著者
Koshiro Kanaoka Tsunenari Soeda Satoshi Terasaki Yuichi Nishioka Tomoya Myojin Shinichiro Kubo Katsuki Okada Tatsuya Noda Makoto Watanabe Rika Kawakami Yasushi Sakata Tomoaki Imamura Yoshihiko Saito
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Reports (ISSN:24340790)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.122-130, 2021-03-10 (Released:2021-03-10)
参考文献数
25
被引用文献数
15

Background:Although cardiac rehabilitation (CR) has been reported to be associated with better clinical outcomes in patients with cardiovascular diseases, there are few nationwide studies about CR participation by patients with coronary artery disease in Japan.Methods and Results:We performed a nationwide retrospective cohort study using the National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan between April 2014 and March 2018. Patients were divided into 2 groups (acute coronary syndrome [ACS] and stable coronary artery disease [sCAD]), and the rates of participation in in- and outpatient CR after percutaneous coronary intervention (PCI) were investigated. Propensity score-matched analysis was performed and the association between outpatient CR participation and all-cause mortality 3 months after PCI was examined. Overall, 616,664 patients (ACS, n=202,853; sCAD, n=413,811) were analyzed. The participation rates of CR increased annually. The participation rate was higher for inpatient than outpatient CR in both the ACS (52% vs. 9%, respectively) and sCAD (15% vs. 3%, respectively) groups. Prognosis was better for patients with than without outpatient CR in both the ACS (hazard ratio [HR] 0.52; 95% confidence interval [CI] 0.47–0.59) and sCAD (HR 0.72; 95% CI 0.65–0.80) groups.Conclusions:Outpatient CR was associated with a better prognosis in patients with ACS or sCAD. The participation rates of outpatient CR following PCI were extremely low in Japan.
著者
海野 進 仙田 量子 石塚 治 田村 明弘 草野 有紀 荒井 章司
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

地球の全マントルの50–70 wt%を占める枯渇したマントルは大陸地殻を形成した融け残り岩とされている[1]。これらの枯渇したマントルは,クラトン下のリソスフェアや海底下の対流するアセノスフェアを構成するが,それらがいつ地球創生期の始原的マントル(PUM)から分化し,どのようなプロセスで形成されたかを明らかにすることはマントルの物質的進化を理解する上で重要である。 カンラン岩の溶融時にOsの親核種であるReがメルトとともに完全に融け残り岩から失われると,融け残り岩のOs同位体比はそれ以降変化しない。この仮定のもとに始源的マントル(PUM)から融け残りカンラン岩を生成したRe枯渇年代が決められる。クラトン下のリソスフェアの多くはOs同位体比(187Os/188Os)が0.11以下と低く,始生代末~原生代初めのRe枯渇年代を示すことから,その頃にPUMが大規模に融解し,対流するマントルから切り離された融け残り岩と考えられる[2, 3]。一方,中央海嶺玄武岩(MORB)のソースとなる対流するマントル(DMM)は,Os同位体比が0.116–0.135と幅広く,多くは10億年前より若いRe枯渇年代を示すことから,原生代以降の様々な時期に対流による溶融と混合・攪拌を通じて形成されたと考えられてきた。しかし,高枯渇ハルツバージャイトを主体とするクラトン下リソスフェアとは異なり,DMMの多くはPUMからメルトを3–4 wt%取り去った程度の低枯渇度で,溶融後も相当量のReが残存していたはずである。すなわちDMMは従来考えられた以上に古い時代に分化した可能性がある。 そこでRe-Osアイソクロンが適用困難な融け残りカンラン岩について,Re/Os比の初期値をメルト組成から独立に推定する方法を提案する [4]。PUMからの分化時に融け残りカンラン岩と平衡であったメルトのREE組成についてモデル計算をし,融け残り岩のYb濃度を推定することによってPUMの部分溶融度,すなわち融け残り岩のRe/Os比の初期値を決めることができる。このRe/Os比と Os同位体比をもとにOs同位体進化曲線を計算すれば,分化年代が得られる。最近,著者らは伊豆―小笠原―マリアナ(IBM)前弧域の無人岩マグマ由来のCrスピネルとメルト包有物の解析から,初生無人岩マグマのソースマントルが2種類あり,それぞれ37–32億年前と17–15億年前にPUMから分化した融け残り岩であることを明らかにした[4]。同様に,Os同位体比0.125を有する平均的なDMMは26–22億年前にPUMから分化したことがわかった。これらの3つの年代は丸山[2002]が示した大陸形成が最も活発であった時期と合致する(図1)。また,平均的なDMM分化が起きた26–22億年前はクラトン下リソスフェアのRe枯渇年代と一致する。このことから,大規模な大陸形成をもたらしたマントル対流の活動期パルスが幅広いOs同位体比を示すDMMの生成にも関与したと考えられる。[1] Zindler, A., and Hart, S., 1986. Ann. Rev. Earth Planet. Sci.,14, 493 - 571[2] 仙田量子ほか,2012. 岩石鉱物科学,41, 211 – 221[3] Walker, R. J., 2016. Geochemical Perspectives, 5[4] Umino, S. et al., 2018. Island Arc, doi: 10.1111/iar.12221[5] 丸山, 2002.プルームテクトニクスと全地球史解読, 岩波書店
著者
滝田 亘 中山 実
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.suppl, pp.81-84, 2004-03-05 (Released:2017-10-20)
参考文献数
6

本研究では,文章を視覚と聴覚で提示した場合の記憶への影響を調べるために,課題文を視覚と聴覚で提示し,提示文章の内容について問題文により真偽判定する実験を行った.課題文に含まれる命題数が記憶に与える影響について,問題文での正答率と反応で検討した.その結果,3〜5命題課題において,視覚提示時の正答率は聴覚提示時の正答率より有意に高くなった.また聴覚提示について,2〜5命題課題においては,提示文章の命題数増加に伴い正答率は有意に低下した.問題文に対する判断の難易度を信号検出理論のd'を用いて検討した.その結果,視覚提示では命題数による低下は認められなかった.聴覚提示では,命題数増加に伴い,正誤の判断が有意に難しくなった.
著者
櫻井 準也
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.37-47, 2017-06-30

本稿では7 世紀に築造され、18世紀初頭(江戸時代)に石室が修復された埼玉県坂戸市の浅羽野1 号墳(土屋神社古墳)の事例を紹介する。この古墳では天井石に残された銘文によって1707年に信州高遠の石工によって石室が修復されたことが判明している。古墳が過去に修復された事例はわが国に存在するが、本事例は極めて珍しい事例である。その理由は修復の時期や石工名が判明していること、そして石材が転用されて石像が製作されたことである。また、修復の契機となったのが当時頻発していた地震災害による古墳の被害であることも重要な点である。このように、本事例は古墳と江戸時代の人々の関係、さらには遺跡と自然災害の関係を知ることができる興味深い事例である。
著者
石川 克知 高橋 吉文
出版者
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 = Research Faculty of Media and Communication, Hokkaido University
雑誌
メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.1-57, 2014-03-31

本論は、グリム兄弟が『グリム童話集(KHM)』の個々のメルヘンを彫するに際して、数字もまた重要な役割をはたしていたのではないか、と考え、それを作品内在論理解析方法と、 デジタルデータの検索方法とを結合して、考察しようとしたものである。 第一章は、数字3と数字2が要となっているKHM 中の名高いメルヘンKHM55「ルンペルシュティルツヒェン」とKHM21「灰かぶり」の2篇を、作品内在分析によって構造解析し、そ の内在論理と数字との緊密な関係を証明する。 第二章は、一転してKHM の全ての版(草稿から第七版まで)における数字使用頻度を、それ用に特別に作成したKHM 全版のファイルに基づいてコンピュータによって検索し、その一 覧を作成した。その検索結果の中で特に注目すべきは、数字3の総体的減数と、それと反比例する数字2の圧倒的多数状況および版改訂に伴いふくれあがっていく数字2の激増事実である。 続く第三章は、数字2の覇権への動きというその検索結果を、KHM 中最も分量が多くかつグリムたちの最自信作であり、メルヘン史上およびグリムたちにとって『グリム童話集』の要といえるメルヘンで、題名にも数字2を冠しつつも、各種の数字が入り乱れるため数字的意味等の解読の著しく困難なKHM60「二人兄弟」において、内在分析の側から検証する。 だが、そこに現れる全ての数字と数字的事象(明示されないが、数字が意識されている現象)を順次列挙していく時、内在分析からは、数字2が諸数の乱数表的状態という森の中を冥界として経巡り、最終的には数字1へ、正確には2にして1である[2・1融合状態]へと収斂かつ帰還し蘇る、という「V字プロセス」(高橋)軌道の潜在が析出されてきた。 この時、第二章でのKHM 全体へのデジタル数字検索結果(数字2の覇権と拡大への傾向)と、第三章での詳細な内在分析が明らかにした数字2の冥府行およびその1との融合経緯とは、みごとな対応関係を見せる。その対応事実の確認からはさらに、KHM 全体において、またその双子たちのように親密なグリム兄弟やドイツ・ロマン派自身にとって、数字2に秘かに託されていた深甚な遍歴と融合の機能の潜在もまた、浮かびあがってくるように思われるのである。
著者
後藤 正己
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会北海道支部研究報告集. 構造系
巻号頁・発行日
no.57, pp.213-216, 1984-03-26

荒廃した戦後の国土復興の為、都市計画、区画整理事業の中で、安い費用、工期短縮等の中から急成長したのが曳家の技術である。しかし曳家そのものへの認識、技術等の地域さがあり鉄筋コンクリート造建造物は大都市中心に行なわれた様である。詳細は定かでないが、東京で5階建7,000トン、名古屋で8階建20,000トン等の大規模な建物が動いて意る。鉄筋コンクリート造の曳家では、建物下に移動装置の取付け段取りから移転完了据付までの同建物に応力の変化を起こさないことを原則のもとに施工しなければならない。鉄筋コンクリート造補強コンクリートブロック造、煉瓦造等では木造建物の様に基礎と切離す事が、切断による建物を傷める危険性及び補強強度の不安、又工事費の増大等の欠点があり、基礎下から持ち上げて曳家する方法が取られている。規模が大なる建物では機械に制約され、持ち上げるとジャッキが3倍、枕木が10数倍の量が必要であると、揚げ下げする時の、ジャッキ全体のバランスを保つ事が難しく、建物を痛める原因にもなる、又工期、費用も増大するので、無浮揚工法がほとんどである。実量のある大規模な曳家で一番問題があるのが、地耐力である。地耐力が充分である地盤は良いが杭等にたよっている建物は、地盤の改良、枕木等の敷詰、鉄筋コンクリートの路面等で、補強しなければ、建物の移動中に不等沈下を起こしてします。又基礎底面下約600w/mの移動装置が必要なために地下水位も考慮しなくてはならない。それでは、当社が昭和58年7月から9月にかけて施工した。(株)日鉄工営の下請で、曳家工事のみを手掛けた、室蘭日鋼記念病院看護婦業の曳家工事の概略を報告させていただきます。
著者
佐藤 有耕
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.347-358, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
3 3

本研究では, 大学生の自己嫌悪感と自己肯定の間の関連を検討した。目的は, どのような自己肯定のあり方が, 大学生の自己嫌悪感を高めているのかを明らかにすることである。自己嫌悪感49項目, 自尊心48項目, 自愛心56項目から構成された質問紙が, 18才から24才までの大学生ら535名に実施された。その結果明らかにされたことは, 以下の通りである。(1) 自己嫌悪感は, 自分を受容的に肯定できるかどうかと関連が強い。(2) 自己に対する評価も低く, 自己に対する受容も低いというどちらの次元から見ても自己肯定が低い場合には, 自己嫌悪感が感じられることが多い。(3) しかし, 最も自己嫌悪感を感じることが多くなるのは, 自分を高く評価するという点では自己を肯定している一方で, 受容的な自己肯定ができていない場合である。本研究では, 自己嫌悪感をより多く感じている青年とは, 自分はすばらしいと高く評価していながら, しかし現在の自分に満足できず, まだこのままではたりないと思っている青年であると結論した。
著者
伊吹 敦
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.127-134,1195, 2006-12-20 (Released:2010-03-09)
被引用文献数
1 1

Though the Treatise on the Two Entrances and Four Practices has been handed down as the record of Bodhidharma's teaching, the reliability of this tradition has not been adequately verified. Surely scholars such as YANAGIDA Seizan and ISHII Kosei have contributed toward the analysis of the sutras on which it was based, and also have pointed out the influence of Chinese classics on it. But the origin of the structure of ‘The Two Entrances and Four Practices’ has not been explained. In my opinion, it should be regarded as the highly original evolution of the method of interpreting the Dharma which had widely prevailed in the South-North Dynasty, especially among Dilun scholars. Therefore, there is no reason to consider that the Treatise on the Two Entrances and Four Practices originates from the teaching of an Indian monk Bodhidharma.
著者
今井 済 佐藤 明良 佐藤 英一 Sato Akiyoshi Sato Eiichi
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)
雑誌
第33回宇宙構造・材料シンポジウム:講演集録 = Proceedings of 33rd Symposium on Aerospace Structure and Materials
巻号頁・発行日
2017-12

第33回宇宙構造・材料シンポジウム(2017年12月8日. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 (JAXA)(ISAS)), 相模原市, 神奈川県
著者
Naoki Okamoto Naoki Yamanaka
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-28, 2021-02-20 (Released:2021-02-26)
参考文献数
54
被引用文献数
7

Ecdysteroids are a class of steroid hormones in arthropods that control molting and metamorphosis through interaction with intracellular nuclear receptors. In contrast to the extensive literature describing their biosynthetic pathways and signaling components, little has been known about how these hormones are traveling into and out of the cells through lipid bilayers of the cell membranes. Recently, a series of studies conducted in the fruit fly Drosophila melanogaster revealed that membrane transporters have critical functions in trafficking ecdysteroids across cell membranes, challenging the classical simple diffusion model of steroid hormone transport. Here we summarize recent advances in our understanding of membrane transporters involved in ecdysteroid signaling in Drosophila, with particular focus on Ecdysone Importer (EcI) that is involved in ecdysteroid uptake in peripheral tissues. We then discuss the potential advantage of EcI blockers as a novel pest management tool as compared to classical insect growth regulators.