著者
上村 雅之
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.191-203, 2009 (Released:2019-10-01)

テレビ受像機でゲーム遊びが楽しめるテレビゲーム機が米国で誕生して半世紀の歳月が流れた。世界中の人々に親しまれている多くの遊び道具が永い歴史を刻んでいる中で、テレビゲームは最も新しい遊び道具の一つと位置づけることができる。第二次世界大戦後急速に普及した代表的な大衆向け商品、テレビ受像機と電卓(電子式卓上計算機)がテレビゲームの誕生と普及の鍵を握っていた事実 はテレビゲームの歴史を考える上で重要なポイントである。そして多くの大衆向け商品と同様にテレビゲームも又「ブーム」と呼ばれる急速な普及現象に支えられながら現在もなお、技術的な変貌を遂げつつある。本論文では第一部で世界初のテレビゲームブームに至るまでの歴史を概観する。又第二部では、現在のテレビゲーム産業の基礎を築いたとされているファミコン(正式名称ファミリーコンピュータ)の登場までの歴史とその設計思想の概要を紹介する。尚本論文は筆者がファミコンの開発に一技術者として参加した時に体験した様々な出来事を歴史的な流れとして理解する為の調査・研究を 基に執筆されたものである。
著者
柳原 正明 YANAGIHARA Masaaki
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:24332224)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-20-006, pp.1-65, 2021-02-19

航空技術開発の初期段階から最終段階まで,コンピュータにより運動方程式を解くことで行われる飛行シミュレーションが重要な役割を持つ.近年,そのための汎用プログラムが簡単に手に入る時代になっているが,研究開発を目的としてシミュレーションを行う場合には,その内容を十分に理解し,自らシミュレーションプログラムを構築することも重要であると考える. 本稿は,そのような場合の助けになるよう,近距離飛行を行う旅客機などを対象とした地球平面モデルに基づく飛行シミュレーションと,大陸間飛行を行う航空機や宇宙往還機を対象とした地球回転楕円体モデルに基づく飛行シミュレーションの演算アルゴリズムについて纏めたものである.
著者
葛綿 正一
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学日本語日本文学研究 (ISSN:13429485)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-28, 2007-10

『将門記』は承平・天慶の乱を記した漢文文献である。軍記文学の先駆として分厚い研究史を有しているが、ここでは『将門記』に出てくる「雷」というメタファーに注目し、将門が雷神であるかのように描かれていることを指摘する。また「雷」の文学誌とでもいうべきものを掘り起こし、表象の問題から「雷」の崇高性と喜劇性について論じる。
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W3-4, 2015 (Released:2015-08-03)

生活環境化学物質がシックハウス症候群や喘息等の主要な原因あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムの詳細については未解明な部分が多い。著者らは生活環境化学物質による粘膜・気道刺激性のメカニズムを明らかにする目的で、ヒトTransient Receptor Potential (TRP) V1及びTRPA1をそれぞれ安定的に発現するFlp-In 293 細胞株を樹立し、その活性化を指標にして室内環境化学物質の侵害刺激について検討した。これまでに評価した238物質のうち、50物質がTRPV1を、75物質がTRPA1を活性化することを明らかにした。なかでも溶剤として広く使用される2-Ethyl-1-hexanolやTexanolをはじめ、一般家庭のハウスダスト中からも比較的高濃度で検出されるTris(butoxyethyl) phosphate、溶剤や香料成分として多用される脂肪族アルコール類、実際に室内環境中に存在する消毒副生成物や微生物由来揮発性有機化合物がイオンチャネルを活性化することが明らかになった。特に、可塑剤等DEHPの加水分解物であるMonoethylhexyl phthalateがTRPA1の強力な活性化物質であることを見いだした。また、塗料中に抗菌剤として含まれ、室内空気を介してシックハウス様症状を引き起こすことが報告されているイソチアゾリノン系抗菌剤や、呼吸器障害を含む相談件数が増加している高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤もイオンチャネルを活性化することが判明した。シックハウス症候群の主要な症状として皮膚・粘膜への刺激があげられるが、本研究結果は、室内環境中に存在する多様な化学物質がイオンチャネルの活性化を介して、相加的あるいは相乗的に気道過敏性の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上で極めて重要な情報であると考えられる。

28 0 0 0 OA 明月記

著者
藤原定家 著
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第1, 1911
著者
立花 宏文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.145-149, 2008 (Released:2008-09-12)
参考文献数
29
被引用文献数
3 4

(-)-Epigallocatechin-3-gallate(EGCG)は他の茶カテキンと比較して多彩かつ強力な生理活性を示すとともに,茶以外の植物には見出されていないことから緑茶の機能性を特徴づける成分である.ここでは,EGCGの生理活性を仲介する細胞膜上の受容体(緑茶カテキン受容体)として筆者らが同定した67 kDaラミニンレセプター(67LR)を介した作用とその発現機序(緑茶カテキンシグナリング)について紹介する.67LRはEGCG受容体として,EGCGの細胞増殖抑制作用,多発性骨髄腫細胞に対するアポトーシス誘導作用,好塩基球におけるヒスタミン放出阻害作用や高親和性IgE受容体発現低下作用を仲介する.EGCGによる細胞増殖抑制作用には,ミオシン軽鎖のリン酸化レベルの低下とそれを触媒するミオシン軽鎖ホスファターゼの活性調節サブユニットMYPT1の活性化が関与すること,また,こうした作用は67LRのノックダウンにより阻害されることから,67LRからMYPT1の活性化につながるシグナル伝達経路の存在が示唆された.そこで本経路をつなぐ分子を検討し,eukaryotic elongation factor 1 alpha(eEF1A)を同定した.一方,67LR,eEF1A,MYPT1の各分子をそれぞれノックダウンしたマウスメラノーマ細胞を移植した全てのマウス腫瘍モデルにおいて,経口投与されたEGCGによる腫瘍成長抑制作用は消失した.以上の結果から,これらの分子がEGCGの抗がん活性を伝達する分子として働くことが示された.
著者
菅原 真
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田教育評論 (ISSN:09145680)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.41-54, 2003-03-31

国旗・国歌法制定後,公立学校では「国旗掲揚」「国歌斉唱」を拒む教師に対し,行政上の懲戒処分などの法的措置を含む有形無形の圧力が以前より強くかけられている。こうした中で,筆者の勤務する私立中学・高等学校では,従来慣行として行われてきた「君が代斉唱」を卒業式・入学式の式次第から削除した。この根底には,卒業式・入学式において「君が代斉唱」は不可欠の構成要素ではあり得ないという認識がある。本来,学校の設置主体が公立であれ私立であれ,いかなる卒業式・入学式をおこなうかについては,各学校がそれぞれ自主的に決めるべき問題であり,国旗・国歌の強制は憲法に違背する行為である。
著者
Xuejiao Liao Yuan Guan Qibin Liao Zhenghua Ma Liping Zhang Jingke Dong Xiaojuan Lai Guoqin Zheng Sumei Yang Cheng Wang Zhonghui Liao Shuo Song Hongyang Yi Hongzhou Lu
出版者
National Center for Global Health and Medicine
雑誌
Global Health & Medicine (ISSN:24349186)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.322-326, 2022-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19
被引用文献数
8

Although Omicron appears to cause less severe acute illness than the original strain, the potential for large numbers of patients to experience long COVID is a major concern. Little is known about the recovery phase in cases of Omicron, highlighting the importance of dynamically monitor long COVID in those patients. Subjects of the current study were patients available for a three-month follow-up who were admitted from January 13 to May 22, 2020 (period of the original strain) and from January 1 to May 30, 2022 (period of Omicron). Twenty-eight-point-four percent of patients infected with the original strain had long-term symptoms of COVID-19 and 5.63% of those infected with the Omicron strain had such symptoms. The most common symptom was a cough (18.5%), followed by tightness in the chest (6.5%), in patients infected with the original strain. Fatigue (2.4%) and dyspnea (1.7%) were the most commonly reported symptoms in patients infected with the Omicron strain. The respiratory system is the primary target of SARSCoV-2. Supportive treatment is the basis for the treatment of respiratory symptoms in patients with COVID-19. Quality sleep and good nutrition may alleviate fatigue and mental issues. Further knowledge about a long-term syndrome due to Omicron needs to be discussed and assembled so that healthcare and workforce planners can rapidly obtain information to appropriately allocate resources.
著者
芳之内 雄二
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.74, pp.47-61, 2008

ソ連崩壊後独立した新興独立国家では、それまで公用語、教育言語として優位な立場を占めていたロシア語に代って民族共和国の言語が国家言語と規定され、ロシア語の社会的地位が低下している一般的な傾向がある。そうしたなかで、ロシアの歴史要素や文化要素が大きなウクライナでは、家庭内での使用言語や図書出版、読書、マスコミの分野で依然としてロシア語の優位性が維持されている。
著者
相馬 清二
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.204-217, 1975-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

A violent fire-tornado has broken out at the former site of the Army Clothing Depot in combustion caused by the destructions of the Great Kanto Earthquake at 3.30 p.m. September 1, 1923. By this fire-tornado, about 40 thousand people have been burned to death in a moment. An interpretation that the fire-tornado has been caused by passage of a cold front has generally dominated academic circles in this field up to date. According to the detailed reexaminations, this interpretation included many inconsistencies. We could obtain recently the various data with respect to the fire-tornado which occurred in the last several years. From these data, it became clear that the fire-tornadoes often have occurred near a combustion area.An example which was the most similar with the fire-tornado at the former site of the Army Clothing Depot was found out in the combustion of Wakayama City by an air raid on July 9, 1945. 748 persons have been burned to death by the fire-tornado in this city.Finally, our study leads to the conclusion that the fire-tornado at the former site of the Army Clothing Depot was caused by the widespread great fire following the Great Kanto Earthquake. There was a cold front in northwestern direction of Tokyo, but it did not play the leading role for formation of the fire-tornado.
著者
久野 康彦
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.34, 2002

19世紀末〜20世紀初頭はロシアにおいて大衆文学が急速に発展した時期であり,そこに見られる「オカルト」への関心,および文学への反映は,リアリズムからシンボリズムへといった当時の主流文学の流れとある程度連動しながらも異なった様相を呈し,当時の文学状況の全体像を把握する上で興味深い。死後の霊の存在を信じ霊との交信を試みるという,1850年代以降西欧で大流行したスピリチュアリズム(心霊主義)は,И. С. Тургеневの神秘小説やВс. С. Соловьев(1849-1903)の連作長編に見られるように,ロシアの文学においては,フランスのシャルコーに代表される当時の精神病理学としばしば結びつき,一種独特な心理分析的な幻想表現を生み出した。その点では,動物磁気への関心を強く反映した19世紀前半の「幻想心理小説」(В. Ф. Олоевский, Н. И. Гречなど)の系譜を継承するものである。動物学者・作家のН. П. Вагнер(1829-1907)の短編《Не вылержал》(1895)は,田舎の知り合いを訪ねた主人公が心ならずも心霊体験をするというもので,心理分析への志向が強いという点で前述の特徴が典型的に見られる。また十月革命前のロシアで最も人気を誇った作家の一人であるА. В. Амфитсатро(1862-1938)の長編《Жар-Цвет》(1895;1910,11改訂)は,オカルト,フォークロア,民間信仰,古代・中世文学,神話などの多彩な情報を盛り込んだスケールの大きいオカルト小説で,同じく「死後の生」というスピリチュアリズムのテーマを扱いながらも,実証主義的な観点から精神病理学の知識などを援用している点に特色がある。一方,芸術・思想により強いインパクトを与えたのが神智学である。ロシア人女性Е. П. Блаватская(1831-91)を創始者とし,古代の忘れられた叡智の再発見と普遍宗教の確立を目指すこのオカルト運動は,ロシアでも20世紀になってシンボリストたちなどに強い影響を及ぼすようになる。しかし,神智学がもたらした秘教的東洋というイメージをより鮮明に提示したのは大衆小説であった。創始者の妹でオカルト小説の作者としても有名なВ. П. Желиховская(1835-96)の短編《Виление вкристалле》(1893)は,東洋の叡智に触れながらもオカルト的知を軽率に扱う西欧人という設定に,神智学が本来持つ西洋近代文明批判の観点が窺える。そして,20世紀初頭のロシアにおける最大のオカルト小説作家В. И. Крыжановская(1857-1924)の長編《Смерть планеты》(1911)は,滅亡の迫った地球を舞台にキリスト教信仰を守りつつ悪と戦うインド人のマギたちの活躍を描いたもので,より大衆的なレベルでの神智学の影響の例となっている。
著者
伊地智 昭亘 宇月原 貴光
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構 函館工業高等専門学校
雑誌
函館工業高等専門学校紀要 (ISSN:02865491)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-10, 2017 (Released:2017-01-31)
参考文献数
13

We describe the life-work of Father of Japanese Chemistry “Udagawa Yoan”. Udagawa Yoan was influenced by his adoptive father Genshin’s philosophy and by doctor and botanist Ito Keisuke’s publication Nijyushi Kokai (Explanation of Twenty-four classes). In 1834, he published three volumes of “Shokugaku Keigen (Principles of Botany)”. They show history of the translation of basic botanical terminology and for natural philosophy and experimental plant physiology. His “Shokubutsu Shasei Zufu” demonstrates a talent as botanical artist. Moreover, on his interest in pharmacy and botany, he found some relations to chemistry. Continuously, he published his first chemistry textbook “Seimi Kaiso” based on a Dutch translation of William Henry’s chemical book. “Seimi” comes from pronunciation of “Chemie” in Dutch and “Kaiso” means “Opening of Chemistry”. He had to develop new terminology to describe chemical substances and processes, expanding the Japanese vocabulary of chemistry. His first interest in chemistry was its application to the practical arts with glassmaking. “Seimi Kaiso” for volume 3 describes the beginner’s manual on the chemistry of “biidoro”.
著者
入戸野 宏
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.128-131, 2016-01-15

“かわいい”は,日本を代表するポップカルチャーとして注目されている.しかし,“かわいい”とは何か,“かわいい”と何がよいのかは明らかになっていない.本稿では,心理学・行動科学の立場から,“かわいい”を感情としてとらえる枠組みを提供する.“かわいい”は対象の属性ではなく,対象に接した人の内部で生まれる感情である.ポジティブで,脅威や緊張を感じず,社会的な接近動機づけを伴っている.このような感情を許容し尊重する伝統があったために,日本において“かわいい”文化が発展したと考えられる.“かわいい”感情に伴う主観・行動・生理的変化について述べるとともに,“かわいい”研究の応用についても紹介する.

28 0 0 0 OA 武蔵百景

著者
小林清親 画
出版者
小林鉄次郎
巻号頁・発行日
1884
著者
寒水 孝司 杉本 知之 濱崎 俊光
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-52, 2013-08-31 (Released:2013-09-20)
参考文献数
61
被引用文献数
1

Clinical trials often employ two or more primary endpoints because a single endpoint may not provide a comprehensive picture of the intervention’s effects. In such clinical trials, a decision is generally made as to whether it is desirable to evaluate the joint effects on all endpoints (i.e., co.primary endpoints) or at least one of the endpoints. This decision defines the alternative hypothesis to be tested and provides a framework for approaching trial design. In this article, we discuss recent statistical issues in clinical trials with multiple primary endpoints. Especially, we introduce the methods for power and sample size determinations in clinical trials with co-primary endpoints, considering the correlations among the endpoints into the calculations. We also discuss the methods to alleviate conservativeness of testing co-primary endpoints.
著者
縄田 健悟
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.52-74, 2013 (Released:2013-09-03)
参考文献数
161
被引用文献数
2

本論文の目的は,集団の視点を軸に,社会心理学における集団間紛争研究の概観と展望を議論することである。本論文では,集団間紛争の生起と激化の過程に関して,集団を中心とした3つのフェーズから検討した。フェーズ1では「内集団の形成」として,自らの所属集団への同一視と集団内過程が紛争にもたらす影響を検討した。フェーズ2では「外集団の認識」として,紛争相手となる外集団がいかに否定的に認識され,攻撃や差別がなされるのかを検討した。フェーズ3では「内集団と外集団の相互作用」として,フェーズ1,2で形成された内集団と外集団が相互作用する中で,紛争が激化していく過程を検討した。最後に,これらの3フェーズからの知見を統合的に議論し,集団間紛争に関する社会心理学研究の今後の課題と展望を議論した。