著者
園田 麻利子 上原 充世
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 (ISSN:13421468)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.21-35, 2007

本学看護学科3年次生に開講されているターミナルケアの授業を通して学生の死生観の変化を明らかにし今後の教育の方向性を模索することを目的に授業前後で質問紙による調査をした。対象は,本学看護学科3年次生,50名であり,期間は平成18年4月,7月の2回である。その結果,以下のことが明らかになった。1)死別体験,葬儀参列の体験が8〜9割があり体験率は高いと言えた。2)死に対する態度の尺度,死生観尺度,死のイメージ尺度(SD法)の授業前後の比較では授業後が有意に高かった。このことから,授業は学生の死生観が肯定的に変化することに大きな意義を持っていたと考えられた。3)死別体験・葬儀参列の体験・看取り体験と各尺度との関連は一部を除いて有意差はなかった。このことから看護学生の死生観を形成する上でこれらの体験は大きな影響を及ぼしていないと考えられた。4)授業は,専門の講師からの講義や学生が自ら死について考えられるような教材であったが,授業後においても死を否定的に考える学生もいるので今後の授業内容の検討が必要であると考えられた。今回の調査より,ターミナルケアの授業は,学生の肯定的な死生観育成に大きな影響を及ぼしていた。しかし,授業後においても死を否定的に捉える学生はいるので,授業のあり方の継続的な検討が示唆された。
著者
豊倉 穣 本田 哲三 石田 暉 村上 恵一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.153-158, 1992-02-18
被引用文献数
8

注意障害に対する訓練として,SohlbergらのAttention process trainingを日本語訳し,原版よりその手技を簡便化したうえで外来患者の家庭訓練に用いた.注意障害を有する脳障害患者の慢性期2症例で施行した結果,注意障害評価法としての机上テストで改善が認められ,日常生活上,社会生活上にもその効果が示唆された.以上よりAPTは認知リハビリテーションの一手技として有効である可能性が示された.
著者
片岡 靖子
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.71-77, 2007-03-25

The purpose of this report is to clarify the roles and tasks of medical social workers in terminally ill patient care. An analysis was performed based on tasks of medical welfare, which were gathered through focus group interviews carried out on the medical staff at "O" Acute Hospital, "A" city. As a result of the survey analysis, it became clear that the target and viewpoint of traditional medical social work, such as response to problems of poverty and the overall relationship of the person and the situation, are needed and as such, new roles, such as construction of a regional cooperative system, the relationship to the viewpoint of living assurance, and the provision of resource ill patient care, by providing a differentiation of functions at medical institutions through a change in medical policy.
著者
西村 伸子
出版者
東亜大学
雑誌
東亜大学紀要 (ISSN:13488414)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.17-34, 2009-01

キューブラ・ロスのOn Death and Dyingは1969年に発表され,アメリカの医療界だけでなく世界中に衝撃を与えた。アメリカでは,それ以後,死にゆく患者へのケアの取り組みが始まった。ロスの発表から30年以上を経て,この著書の中に示されている死までの5段階プロセスは,アメリカではどのように評価されているのだろうか。さらに,死にゆく患者への取り組みが直ぐに推し進められた背景にはどんなことがあるのか。一方,日本ではロスの5段階プロセスをどのように捉えてきているのか。日本が死にゆく患者への取り組みに遅れた理由は何か。これらを論証するために,ロスの5段階プロセスを基軸にしてアメリカと日本の文献から検討し,論じることにした。ロスの5段階プロセスについては,アメリカではこの30年間に各方面からの研究者によってその妥当性が論じられ研究が重ねられてきている。アメリカでは1960年代,活発な公民権運動が医療の分野にも波及した。さらに1970年代では,人格の尊重が医療倫理の指導原理となった。このような時代の流れの中でOn Death and Dyingは発表され,アメリカでは死に対する反省の契機となった。以後,死にゆく患者のケアは急速に進んだ。日本では1972年にOn Death and Dyingが翻訳されている。以後,ロスの死にゆく患者の5段階プロセスが医学書や看護の書籍で紹介され始めた。それは,2000年以後も記述にはあまり変化なく紹介されている。日本は,大戦後アメリカ医療への遅れを取り戻すための努力が継続され,先端医療の導入が最優先された。1990年代から少しずつ患者の人権尊重が意識され始め,2000年頃から,死にゆく患者へのケアが急速に論じられるようになった。死にゆく患者への取り組みとしては,アメリカに比較して約30年の遅れを生じることとなった。
著者
山本 秀樹 甲斐 郷子 大里 真理子 椎野 努
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.849-860, 1990-06-15
被引用文献数
9

本論文では 会話シミュレーションを基にした語学訓練用知的 CAI システムにおいて 学習者に適切な指導を行うための意図の理解とそれに基づいた会話制御を行う方式について述べた.本システムを使用する学習者は シミュレートされている場面に関係した意図だけでなく 英語の知識に関した意図を持つ.この意図が 明示的に示されない場合 システムは それを学習者の誤り 発話文の表層の情報などから理解しなければならない.学習者の意図を考慮した発話を行うために システムの会話制御部を シミュレーション会話制御部 教育会話制御部 および会話制御切替部から構成する.シミュレーション会話制御部は 目標指向の会話モデルに基づいた会話を制御する.発話の中に 目標-副目標関係 目標-手段関係が検出できる場合は 発話は会話の流れに沿っているといえる.会話制御切替部は 学習者からの教育会話の要求や 会話の中の誤りによって教育会話を起動する.教育会話は 学習者の誤った知識を正すなどの教育目標を連成すべく制御される.教育会話の目標が達成されたら 教育会話が起動される以前のシミュレーション会話に制御を移動する.本方式により 従来のシステムと比較して柔軟な教育が可能になり学習効果が向上する.本システムで採用した会話制御部の構成は シミュレーション会話制御部を他の教育対象のシミュレータと入れ換えることにより 英会話以外の知的 CAI システムに対しても応用可能である.
著者
稲田 二郎
出版者
東京大学大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系人間環境学専攻
巻号頁・発行日
2009-03-23

報告番号 : ;学位授与年月日 : 2009-03-23;学位の種別 : 修士;学位の種別 : 修士(環境学);学位記番号 : 修創域第3040号 ; 研究科・専攻: 新領域創成科学研究科人間環境学専攻
著者
柴沼 一樹 宇都宮 智昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.108-121, 2007 (Released:2007-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
5 5

本論文では,均質材の二次元線形破壊力学問題に対し,曲線き裂を含むX-FEMの一般的なモデル化の提案及びそれらを用いた解析結果の総合的な評価を行った.モデル化として(1)曲線き裂と分割された積分領域のモデル化,(2)C属性節点領域の範囲のモデル化,(3)C及びJ属性節点領域で構成された曲線き裂モデルの写像変換手法を提案した.その解析結果の検証より,写像変換の有効性も含め,提案したモデル化の有効性が示された.また,曲線き裂に関してM積分の経路独立に関する制限を明確にした.さらに,き裂進展シミュレーションからき裂進展方向とM積分経路内部のき裂の角度変化を用いた精度評価方法を適用し解析結果の信頼性を確認した.
著者
前田 優 小林 三世治 真柄 俊一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.229-237, 1990-12-15

保険診査時の血液検査の一項目としてフルクトサミン(FA)を導入した。FAは採血時の1-3週前の平均血糖濃度を反映しているといわれている。今回,糖尿病などの糖代謝異常疾患の医学的選択資料のひとつとして利用できるかを検討した。過去ならびに現在に尿糖陽性,糖尿病,およびその疑いのあった153例のうちFAが異常値を示したものは51例であった。FAとヘモグロビンA1(HbA_1)との相関係数は0.828と強い関連を認めた。尿糖(±)以上の群ではFA,HbA_1の平均値はすべて異常値を示し,尿糖(-)群でもそれぞれ17%,15%の例で異常値を示した。今日までに血糖コントロールの指標としてHbA_1の信頼性は十分確立されてきた。しかし,生命保険診査という限られた状況において,他の生化学検査と同一試験官で採血できるFAで,HbA_1と同程度の情報を得られるなら,利便性,コストの面からFAの方がメリットがあると考えられる。
著者
Munby Ian
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学人文論集 (ISSN:09199608)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.133-145, 2004-07-31

日本の大学におけるスピーキングテストについての問題点・選択肢・提案 英語の授業でスピーキングテストを効果的に行うことは教師にとって非常に難しい。日本の大学において,大勢の同等レベルの学生の場合ではさらに困難である。この論文の目的はそれに関係する重要な問題点を明らかにし,いくつかのテストの例を提示した。内容は,北海道の大学の英語教師25名による彼らが好んで用いるスピーキングテストに関してのアンケートのデータを用い,テスト様式,実行方法,評価方法を収めた。それをサポートとするものとして,大学生にテストを行った自分自身の経験,公的な英語試験のスピーキング試験官としての経験,言語テスト理論についての文献を利用した。最後にテストについてのアイディア・提案を示した。
著者
井村 洋一
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02869756)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-7, 1979-03-31

本紀要:第5巻に記載したように、試験管中に長期間培養されたゾーリムシに対し、100KHz程度の脈流はその分裂能力を顕著に促進することが認められた。この現象は空気以外は閉塞された試験官中の単細胞生物に関するものではあるが,一般に多細胞生物の加齢はその細胞の分裂能力と相関するといわれるので,本報文は以上の細胞レベルにおける電気的効果は,これを酵素による分子レベルで意味づけようとするならばどのような現象が想定されるであろうかということを,枯草菌α-アミラーゼを用いて実験的に推理したものである。結果として,細胞内に対イオンとして最も多量に存在するK^+はNa^+に比較してα-アミラーゼに不可逆的に結合し,その活性を阻害する性質が強いこと、さらにこの阻害はパルス電場によって復活させうることが認められた。
著者
藤井 春三
出版者
公益社団法人日本航海学会
雑誌
航海 (ISSN:0450660X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.8-12, 1967-09-25
著者
北村 一親 KITAMURA Kazuchika
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
アルテスリベラレス (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
no.83, pp.1-27, 2008-12

かつては言語学者が言語の起源を追究することは学界において世界的に忌避されており,50年ほど前の日本の言語学会においても同様で,鈴木孝夫が記号論的視点から「鳥類の音声活動」と題する講演を行った際,出席者から「たしか100年前にフランスの言語学会で,人類言語の起源は今後言語学では一切扱わないことを宣言したが,それを知っていますか」という旨の質疑を受けたという。2 bis) しかし,時は移り,幸いにも現在ではこのような軛から解放されて言語の原初の姿を模索する様々な試みがなされるようになってきており,例えば,手話言語3) やクレオール諸語4) に言語の原初形態を見出そうとする動きがある。筆者は将来的にクレオール諸語における注目すべき諸点を考察するために,さまざまなクレオール諸語,すなわち大航海時代および植民地主義時代の所産であるフランス語,英語,ポルトガル語やオランダ語(そしてこれらの諸言語に付け加えるならばスペイン語やその他の非印欧語)を基体とするクレオール諸語を言語の原初形態を探求しうるのかどうかも含めて研究することを企図している。しかし,研究を始めるにあたり「クレオール語」を定義する必要があり,またその前に統一的な理解が難しい「クレオール」という概念の検討が必要不可欠と考え本稿を起稿する次第である。なお,クレオール諸語の中でも特にカリブ海に浮かぶ大アンティル諸島イスパニョーラ島の西3分の1を占め,1804年にラテンアメリカで最初に独立したハイチ共和国の国語であるハイチ・クレオール語およびフランスの海外県である小アンティル諸島のマルチニーク,5) グワドループ等におけるフランス語を基体とするクレオール諸語(フランス語系クレオール語)を他のクレオール諸語と比較することを中心に据えたいので本稿の欧文標題をハイチ(・クレオール)語で表した。また,本稿標題が「クレオール語で」という表現で止めているのは今後の研究も想い描きながら,この言語,すなわち「クレオール語」であらゆる可能性を示したいという筆者の願望の故であることをここに明記しておく。
著者
北村 文雄 野田坂 伸也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.32-37, 1975-03-20
被引用文献数
2

イ)造園樹木の生長におよぼす土壌硬度の影響を知るために,イチョウおよびオトメツバキを用いて実験を行った。ロ)供試樹木の地上部の生長は,高硬度区は悪く,年代を経るにしたがってその程度がいちじるしくなる。低硬度はむしろ生長がよい。地下部も同様の傾向を示し,高硬度区で生長は悪いが,予想以上に根は伸長し,また,地下部発達度(地下部/全体(花葉を除く))も大きい。低硬度区は根の状態はよいが,地下部発達速度は小さい。低硬度区が生長がよい原因は,土壌が適度に固いために根がよく土壌を把握し,効率よく働いているためであると考えられる。ハ)イチョウにおいては,高硬度区は落葉が早く,低硬度区は逆に遅くなる現象がみられた。また,オトメツバキにおいては,高硬度区は花蕾が年代が新しいうちはよく生じ,また低硬度区では花蕾が非常によく生ずる。これらは植物体内の栄養条件に関係があるとみられる。ニ)土壌水分については,高硬度区は乾燥しやすく,雨後一時間に水分含量が多くなってもその後の乾燥も早い。低硬度区は比較的よく水分を保持している。