,玄米の良質粒歩合は高夜温区と高昼温区の両者で低下した.したがって,高温による玄米1粒重の低下の主因は高夜温にあること,および高夜温と高昼温のいずれもが外観品質を低下させることが明らかになった.高夜温区における玄米1粒重の低下は,いずれの着粒位置でも観察されたが,試験年によっては,弱勢穎果である3次籾での低下程度が大きかった.各試験区間の玄米1粒重の違いは,玄米の3つの粒径(粒長,粒幅,粒厚)を乗じた玄米体積の指標値の違いにほぼ一致した.高夜温区では対照区に比べて主に玄米の粒幅と粒厚が減少し,高昼温区では粒幅が減少したものの粒厚は明らかに増大した.これらのことから,高夜温区では玄米の粒幅の減少を粒厚で補えずに玄米1粒重が低下するのに対し,高昼温区では玄米の粒厚の増大が粒幅の減少を補償して玄米1粒重が低下しないとみることができた.
著者
松江 勇次 佐藤 大和 内村 要介 尾形 武文
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.463-468, 2002-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
28
被引用文献数
6 7

要旨 : 早晩性を異にする水稲低アミロース極早生4,早生2および晩生1品種の計7品種を供して,登熟温度の違いが精米のアミロース含有率および玄米の白濁に及ぼす影響を検討した.低アミロース米品種においても登熟温度と精米アミロース含有率との間には,一般飯米用品種で認められているように,有意な負の相関関係が認められた.さらに,低アミロース米品種における登熟温度の違いによる精米アミロース含有率の変動はコシヒカリや日本晴に比べて著しく大きかった.登熟温度の違いによる精米アミロース含有率の品種間の変動幅をみると,柔小町が6.2~17.4%と最も大きく,逆にミルキークイーンは7.2~10.0%と最も小さかった.精米アミロース含有率の変動の大小の要因としては,登熟温度や千粒重の変動によるものではなく,変動の大きかったスノーパールを除く5品種は低アミロース性遺伝子で気温による精米アミロース含有率の変動が大きいdu遺伝子を有しているためと推察された.登熟温度と白度値(白濁程度の指標とした)との間には有意な正の相関関係が認められるとともに,登熟温度が玄米の白濁に及ぼす影響の程度は品種によって異なり,はなぶさとスノーパールのように登熟温度の違いに関係なく白濁する品種と,彩,ミルキークイーン,ソフト158,朝つゆ,柔小町のように登熟温度の違いによって白濁の有無および程度が異なる品種が判明した.また,精米アミロース含有率と玄米白度値との間には有意な負の相関関係が認められた.精米アミロース含有率と玄米白度値について登熟温度間と品種間の分散成分の値を比較すると,品種間の分散成分の方が登熟温度間の分散成分より大きかったことから,精米アミロース含有率と白濁は品種の影響を大きくうけることが示唆された.
著者
片岡 亜紀子 石山 恒貴
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション = 地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.73-86, 2017-03-31

研究成果の概要 (和文) : 家でも職場でもない第3 の居心地の良い場所としてサードプレイスが注目されている。多様な人々が集まる地域のサードプレイスは、地域活性化の核として期待が高まっている。また離職や休職をきっかけに、女性がはじめて本格的に地域とかかわる場としてのサードプレイスの必要性が指摘されている。しかし、サードプレイスを創設したものの、地域に定着しないまま消滅する事例も散見される。地域で継続的なサードプレイスとして存在するための要素、およびその効果とはどのようなものであろうか。本稿はこれらの点を解明するためにリサーチクエスチョン(以下、RQ)を設定した。 RQ1: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような経緯で成立したのか RQ2: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスはどのような機能をもっているのか RQ3: 地域で継続性のある存在となったサードプレイスの機能はどのように効果の発揮につながるのか、とりわけその地域の女性に対してどのような役割を果たしているのか RQ を解明するために、地域で継続性のあるサードプレイスを運営する2 団体を選定し、事例研究として観察調査、インタビュー調査、資料調査を行った。分析の結果、RQ1 では管理者が当事者として問題意識をもち、個人的な活動から外部との連携を経て、地域のサードプレイスとして成立したことがわかった。RQ2 では複数の参入機能、物理的な場、人的な場、インターネット上の場、地域のハブ機能、段階的に働く場、話し合う場、の機能があることがわかった。RQ3 では人的ネットワークの形成、地域への興味喚起、さらに地域の女性に対する自己効力感の向上、新しい働き方の認知、といった効果を発揮していることがわかった。以上から地域のサードプレイスが効果を発揮するためには、社会的、個人的背景からニーズを察知し発展の段階と目的に合わせ適切に設計し、地域のステークホルダーに働きかけ連携する必要があると考える。研究成果の概要 (英文) : The purpose of this paper is to examine the roles of third places in regional activation. Third places are places outside the workplace and thehome. These places are further described as goodplaces. Third places can be an integral part ofregional activation, especially for women who have been on a career break. This is because third places can provide them with their firstopportunities for regional activation. The research questions in this paper are as follows:RQ1 How were the third places that have continuity established? RQ2 What are the roles of the third places that have continuity? RQ3 What are the effects of the third places that have continuity? This paper selects two third places and introduces their histories, roles, and effects. The major findings are as follows: 1) The founders of the third places have a sense of ownership and work together with various local stakeholders. 2) The third places function as the hub of the local communities' networks. This is because the third places are open to diverse people in local communities. 3) The third places have the effect, especially for women, of initiating interest in regional activities and improving their self-efficacy. On the basis of these findings, it is suggested that we should understand the importance of cooperation with local stakeholders to create the continuous and effective third places that function as the hub of local communities.
著者
寺村 久義 高野 泰志
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.192, pp.50-53, 2000-09

寺村 東京国際フォーラムにある六〇〇坪のイベント会場を借り、当社の役員の写真を掲げた生花祭壇を一一基つくって展示しました。この生花祭壇は自由にデザインでき、なおかつ従来のものよりはるかに安価な点が特徴です。それを軸にこれから新たな葬祭関連事業を展開していく、ということを告知するのが生前葬の目的でした。

1 0 0 0 OA 榊 十

著者
豊国
出版者
佐野喜
雑誌
源氏五十四帖
巻号頁・発行日
1853
著者
川原 由紀奈 園田 茂 奥山 夕子 登立 奈美 谷野 元一 渡邉 誠 坂本 利恵 寺西 利生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.297-302, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

〔目的〕2006年以降より回復期リハビリテーション病棟での訓練時間は1日上限6単位から9単位に増加した.このことから訓練量増加の効果をADLとの関係で検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,2005年度の5~6単位の群122名と2008年4月から9月の7~9単位の群41名とした.〔方法〕2群間の入退棟時FIM運動項目合計点(FIM-M),FIM-M利得(入院時-退院時FIM-M),FIM効率(FIM-M利得/在棟日数)と自宅復帰率の関係を比較した.〔結果〕7~9単位の群は5~6単位の群に比べFIM-M利得,FIM効率,自宅復帰率が有意に高かった.〔結語〕訓練増加がADL改善に効果的であると考えられる.
著者
登立 奈美 園田 茂 奥山 夕子 川原 由紀奈 渡邉 誠 寺西 利生 坂本 利恵
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.340-345, 2010-07-25 (Released:2010-09-14)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

【目的】診療報酬改定による訓練量の増加と運動麻痺改善との関係を検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退院した脳卒中患者で,1日の訓練単位数上限が6単位(2時間)であった時期に5~6単位の訓練を行った122名(6単位群)と,訓練単位数上限が9単位であった時期に7~9単位の訓練を行った41名(9単位群)を対象に入退院時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動機能5項目を比較した.入院時運動麻痺の重症度別に3群に層別化した分析も行った.【結果】入退院時のSIAS得点は9単位群で有意に高かったが,SIAS利得には有意差を認めなかった.入院時下肢中等度麻痺群と上肢軽度麻痺群において退院時SIASとSIAS利得が9単位群で有意に高かった.【結論】麻痺程度を層別化して検討することで1日6単位から9単位への訓練量増加により運動麻痺改善が認められた.
著者
渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 川原 由紀奈 木下 恵子 佐々木 祥 辻 有佳子 園田 茂
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.383-390, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

【目的】診療報酬改定により可能となった訓練量増加がADL改善に及ぼす影響を年齢別に検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,一日の訓練単位上限が6単位(2時間)の時期に5~6単位の訓練を行った106名(6単位群)と訓練単位上限が9単位の時期に7~9単位の訓練を行った130名(9単位群)を対象とし,入退棟時のFIM運動項目(FIM-M),FIM-M利得,FIM-M効率を比較した.年齢別に3群,入院時FIM-M得点層別に2群に層別化し分析も行った.【結果】FIM-M利得,FIM-M効率は9単位群で有意に高かった.FIM-M低得点層で70歳以上と60~69歳のFIM-M利得,FIM-M効率,高得点層で70歳以上のFIM-M利得が9単位群で有意に高かった.【結論】訓練量の増加はADLをより改善させ,その程度は60歳代のFIM-M低得点層と70歳以上の高齢者で顕著であった.
著者
高橋 信之 上原 万里子 室田 佳恵子
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

動脈硬化性疾患発症リスクとして近年、重要と考えられている食後高脂血症が、高脂肪食による腸管炎症で悪化する可能性について検討したところ、1週間の高脂肪食摂取による食後高脂血症の悪化が観察された。また摂取する脂質構成脂肪酸の違いについて検討したところ、不飽和脂肪酸に比べて飽和脂肪酸で食後高脂血症の悪化が認められた。以上の結果より、高脂肪食摂取、特に飽和脂肪酸の摂取により食後高脂血症が悪化する可能性が示唆された。並行して検討した、抗炎症作用を有する新規食品成分のスクリーニングでは、新たに食品成分Xが同定され、動物レベルにおいても、高脂肪食誘導性の食後高脂血症悪化を改善することが明らかとなった。
著者
金子 啓子
出版者
日本セキュリティ・マネジメント学会
雑誌
日本セキュリティ・マネジメント学会誌 (ISSN:13436619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.19-33, 2019-01-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
48

個人情報の取扱や ICT を利用したサービスの構築、運用では、委託の多段化が進み、それに対する情報 セキュリティの確保が必要となっている。既に、法律や政府の政策、ISO も、サプライチェーンにおける情 報セキュリティを要請している。しかし、一旦インシデントが発生すると、委託元・委託先間での責任分界 が問題となることが考えられ、委託元としては踏み込んだ協力を躊躇することも考えられる。一方、脅威や 技術の進化により、情報セキュリティインシデントを完璧に防御することが難しくなるのに従い、経済合理 性の範囲内で可能な限り高い情報セキュリティの構築に努めてきた事業者にとり、インシデント発生の責任 を問われるとすれば、無過失責任に近づくとも言える。その課題の解決には、同じ無過失責任の製造物責任 法の実務を参考にできる。就中、製造物責任訴訟の経験豊富な保険会社が被保険者を代行して紛争処理まで 行う米国の製造物責任保険のような保険や、保険契約を梃子にした製造物責任の専門家による仲裁制度ができれば、責任分界を気にせずに、サプライチェーンとして協力してセキュリティレベルを上げていくことができると考えられる。これは、複数の事業者からサービスやデータを「仕入れ」てサービスを提供する IoT を利用したサービスでも有効である。

1 0 0 0 OA 眞誥

著者
梁陶弘景撰
巻号頁・発行日
1000