著者
大石 裕
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.399-424, 2004-12

根岸毅教授退職記念号一 問題の所在二 言説分析の批判性 : 合意、正当な論争、そして逸脱三 水俣病に関する新聞報道 (一) 出来事の物語化とニュース・バリュー : 対立と紛争 (二) 出来事の物語化とニュースの物語① : 紛争の発生―展開―終結 (三) 出来事の物語化とニュースの物語② : 報道の中立性、そして客観報道との関連で四 「潜在化(non-event, non-issue)」する水俣病 (一) 「地域振興」という物語、そして儀礼としての選挙 (二) 「中心=われわれと周辺=彼ら」という物語五 結び
著者
阿久津 智
出版者
拓殖大学人文科学研究所
雑誌
拓殖大学論集. 人文・自然・人間科学研究 = The journal of humanities and sciences (ISSN:13446622)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.48-67, 2018-11-10

本稿では,古典文学の音読と文法(文構造)との関係について論じた。文構造は,プロソディー(イントネーションなど)に,ある程度反映される。隣り合う2つの文節が関係する(前の文節が後ろの文節に係る)ときには,イントネーションによって,1つの句(音調句)にまとまりやすい。文構造の違いは,意味の違いになり,それが読み方の違いに現れる場合もある。たとえば,『枕草子』の「春はあけぼの」において,「やうやう白くなりゆく」と「山ぎは」とを区切って(別の音調句として)読めば,別々の文となり(「やうやう白くなりゆく」のは「山ぎは」ではない),つなげて(1つの音調句として)読めば,連体修飾となる(「やうやう白くなりゆく」のは「山ぎは」である)。文構造(意味)の違いは,必ずしも音読で表せるわけではないが,それでも,音読の仕方を考えることが,その文の構造や意味を考えることにつながると思われる。
著者
内田 良
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.203-210, 2010-02
被引用文献数
1

本稿の目的は,学校管理下の体育的部活動時に発生した重大事故(死亡や重度の負傷)の件数に関して,既存の統計資料を二次分析にかけることで,どの種の部活動が重大事故につながりやすいのかを明らかにすることである。今日,学校安全が不審者対策と同一視されることがある。本稿は,学校安全を不審者対策に特化しない。学校管理下の多種多様な災害の集計データを幅広く見渡し,「エビデンス・ベイスト」の視点から体育的部活動に焦点を合わせ,どの部活動で事故が高い確率で起きているのかを明らかにする。これまで学校事故のデータの「集計」はなされてきたが,そこに一歩踏み込んで「分析」をくわえようという試みはおこなわれてこなかったのである。分析の結果,中高の部活動のなかでもっとも重大事故に遭う確率が高いのは柔道部とラグビー部であることがわかった。確率が高い部活動においては,早急な安全対策が求められる。
著者
中村 晃
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-20, 2004-06-30
被引用文献数
1

現在まで自己愛(narcissism)の概念に関しては多くの議論が重ねられてきているが,また同時に混乱が多い分野であることが知られている。その混乱の最も大きな原因は,自己愛そのものの定義が研究者によって異なっており,「自己愛」という用語がさまざまな意味で使われていることが挙げられる。そこで本研究では,今までの自己愛に関する議論を整理することを目的とした。特にこれまで重ねられてきた議論をふまえ,自己愛の健康的・適応的な側面と,不健康的・不適応的側面の本質的な差異に注目し,自己愛の構造を検討した。その結果,健康な自己愛(self-love)と不健康な自己愛(narcissism)に分けて考えることの重要性が指摘された。また,不健康な自己愛の表れ方には,大きく分けて「誇大型」と「過敏型」の,一見正反対の性質のように見える2種類に分類できることが示されたが,両者に共通する性質として「他者が待つ自分に関する評価への関心の集中やこだわり」があり,これが不健康な自己愛の本質であることが考えられた。このようにこれまでの自己愛の定義にある「自分自身に対する関心の集中」を,「本当の自分自身に対する関心」と「他者から見られる(評価される)自分に対する関心」の二つの側面に分けることが自己愛の健康性を考えるうえで重要であることが考えられた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1368, pp.50-55, 2006-11-27

任天堂の快進撃のきっかけとなったのは、「スーパーマリオブラザーズ」の生みの親であり、2002年から専務情報開発本部長を務める宮本茂のこの一言だった。2003年の前半、京都市の本社近くにあるゴルフ練習場。その2階にあるカジュアルなイタリアンレストランで、前年の5月に社長に就いたばかりの岩田聡と昼食を食べている折のことである。
著者
嘉本 伊都子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.62-82, 1997-06-30

本稿は, 近代日本の搖籃期における「国際結婚」を『明治前期身分法大全』を通して分析する。明治政府は, ナポレオン法典を模しながら, 明治6年に内外人民婚姻条規を制定した。国籍法, 帰化法制定よりも実に四半世紀も早く国際結婚に関する法律を定めたことになる。「外国人の婿養子」が「日本人タルノ分限」を得ることを許した規定は, 世界でも稀であった。分限とは, 「家」の成員になることによって得られる社会的地位を指す。<BR>ナポレオン法典と内外人民婚姻条規との相違を, 婚姻によって, 妻の国籍は夫に従い, その結果父の国籍が子に伝わる西洋型の「父系血統優先主義」と「分限主義」とに分けて考察する。さらに, 「国際結婚」の歴史的実態に密着した分析枠組みを提案する。国籍法制定以前の考察期間における「国際結婚」の分析は, 夫あるいは妻の国籍別で分類するよりも, 婚姻形態と「分限」の得失に着目した以下のカテゴリーを利用したほうが, 有益であると考える。<BR>(a) 日本人女性と外国人男性の組み合わせで日本人女性が「婚嫁」する場合<BR>(b) 日本人女性と外国人男性の組み合わせで外国人男性が「婿養子」となる場合<BR>(c) 日本人男性と外国人女性の組み合わせで外国人女性が「婚嫁」する場合<BR>(d) 日本人男性と外国人女性の組み合わせで日本人男性が「婿養子」となる場合<BR>上記のような歴史社会学的類型を用いて, 分限主義時代の「国際結婚」の特徴を明らかにする。
著者
山本 啓二 Keiji Yamamoto 京都産業大学文化学部
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.10, pp.49-57, 2015-07

11世紀のカイロで医者として活躍したアリー・イブン・リドワーンは,プトレマイオスによる占星術書『テトラビブロス』に対してアラビア語で全文註解を施している。この『テトラビブロス註解』は13世紀にラテン語に翻訳され,さらに15世紀には印刷され,広くラテン世界にも知られるようになった。アリーはその註解を書く際に,フナイン・イブン・イスハークによるアラビア語版を用いていた。筆者は現在フナイン版テキストの校訂版を準備しているが,その場合に,13世紀以降のものしか残っていないフナイン版の写本以外に,11世紀にアリーによって註解書に引用されたフナインのテキストも参照すべきであることを認識するに至った。