著者
福地 康玄 外間 伸吾 福嶺 紀明 上原 大志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-113_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】 大胸筋完全断裂は比較的稀な疾患とされているが、近年報告例が増えており、受傷後早期の外科的治療を施せば良好な成績が得られるとされている。しかし、術後に対する理学療法の報告は少なく、未だ確立されていないのが現状である。今回、大胸筋断裂後に縫合術を施行した症例の理学療法を経験したため、考察と課題を踏まえ報告する。【方法】 症例は46歳、男性、左利き。バスケットボール審判、高校バスケットボール部コーチである。平成29年9月12日、ベンチプレス(85kg)をしている際、水平外転を強制され左肩を受傷。当院受診し、MRIにて大胸筋皮下断裂と診断。近医紹介となり、平成29年10月16日に大胸筋縫合術施行。手術はフットプリント(LHB groove外側)に骨溝を作製し、3本アンカー挿入。Mason-Allen法にて6針縫合。その後退院となり、平成29年10月27日より外来リハビリ開始。術後プランは、2週まではスリング、バストバンドにて固定。3から5週間はスリングのみ、肩甲上腕関節の他動運動開始(外旋は下垂位で中間位まで、挙上は内旋位で90°まで)、5週から制限なく可動域運動可、8週から抵抗運動開始、3ヶ月から軽負荷運動許可、5ヶ月から制限なしであった。評価はリハビリ終了の目安である5ヶ月目とした。筋力改善の評価として乳頭部胸囲の周計(5週と5ヶ月を比較)と徒手筋力計モービィMT-100(酒井医療社製)を使用し測定。単位はkgfと設定した。計測肢位は屈曲90°伸展0°内転30°外転30°内旋0°外旋0°水平外転(肩甲骨面上肘屈曲位)と設定し、2度計測しその平均値を健側と患側にて比較した。【結果】 胸囲は5週の99cmから5ヶ月で102cmと3cmの拡大を認めた。肩関節可動域は 屈曲165°伸展30°外転170°内旋Th10第1肢位外旋60°第2肢位外旋80°とほとんど正常可動域まで改善が見られた。筋力(左/右)は屈曲にて21.75/19.7、伸展にて23.95/22.2、内転にて25.5/27.8、外転にて17.2/17.35、内旋にて11.25/15、外旋にて18.7/23.05、水平外転にて18.3/20.45であり健患比においても80%以上の改善が見られた。【考察】 奥脇1)は、完全断裂の場合スポーツ選手では積極的に手術を進めており、保存的に治療した場合、多くは筋力低下や疼痛が残存すると報告している。また内山ら2)は、手術時期について、早期(6週間以内)手術例は痛み、筋力回復、スポーツへの復帰率、満足度とも陳旧例(6週間以上)や保存例に比べ有効であると報告している。本症例においても、早期に手術に及んだ結果、可動域や筋力において良好な成績を示し過去を裏付ける結果となった。今回、理学療法を行うにあたって難渋した点が、固定期間中の安静時痛や動作時痛といった疼痛である。過去の症例報告より固定期間は3週又は、4週の固定期間という報告が多く、また固定肢位は屈曲、内転、内旋位にてスリング、バストバンド固定が主流とされている。今回は5週間の固定期間であったが、上記でも述べた通り、予後は良好であり固定期間においては問題ないと思われる。しかし、固定期間中に大胸筋の過度な緊張による安静時痛や腋窩部にて神経痛が出現し、可動域練習等を行うにあたって難渋を示す場面が多々見られた。本多ら3)は、外転装具では肩関節が水平内転位となるため大胸筋の緊張が緩むとして外転装具を使用している。スリング、バストバンドでは固定肢位において常に腋窩や術部圧迫状態であることが疼痛を助長していると考え、外転装具を固定手段の一つとして考慮することも必要ではないかと考える。 文献1)奥脇透: 陳旧性大胸筋皮下断裂の一例.肩関節.1996:20:379-382. 2)内山善康,繁田明義,他: 大胸筋腱皮下断裂に対する術後成績—Endobuttonを使用した骨内埋め込み術—.肩関節.2009:33:773–776. 3)本多孝行,鈴木晶,他: Knotless Anchorを用いて修復した陳旧性大胸筋断裂の1例.整スポ会誌.2018:38:158-161.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院倫理委員会にて承認を 得た。患者には ヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて意義、方法、不利益等について説明し同意を得て実施した。
著者
田中 由浩
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.21-26, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
34

振動は触覚において様々な感覚に関わり極めて重要な情報である.我々の触覚は,対象と皮膚との力学的相互作用により皮膚で発生した変形や振動,熱の変化に基づく.また,触覚の受容と運動の間には双方向の関係がある.したがって,触覚には皮膚の力学的特性や運動特性が大きく関与する.本稿では,これらの観点のもと,振動と触覚との関係を,皮膚特性,触知覚,運動特性から,概観したい.皮膚特性では皮膚で生じる振動の周波数特性や,指紋や皮下組織の構造と振動との関係を,触知覚では粗さの感覚と振動との関係を,運動特性では個人差や粗さ知覚における運動調整を主に紹介する.
著者
大槻 暢子 岡本 弘道 宮嶋 純子
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
東アジア文化交渉研究 (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
no.2, pp.289-311, 2009-03

This report shows the summary of the field survey on tea culture in Okinawa island conducted as part of the collaborative research by the young members of our institute. In pre-modern age, a series of islands including Okinawa island, so-called Ryukyu Arc, had undergone a historical transition different from the areas of Kagoshima and northward in Japan. In the process of adoption of tea culture, Ryukyu Arc showed its individual development while it is affected by Japan and China as a peripheral area of both sides. The tea culture of Okinawa contains Japanese elements, such as tea ceremony (Chanoyu) culture and Furi-Cha culture remaining as Buku-buku tea, and Chinese elements, such as massive import and consumption of Chinese tea from early modern age to modern age. It is indicated by the historical accumulation, so it can be an attractive subject in considering cultural interaction.
著者
西田 健志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.458-464, 2015-04-15

本稿ではWISS(Workshop on Interactive Systems and Software)2004から10年以上にわたって開発・運用を続けてきた様々なチャットシステムや,夕食時の席を決めるシステムなど,様々なシステム開発を通じてWISSのコミュニケーションを促進してきた活動を振り返る.これまで開発・運用してきたシステムの機能や設計理念の紹介を中心として,長年開発を続ける中で見えてきた,WISSというコミュニティの特殊性やコミュニティの一員としてシステム開発を続けることの意義についても述べる.
著者
Hiroko Deguchi Masataka Ikeda Tomomi Ide Tomonori Tadokoro Soichiro Ikeda Kosuke Okabe Akihito Ishikita Keita Saku Shouji Matsushima Hiroyuki Tsutsui
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-19-1039, (Released:2020-03-24)
参考文献数
20
被引用文献数
2 36

Background:Ischemic preconditioning (IPC) is an effective procedure to protect against ischemia/reperfusion (I/R) injury. Hypoxia-inducible factor-1α (Hif-1α) is a key molecule in IPC, and roxadustat (RXD), a first-in-class prolyl hydroxylase domain-containing protein inhibitor, has been recently developed to treat anemia in patients with chronic kidney disease. Thus, we investigated whether RXD pretreatment protects against I/R injury.Methods and Results:RXD pretreatment markedly reduced the infarct size and suppressed plasma creatinine kinase activity in a murine I/R model. Analysis of oxygen metabolism showed that RXD could produce ischemic tolerance by shifting metabolism from aerobic to anaerobic respiration.Conclusions:RXD pretreatment may be a novel strategy against I/R injury.