著者
中尾 照逸 塚本 義貴
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.100-104, 2006-02-28

症例は69歳, 男性。平成8年2月から胸のつかえ感と背部痛をおぼえだした。平成9年1月に胸部食道癌の診断で手術を勧めたが, 手術を忌避した。平成10年6月22日朝, 吐血のため緊急入院。同日午後に死亡したため, 遺族らの希望に従いカルテの複写を手渡した。遺族の感想としてカルテの開示を求めた理由は, 急な経過で亡くなった理由を詳しく知りたかったことと家族に見せなかった本人の姿をカルテに求めたかったことである。カルテの記載方法に関しては, 走り書きや英語で書かれた部分が理解しにくかったことと, POMRのS (主観的情報) とO (客観的情報) が参考になった。カルテを読むことで, 本人の病院での様子が良く分かり, 気持ちの整理に役立ち満足した。以上より, 日本語を用いPOMRによる情報の整理されたカルテならば, 患者本人の気持ちや容態などを経時的に追体験しやすく, 遺族の心のケアに役立つものと思われた。
著者
澤田 愛子 塚本 尚子 中林 美奈子 松田 美千代
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-21, 1998-03

配偶者との死別は人生の中で最も厳しい試練であると言われている。しかしこの種のテーマを扱った実証的研究は乏しく, とりわけ, 高齢者のそれは皆無に近い。そこで著者は94年10月から95年9月まで, 配偶者と死別した65才以上の高齢者に聞き取り調査を実施した。調査地域は富山県の農村部で, 配偶者と死別後7-8ヵ月が経過した頃に訪問を実施した。調査結果から得られた所見は次の通りであった。1.高齢者の死別後の悲嘆過程は一般的に若年者のそれよりもマイルドである。2.しかし次のようなケースでは社会的サポートを必要とする。即ち, 1)死別後独居となって, 家族や友人からの支援がほとんど無い場合。2)配偶者が急死したために心の準備ができなかった場合。3)日常生活に多大な困難がある場合。4)死別者自身に深刻な健康問題があったり, 経済的に不安のある場合。5)配偶者への治療に不満を持ち, 医師に怒りを感じている場合。6)性格的な問題があったり, 家族と同居していても, 関係が良好ではない場合。3.これらの高齢者の支援のためには, 現存の訪問看護システムに死別カウンセリングを導入したり, 高齢死別者自身の自助グループの結成援助等さまざまな取り組みが必要とされよう。
著者
林 紀乃 濱松 晶彦 畔柳 三省
出版者
へるす出版
雑誌
救急医学 (ISSN:03858162)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.1109-1114, 2008-09
被引用文献数
1
著者
樋口 誠太郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.209-218, 2004-10-01
被引用文献数
1

医事文化資料というと,その範囲はかなり広く,多岐に亘っていると考えられる。亥鼻分館に収蔵されているものも,直接医療に関したものから世事,不思議,怨霊などを描いたものまで,さまざまなものが収集保存されている。これらを大別すれば,絵画資料と文字(文献)資料に区分することができる。当館の医事文化資料で注目をひくのは,民間医療に関する「医療習俗」であろう。現時点で見ればなんのことはない一枚の絵が江戸時代末期疱瘡除けの習俗を伝えるものであったり,江戸時代から明治前半期にかけて,多くの薬物販売の広告が収集されているのを見ると当時は医師にかかるより薬を買って服用するのが病気を治す第一歩であったことが,これら広告の宣伝文によく表われている。本文では,これらをまとめてとりあげたが,「くすりと広告文」だけでも一つのテーマとなるほどであるので,ここでは代表的なものを選んでとりあげた。文字(文献)資料はさまざまなものがある。ここにとりあげたのは「コロリで死んだ役者が生きかえった」という不思議に,信仰による現世利益(りやく)を伝えるものや,明治5年当時の木更津県(現・千葉県)が出した「育子告諭」のような貴重な文献資料の存在を紹介した。また,これらの特色を総体的に見ると,絵と文字が一枚の資料の中に入っていることで,当時の人々の識字能力というのは,かなりのものであったということが判る。今回本稿では,亥鼻分館に収集された資料のガイドラインを紹介するものである。
著者
竹澤 実 佐々木 誠
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.128-133, 2002-06-20

今回我々は,高橋らが慢性閉塞性肺疾患患者の評価のために開発した非支持上肢漸増運動負荷試験(Unsupported Incremental Upper Limb eXercise test ; UIULX test)の妥当性と,上肢使用日常生活活動との関連を若年健常女性14名を対象に検討した。UIULX testは高橋らの方法に従って行い,クリアーしたstageを記録した。上肢使用日常生活活動は,「棚に物を載せる」動作,「洗濯物を干す」動作,「食毒動作」,「洗面動作」,「整髪動作」,「更衣動作」の6項目とした。それぞれ呼吸循環反応と上肢,全身の自覚的運動強度を測定した。UIULX testではstageと全てのパラメーター間に有意な正の相関を認め,運動負荷試験としての妥当性の一部が確認された。上肢使用日常生活活動の各項目間では酸素摂取量,酸素脈,上肢・全身の自覚的運動強度は,活動間に有意な差を認め,心拍数,呼吸数,一回換気量では差は有意ではかった。次に,UIULX testの結果から,各パラメーターをUIULX testのstage値に換算した上で,活動内で値を比較したところ,整髪動作はパラメーターに差は認めなかったが,他の活動はパラメーター間に有意な差を認めた。UIULX test使用により上肢使用日常生活活動の運動特性が示され,UIULX testの臨床応用への可能性が示唆されたと考える。
著者
技術者教育研究所「光と影」取材班
出版者
日本高専学会
雑誌
高等専門学校の教育と研究 : 日本高専学会誌 (ISSN:1343456X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.21-22, 2005-10-20

2005年夏、うれしい知らせが舞い込んできた.しばらく幸せから遠ざかっていた一人の母親へ、息子から電話がかかってきた.「お母さん、東工大の大学院に合格したよ!」、かつて亡き夫が歩んだ同じ道を息子が歩み始めた.涙なしには語れない「誰も歩まなかった道」に、今度は新たな「うれし涙」がこぼれた.
著者
小川 祐紀雄 角本 繁 岩村 一昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.1242-1250, 1998-06-25
被引用文献数
6

本論文では, 斜めから撮影された航空写真画像に3次元座標列からなる地図(立体地図)を射影変換して照合することにより, 広い地域にわたって対象とする建物の特徴を抽出する方式を提案する.提案方式の特徴は, 照合した立体地図の図形の形状および属性情報を対象物のモデルとすることにより, 画像における対象物を認識し, その特徴を理解できる点にある.本方式により, 2次元的な情報しかもたない地図の利用では抽出が困難であった建物の屋根と壁など, 3次元空間上の情報を抽出することが可能になる.阪神大震災後の画像を用いた実験において屋根の破損した家屋および壁の焼けた家屋を抽出した結果, 本方式が地域の情報取得に有効であることを確認した.
著者
石田 千絵 河原 加代子 高石 純子 入江 慎治 杉本 正子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.139-147, 2004-12-25

〔目的〕統合カリキュラム後の本学3年次生で実施されている地域看護実習(保健所・保健センター実習)の4年間の実態を検討し, 今後の教育活動に生かすことを目的とした。〔方法〕平成12年度から15年度の3年次生314名の実習記録物と平成14年度の3年次生75名の実習後レポートを分析対象とした。調査内容は, 1)実習経験の有無とその内容2)実習の学びについては, 実習目標の項目から質的に分析した。〔結果〕1) 4年間の実習形態の実態は, (1)教育的な働きかけをとり入れた「実施」経験の増加(2)「実施」できる事業内容の変化(3)家庭訪問の継続訪問の経験の減少2)実習内容では, (1)実習地域の健康問題と看護活動を関連付けて学べていること(2)継続看護・関係機関や他職種との連携は, 精神保健事業を通して多くの学生が学べていたことがわかった。今後さらに, 実習前の演習の工夫や実習施設との連携が重要である。
著者
市川 徹 横山 隆 檜山 英三 松浦 雄一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.732-738, 1995
被引用文献数
2

広島大学第一外科において経験した小児期に初回手術を受けた先天性胆道拡張症(CBD)24例を一期的分流手術後3年以上経過例14例,初回内瘻術後再手術例4例,初回外瘻術(うち3例は胆道穿孔合併)後分流手術例6例に分け術後経過,合併症を術式別に検討した.一期的分流手術例では術後短期間膵炎や胆管炎症状を認めるものや,術後数年間肝内胆管拡張を認めるものも有るが徐々に軽減しており概ね問題は無い.胆道穿孔合併例や,初回胆管炎や膵炎が内科的にコントロールできないものには,初回胆汁外瘻造詮術を行い合併症予防のために有用であった.二期的分流手術後の術後経過も一期的分流手術例に比し差を認めず良好であった,これに対し初回内瘻造般例は,その後全例重篤な胆管炎を起こし,2年から15年後に分流手術を要しており,たとえ無症状でも早期に分流手術を行うべきである. CBD の分流手術にあたっては胆汁の充分なドレナージは当然必要であるが,膵管内 protein plug や結石を認め更に膵液流出障害が考えられる場合は膵液ドレナージ術の付加も考慮すべきである.
著者
米澤 充
出版者
山口大学
雑誌
山口大学独仏文学 (ISSN:03876918)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.ii-iv, 2007

河中正彦教授追悼号
著者
高槻 圭悟 鈴木 滋 牛沢 勇 庄子 卓郎
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.350-358, 1988-08-30
被引用文献数
2 2

A method for the confirmation of monascus pigment colored on the skin of fresh fishes was developed. A fish sample was extracted once with methanol at room temperature (30 min), and the extract or its condensate was checked for monascus pigment by visible absorption spectrometry, green fluorescence after reaction with ammonia and acetone, and thin layer chromatography. The extract which seemed to contain monascus pigment was further examined by liquid chromatography and gas chromatography-mass spectrometry (GC-MS). On the liquid chromatogram using two eluants successively, monascus pigment showed a characteristic peak to both visible and fluorescent detection, which was a clear indication of monascus pigment. Complex peaks appeared on the GC-MS total ion chromatogram, but the constituents of monascus pigment were identified by the mass spectra of these peaks, which could be used to confirm monascus pigment.
著者
山口 陽子 McNaughton B.L.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.673, pp.15-22, 1999-03-18
被引用文献数
5

ラット空間探索時に観察されたシータ位相歳差という現象を再検討し、神経振動子のダイナミックスとして位相歳差現象をもたらす神経回路モデル提案する。さらに計算機実験により、この回路が位相コードを用いてエピソード記憶を海馬内に固定する働きをもつことを示す。
著者
久保木 富房
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-31, 2007-01-01
被引用文献数
1

第47回日本心身医学会総会において,「東京大学心療内科の30年」というテーマで会長講演の機会を得た.東京大学心療内科は昭和47年(1972年)に東京大学医学部附属病院分院に開設された.当時の中心人物は石川 中助教授と菊池長徳医局長の2名であった.初代教授となった石川は心身医学に5つのサイバネティックス原理を導入し,TEG(東大式エゴグラム)を作成し,サイバネーション療法を確立した.また,彼は「気づきとセルフコントロール医学」を提唱した.そのほかに日本心身医学理事,『心身医学』誌編集委員長,第4回国際心身医学会総会(会長:池見酉次郎先生,1977年,京都)の事務局長を務め,さらに日本心身医学会の日本医学会への加盟に貢献した.第三代教授となった筆者は世界保健機関(WHO)の主催する世界パニック障害研究会議(G. Klerman)と世界摂食障害研究会議(B. Liana)に委員として出席し,国内ではPsychosomatic Symposium in Tokyoを3年間主催した.また,分院と本院の統合に参画し,心療内科病棟を開設した.さらに2005年には神戸において第18回世界心身医学会議の組織委員長を務めた.最後に最近の研究の中から(1)心身相関マトリックス, (2)パニック障害患者の脳機能をPETを利用して, (3)Ecological Momentary Assessment (EMA), (4)Mild depressionの診断基準づくりの4つについて概説した.