著者
河合 久仁子 中下 留美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究はモモジロコウモリが根室海峡を飛翔しているという知見に対し、その生態を明らかにし、適応的意義を考察することを目的とした。このため、音声調査、標識捕獲調査、皮膜および体毛の採集による安定同位体比解析および集団遺伝学的解析を行った。その結果、海上を飛翔する個体が海で採餌している可能性は低く、海上飛翔は特定の気象条件の時のみ観察されること、およびモモジロコウモリ以外の種も海上を飛翔していることが明らかになった。標識再捕獲調査では国後島、知床半島および海上で捕獲された個体の直接的移動はこれまで確認されていないが、これらの地域に生息する個体の遺伝的分化はほとんどないことが明らかとなった。
著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-32, 1994-01-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

病院環境から白癬菌の分離を試み,その分離菌について検討した.検体の採取にはセロファン粘着テープを用い,Actidione,chloramphenicol添加ペプトンぶどう糖寒天平板培地上で培養を行った.その結果,外来患者用スリッパ,水治療法室更衣室マット,浴室の床,足拭きマットなどからTrichophyton mentagrophytes 98集落(89.9%),Trichophyton rubrum 6集落(5.5%),Microsporum canis 5集落(4.6%),Trichophyton sp. 1集落(0.9%)の計110集落の白癬菌が分離された.分離された集落数を平板数で割った数値で検討したところ,水治療法室更衣室マットと病棟浴室の床,マットが白癬菌に強く汚染されていた.また病院内での白癬菌感染の可能性を,1986年1月から1990年12月までの5年間に,入院リハビリ中に発症したと考えられた足白癬患者11人を対象に検討した.リハビリ開始から足白癬発症までの期間は7日から120日,平均45.9日であった.基礎疾患は脳血管障害3人,整形外科疾患8人であり,片麻痺の患者3人は麻痺側に病巣が認められた.菌種別患者数はT.mentagrophytes 7人,T.rubrum 1人,T.mentagrophytesとT.rubrumの連続感染2人,菌種不明1人であった.したがって公共の環境から高頻度に分類されるT.mentagrophytesは,感染源となっている可能性が高いと考えられた.
著者
グエン ドク ティエン 宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.2, pp.431-445, 2018-02-01

近年,社会構成主義に基づく学習評価法としてピアアセスメントが注目されている.一般に,MOOCsのように学習者数が多い場合のピアアセスメントは,評価の負担を軽減するために学習者を複数のグループに分割してグループ内のメンバ同士で行うことが多い.しかし,この場合,学習者の能力測定精度がグループ構成の仕方に依存する問題が残る.この問題を解決するために,本研究では,項目反応理論を用いて,学習者の能力測定精度を最大化するようにグループを構成する手法を提案する.しかし,実験の結果,ランダムにグループを構成した場合と比べ,提案手法が必ずしも高い能力測定精度を示すとは限らないことが明らかとなった.そこで,本研究では,グループ内の学習者同士でのみ評価を行うという制約を緩和し,各学習者に対して少数のグループ外評価者を割り当てる外部評価者選択手法を提案する.シミュレーションと被験者実験から,提案手法を用いて数名の外部評価者を追加することで,グループ内の学習者のみによる評価に比べ,能力測定精度が改善されることが確認された.
著者
原 崇文
巻号頁・発行日
2012-03-22

近年, 地球環境に対する意識から, 環境負荷の小さい電気鉄道に注目が集まっている. 電気鉄道は加速を行うときに伝えられる力である接線力が小さい. そのため, 雨が降っている場合や枯れ葉がレールの上に落ちている場合は線路と車輪との間の摩擦力が減少し, 車輪が一周分回転しても, 車体が一周分進まない空転と呼ばれる現象が起きる. 一旦空転が生じると, エネルギー散逸や乗り心地の悪化, 線路の破損が生じてしまう. 従って, 車輪と線路が粘着していない空転状態から再び車輪と線路が粘着している粘着状態に戻して加速させる空転再粘着制御が必要である. 空転再粘着制御には, これまで様々な手法が考案されている. 当初は「すべり速度情報」, 「接線力トルク推定情報」の二つを使わずに, 基準速度との速度偏差および加速度偏差にファジィ推論を使用した空転再粘着制御が一般的であった. 最近では, 計算機の発達により外乱オブザーバを使用して瞬時に「接線力トルク推定情報」を使用することができるようになったため, 「接線力推定情報」に基づいた空転再粘着制御が開発され, 実用化されている. また, すべり速度を測定できるものとして「すべり速度情報」および「接線力トルク推定情報」を共に活用した空転再粘着制御についても提案されている. しかし, これらの物理量は微小なため, 電気鉄道車両において測定することは困難とされており, この制御方式の実現は難しいと言える. また, それらの手法は晩秋のレール上への落葉や冬季のレールへの積雪, 着氷などによる極めて接線力係数の低い条件下における再粘着の保障についての議論はなされておらず, 加えていつ空転が収束するかやどれくらいモータトルクを絞るかについても統計だった考え方に基づいて行われていない. そこで, 本論文では空転の重度を測る「超過トルク」および「超過角運動量」という2つの新しい概念を使用し, 極めて劣悪な路面条件においても再粘着を保証する再粘着制御について述べる. 通常の鉄道車両を基にモデル化した4軸2台車モデルを使用した数値解析によってそれらが可能であることを示す. その再粘着制御を粘着力の有効利用とレール, 車輪の傷みという2つの評価指標に基づき評価する. また, 「すべり速度情報不使用」, 「接線力トルク推定情報不使用」の再粘着制御, および「すべり速度情報使用」, 「接線力トルク推定情報使用」の再粘着制御と比較を行い, 提案空転再粘着制御の優位性を示す.
著者
奥山 亮 辻本 将晴
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.iken.2017.001, (Released:2017-07-31)
参考文献数
38
被引用文献数
4

近年,我が国では創薬の基礎研究から医薬候補化合物の創出までの全研究段階をアカデミア研究者が行うアカデミア創薬が推進されている。アカデミア創薬においては,従来企業が中心で行ってきた創薬応用研究部分(リード物質から薬効・薬物動態・安全性を最適化して医薬候補化合物の取得を目指し,並行して創薬標的の妥当性検証を行う研究段階)もアカデミア研究者が実施するが,創薬応用研究はアカデミアの基礎研究とは内容も志向性も異なるため,アカデミア創薬における応用研究部分の研究達成度には懸念が持たれている。この問題を実証的に検討するため,日本の製薬企業もしくは大学等公的研究機関が臨床開発を実施した医薬候補化合物の情報を過去40年程度にわたって網羅的に収集し,分析した。その結果,アカデミア創薬で生み出された医薬候補化合物は,産学連携による創薬で生み出された化合物より臨床開発段階での成功率(上市に至る確率)が有意に低いことが分かった。臨床開発段階の失敗理由の大部分は創薬応用研究段階で見極めが行われる薬効,薬物動態,安全性によると報告されているため,このデータはアカデミア創薬における応用研究部分の研究達成度が相対的に低いことを示唆する。本結果より,アカデミア創薬の問題点や取るべき方向性を議論する。

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出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],
著者
藤村 吉博 松本 雅則 八木 秀男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1296-1307, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
34
被引用文献数
2

溶血性尿毒症症候群(HUS)と血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は共通病態として,溶血性貧血,血小板減少,血小板血栓による腎機能障害を示す.両者は共に先天性と後天性要因で生じ,屡々臨床的鑑別が困難である.TTP診断指標として近年ADAMTS13活性著減が重視されている.HUSは病原大腸菌O157感染に関連した後天性が多い.先天性HUSには補体調節因子やトロンボモジュリンの遺伝子異常を示すものがある.
著者
上田 新也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は、前年度以前にベトナム中部のフエ周辺域で収集した感じ・チュノム史料の整理、サマリーの作成をおこない、以下の事実が判明した。ベトナム・フエ周辺域においても、ベトナム北部と同様に「亭(ディン)」と呼ばれる施設が存在しており、現在も土地台帳・人丁簿・納税関連文書などの史料群が保管されていることから、村落行政の中心的施設であったことを窺わせる。これは、村落運営の面で亭が中心的役割を果たしていたベトナム北部と同様である。しかし、集落内に存在する「勅封」と呼ばれる史料群を考察すると、フエ周辺域の集落に存在する亭で祀られる神位は単に「タインホアン」を祀っているといわれるのみで、ベトナム北部のように「~~之神」のような固有名称を持ち合わせていない。このように、フエ周辺域の集落においても亭が行政的な中心だったのは間違いないが、進攻面では非常に貧弱である。一方で各氏族の始祖は同時に開耕神とされ、亭に祀られているケースも多く、ベトナム北部に比べると血縁集団の勢力ははるかに強い印象を受ける。フエ周辺域の集落に存在する亭は、村人の信仰に基づいて自発的に建設されたものというよりは、19世紀の阮朝期以降に行政側の主導により整備されていった可能性が高い。また、今年度は如上のようなベトナム中部地域社会の研究を進めると同時に、これまでまったく目録が作成されてこなかった漢喃研究院所蔵の碑文史料の整理作業をおこない、『Tong tap thac ban Han Nom』に収録されている各碑文を地域ごとに分類して目録を作成し、出版した。