著者
武藤 三代平
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.16, pp.15-32, 2016

これまで明治政治史を論及する際,榎本武揚は黒田清隆を領袖と仰ぐことで,その権力基盤を維持しているものとされてきた。箱館戦争を降伏して獄中にあった榎本を,黒田が助命運動を展開して赦免に至った一事は美談としても完成され,人口に膾炙している。そのためもあり,黒田が明治政界に進出した榎本の後ろ盾となり,終始一貫して,両者が「盟友」関係にあったことは疑いを挟む余地がないと考えられてきた。はたしてこの「榎本=黒田」という権力構図を鵜呑みにしてよいのだろうか。榎本に関する個人研究では,明治政府内で栄達する榎本を,黒田の政治権力が背景にあるとし,盲目的に有能視する論理で説明をしてきた。榎本を政府内でのピンチヒッターとする一事も,その有能論から派生した評価である。しかし,榎本もまた浮沈を伴いながら政界を歩んだ,藩閥政府内での一人の政治的アクターである。ひたすら有能論を唱える定説が,かえって榎本の政府内での立ち位置を曇らせる要因となっている。本稿では榎本が本格的に中央政界に進出した明治十年代を中心とし,井上馨との関係を基軸に榎本の事績を再検討することで,太政官制度から内閣制度発足に至るまでの榎本の政治的な位置づけを定義するものである。この明治十年代,榎本と黒田の関係は最も疎遠になる。1879年,井上馨が外務卿になると,榎本は外務大輔に就任し,その信頼関係を構築する。これ以降,榎本の海軍卿,宮内省出仕,駐清特命全権公使,そして内閣制度発足とともに逓信大臣に就任するまでの過程において,随所に井上馨による後援が確認される。この事実は,従来の政治史において定説とされてきた,「榎本=黒田」という藩閥的な権力構図を根本から見直さなければならない可能性をはらんでいる。
著者
鈴木 祥
出版者
明治維新史学会
雑誌
明治維新史研究 (ISSN:13497901)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-18, 2016-02
出版者
日経ホーム出版社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.290, pp.76-78, 2007-03

今年の確定申告について、専門家の立場から注目している点や注意していることはありますか。税務署員A一番気をつけたいのは、定率減税が半分に縮小されていること。去年の控えを参考に申告書を作る人は多いだろうけど丸写しは間違いのもと。なかには「去年と違うから、申告書が間違っていると思った」なんて勝手な解釈で申告する人がいる(笑)。
著者
長塚 隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.227-227, 2017

<p>情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO)は,2004年に科学技術振興機構と情報科学技術協会により,それまで個別に開催されていたシンポジウムや研究集会を統合して,お台場の日本科学未来館で初めて開催されました。それ以来,毎年開催され,昨年の12月の情報プロフェッショナルシンポジウムで13回目となりました。今回は,科学技術振興機構の東京別館で初めて開催されました。</p><p>本シンポジウムは,情報検索とその手法,サーチャーの業務,知財情報と価値評価,情報解析やデータマイニング,情報の評価,図書館業務と情報サービス,電子ジャーナル,電子化関連業務,インデクシング,情報の組織化,情報管理の方法とシステム,組織内情報共有化のためのシステム,情報マネージメント,情報リテラシー教育と情報調査・訓練・研修,情報担当者のプレゼンスなど,幅広く知識や情報にたずさわる関係者が全国から一堂に会し,日頃の研究成果の発表と討論を行い,情報を交換する場となっています。</p><p>これらの情報に携わる関係者からの研究発表のほか,その時期に適したトピックスを取り上げた特別講演やパネルディスカッションが実施されてきました。</p><p>この10年間で,各種情報のデジタル化は一層進展し,情報の専門家の役割も重要性を増し,また,業務の内容も大きく変わってきています。このような時期に,本年の特別講演では,「統計学が最強の学問である」の著者でもある西内啓(にしうちひろむ)先生から「ビジネスに活かす統計学‐エビデンスに基づく価値創造」について取り上げていただきました。医療の分野で始まった「エビデンス」すなわち科学的根拠に基づくという考え方が,現在は公共政策や経営学においても浸透してきているので,エビデンスに基づいた企業戦略を進めるためには統計学の知識が必須になってきていると指摘されました。参加者からは企業が効率的に価値を生み出すための統計学の活用について,具体的な事例を通じて紹介があったので,今後会社に戻って活用できる知識を得ることが出来たとの声が聴かれました。</p><p>また,トーク&トークでは,「情報社会から融合社会へ―仮想と現実が融合する社会での情報のガバナンスと信頼性を考える」をテーマにして,4名の話題提供者からの報告をもとに,活発な質疑が行われました。情報技術の発展により,個々の技術が融合し,新しいビジネスとして,タクシーに変わるUber(ウーバー),ホテルに変わるAirbnb,通貨に変わる仮想通貨Bitcoin(ビットコイン)などが生まれています。このような技術融合社会の中で,情報の信頼性をどのように担保するかなど,インフォプロの現代的な役割が問われています。現在,急速に変容するビジネスの形態について,情報の専門家として,この新たな状況をよく理解し,活用できる知識を身に着けるうえで大変参考になったとの意見が参加者から出されていました。</p><p>本シンポジウムの中心になっている情報の担当者や専門家による研究発表は,2016年のシンポでは2日間にわたり昨年より多い合計で33件があり,全体として活発な質疑が行われました。ポスターセッションでは,9名の発表があり,ポスターの前には多くの参加者が集まり,多くの関心を呼んでいました。</p><p>本シンポジウムは,情報担当者や専門家による実務経験や研究発表である「一般発表」による発表の場として,その時期に適した話題である「特別講演」からの刺激,参加者が質疑に参加できる「トーク&トーク」,ベンダーの方々による「プロダクトレビュー」や「ポスターセッション」など参加者が多面的に新たな知識を吸収できるようになっています。また,発表者,参加者,提供者が一堂に会する「情報交流会」は,特別講演の講演者である西内啓先生も参加してくださり,大変盛り上がりました。今後も,デジタル化・情報化の進展に対応したシンポジウムの在り方を探ることで,情報プロフェッショナルあるいはそれを目指している方々にとって,本シンポジウムがより有益な場となるように実行委員会一同願っております。</p><p>(INFOPRO2016実行委員会委員長 長塚 隆)</p>
著者
森 川豊 中 洋- 尾 崎葦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1023-1028, 1972-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

-重促進鉄(Fe-Al203)上における窒素ガスの同位体交換反応の速度を280~330℃で求めた。この速度は,吸着窒素の脱離速度と-致したので,-重促進鉄上に吸着した窒素は大部分解離型であると推定された。-重促進鉄上での同位体交換反応は純鉄上,二重促進鉄上でのそれにくらべてきわめて速い。また同位体交換反応に対する共存水素の効果は,二重促進鉄の場合には促進効果であったのに対し-重促進鉄では阻害効果を示した。純鉄にK20を添加したFe-K20上でこの共存水素の効果を調べたところ,明らかな促進効果を示した。これらの事実から,アンモニア合成触媒におけるAl203は,窒素の解離に対する活性をきわめて増大する効果を有するが,その活性は水素が共存すると減少する。また,促進剤K20は,水素が共存する系でN2=2NHなる過程を促進することにより,窒素の解離吸着をいちじるしく速くすると推定した。
著者
藤田 善弘 大中 慎一 高野 陽介 船田 純一 岩沢 透 西沢 俊広 佐藤 幹 長田 純一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.302, pp.23-28, 2005-09-22
被引用文献数
1

研究試作ロボットPaPeRoをベースとして、保育所や幼稚園で利用できることを目指して各種機能やコンテンツを拡張したチャイルドケアロボットPaPeRoを開発し、2005年3月25日から9月25日の6ヶ月間、愛知万博内のロボットステーションにて、技術実証運用を実施した。本稿では、その概要を紹介する。
著者
菊川 清見
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.75-82, 2001-01-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
4
著者
朝岡 忠 水内 郁夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.851, pp.16-00483-16-00483, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
41

This paper describes how to exploit the elasticity and the dynamic coupling of a multi-link robot with elastic elements to improve the motion ability without depending on only actuator power. The focus is on swing motion (e.g., throwing or kicking motion) in this paper. The prime purpose of the swing motion is to increase the kinetic energy of an end-link (e.g., hand or foot). This paper proposed a method to generate a swing motion pattern for the increase of the kinetic energy of the end-link. In general, the multi-link robot has high-power actuators in the base side. The high-power actuators can produce a large amount of mechanical energy. Mathematical models were constructed to transfer mechanical energy from the base side toward the end side by exploiting the elasticity and the dynamic coupling. The swing motion pattern was generated on the basis of the models. The results of simulation experiments showed that the kinetic energy of the end-link increased explosively. The reason was that a large amount of energy produced by the actuators in the base side was transferred toward the end side.
著者
Pen Heng Chang Shu Hwae Lee Hsien Choung Chiang Ming Hwa Jong
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.209-210, 1999-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
11
被引用文献数
12 64

1995年に台湾のキンギョ養殖場において, ウイルス感染によると思われる大量死が発生した。罹患魚は主に稚魚(体長1.5-2.0cm)で, 死亡率は90%に達した。病理組織学的観察により腎臓間質などの内臓や皮膚に壊死病巣の形成がみられ, ウイルス感染細胞には肥大化した核が特徴的にみられた。病魚から検出されたウイルス粒子は, 電顕観察によりヘルペスウイルス科に属すると考えられた。本ウイルス感染症は, 日本のキンギョで報告されているヘルペスウイルス性造血器壊死症と酷似していた。