著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.63-80, 2022-07-31

本稿は,前号掲載論文の続編であり,占領下で,1947年5月の憲法施行に間に合わせるべく家族法改正を推進した日本政府や我妻らが草案をGHQに提出したにもかかわらず,なにゆえにGHQの承認が下りず,「応急措置法」での処理がなされたのか,当時の日本政府や我妻らが知らなかった“裏事情”に焦点を合わせた論稿である。 我妻らの家族法草案起草委員会には川島武宜も参加していたが,GHQ側の立法作業の責任者であったオプラーは,川島武宜と民法改正の全期間を通して何度となく日本側には秘密の非公式会合を重ねていた。この会合で,川島は日本側の最終草案には“家制度の残滓,女性に不利な点が存続している”旨を述べ,その4日後には,我妻が民法改正草案の民主性と女性平等性を説明したが,受け入れられずに,国会提出の延期が決定された。背景事情を知らなかった日本側の起草委員は,GHQには検討の時間的な余裕がないものと理解したのであった……。
著者
加藤 雅信
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.241-279, 2022-03-31

本稿は,日本民法が過去1世紀半にわたっていかなる国内政治と国際政治のなかで形成されてきたのかを考察する筆者の一連の研究の一部をなすもので,家族法に焦点をあてている。 かつて日本の家族法の中核をなしていた「家制度」は,民法典制定時に華族が反対し天皇制官僚も消極姿勢を示すなかで,「水戸学」以来の伝統を受け継ぐ「世論」のもとで形成された「創られた伝統」であった。戦後の家族法改正は,この家制度を廃絶した。我妻はこれが日本側「起草委員の独自の発案」であったことを強調するが,実はアメリカの初期占領政策―日本の軍事的弱体化・産業的弱体化・精神的弱体化―の一環であった。「日本を生糸・お茶・おもちゃ等の生産国」にするという産業力弱体化政策とともに,“天皇陛下,万歳!”と叫びながら兵士が死地におもむいた歴史を根絶させるべく,天皇を頂点とする「家族主義的国体」観を破壊する一環としての家族法改正だったのである。
著者
山﨑 郁未 中村 聡史 小松 孝徳
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1438-1446, 2023-10-15

自由記述設問における不真面目回答は,回答者が自由記述設問は面倒であるものの,ある程度回答したため途中で辞めたくないと考えることから回答してしまう可能性がある.そこで本研究では,自由記述設問をアンケートの最初に提示し,離脱する抵抗感が少ない冒頭で離脱できるようにすることで不真面目回答を減らし,アンケートの質を向上させることが可能かどうかを検証する.具体的には,アンケートにおける自由記述設問の位置が,不真面目回答率や離脱率に与える影響を調べるために,クラウドソーシングを用いた実験を行った.その結果,自由記述設問を最初に回答した方が,自由記述設問を最後に回答するよりも不真面目回答率が低く,離脱率が高いこと,自由記述設問の内容に大きな違いがないことが分かった.また,アンケートを公開してから10分以内に回答を始めた回答者は,不真面目回答率が高いことも示唆された.
著者
竹内 幸絵 Yukie Takeuchi
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.145, pp.59-90, 2023-05-31

「映像・デザイン研究『饒舌の映像-テレビ・コマーシャル・フィルム』」は,草月アートセンターが主催し,1968年に東阪で6日間開催された催事である。本稿はこの開催経緯とかかわった人物,内容詳細と広告界の反応に注目し,そこに表れている関係性を歴史化することを目的としている。「饒舌の映像」の企画者は今村昭という電通の広告制作者いしがみみつとしだったが,今村は石上三登志名で前衛映画の評論家としても活動していた。石上の活動拠点が1960年代の日本の前衛芸術運動を牽引する中心的な存在だった草月アートセンターだった。今村は石上の経歴を用いて「饒舌の映像」を文化催事として企画した。米国と日本の傑作テレビCM集,日本の5名の代表的制作者の作品集などが上映され,鈴木清順,筒井康隆,サトウサンペイ,野坂昭如,竹村健一らが登壇したシンポジウムも併催された。入場料500円を徴収したにもかかわらず毎回満員となった。複数のメディアがこれに驚きをもってとりあげた。反響は広告界の構造転換を促進し,長く君臨していたグラフィック・デザイナー団体の解散を加速させた。「饒舌の映像」は今村・石上というふたつの顔を持つ人物を介した前衛芸術とテレビCMの交点であり,これ以降テレビCMの社会的・文化的価値についての議論が本格化したと考えられる。
著者
池内 恵
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
Cairo Conference on Japanese Studies
巻号頁・発行日
pp.173-181, 2007-12-20

Cairo Conference on Japanese Studies, カイロ大学, 2006年11月5日-6日
著者
北川 香子
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.01-033, 2023-03-17

There is a blank period of contemporary historical materials between the Angkor and the post-Angkor periods. The well-known history of this period, from the 14th century to the 16th century, had been edited from the Dynasty Chronicles compiled after the end of the 18th century, inscriptions of the early 14th century and the late 16th century, and Portuguese or Spanish records. The parts not described in those texts have been filled with imagination. In this paper, we reexamine the inscriptions from the 14th to the 17th century and the earlier versions of the Dynasty Chronicles, to ascertain which data were cast aside, which story was derived from guesses when constructing the accepted Cambodian history, and to identify what is definitely written in the above historical materials. The results. 1) The fact that the Angkor Kings do not appear in the Dynasty Chronicles or modern inscriptions suggests the possibility that historical records were not inherited through the blank period. 2) In the late 16th-century inscriptions, the Angkorian sites are given the qualifier “of old Cambodia.” In addition, the King’s inscription refers to the builders of those foundations as “the ancestors of the King,” indicating a recognition that his own royalty was to be traced back to that era. The statements that many “old” statues and buildings were “restored” and that recovering “the old prosperity” through the spread of Buddhism was desirable suggest that there might have been major destruction and confusion, or there might have been a time when Buddhist statues were left unattended. 3) In modern inscriptions, the title of kamrateṅ was not attached to the King’s name but put after the words symbolizing Buddhism. Moreover, a 16th-century inscription contains the word varman in the King’s name. These suggest the possibility that classical knowledge had been handed down to the society’s upper class. 4) The lack of donations of lands and personnel, which were seen in inscriptions up to the 14th century, and the fact that the words prefixed to people’s names to indicate their sex and social status had changed before the 16th century, suggest the structure of society and the economy transformed during the interim period. However, as the gap period lasts as long as two centuries, rapid changes should not necessarily be assumed.
著者
KORNEEVA Svetlana
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本文化の解釈 : ロシアと日本からの視点
巻号頁・発行日
pp.203-215, 2009-12-15

国立ロシア人文大学, モスクワ大学, 2007年10月31日-11月2日
著者
温 婉言 橋田 朋子
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.226-230, 2022-08-25

日本語の文章から仮名を除去し漢字だけ残した「偽中国語」は、一見中国語のように見えて日本人も中国人も読める面白さから日中のソーシャルメディアを中心に話題になっている。本研究では、人が手動で行っていた日本語文からの偽中国語文への変換を、自動化することを目指す。特に可読性を高めるために、日本語形態素分析システムMecab、かな漢字変換ツールGoogle CGI API for Japanese Inputなどを利用して、含まれる漢字を増やした上で日本語文を偽中国語文に変換するシステムを提案する。本稿では提案システムの実装の詳細、生成された偽中国語の評価実験の結果、偽中国語の特性をいかした応用例について述べる。
著者
中分 遥 佐藤 浩輔
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.119-124, 2022-12-02

道徳神仮説によれば, 超自然的な行為者や罰への信念を持つことは、 社会的な協力行動を維持 することに役立ち、人類の社会的複雑性を高める動因となる. これまで体系的な研究も含め、他の人 間に対して危害を加えることに対する超自然罰に関する研究は数多く行われてきたが, 一方で自然に 対して危害を加えることに対する超自然罰に関する計量的な分析はほとんど行われてこなかった。こ うした信念は、環境問題や地域のコミュニティーの持続可能な発展に役立っていた可能性がある. 本 研究では,日本の民間伝承のデータベースに登録されている, 超自然的な報復である 「タタリ」に関 連した資料について分析した.分析の結果,「タタリ」 と自然に関連する単語 (e.g., 木・動物・山の 神)が高い頻度で共起した. また, 報復は個人ではなくより大きな単位 (c.g.. 家) に対して与えられ る傾向についても示唆された.これらの結果は日本のタタリ伝承が 「報復する自然」 観を内包してい ることを支持するものである.
著者
五十嵐 成見
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第31巻, no.第2号, pp.67-84, 2019-03-20

本論文では,フィンランドにおける高福祉国家の形成に関するキリスト教の影響及びその歴史的特質を,フィンランド・キリスト教史及びキリスト教社会福祉史の観点から論じている。フィンランドでは,福音ルーテル教会を国教として導入した准国家として形成された当初から公的行政と教会の協働・連携が為されていた。ただ包括的なものとはなり得ず,その不十分さを補足する以上の形で展開されたのが女性キリスト者らによるディアコニッセの働きであった。また,ルーテル教会外部から生じた自由教会によるヴォランタリーの福祉活動も大切な役割を果たした。現在の高福祉制度へと至る過程にはこれらのキリスト教的働きが不可欠に存在しており,また今日においても重要な役割を担っている。
著者
北脇 知己
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.85-90, 2014-01-15

本研究では研究室配属問題に関して,学生の成績に依存する指数関数型の重み関数を用いた,新しい研究室配属方法を提案する.この方法は,成績上位の学生には成績を優先させて配属しつつ,成績下位の学生には配属希望を最適化した配属を行って,2つの配属方法を切り替える方法である.数値シミュレーション計算により,提案した研究室配属方法が重み関数のパラメータを変化させるだけで,配属方法を任意の成績順位で切り替えられることを示した.この研究室配属方法はe-learningなどの情報処理技術を用いた教育支援システムとの親和性が高く,今後の実用化が期待される.
著者
大野 久
雑誌
教職研究
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-9, 2016-04-18