著者
阪本 真基 上野 敦志 田窪 朋仁
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2016-GI-35, no.12, pp.1-6, 2016-03-01

本論文では,自然言語によって対話を行うコミュニケーションゲーム 「人狼」 において,機械学習を用いてプレイヤの発言から役職の推定を行う手法を提案する.学習データはオンラインで提供される 「人狼 BBS」 のプレイログを用いた.プレイヤの発言を文書としてまとめ,word2vec を用いて単語の意味の類似性を考慮したベクトル表現を獲得する.獲得したベクトル表現を用いて,進行中のプレイヤの発言に基づいてプレイヤのベクトルを求め,k 近傍法,SVM により人狼の役職の推定を行い,交差検証により評価し考察した.
著者
中島 栄之介
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.211-219, 2018-09

特別支援学校における人権教育について、兵庫県立A特別支援学校での実践例をもとに検討した。特別支援学校における人権教育は在籍する生徒が差別を受けてきていると同時に差別をする側にもなるという特徴がある。しかし、これまでの特別支援学校の人権教育は性教育などの男女共生教育が中心であり障害者差別を取り上げることは少なかった。A特別支援学校では継続的に人権教育を行うことを目的とし、人権教育の実践を積み重ね障害者差別を題材として取り上げるまでに至った。生徒にとって障害者差別を取り上げることは生徒にとって過去自らが受けてきた差別と向き合うことであり、自身の障害と向き合うこと、さらに今後受けるであろう差別と向き合うこと、そして、自らの持つ差別性と向き合うことでもあった。また、人権教育を継続していくためには、組織やシステムを構築するとともに組織やシステムを動かしていく人材の育成も継続的に必要であると考えられた。
著者
池田 緑
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 = Otsuma journal of social information studies
巻号頁・発行日
vol.15, pp.39-61, 2006

女子大学の教育目的には、「地位形成機能」と「地位表示機能」が存在するといわれてきた。しかし男女共同参画社会の趨勢のなかで、女子大学には改めて「地位形成機能」の充実が求められている。しかしながら目を転じれば、女子大学では古風な性別役割観が再生産され、家父長制的価値観に学生を回収しようとする企図も、いまだ根強く残っている。そのような企図は、女性へのセクシャルなまなざし、ミソジニー(女性嫌悪)と共に存在している。同様な視点は女子大学を取り巻く環境にも、また女子大に勤務する教員にも共有されている。家父長制的価値観は、女子学生の「成功不安」を喚起し、学生の自己評価を貶め、男性依存への道を準備する。その結果、女子大学においては「地位表示機能」が重視され、そのことが彼女らを学問から遠ざけてしまう。このように伝統的性別役割観が再生産され、学生たちの学問への動機が奪われてゆく過程は、一種の「温室効果」に似ている。そのような状況を打ち破るためには、「温室」を、ジェンダーの政治が露見する「戦場」に作り変える必要がある。そのためには、最初に男性教員を中心に、ジェンダーを克服することが、学生自身に学業の意義を理解させるための第一歩であり、そのような学問が社会的需要とも合致していることを理解することが必要である。そのような認識の共有のためには、男性教員をジェンダーに意識的にするための制度作りが必要である。そしてすべての授業において、ジェンダーの視点から男性中心の学問体系を再構築することが求められており、その結果として行われる教育は「女性支援教育」と呼ばれるにふさわしいものとなるだろう。
著者
野尻 亘
出版者
桃山学院大学
雑誌
国際文化論集 = Intercultural studies (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.47, pp.75-92, 2013-03-28

American geography of the 19th century suffered a major backlash due to the influence of environmental determinism. However, with the dawn of the 20th century, area studies became a major field. Yet even when much regional elements were broken down into detail and presented in terms of distribution, the difficulty remained of categorizing areas into objective, uniform regions. To address this difficulty, a variety of methodologies were developed regarding the concept of region. Sauer's "Morphology of Landscape" (1925) marked the beginning of this movement, followed by the concept of sequent occupance, defined by Whittlesey (1929). This concept addressed the succession and transition of the cultural landscape over the course of developments such as the hunter-gatherer society of indigenous peoples ; the immigration of farmers ; the formation of villages ; industrialization; and urbanization. In contrast, Hartshorne (1939) was influenced by Hettner (1927) in Germany, proposing the concept of areal differentiation, which in turn had a dramatic impact on the field of geography in the United States in the 1940s and 50s. This topographical methodology cited differences in distribution of various aspects of the earth's surface including weather patterns, geomorphology, soil, resources, etc., and also explained the spatial relationship between them. The issue here was that interpretations were made based on differences in specified phenomena between places. In other words, regions were conveniently interpreted in a way that suited the specific index that was chosen. This meant rejection of the kind of geography that emphasizes the morphological aspect of the cultural landscape. Further, it was concluded that it was not necessary to limit research topics to visible landscapes ; the new way of thinking emphasized the importance of choosing an event that would facilitate significant change arising from differences in location, or an event that had the potential to facilitate a change in other phenomena. However, while this type of methodology tends to emphasize the diversity of different regions, it also tends to close the door to generalization. James (1952, 1954) asserted the need to pay attention to areal likeness, an approach that enables comparison between regions. In addition, Whittlesey (1954) categorized regions into uniform regions and nodal regions for purposes of study. The uniform region is characterized by specified indices, standards and definitions such as the Corn Belt and the Cotton Belt. In contrast, nodal regions are those that have a specific focal point; that is, a certain structure is expected of this central area, including the flow and circulation of people and information emanating from a specific focal point. Depending on different standards, such as commutable zone and consumer catchment area, one can identify a diverse array of nodal regions. As noted above, studies in the field of geography in the United States, particularly in the post-World War II period, showed a deepening interest in clarifying the hierarchy and behavior of nodal and functional regions and regional interaction, paving the way toward system theory research on regional function systems. As part of this series of movements, Berry (1964) attempted to develop a fusion of the topographical or factorial ecology methodology and quantitative geography, applying multivariable analysis to regional data.
著者
杉木 章義
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1142-1144, 2020-10-15

本稿では,クラウド時代におけるライブラリOS研究の代表とも言えるUnikernelとその実装としてのMirageOSの論文について紹介する.オペレーティングシステム(OS)をライブラリ化し,アプリケーションと結合して実行するというのは,1990年代のExokernelやNemesisなど,古くからあるアイディアである.しかしながら,仮想マシンの存在を仮定し,仮想マシン上でライブラリOSを実現するというのはクラウド時代ならではである.さらに,MirageOSでは,OCamlを利用するなど,最新のプログラミング言語研究の成果も活用している,本稿では,ほぼ同時期に登場したOSv,Drawbridgeなどの関連研究もあわせて,OS研究全般の動向について解説する.
著者
大場 みち子 伊藤 恵 下郡 啓夫
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2015-IFAT-118, no.2, pp.1-4, 2015-03-23

我々は数学思考力を研くことでプログラミング力が向上できるとの着想から,プログラミングの思考過程の構造と数学の問題解決過程に相関があるとの仮説を立て,プログラミング力向上のための数学学習材の開発を目指している.また,数学学習教材の開発によりプログラミング力向上を目指すだけでなく,論理的文章作成力も同時に養成できると考えた.このためには,プログラミング思考過程での 「論理的思考力」 と 「論理的文章力作成」 に必要な 「論理的思考力」 の類似性を調べる必要がある.つぎに,類似性がある場合,この類似性と数学学習を行うことで転移される 「論理的思考力」 との相関を調べる必要がある.そこで,本稿ではプログラミング力と論理的文章作成力との類似性を分析する.両者の類似性を評価するために,初年次プログラミング教育科目の成績とレポート課題による論理的文章作成力との相関を分析し,プログラミング力と論理的思考力の関係を明らかにする.
著者
小泉 悠
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.693-699, 2020-06-15

ロシアのインテリジェンス機関には旧KGB(国家保安委員会)系のFSB(連邦保安庁)とSVR(対外情報庁),そして軍参謀本部のGRU(情報総局)の3つが存在し,HUMINT(人的インテリジェンス),SIGINT(信号インテリジェンス),IMINT(画像インテリジェンス),OSINT(公開情報インテリジェンス)を広くカバーする.これらの機関はICTを諜報だけではなく,名誉毀損や情報操作,さらには物理的な破壊活動にも用いており,その対象はNATO加盟国にも及ぶ.ただし,こうした活動はインテリジェンス機関が直接実施するとは限らず,民間のハッカーを「サイバー民兵」として動員する場合も多い.さらに各機関は相互に連携せず,別個にオペレーションを行っている可能性が高い.
著者
柏木 恭典 Yasunori Kashiwagi 千葉経済大学短期大学部 CHIBA KEIZAI COLLEGE
雑誌
千葉経済大学短期大学部研究紀要 = Bulletin of Chiba Keizai College (ISSN:2189034X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-11,

The study aims to find out the historical relationship between child maltreatment and neonaticide. At first I tried to analyze the hermeneutical perspective of historical background of child maltreatment. Secondly I tried to describe the new anonymous support for women and children in need as protection prior to child maltreatment and abuse. It is most important issue for this study to elucidate research results relating to the concept of child maltreatment and the issues of Babyklappe (baby-box) and helping the women in need. The results suggest that the issues of child maltreatment historically not only belong to child protection, but also belong to supporting the women and children in need.
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子短期大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 = The bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.73-84, 2014-02-04

本稿では、2011年に日本テレビ系列で放送された連続ドラマ『妖怪人間ベム』に見られる仏教思想を考察した。このドラマの中で、ベムたちは自分たちがどのような境遇にあっても救いを求める人間がいる限り救い続けるという浄土教の法蔵菩薩に通じる行動原理を示していた。さらにその最終回では、自らの人間になりたいという夢を断念して人間たちを永久に救い続けるという決断をする。これは大悲闡提の菩薩に通じる境地を示していたのである。