- 著者
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佐々木 淳
倉石 泰
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.127, no.3, pp.151-155, 2006 (Released:2006-05-01)
- 参考文献数
- 76
- 被引用文献数
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神経因性疼痛は長期間持続する難治性の疼痛である.持続的な痛みは患者のQuality of Lifeを著しく低下させることから,痛み自体が治療の対象となる.しかし,従来の鎮痛薬では疼痛を十分にコントロールすることは難しい.また,同一症状の疼痛でも疼痛発症機序は多様であり,同一の治療法の効果は一様ではない.神経因性疼痛モデルは数多く報告されており,末梢神経損傷するタイプ,病態特異的タイプ,化学療法薬誘発タイプに分けられる.ヒト同様,モデルによって疼痛発症機序に違いがあり,薬物の効果も大きく異なる.絞扼性神経損傷(chronic constriction injury)モデル,坐骨神経部分損傷(partial sciatic nerve ligation)モデル,脊髄神経結紮損傷(spinal nerve ligation)モデルは,いずれも末梢神経損傷タイプの神経因性疼痛モデルであるが,疼痛の種類によっては発現のしやすさがモデル間で異なり,交感神経依存性やモルヒネ感受性にもモデル間で明らかな違いがある.神経栄養因子は3つのモデル全てで関与が報告されているが,substance P―neurokinin受容体系とglutamate―N-methyl-D-aspartate受容体系は,モデルによって,また疼痛の種類によって関与の程度が大きく異なる.各々のモデルでの疼痛機序は異なると考えることが重要であり,様々な神経因性疼痛のモデルで検討すること,そして,このようなモデル間の差がどのようにして生じるのかを明らかにすることが非常に重要である.