著者
指山 浩志 辻仲 康伸 浜畑 幸弘 堤 修 星野 敏彦 南 有紀子
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.819-821, 2010-09-30 (Released:2010-11-09)
参考文献数
10

症例は78歳男性,高度便秘のために肛門痛が持続し来院。尿閉,便失禁状態であり,CT上直腸壁の著明な拡張と間膜組織の炎症像があり切迫破裂状態と判断した。保存的に加療し,排尿障害,排便障害ともに1週間程度で改善し退院した。退院後,自己判断で緩下剤の服薬を中止したところ症状の再燃を認めた。再度保存的加療で改善し,その後は内服を継続的に使用することで経過良好となった。便秘による特発性巨大直腸症は時に穿孔を起こして,重篤な状態を招くことがある。高度便秘で肛門痛,排尿困難,便失禁を呈する症例では,宿便による直腸切迫破裂というべき症例の存在に留意し,慎重に診療をすべきである。

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出版者
巻号頁・発行日
vol.第87-89,
著者
吉田 敬介
雑誌
学習院大学人文科学論集 (ISSN:09190791)
巻号頁・発行日
no.20, pp.17-46, 2011-10-31

Was drückt die Kunst aus? Das ist eine Frage, die seit alten Zeiten in verschiedener Weise immer wieder gestellt worden ist. Auch Schopenhauer ist ein solcher Philosoph, der versucht, eine Antwort zu geben. Laut Schopenhauer, der in seiner wichtigsten Arbeit Die Welt als Wille und Vorstellung seine eigene Kunsttheorie umfangreich entwickelt, ist der Gegenstand des künstlerischen Ausdruck nichts anderes als eine »platonische Idee«. In diesem Aufsatz will ich die Problematik und Möglichkeit dieser Idee untersuchen. In Schopenhauers Weltanschauung, in der unsere Welt als innerer Wille (das kantische Ding an sich) und eine äußere Vorstellung (die kantische Erscheinung) bezeichnet wird, nimmt die Idee eine besondere Stelle ein; nämlich sie wird als »der wahre Gehalt der Erscheinungen« oder »die unmittelbare und adäquate Objektität des Dinges an sich« interpretiert. Aber mit der gewöhnlichen Betrachtungsweise kann man diese Idee nicht erkennen, sondern nur das Genie, das vermag, als rein erkennendes Subjekt die Sache ganz objektiv anzusehen, kann dies in der ästhetischen Kontemplation tun. Wenn man Schopenhauers Kunsttheorie richtig verstehen will, muss man darauf achten, dass, um die Idee in der reinen Wahrheit zu erkennen, sowohl das erkennende Subjekt wie das zu erkennende Objekt gegenseitig notwendig sind. Nämlich, erst indem der Künstler zum Medium des reinen Gehalts des Dinges wird, kann das Kunstwerk die Idee desselben ästhetisch ausdrücken. Aber jetzt ist die Idee im Kunstwerk nicht mehr das metaphysische Sein wie bei Platon, sondern die mannigfaltige Gestalt der Welt, die von der Vernunft nie begriffen werden kann. Gerade, was die Kunst ausdrückt, ist „die nicht zu benennende Idee".
著者
中川 薫
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.94-103, 2005-03-31 (Released:2016-11-16)
被引用文献数
3

重症心身障害児の母親が、意識を変容させる契機とメカニズムを明らかにすることを目的として、9名へ半構成的インタビューを行い、得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果、1)「子へのトータル・コミットメント」意識を形成した後、母親は「自己の喪失感」をつのらせていた。すなわち、子へのトータル・コミットメントを通して、最大限、子に一体化し、自分の全てを子に傾けた結果、自己を喪失したかのような感覚を抱き、かつこのような自己の状態を否定的に自覚していた。2)「自己の喪失感」という前提条件の下、「障害軽減の諦め」「役割的拘束の自己調整」をすることが契機となって、母親は「コミットメントの調整」をはかり、子と自分のバランスをとろうとしていた。3)コミットメントの調整後、母親は、子、自分、他の家族の状態の評価を行い、その結果をみて、コミットメントの再調整を行っていた。
著者
加藤 元一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.311-318, 2011-09-30
参考文献数
31

前頭前野の損傷では, 特定の記憶障害は生じるが, エピソード記憶の障害である健忘症候群は生じない。前頭前野損傷で生じる特定の記憶障害は, 一言でいうとワーキングメモリの障害であり, 短期記憶システム内にコードされた情報 (表象) の保持とその処理・操作の障害である。前頭前野の障害では健忘が生じないが, 長期記憶のコード化と検索におけるある特殊な側面の障害, すなわち, 時間的順序の記憶障害, 虚記憶の亢進, 展望記憶の障害などが認められることが示唆されている。前頭前野損傷で見られるワーキングメモリの障害に関連して, 動物で見られる前頭葉ドーパミンD1 受容体刺激とワーキングメモリ反応との間の逆転 U 型曲線が, ヒトにおいて, 前頭葉ドーパミン D1 受容体結合能とワーキングメモリ関連の遂行機能検査の成績との間でも認められることを示した研究を紹介した。
著者
杉山 幸丸
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.51-56, 2011-06-20 (Released:2011-07-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Bonobo tool-using behavior is rare, limited in variety and relatively simple in form. The tools of bonobos are almost always made of a crude branch with little processing and are used neither for getting food nor as a weapon but for improving "the quality of life" (rain hat, social communication etc.). The paucity is said to be influenced by the abundance and richness of the food resources, relieving them of the need to develop food processing tools. I agree with this explanation and propose another possibility. The chimpanzees' curiosity, high activity and aggressiveness to strangers and strange objects accelerated their development of tool-using behavior. In contrast, the mild and shy disposition of bonobos might have influenced the types of tools they developed.
著者
鵜飼 政志
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション
巻号頁・発行日
vol.18, pp.27-33, 2005

1990年代後半,いくつかの歴史資料館や博物館が,ウェッブサイトを開設したことを契機に,日本史研究の世界でもインターネットに対する関心が高まっていった。ただし,これらサイト開設の背景には,行政改革や大学改革などが関係していた。情報公開・経費削減の観点からインターネットによる情報発信が促進されたのである。その後,多くの日本史関係サイトが開設されていったが,日本語の異体字をシステムフォントでは表現できない問題点や,高解析度の画像を閲覧する場合の接続上の難点は解決されていなかった。今日では,閲覧ソフトの技術革新やインターネット回線の高速化により,日本史関係のサイトも容易に閲覧できるようになった。ただし,歴史資料に関するサイトの構築には,かなりの人員や予算を必要とすることもあり,現在の状況が将来も続くかは不透明である。また,日本史研究者のインターネットに対する関心は,総じて,ネット上の歴史資料情報に限定されがちであり,インターネット全般を研究や教育に利用しようとする学界的な合意はなされていない。そこで筆者は,筆者はインターネット上における日本史関係の諸情報を網羅し,適切なサイトへの接続を可能にする学術ポータルサイト開設の必要性を提言した。
著者
[豊田天功] [著]
巻号頁・発行日
vol.[41], 1800
著者
宮坂 靖子 光石 亜由美 磯部 香
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

女性の主婦化と「性-愛-結婚」三位一体観とを特徴とする日本の近代家族の生成・存続を可能にしたのは、植民地(朝鮮、台湾、満洲)の存在であった。日本帝国主義は植民地政策において、近代的教育制度と近代公娼制度を利用して、ジェンダーと民族を差異化し階層化することによって、近代家族規範を成立させた。近代家族の「性-愛-結婚」三位一体観は、家族への性愛規範の普及によってのみ成立したのではなく、近代公娼制の存在を必要とした。しかし、近代家族規範は日本国内においてのみ完結したのではなく、日本(宗主国)の外部である植民地に近代公娼制度を移出することにより、自らをより強固なものとしたのである。
著者
浜田 章作
出版者
鳥取短期大学
雑誌
鳥取短期大学研究紀要 (ISSN:13463365)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.67-78, 2003-12-01

1900年に制定, 施行されたわが国の家族法は, 特異な家族国家イデオロギーと結びつき, 天皇制絶対主義による国民支配の法的装置の骨格をなした. 1945年の終戦を機に新たに制定された日本国憲法が, 個人の尊厳と男女の本質的平等を定めたため, これに反する家族法は全面改正を余儀なくされた. その後の法と社会のありようは, 憲法と家族法が目指した方向に進んでいるか, 疑わしい. 戦後家族法の出発点をあらためて確認する必要がある.