著者
長縄 祐弥
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies
巻号頁・発行日
vol.146, pp.239-263, 2022-03-25

本稿では,dentro de 100 metros「100メートル先」という表現におけるdentro deの空間的意味について考察をおこなう。この前置詞句はdentro de 5 minutos「5分後」のように主に時間的意味に使用される表現であるが,この時間的意味のような振る舞いで用いられる空間的意味も存在する。コーパスにおけるこの空間的意味は,用例数は乏しいものの,文法的に問題はなく,容認される。ただし,時間的意味から空間的意味への拡張という,通例とは反対の方向に意味拡張がおこなわれる点について考察をおこなう必要があると考えられる。結論として,この前置詞句は発話時を基準としたとき,空間よりも時間のほうが必ず「先」を表せる点で時間的意味として用いられやすいことを確認した。これに加え,発話時の地点から終点まで断続的に移動することを含意する必要のある空間的意味は時間的意味に比べ,文脈が限定されるため,時間的意味から空間的意味へ拡張しているととらえることが可能であるとした。
著者
土井 正男
出版者
公益財団法人豊田理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

印刷・塗布・乾燥などの工業プロセスにおいて、ソフトマターの界面や接触線近傍の微小領域におけるレオロジー現象は極めて重要である。本研究では、界面近傍で起こるレオロジー現象をソフトマターのミクロ構造と結びつけて理解することを目的とする。平成24年度は以下に述べる研究成果を挙げた。(1)粘着剤やゴムなどの高分子弾性体と基板界面で見られる粘着、剥離現象:対称な平行基板にはりつけた両面テープを平行に引き離した時の粘着剥離の様子を観察し、剥離における中芯の影響について理論的な解析を行い、剥離エネルギーを最大にするには、適度な曲げ弾性を持つことが必要であることを示した。(2)高分子溶液の乾燥にともなうスキン層の影響:シャーレの中に置かれた高分子溶液が乾燥するとき、溶液表面にスキン層と呼ばれる膜ができることがある。スキン層ができると、内部に泡が生成されることがしばしば観察されるがその原因についての詳しい研究話。本研究では、乾燥にともなう泡の成長と高分子溶液内部の圧力変化の測定から、泡が溶液に溶けている空気によるものであることを示した。(3)粘性流体から基板を引き上げた時、一定速度以上では、流体は完全に基板を濡らすことが知られているが、我々は、ある種の粘弾性流体においては、臨界速度を超えると逆に脱濡れが起こることを見出した。この現象についての理論的な仮説を提示し、臨界速度の見積もりを行い、仮説の正当性を検証した。

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出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
シミュレーション
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, 2005-09-15
著者
野口 栄太郎 今井 賢治 角谷 英治 川喜田 健司
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.466-491, 2001-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
143
被引用文献数
1 1

「内臓痛と消化器疾患や各種消化器症状に対する鍼灸治療」にテーマを絞り、その研究の現状について基礎・臨床の両面から検討を加えた。今回、検討の対象としたものは、NIHの会議でも検討された関係分野の欧文文献と、データベースや手作業によって網羅的に集められた和文文献、および一部の中文文献である。これまでの研究の歴史と研究の現状を簡潔に各テーマごとに網羅的にまとめた。「内臓痛に対する鍼灸刺激の効果について」は、内臓痛に関する鍼灸の効果について、基礎医学的研究と臨床研究が紹介され、さらに、直腸伸展刺激を用いた内臓痛モデル動物における鍼の効果と視床内側下核との関連についての実験成績を総説した。「消化機能に対する鍼灸刺激の効果」については、唾液分泌、胃運動、胃酸分泌、小腸運動に対する、鍼灸刺激の作用機序に関する研究について総説した。「消化器症状に対する鍼灸治療の効果」については、消化器疾患および消化器愁訴に対する鍼灸治療の研究の歴史と現状を網羅し、臨床研究における胃電図の有用性についても併せて総説した。
著者
Kazuhiro ANDO Hitoshi HASEGAWA Bumpei KIKUCHI Shoji SAITO Jotaro ON Kohei SHIBUYA Yukihiko FUJII
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
pp.oa.2019-0051, (Released:2019-07-04)
参考文献数
14
被引用文献数
10

We retrospectively reviewed the cases of three patients with infectious intracranial aneurysms (IIAs), and discuss the indications for surgical and endovascular treatments. We treated two men and one woman with a total of six aneurysms. The mean age was 43.3 years, ranging from 36 to 51 years. One patient presented initially with an intraparenchymal hemorrhage, one with mass effect, and the other one had four aneurysms (one causing subarachnoid hemorrhages and the other causing delayed intraparenchymal hemorrhages). The average size of all aneurysms was 12.2 mm (range, 2–50 mm). They were preferentially located in the distal posterior cerebral artery, and then, in the middle cerebral artery. All cases were caused by infective endocarditis. We selected endovascular treatments for five aneurysms and treated all but one within 24 h from detection. One aneurysm was treated by combined therapy with endovascular intervention and surgery. After treatment, none of the IIAs presented angiographical recurrence or re-bleeding. If feasible, endovascular treatment is probably the first choice, but a combined surgical and endovascular approach should be considered if surgery or endovascular treatment alone are not feasible. The method of treatment should be individualized. For cases with high risk of aneurysm rupture, treatment should be performed as soon as possible.