著者
椎名 達雄 石崎 正志 福原 清司 池田 紘一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.94, no.27, pp.21-28, 1994-04-28

レーザレーダの観測データを解析する際、レーザレーダ方程式を用いるが、従来の方程式では送信光を平行光と仮定し、往路における散乱を考慮していない。しかしながら、雨や霧など天候が悪くなるに従い、大気中に浮遊する水粒子の数が多くなる。その結果、往路においても送信光の散乱が生じ、観測データに影響を及ぼすことが予想される。そこで、本研究において、送信光の散乱を考慮した新しいレーザレーダ方程式を提案し、解析を行った。その結果、雨から霧、雪へと気象状況が悪くなるに従い、送信光の散乱が大きくなることが分かった。また、送信光の散乱の様子を調べるために、霧箱による実験を行った。その結果、平行光にしたレーザ光が霧中で散乱され、広がりをもつことが確認された。以上のことから、提案したレーザレーダ方程式の適用性を確認することができた。
著者
芝野 博文
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.78, pp.p379-412, 1988-02

流出モデルは流出過程に固有のパラメータが随伴することになる。このパラメータによって降雨が各過程に配分され時間的な遅延を受け,後に総合されてハイドログラフが形成される。それゆえパラメータは流域特性と深く結びついている。パラメータを流域特性から推定する手法が確立されれば任意の流域で任意の降雨から自由にハイドログラフを誘導できることになる。本論文ではこの種のモデルとしてADTモデルを試験流域での資料を基礎に提案した。A runoff model accompanied by specific parameters of runoff processes. With these parameters, precipitation is distributed over each processes, and integrated into a hydrograph later. Therefore, parameters are related closely to the characteristics of drainage basins. If parameters are predicted from the basin characteristics, we can develop hydrographs easily from arbitrarily set precipitation over arbitrarily selected drainage basins.
著者
鈴木 安里 葛城 啓彰 斎藤 和子
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.179-191, 1993-03-27
被引用文献数
2

歯周病原細菌に誘導される多形核白血球(PMN)の,培養ヒト歯肉線維芽細胞(Gin-1)への傷害を観察し,歯周疾患における歯肉の傷害細胞としてのPMNの役割を明らかにしようと試みた。このため^<51>Cr標識したGin-1上で健常者PMNと,A. actinomycetemcomitans, A. viscosus, F. nucleatum, P. gingivalisを,それぞれ37℃で反応させ,Gin-1傷害の指標として細胞崩壊と細胞剥離を測定した。この結果,4時間までの反応ではどの系においても細胞崩壊は発現せず,Gin-1傷害は著明な細胞の剥離として観察された。PMN単独,P.gingivalisを除く菌単独での傷害作用はみられなかったが,菌とPMNとの混合により,細胞崩壊を伴わない著明なGin-1の剥離が発現した。この時のGin-1剥離は,反応時間の延長と,Gin-1に対するPMNの割合の増加に伴って上昇した。P. gingivalisは菌単独でも,PMNとの反応によっても1時間でほぼ同等のGin-1剥離率を示した。また,菌の浮遊液濃度が一定(1mg/ml)ならば,各菌種とPMNとの反応によるGin-1剥離率のあいだにはほとんど差はなかった。Gin-1剥離はα_1-PI, PMSF, 5%ヒト血清によって抑制されたが,酸性プロテアーゼインヒビターや活性酸素のスカベンジャーによる抑制はほとんど起らなかった。このとき,PMNから多量の活性酸素を誘導することが報告されているF. nucleatumをPMN刺激に用いると,α_1-PIによるGin-1剥離の抑制率は他の菌を用いたときと比較して有意に低いものとなった。これらの結果は,この実験におけるGin-1の剥離が,おもにPMNから放出される中性プロテアーゼによることを示している。またPMNとF. nucleatumの反応により放出される活性酸素によるプロテアーゼインヒビターの不活化作用が観察された。
著者
太田 一徳 原田 浩幸 中嶋 重旗 田中 一彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.141-146, 1992-03-05
被引用文献数
6 1

市販のイオンクロマトグラフィー(IC)用陰イオン交換体より大きな交換容量を有するはん用のイオン交換体(シリカ系強塩基性陰イオン交換体)と大きな溶出力を有する芳香族トリカルポン酸(トリメリト酸)系溶離液の組み合わせから成る無機陰イオンの導電率検出ICを開発し, 酸性雨に関連する実際試料に対して適用した.その結果, 1.25mMトリメリト酸溶離液(pH 4.65)と内径4.6mm, 長さ100mmの分離カラムを用いることにより8種の陰イオン(PO_4^<3->, Cl^-, NO_2^-, NO_3^-, I^-, SO_4^<2->, SCN^-及びS_2O_3^<2->)を25分以内で良好に分離, 導電率を検出することが可能であった.最適IC条件下の検量線は, 一価陰イオンにおいて, 0.3mMまで, 二価陰イオンにおいて0.2mMまで各々直線であり, これらの検出限界(S/N=3)は, 10ng/mlオーダー(Cl^- 10ng/ml, NO_3^- 25ng/ml及びSO_4^<2-> 28ng/ml)であった.本法を酸性雨及び酸性雨による土壌(黒ぼく土及び赤ぼく土)溶出(抽出)水中の無機陰イオン分析に適用したところ, その中に含まれるCl^-, NO_3^-及びSO_4^<2->を良好に分離定量することが可能であった.その結果, 土壌のSO_4^<2->吸着量は, 雨水中の全陰イオン濃度及びpHに依存することが明らかとなった.
著者
一宮 浩市 武田 哲明 植村 拓也 範国 哲也
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.72, no.723, pp.2747-2752, 2006-11-25
被引用文献数
1

This paper describes the heat transfer and flow characteristics of a heat exchanger tube filled with a high porous material. Fine copper wire (diameter: 0.5mm) was inserted in a circular tube dominated by thermal conduction and forced convection. The porosity was from 0.98 to 1.0. Working fluid was air. Hydraulic equivalent diameter was cited as the characteristic length in Nusselt number and Reynolds number. Nusselt number and friction factor were expressed as functions of Reynolds number and porosity. Thermal performance was evaluated by the ratio of Nusselt number with and without a high porous material and the entropy generation. It was recognized that the high porous material was effective in low Reynolds number and the Reynolds number which minimized the entropy generation, existed.
著者
蒲原 行雄 山家 仁 重岡 裕治 吉永 啓 青木 史一 梶原 義史 兼松 隆之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.922-926, 1994-04-01
被引用文献数
9

鈍的腹部外傷によって生じる小腸狭窄はまれな疾患である.今回われわれは,転倒による腹部打撲後に発症した小腸狭窄の1例を経験したので,本邦報告例の検討とともに報告する.症例は56歳の男性.バイク乗用中転倒し,下腹部を打撲し来院した.入院時の腹部超音波検査,computed tomography(CT)検査にて腹腔内出血を認めたが,保存的に軽快した.第14病日に腹痛と嘔吐が出現し,腹部単純X線撮影にて鏡面形成を伴う小腸ガスの増加を認めた.イレウス管を挿入し症状は軽減したが,小腸造影で回腸に全周性の狭窄を認めた.開腹にて回盲弁から50cmの回腸の狭窄と周囲の腸間膜に瘢痕を認めた.腸切除を行い,術後経過は良好であった.病理学的検索にて,U1II-IIIの輪状潰瘍と炎症細胞の浸潤,および線維化を伴う肉芽組織の増生を認め,鈍的外傷による回腸の限局性の循環不全で生じた瘢痕狭窄と考えられた.
著者
平 英影 寺西 秀豊 劔田 幸子 槻 陽一郎 清水 規矩雄 河合 康守
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.1200-1209, 1991
被引用文献数
17

富山県内のスギ林の分布及び雄花の着花状況を観察しスギ空中花粉調査結果との関連性について検討した結果, 次のような結論を得た. 1. 富山県の平野部におけるスギ空中花粉とその飛散パターンは30年生以上のスギ林の標高別面積, 雄花の着花状況, 花粉飛散開始日, 気象条件によってよく説明できる. 2. 富山県の平野部におけるスギ花粉の総飛散数及び最大ピークは標高200m以下の地帯に分布するスギ林から飛散する花粉によって大きく影響されていた. 3. 観測点から20〜30kmの距離に分布しているスギ天然林からの花粉はほとんど観測されなかった. そのため, 観測点から遠くに分布するスギ林ほど観測点の空中花粉に及ぼす影響は小さいものと推定された.
著者
谷田 則幸 大東 正虎
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-18, 2007-06

2004年に発生した中越地震において、被災状況の確認と被災者の発見は、非常に困難であった。電話網(有線、携帯)が不通状態になったことと、それに伴う政府の対応策も後手に廻ったことが主な原因と考えられる。こうした問題を解決するために総務省では、大規模地震が発生したときに上空から小型のセンサを多数散布することで情報収集を行うことが計画されている。しかし、どのような機器が採用されるかは現時点では公表されていない。我々は、電波の送受信が可能なアクティブ型ICタグを活用すれば、こうした計画が実現できると考える。本稿では、震災被災者を発見するためにアクティブ型ICタグをヘリコプターによって上空から散布した場合の位置特定手法の提案と考察を行う。電波の送受信が可能なアクティブ型ICタグは、通信手段が何も無い場所において、簡易なネットワークを自律的に形成することができる。また、温度などが感知できるセンサを付けることで、被災者の存在を確認することができる。また、測量方法のひとつである三辺測量を位置特定アルゴリズムとして採用し、被災者の位置特定を行う。三辺測量において搭要な距離情報は、ICタグが発信する電波の到達時間を距離に換算することで、測量が可能となる。被災者のいる位置は、ランダムに散布されたICタグを使って、位置が特定されたICタグ3個を利用して任意の1点を特定し、三辺測量を繰返しながら特定される。上述のようなICタグの散布、被災者の位置特定等に関してマルチエージェント・シミュレーションを実施し、その結果を考察する。
著者
坂元 光輝 土居原 健 小杉 幸夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.501, pp.115-120, 2000-12-07

都市空間3次元モデルを構築する際の初期データ構築では, 上空からステレオ撮影された画像を使用して, 専門のオペレータによる図化と呼ばれる工程によって, 地物の形状と空間位置の取得が行われる.本研究は, 都市域を対象とした航空写真による人工地物の形状と位置の自動抽出を行う上での基礎となるステレオマッチング処理の高精度化を目的とする.前半では, カメラパラメータの高精度な自動推定手法について概説する.後半では, 投影変換後の画像のマッチングにおけるエポポーラ線間整合の問題について論じ, エッジ線による初期対応付けの有効性について述べる.また, 航空写真によるエッジ線の抽出およびマッチング手法について提案し, その処理結果を示す.
著者
山田 ひとみ 坂本 裕子 米中 由美 内谷 文子 阿曽沼 洋子 中島 由美子 横尾 京子
出版者
日本新生児看護学会
雑誌
日本新生児看護学会誌 (ISSN:13439111)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.40-45, 2002-09

本研究は、体重測定時に「包み込み」を行うことにより、早産児のストレスを緩和できるか否かを明らかにすることを目的とした。当施設での裸のままで保育器外へ出す体重測定法(従来法)と、児をタオルで囲い頭部以外の身体を布で覆った状態で出すという体重測定法(包み込み法)を、早産児4事例において、各方法12場面(4名×3回)を交互に行った。体重測定前の児の状態を安静とし、体重測定中・体重測定後0~5分の5分間・体重測定後6~10分の5分間の各時期を、行動学的側面(ストレスサイン・state)から比較検討し、以下の結果を得た。ストレスサインにおいては、体重測定中では14項目中7項目で有意差が認められ、体重測定後0~5分の5分間・6~10分の5分間においても体重測定中よりは少数であるが、有意差が認められた。stateにおいては、包み込み法では体重測定中に全く上昇が見られないという結果が得られた。これらより、「包み込み」は体重測定中の早産児のストレスを緩和するのに有用であると示唆された。今後もあらゆるケアにおいて、児のストレスサインを適切に読み取り、対処法を探索していく必要がある。The purpose of the present research was to clarify whether or not the stress of preterm infants can be relieved by "wrapping up" during measurement of their body weight. The body weights of four preterm infants were measured using alternately our facility's traditional method, whereby babies are taken naked as they are from the incubator ("traditional method"). and a method whereby the infants were taken out clothed in a towel so that their bodies except for the head were covered in fabric ("wrap-up method"). Each infant's body weight was measured 3 times using the two methods, making a total of 12 cases. Before weight measurement the infants were put into a restful state; subsequently they were examined for behavioral aspects (stress signs and state) during (a) weight measurement. (b) the 5 minute period immediately after weight measurement (minutes 0 to 5). and (c) the subsequent 5 minute period (minutes 6 to 10). Below are the results of the comparison that was made of the behavioral aspects in each of these periods. A significant difference occurred in stress signs during weight measurement, with just 7 out of 14 signs being observed with the wrap-up method. During the 1st (minutes 0-5) and 2nd (minutes 6-10) 5 minute periods following weight measurement the number of stress signs observed was small compared to those occurring during weight measurement, but again there was a significant difference. As regards stress state, the result obtained was that no increase whatever was observed during weight measurement when the wrap-up method was used. These results indicate that the wrap-up method is useful for relieving stress in premature babies during body weight measurement. In the future it will be necessary to read accurately the stress signs in babies under all types of care and to explore methods to remedy such stress.