著者
吉崎 和幸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.667-674, 2009-06-01 (Released:2009-06-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

Remarkable clinical effects were observed by IL-6 blockage with a humanized anti IL-6 receptor antibody in patients with Castleman's disease, rheumatoid arthritis, and juvenile inflammatory arthritis. This evidence suggests that the hyper-function of IL-6 is an essential key cytokine in the pathogenesis of the above diseases, in which many cytokines, chemokines, and inflammatory molecules are activated. We found, for example, TNF-α blocking therapy showed a reduction of acute phase proteins, such as CRP and SAA, however, the IL-6 blockade induced not only reduction but also normalization of CRP and SAA serum levels. To elucidate this in vivo phenomenon, we analyzed the expression of cytokine inducing CRP and SAA mRNA with the intracellular signal transduction mechanism in vitro. The results, indicated that the IL-6 signal was essential though the activation of STAT3 for the induction and augmentation of CRP or SAA by the associated stimulation with TNF-α or IL-1. Recently, it is now known that IL-6 is a regulatory molecule in the induction of Th17 cells with TGF-β. Therefore, IL-6 blockage may potentially improve autoimmune diseases, beginning with the pathogenic initiation phase. We believe that unknown pathogenic inflammatory phenomena can be clarified using this analytical strategy and cytokine blocking therapy. Furthermore, in the future we hope to induce complete remission of autoimmune diseases by using cytokine blockage freely.
著者
高野 聡子
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.99-108, 2005-03

1919(大正8)年に藤倉学園を創設した川田貞治郎は、藤倉学園創設以前の1916(大正5)~1918(大正7)年の約2年半、アメリカ合衆国でアメリカ精神薄弱施設における教育と保護の方法を習得した。彼は、H.H.ゴダードが研究部門長を務めるヴァインランド精神薄弱者施設において、ビネ知能検査の精神年齢とIQを用いた精神薄弱分類基準を習得し、それを「児童研究」に発表した。藤倉学園創設後、彼は、ビネ知能検査を実施し、精神年齢とIQを用いた精神薄弱分類基準を「教育的治療学」の体系に盛り込むこととなる。「教育的治療学」でのビネ知能検査の使用目的は、対象児の選定と精神薄弱の程度と分類であり、検査結果は、精神薄弱の知能の程度を把握する基準として用いられた。また、ビネ知能検査では把握できない知能、たとえば注意力と反応力などについては、教育的治療学の「心練」が使用された。
著者
吉村 庸 黒川 逍
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-"84-3", 1973

琉球八重山諸島の地衣類については今日までほとんど研究されていなかった。幸にして, 筆者らは, 国立科学博物館が主宰した琉球列島の自然史科学的総合研究の一部を分担し, 八重山諸島の地衣類を研究することになった。吉村は1973年1月, 陰花植物班の一員として, 八重山諸島(西表島, 石垣島, 竹富島)で地衣類を採集調査した。これらの採集標本は筆者らによって研究中であるが, 今回, 下記の日本未記録の9種について発表することが出来た。これらのうち樹皮生の Coccocarpia fenicis を除くと他の8種はいずれも葉上地衣である。Arthonia macrosperma (ZAHLBR.) SANT. ヨウジョウソバカスゴケ(新称)。大型 (50-62.5×12-13μ) で多室 (8-10) の胞子と長い(約100μ)粉子を持つのが特徴である。今迄マレーシアからのみ知られていた。Byssoloma leucoblepharum (NYL.) VAIN. ヤシノビッソロマ(新称)。子器の縁部が白色で, ゆるくこうさくした菌糸でできているのが Byssoloma 属の特徴の1つである。本種は子器盤が褐色で周辺部は連続している。また地衣体は多少緑色がかっている。熱帯地方に広く分布し, 一部欧州や北米の温帯にも知られている。Byssoloma rotuliforme (MULL. ARG.) SANT. タラヨウノビッソロマ(新称) 子器盤が黒色で, 灰白色の地衣体の周辺部は小部分に分かれ散在しているのが特徴である。熱帯地方に広く分布するが, 北米や欧州の温帯の一部でも知られている。Coccocarpia fenicis VAIN. チヂレバカワラゴケ(新称) 葉状の中型地衣で樹皮に着く。細かい扁平な裂芽を持つのが特徴である。フィリピンで記載されて以来, 現在迄どこからも報告がなかった。Dimerella epiphylla (MULL. Arg.) MALME ウスチャサラゴケ(新称) 淡褐色の子器を持ち, 日本ですでに知られている橙色の子器を持つダイダイサラゴケと区別される。熱帯地方に広く分布している。Mazosia bambusae (VAIN.) SANT. コクテンマゾシア(新称) 4室の胞子を持ち, 地衣体表面に粒状突起があり, その先端に細微な黒点があるのが特徴である。スマトラ, ボルネオ, フィリピン, ニューギニアからのみしか知られていなかった。Mazoasia phyllosema (NYL.) ZAHLBR. ナミマゾシア コクテンマゾシアに胞子の形状など似ているが, 地衣体表面に粒状突起がなく平坦である。熱帯地方に広く分布している。Mazosia melanophthalma (MULL. ARG.) SANT. ハクテンマゾシア(新称)。コクテンマゾシアに似るが地衣体表面の粒状突起が白色である。熱帯地方に広く分布する。Tricharia albostrigosa SANT. ヨウジョウシロヒゲ(新称) 地衣体に白色の毛を持ち, 胞子は巨大な石垣状であるのが特徴である。熱帯地方に広く分布しているがアジアではジャワでしか知られていなかった。
著者
坂本 一
出版者
筑波大学
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.153-189, 2001-03

名城大学の坂本です。勉強の機会を与えていただいてありがとうございました。財政と予算につきまして、近々目立った動きとしてご報告申し上げたいことは、日本公認会計士協会についてです。これは、今まで以上に関心を寄せてきております ...
著者
木村 徳丸
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.111-120, 1985-03-01

大型電算機{CU(IBM、AMDAHL)、システム470-V/8}処理にもとづくSDモデルの誤差分散の非均質性に関する吟味と検出 この小論で筆者は、SDモデルにおける整合型共分散行列の推定子と誤差分散の非均質性に関する直接法テストをめぐる問題をとり扱い、SDモデルの誤差分散の非均質性に関するホワイトやクラグに代表される従来の各論証結果に対する批判的吟味を行ない、さらに、個々のSDモデルに採択されている外生変数がラグつきの内生変数に代位可能となるとき、実際のシステム展開に事実上有効なものとなるこれら論証結果のうちの各ケースを、コンピューターシミュレーションの作業をとおしてそれぞれ検出した。(付記):なお、この小論は、昨夏(1984) 8月、米国ワシントンB.C.で開催された国際OR学会での研究報告論文を修正加筆したものである。ちなみに、うえにのべたコンピューターシュミレーションの作業は、昨夏8月初句、各データベースのバッテリーとエントリィのためのセッティングをすべて日本ですませたファイルを米国コロンビア大学大型電子計算センターヘ搬入し、{CU.(IBM)AMDAHL S. 470-V/8}のマシンに入力し、筆者自身がおこなったものである。なお、紙幅の都合でプログラムリストはすべてこの小論での掲載を割愛した。
著者
梅村 孝司
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

1.強毒トリインフルエンザウイルスはマウスの脳に持続感染する強毒トリインフルエンザウイルスの経鼻接種により多くのマウスは脳炎によって死亡するが、生き残ったマウスの脳を調べたところ、接種後48日まで脳病変、ウイルス抗原およびウイルスRNAが残存していた(Vet.Microbiol.,2003)。インフルエンザウイルスは8本のRNA分節から成っているが、PB2を除く7本の分節がこれらマウスの脳組織中に証明され、インフルエンザウイルスが脳組織中に持続感染する可能性が示された。2.ウイルスゲノムはマウスの脳に感染後60日まで残存するHsN3亜型の強毒トリインフルエンザウイルスを経鼻接種されて生き残った43匹のBALB/cマウスの脳を接種後180日まで経時的に病理検索し、接種後60日までウイルスゲノムが脳組織中に残存することが分かった。3.新しいインフルエンザウイルスが持続感染した脳で誕生する可能性少ない前項と同じHsN3亜型の強毒トリインフルエンザウイルスをBALB/cマウスに経鼻接種し、接種後20日後に別の亜型のインフルエンザウイルス(A/WSN/33(H1N1))を脳内接種(重感染)した。重感染より6日後に脳組織を採材し、ウイルス分離、ウイルスゲノム検索および病理検査を行った。しかしながら、重感染させた脳組織からウイルス粒子は分離されず、両亜型ウイルスゲノムの再集合も見られなかった。これは重感染ウイルスが宿主免疫によって脳から排除されたことを示している。従って、脳内に残存しているインフルエンザ、ウイルスゲノムが重感染した別のインフルエンザウイルスにレスキューされ、新しい合の子ウイルスが脳内で誕生する可能性は低いことが実験的に確認された。
著者
ラオキ ション・P
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.149-163, 2008

母親学校の指針は、チェコノコメンスキーが書いた、これは世界最初の児童教育指導書です。これは児童の父母のための本ですが、幼稚園の先生や保育所の保母はもちろん、広く園児教育に関心を持たれている方々に読んでもらいたい本です。幼児をみちびくべき目標は何か;幼いものを育み、習熱させるべきことは、健康、理解力、言葉能力、作法と品性、敬具な心、母親校から公立学校へとか。
著者
内山 良一
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1454-1459, 2007-12-20
被引用文献数
3 1

抄録はありません.
著者
中瀬 勲
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学紀要 農学 生物学 (ISSN:03663353)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.67-104, 1981-03-31
被引用文献数
2

従来から行われてきた広域スケールでの都市および地域計画,そして緑地計画等の計画に際して,計画のための単位の検討が十分に行われていなかったことが,各地域での全体景観(Total Landscape)形成上,多くの問題を提起している。これは,各地域の保有する諸条件のは握のあいまいさ,あるいは各地域の特性認識の欠除に起因していると思われる。ここに,地域の特性に対応した計画単位の提案,およびそれらの計画単位を用いた地域特性評価を,計画学的に支持される手法で導くことの重要性が指摘できる。このような観点から,本論文では「広域緑地計画における流域を基礎にした計画単位の提案と,それらの計画単位を応用した各地域が保有するポテンシャルの計測および評価を,計画学的に導く方法論の確立とその計画的意義に焦点を合せ考察を行った。さらに,緑地計画・景観計画・風致計画の基礎になる土地利用構造のは握を,流域を構成する下位スケールの計画単位と考えられるメッシュを用いて行い,前述の流域を計画単位として用いた方法論と併せて,全体景観形成への計画的方法論の展開についての考察を行ったものである。」以下,本論文で考察した主な内容をとりまとめると次の如くである。(1)計画に関与する諸単位については,行政区域(市町村)・メッシュ・特定施設の利用圏的な単位・その他の目的別単位をあげることができる。これらの諸単位は,あらゆるスケールの計画対象地域における自然的現象・社会的現象のは握を客観的に導くに際して,各々の長所および短所を有している。(2)諸計画単位は地域特性に対応して各々の有効性を発揮するが,流域は行政区域(市町村)の集合であるとみなせる場合が多く,計画単位の集合の仕方としては,メッシュが流域および行政区域を構成し,さらに行政区域が流域を構成する場合のあることが明らかとなった。すなわち,流域を行政区域の境界線を利用した地域計画スケールでの新たな計画単位として位置づけられることの可能性を示した。(3)また,流域は土地利用的にも地表流に関しても地形的にも,流域内で比較的完結した状況を呈していること,さらに自然的災害に関しても原因および結果が流域内では握可能なことを通じて,流域の計画単位としての有効性を指摘した。(4)次に,流域を計画単位として取り上げて,地域の開発および保全ポテンシャルの設定を試みる一方,メッシュを計画単位として土地利用が安定して存在する領域の設定を計画的に導くことを目的とした。そして,自然的条件からの検討では,流域を計画単位として取り上げ,スケールに対応して流域を単位流域および分割流域といった新たな概念に基づいて計画単位としての意義づけを試みた。なお,単位流域は1級および2級河川の流域であると定義し,分割流域は単位流域内の河道分岐に対応して単位流域を細分化した単位であると定義した。(5)分割流域設定の指標となる河道の分布は,広域スケールでは,国土地理院発行の1/50,000の地形図,準広域スケールでは大阪府作成の1/30,000の河川図,流域スケールでは大阪府作成の1/2,5000の地形図より求めた。(6)広域スケールでは,単位流域・分割流域毎の,流域形状特性・土地利用特性の検討を通じて単位流域相互間および分割流域相互間の相対的比較を行った。最終的には,広域緑地計画を意図した環境の全体計画の立場からの検討を流域の保有する諸特性,すなわち1)流域形状特性よりの流域の保全性2)山林の保全性3)田畑の保全性4)市街地の保全性を通じて考察した。(7)準広域スケールでは,流域群にわたる開発および保全ポテンシャルの検討を,流域内での土地利用と主尾根の分布に着目して検討した。そして,単位流域の境界である尾根を主尾根と定義し,この主尾根が地域景観構成上の重要な要因であることが認識された。(8)また,土地利用構造に関しては,単位流域内では土地利用が山林・田畑・市街地へと変化しながら等高線に直交する方向で連続して分布している。このことから,この現象を「縦方向の土地利用の連続性」であると定義した。一方,市街地・山林は等高線に平行する方向で連続して分布している。この現象を「横方向の土地利用の連続性」と定義した。(9)これらの考察を通じて,市街地の拡大のあり方,自然的土地利用としての山林および田畑の存在の仕方に関する有効な計画的示唆を得た。また,単位流域は上位スケールでの計画策定上の計画単位として有効であり,分割流域は下位スケールの計画単位として有効であることが認められた。流域スケールの検討では1つの単位流域をケースに取り上げて,植生・土壌・地形条件を基礎指標に,地域緑地計画を意図した開発および保全ポテンシャルの設定を行った。植生は植生自然度を参考に5つに類型化し,土壌は生産力に対応して5つに類型化した。この結果を通して,開発および保全ポテンシャルモデルの作成を行い,地域の開発あるいは管理のための有効な計画的示唆を得ることができた。(10)社会的条件からの検討では,基本的には1/2分割経緯度メッシュを計画単位に取り上げて,社会生態的条件による土地利用安定城の設定を目的としている。ここで用いたデータは1)起伏量2)駅からの距離3)道路率3)時間距離5)道路への近接性6)山林7)田畑8)市街地9)農地転用である。なお,各々のデータは表2-4に示す如く各メッシュ毎に求めたものである。(11)土地利用変化方向は,一般に可逆的な変化方向と非可逆的な変化方向としては握できる。つまり,可逆的な土地利用の変化とは,自然的土地利用としての山林・畑・田の相互間での土地利用変化を意味し,非可逆的な土地利用変化とは,自然的土地利用から都市的土地利用としての市街地・工場地等への土地利用の変化を意味している。この非可逆的な土地利用変化が,今日の景観の画一化の原因となっていることが考察できる(図2-8)。(12)このような土地利用変化方向の可逆性・非可逆性に加えて土地の起伏の程度から,景観の変化プロセスと土地利用変化についての考察を試みた(図2-9)。この結果,都市的土地利用の拡大がさらに進行すると,今まで都市的土地利用と自然的土地利用のの間に存在していた動的平衡状態の維持が不可能になると推察でき,次に述べる土地利用毎の安定域・適応域・最適域の設定を計画的に行うことの重要性が認識できた。(13)土地利用の存在状況を計画的には握する場合の概念に,安定・適応・最適が考えられる。これら諸概念は,現況の土地利用を自然的土地利用と都市的土地利用のダイナミクスとしては握することである。以上の諸概念に基づいて土地の持つ社会生態的条件を媒体にして,各々の土地利用の安定域・適応域・最適域の各領域設定が可能となる。このことを通じて,都市的土地利用と自然的土地利用の共存,あるいは各々の土地利用の安定的存在のための計画的方策の基礎が得られる。(14)そして,土地利用の安定域については,昭和41年および昭和48年の土地利用の分布の仕方と土地の起伏量を指標に検討を行った。その結果,以下のことがわかった。1)"山林"は起伏量9以上で安定し,起伏量7以上でもやや安定する。2)"田"は起伏量0から6の間で安定する可能性が高い。3)"畑"は起伏量3から7の間で安定する。4)"市街地"は起伏量0の地域で安定している。さらに,土地利用の安定域の検討を表2-4に示す土地利用生態支持要因のデータ,現況土地利用のデータ,および農地転用のデータを用いて行った。結果は表2-5に示す如くであり,以下の諸点が考察できた。1)"山林"は起伏量が8以上,道路率がメッシュ当り5.0%以下,都心からの時間距離が60分以上の地域で安定している。2)"市街地"は起伏量が6以下,道路率がメッシュ当り0.1%から10.0%,都心からの時間距離が60分以内で安定している。(15)前述の表2-4に示すデータを用いて主成分分析を行った。その結果,「山林の分布に関する主成分」および「田畑の分布に関する主成分」を得ることができた。すなわち,「山林の分布に関する主成分」の高得点域(1.0以上)が山林の安定域,「田畑の分布に関する主成分」の高得点域(1.0以上)が田畑の適応域となる。田畑の分布域に関して適応域の概念で示しているのは,現在田畑が分布している領域も,将来は市街地化される可能性を有していると考えたからである。(16)土地利用変化についての検討は,農地転用のデータと土地利用現況のデータを用いて行った。これは農地転用のされ方を通じて,農地の将来の在り方に対する基礎的な方向性を得ることを目的としている。ここでは確率プロセスの1つであるマルコフ吸収連鎖を適用して検討を行い,農地規模には関係なく農地が転用されていく方向性が認識できた。このことから,農地を生産緑地として維持すべき地域,あるいは市街地化すべき地域といった地域区分を計画的に設定することの重要性が認識できた。(17)以上で得られた新たな計画単位としての流域の有効性,および土地利用毎の安定域・適応域・最適域の考察結果に基づいて,地域の保有する自然的ポテンシャル・社会的ポテンシャルを考慮に入れた緑地計画・景観計画・風致計画に関する計画論の展開を行った。ここでの考察は流域を計画単位として,これを単位流域と定義してみた。そして,単位流域という考え方は,広域スケールでの計画では定量的データの取り扱いに適しており,地域スケールの計画では定量的データに加えて定性的データの取り扱いにも適していることがわかった。また,単位流域の境界としての主尾根を構成する分割流域群は,地域の環境管理上のフレームとして重要な役割を担うと同時に,地域の全体景観の保全あるいは全体景観の構成上,重要な計画的位置を占めることが知られた。(18)さらに,土壌および植生のデータを基礎にして,地域の開発および保全ポテンシャルモデルの作成を試みた。このモデルは,土壌と植生との総合化を試みたものである。このモデルを通じて設定された地域区分をオーバーレイすることにより,さらに詳細な地域の保有する開発および保全ポテンシャルのは握が可能になる。このような観点からの開発および保全ポテンシャルを導く方法論および結果は,緑地計画のみならず各種の計画を展開するに際して,高い有効性が期待できる。(19)土地利用の安定域・適応域設定のための方法論を図3-2に示す。この方法論は,現在市街地化が進行しつつある地域を対象にして考慮したものであるが,他の地域特性の異るケースにも応用が可能なものであろう。(20)以上のように本論文は,緑地計画・景観計画・風致計画等の諸計画において,比較的広域スケールの計画への適用を目的としたものであるが,特に計画単位の明確化および地域の保有する諸現象の分析・統合のシステムを計画学的に導く方法論の開発に目的の重点がおかれたものである。この方法論より導かれた計画単位は,地域の開発および保全に関して有効な計画上のフレームを形成するものである。また,土地利用の安定域・適応域の概念は,これまでの土地利用計画に不足していた理論的側面を明確化する点で意義がある。さらに,これらの計画単位および土地利用の安定域・適応域の概念に基づいて,地域特性の明確なは握が可能になり,全体景観構成への計画的アプローチの1つとして確立されたら幸いである。
著者
笹 健児 寺田 大介 永井 紀彦 河合 弘泰
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.99-106, 2009
被引用文献数
1

From viewpoint of a ship safety and a cargo management, the examination of a criterion of judge of ferry cancel is carried out, based on both observed ship motions when the ship encounters a typhoon and coastal wave data at that time. Ship motions are observed by using 5,000GT type ferry boat. And as the wave data, coastal waves that recorded with NOWOHAS instead of the encounter wave which can not be measured, are used. These data are analyzed by Spectral Analysis and the characteristics are analyzed in detail. Moreover, numerical reproductions of ship motions based on observed coastal waves are carried out, and a couple of future problems with respect to the decision of the criterion of judge of ferry cancel are considered.
著者
福島 幸子
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.740-747, 2003-11-25

航空交通流管理では,航空交通量が空域の処理能力を超えると予測されるとき,航空機の出発時刻を調整する.航空会社は航空機を1日に数回飛行させている.空港の運用時間に到着が間に合わない便には遅延をかけないが,次の飛行の到着時刻までは考慮されていない.航空会社は次の便が運用時間に間に合わないときは機材交換によって欠航を回避しており,そのような便の遅延の回避や同社便同士の遅延の交換が望まれている.本稿では,特定便の出発遅延を回避する方法や他の航空機に与える影響を検討した.
著者
福島 幸子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.100, pp.81-86, 2003-05-23

航空交通流管理は,航空交通量が空域の処理能力を超えると予測されるとき,航空機の出発時刻を指示する.空港の運用時間に到着が間に合わない便には遅延をかけないが,次の飛行の到着時刻までは考慮されていない.航空機は1日に数回飛行している.航空会社は次の便が運用時間に間に合わないときは機材交換によって欠航を回避しており,それらの便の遅延の回避が望まれている。羽田空港の航空交通流管理のアルゴリズムは出発機を考慮しないので,最も単純である.本稿では,羽田空港を例に,特定便の出発遅延を回避する方法や他の航空機に与える影響を検討した.
著者
佐藤 彰治 絵内 正道 横平 昭
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.69, no.581, pp.15-20, 2004
被引用文献数
3 1

Some regions along the coast in East Hokkaido have peculiar climates, with dense fog in summer and abundant sunshine in winter. The purpose of this paper is to propose how to effectively use a "sunroom" during summer and winter in these regions. Air temperature and humidity conditions were measured in both summer and winter within two detached houses in these regions containing a "sunroom". From these measurements, the following knowledge was acquired: 1) In summer, a large sunroom provides good environmental temperature conditions for a living room connected with it during the dense fog season. 2) In the case of a detached house built with a sunroom, it could be predicted that the heat loss through glazing doors situated between the living room and the sunroom greatly decreases in winter.
著者
坂元 〓
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.95-100, 1989-09-20

イタリアでは,1985年に文部省による高校への情報学導入国家計画が始まり,情報教育の教員研修は,4つの中央研修機関による中央研修として第1段が行われ,そこで教育された指導者が,各地方の68の中核学校で地域の教員に対する指導を行うというカスケード方式となっている.第1世代の180人の高校数学・物理の教師が,指導者となるため,4週間の中央研修を受けた.第2世代は210人であった.これらの指導員は,地域で2年間一般教員の研修を行う.その間給料は1/3増し,代替教員も保証される.第1世代によって1年目一般教員2,400名,2年目4,800名.第2世代によって,1年目は6,800名が研修を受けることになる.研修内容は教科教育,既存ソフト教育,授業設計などである.そのほか,20の地方にある教育研究研修所が小学校教員研修の一部として情報教育を行い,国立教育工学研究所も情報教育の講習を教師むけに行っている.