- 著者
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乾 明夫
浅川 明弘
須藤 信行
佐久間 英輔
井上 浩一
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2016-06-30
平成28年度に続き、こころの発達・意欲を阻む原因を解明するため、社会-脳内-体内環境相関の全人的ループのバランス破綻のメカニズムの検討を行った。鹿児島大学においては、認知機能の低下におけるfractalkine-CX3CR1シグナルの関与を明らかにする目的で、糖尿病モデルマウスの学習記憶障害について検討した。その結果、血中corticosteroneレベルの増加およびinsulin-like growth factor-1(IGF-1)の減少、さらに海馬のfractalkineおよびCX3CR1 mRNA発現の減少が認められた。正常マウスへのCX3CR1アンタゴニストの投与にて学習記憶障害が誘発されるとともに、dexamethasoneの投与にて、血中IGF-1の減少、海馬のfractalkineおよびCX3CR1 mRNA発現の減少が認められた。九州大学においては、神経性やせ症患者の腸内細菌叢を無菌マウスへ移植して作製した人工菌叢マウス(ANマウス)の特徴について、健常女性の腸内細菌叢を無菌マウスへ移植したコントロール群(HCマウス)と比較、検討した。まずANマウスの腸内細菌叢は移植したドナー患者の腸内細菌叢を反映した構成となっていた。ANマウスではHCマウスと比較し、エサの摂取量に対する体重増加率(栄養効率)が不良であった。またANマウスでは不安と関連した行動に異常が認められた。名古屋市立大学においては、自閉症、ひきこもりなどの動機付けに掛かる心身発達の障害病態脳にて、神経免疫系の病的な活性化が惹起される神経病理を紐解くことをねらいとし、自閉症などの病態モデル動物で脳内ミクログリアの毒性転化を来すニューロン・グリア相関破綻の分子基盤を解析した。その結果、母仔分離による自閉症病態モデルラットで、自閉症様行動の発現期(およそ2ヶ月齢)に脳内ミクログリアが活性化すること、また、それに先んじ、ニューロン由来の可溶性fractalkineの産生が著増することが確認された。