1 0 0 0 OA バランス

著者
奥住 竜哉
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.204, 2016 (Released:2016-03-01)

最近,“バランス感覚”について考えることが多くなった.「あの人はバランス感覚いいよね」「あの人はバランス感覚に欠けるよね」など,日常会話でしばしば使う言葉である.感覚的に理解しているつもりになっているが,解釈は意外と難しい.“バランス感覚”とはどんな意味だろうか? 改めて考えてみると,「相反する2つの指標の間で,状況に応じて適切なポジションを取る力」のように思う.仕事をする中で,正反対のことがいずれも大事であるということは往々にしてある.例えば,大胆さと慎重さ,攻めと守り,安定と変化など挙げればきりがない.これら2つの正反対の指標の間で,置かれた状況を踏まえて適切なポジションをとって物事を進めていける力,が“バランス感覚”なのではないだろうか.「慎重かつ大胆に進めてくれ」と言われたら普通の人は面食らうだろうが,そこで落ち着いて状況を分析して適切な行動を起こせる人は,バランス感覚に優れた人と言える.考えてみれば仕事とは矛盾の塊である.企業の例で言えば,端的なのが「利益を上げる」という言葉だ.利益を上げるためには,売上を増やしてコストを減らすことが必要であるが,一般に売上を増やすにはコストがかかるからである.したがって,利益を最大化しようとすると「売上とコスト」という2つの相反する指標の間で適切なポジショニングを取る必要があるわけである.仕事の本質とは,このような矛盾する2つの指標の間で適切なポジションを取り,課題を解決することだと考えれば,バランス感覚という能力は仕事をする上で必要不可欠な能力と言える.
著者
吉沢 利一 茂垣 貴弘 渡辺 達磨 船崎 貴美子 溜 友香 緒方 裕治 太根 節直
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.1186-1192, 1995-06-15

23歳のステロイド緑内障の症例に,急激な眼圧上昇と弱主経線屈折力にして-5.5Dの片眼性の急性近視が生じた。水晶体厚の有意な増大と浅前房及び硝子体長の延長には,ピロカルピン点眼,D—マンニトールおよびメタゾラミド投与の影響が考えられた。眼圧上昇の著明な右眼に,角膜曲率半径の減少と眼軸長・硝子体長の延長があった。右眼に対する線維柱帯切除術とD—マンニトールおよびメタゾラミドの中止後,眼圧低下とともに近視は約4か月で-0.75Dに回復し,角膜曲率半径は有意に減少した。本症例は抗緑内障薬による近視化に加え,急激に眼圧が上昇した片眼に角膜突出と眼軸長の延長が生じた一過性近視が特徴であった。

1 0 0 0 OA 幸正能口傳書

著者
正能 [著]
巻号頁・発行日
1611

能楽囃子小鼓方幸流二代目の幸正能が各種の秘伝を記した書。内題はなく、書名は題簽による。茶色、白茶色、水色の色替わり料紙に書写。本写本は正能自筆と思われ、当て字や誤字が多い。巻末に慶長16年(1611)10月24日の幸太夫清二郎宛奥書及び同日付の覚書があり、その中間に寛永元年(1624)9月追記の相伝奥書を記す。室町時代末期の能の演出や囃子の実態を明らかにするうえで、重要な資料とされる。幸正能(1539-1626)は忠能(1509?-76)の子、通称五郎次郎、法名月軒。金春座に属し、当時一流の鼓打ちとして活躍した。相伝を受けた清二郎(清次郎)は孫の幸了能(1599-1661)である。国学者榊原芳野(1832-81)旧蔵。『能楽資料集成』13に翻刻。
著者
遠藤 文康 大脇 和浩 新保 正貴 松下 一仁 大山 雄大 新村 智己 京野 陽子 阿南 剛 小松 健司 服部 一紀
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.212-215, 2017

<p> モーセレーションで吸引困難な硬結 (beach balls, BB) の出現予測因子を検討. 対象 : 聖路加病院で2014/1-2016/6実施されたHoLEP症例でバーサカットによりモーセレーションされた248例. 方法 : 目的変数をBBの有無, 説明変数を年齢, BMI, PSA, 尿閉既往, 膿尿, Dutasteride内服, 前立腺推定容積, MRIでのnoduleの有無, 中葉の存在として統計学的検討を施行. 期間中に3種類のモーセレータチューブを使用しており, その影響も検討. 結果 : BB発生は20.6% (51/248). BB出現時モーセレーションは27分延長. 単変量解析ではPSA中央値 (BB無vs有=4.69 vs 6.84 p=0.016), 前立腺容積 (53.1 vs 81.9, p<.0001) が有意だったが, 多変量解析では容積のみ有意であった (OR 1.031, p<.0001). チューブは1世代に対し, 2世代でBBの出現が増加 (OR3.69, p=0.005). 前立腺容積のROC解析ではAUC0.743, カットオフ値は61ml (感度61.2%, 特異度78.45%) と算出された.</p>
著者
矢島 太郎 松本 泰三 吉岡 謙 中山 健
出版者
資源地質学会
雑誌
資源地質
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.45-58, 1997

勢多の低硫化系浅熱水性金鉱床は日本において最も最近に発見された金鉱床である.現地性シリカシンター,カオリン鉱床,水銀鉱床,熱水爆発角礫岩等の熱水活動の地表近くの兆候がよく保存されており,これらが金鉱床発見の手がかりとなった.主鉱化帯は現地表面下約250m付近に位置しており,比較的浅所で金の沈殿が生じたと考えられる.<BR>鉱化作用は(i)所々角礫化した白色の縞状石英脈,(ii)黒色の硫化物に富む熱水角礫岩に分けられ,いずれも主として凝灰角礫岩や安山岩中に発達している.前者は掘進長で最大19mの幅を有し,部分的にAu50g以上の高品位部を伴う.これは中性熱水の湧昇によって形成されたと考えられる.脈は調査地域の北部では急傾斜で北西―南東に連続するが,南部~南西部では不規則な細脈群となり,さらに南部では水平脈に移行する.このことから,北部から南部に向かう導水勾配に規制された熱水の流れが示唆される.後者は,北西一南東方向の規制を受けた4列の雁行配列をなして産出し,最大幅25mに達するところがあるが金品位は一般に低い.これはH2Sの酸化により生成した酸性水と上昇する中性熱水が混合するところに形成されたものであり,地下水位の低下を反映しているものと考えられる.
著者
松田 健 加藤 雅彦 唐沢 勇輔 丹京 真一 中村 智史 林 憲明 加藤 孝浩
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.447-448, 2018-03-13

フィッシングの手口の巧妙化が進む中,フィッシングサイトを早期に発見することは被害を最小限に抑えるだけでなく,攻撃者側の準備にかかるかコストを増大させることにも繋がる可能性があるため,フィッシングサイトの早期発見は非常に重要な問題である.本研究では,実際のフィッシングサイトに使用されたドメイン名に含まれる特徴から,新たにフィッシングに使用される可能性のあるドメイン候補を生成・監視することで,フィッシングサイトの早期発見に繋げるための情報収集方法について検討する.
著者
花田 毅一 香川 邦雄 横山 靖子 野村 真一
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.276-283, 1990

浮稲の生育中, 深水によって主茎の葉鞘が水没すると, その葉鞘の葉腋にある分げつ芽の生長が抑制される.深水下の葉鞘水没による分げつ芽の生長抑制の機構を探る目的で三つの実験を行った.第1実験及び第2実験では, 葉齢5又は6以降, それぞれ第4葉又は第5葉の葉鞘を先端まで水没させる深水処理を行った深水対照区と, 同じ深水条件下で第4葉葉鞘と第5葉葉鞘間の間隙 (第4節分げつ芽が生長する空間) 又は第5葉葉鞘と第6葉葉鞘間の間隙 (第5節分げつ芽が生長する空間) の分げつ芽の先端付近の位置に注射針を用いて通気を行った (図1参照) .その結果深水対照区では伸長中の葉身及び葉鞘の伸長が促進され, 葉鞘が水没した葉の葉腋の分げつ芽は生長が強く抑制されたが, 葉鞘間の間隙に通気した区では, 葉身, 葉鞘の生長が抑制されるとともに, 通気を受けた分げつ芽及びその1節下位にある分げつ芽の生長が著しく促進された.特に1節下位の分げつ芽の生長促進が著しく, 浅水対照区に優る生長を示した.<BR>第3実験では, 浅水下で葉齢6の時期に第5葉葉鞘中肋部の基部を切開し, 小窓をあけて第5節分げつ芽 (平均長1.4mm) を水中に露出させた区, 及び同様に水中に露出させた分げつ芽に, 下方に設置したパイプの小孔を通じて通気した区を設けて, 分げつ芽の生長を観察した (図2参照) .対照として無処理の浅水対照区と深水対照区 (第5葉葉鞘水没) を設けた.その結果浅水状態でも水中に露出させられた生長初期の分げつ芽は, 生長を著しく抑制されほとんど生長を停止した.水中に露出した分げつ芽に通気をすると, その分げつ芽の生長が僅かながら有意に促進され, また1節上位の分げつ芽の生長が著しく促進されて, 浅水区に優る生長をした.<BR>これらの実験結果から, 主茎葉鞘内で生長中の若い分げつ芽の生長には空気恐らく酸素の供給が必要であること, 葉鞘先端まで水没するとその葉鞘の内側の間隙と外気間の通気が妨げられ, 酸素の不足もしくはエチレンの蓄積が起こり, それによって分げつ芽の生長が抑制されるものと推測した.しかし, エチレンの関与については, この実験内容からは言及することができない.今後の研究課題である.
出版者
巻号頁・発行日
vol.206 由利本庄城図,
著者
幸坂 大輔 西村 邦裕 谷川 智洋 広田 光一 廣瀬 通孝
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.421-431, 2006-09-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
21

This paper propose a virtual reality environment in which user can interact with many objects in real time. We connected the distributed physics simulators and an immersive projection display. We invent a data processing architecture between the distributed physics simulators in order to present many objects' movements smoothly. The system based on our proposal indicates that the distribution of physics simulators is effective and user can interact with many objects in real time.
著者
吉田 公平 三浦 秀一
出版者
東洋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

中国近世期の宋代に朱子によって集大成された朱子学(性理学)はその後の思想界に大きな影響を与えた。科挙の基本教学になったことの為に、単に学術思想界ばかりではなく、広く中国の指導者階層の思考様式を方向づけることになった。李氏朝鮮朝では朱子学一尊体制のもとに科挙制度を採用したので中国以上に朱子学が信奉された。日本では科挙制度は実施されなかったものの、性善説を基本とする社会哲学として熱心に読まれた。近世期以降の東アジア漢字文化圏で大きな影響力を持った朱子学を学ぶ際に基本教典として学習されたのが『四書集注』である。朱子が『四書集注』の構想を持つのは四十代の事であるが陸象山との論争を経て『大学章句』『中庸章句』の序文を書き上げてひとまずの完成を見る。しかし、『四書集注』が刊行されて広く普及するのは朱子の没後である。元代にも『四書集注』の末疏が出版されたが、科挙制度が本格的に実施された明代以降にこそ受験用テキストとして数多く出版された。他方、臨床倫理学のテキストとして『四書集注』を読むものの中から朱子学に批判的な解釈を披瀝するものが登場する。その代表者が王陽明である。日本においては江戸時代初期に朱子学が本格的に学ばれるが中国輸入本朝鮮渡り本だけでは読者の需要に応えることができないために、木版印刷の波に乗って『四書集注』が刊行された。特に江戸時代後半には雄藩のみならず地方の小藩が『四書集注』を刊行している。読書する人が武士階層以外に大量に誕生して読者人口が増えたことが出版を促した要因である。中国・台湾・日本における『四書集注』の書誌・研究史をほぼ掌握できたことは大きな収穫であった。何故にこれほどまでに印刷され読まれたのか。文教政策という視点だけではなく、『四書集注』そのものの内容を解析することにより、『四書集注』を促したもものを明らかにした。ロングセラーを可能にした要因は『四書集注』の世界が、性善説を人間観の基本にした自力主義・自力救済論・自己実現論であること、それを基軸にして、人と共に幸福に暮らせる社会を建設することを目指した社会哲学であったことが、読者を魅了したのである。江戸時代は戦乱の時代が終わり明日をいかに生きるかを真剣に問いだした。そのために朱子学が着目されたのである。武官でありながら文官を兼ねた武士階層ばかりではなく、新しい読者層となった庶民階層も応分の社会的責任を担いながら、人間らしく生きることを求めたときに、『四書集注』が熱読されたのである。