著者
鎌田 紗弓
出版者
独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
雑誌
無形文化遺産研究報告 = Research and Reports on Intangible Cultural Heritage
巻号頁・発行日
no.16, pp.41-85, 2022-03-31

Hayashi-kata (music performers), who are in charge of musical staging of Japanese performing arts Kabuki, are indispensable to the performance itself; yet they have not been the primary focus of documentation. As a basis for clarifying the actual state of ensembles that were often lumped together as 'the hayashi performers', this paper extracts and analyses name lists from historical sources in the early Meiji-era (1868-1896). From Kabuki playbills (banzuke) and music direction memoranda (hayashi-tsukechō), I have been able to find a total of 1,958 names from 81 different performances in the period under study. In particular, when examining narimono players (percussionists and flutists), new aspects have been found in their theatrical appearances and co-performances in the early Meiji-era, which would have played an important role in the formation of current Kabuki tradition. It can be pointed out that these points reflect the changing power relations of the theatres in Tokyo. There is still much work to be done, including more detailed consideration of ensemble groups including singing and shamisen, as well as the relationship between the music performers and the actors who employed them.
著者
瓜生 侑 遠藤 敏夫
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2022-HPC-185, no.28, pp.1-7, 2022-07-20

C++17 における実行ポリシーを用いたコードと kokkos を用いたコードはラムダ式を用いて記述され,高い移植性を持つことを特徴とし,CPU・GPU どちらでも並列実行が可能である.今回は,これらのコードを既存の並列プログラミングと性能の比較を行った.実験環境は本学のスーパーコンピューター TSUBAME3.0 である.また,それぞれのプログラムにブロッキングを施し,その性能とプログラミングコストについても比較を行った.
著者
孫 江
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.163-199, 2002-02-28

一九三二年三月一日、関東軍によって作られた傀儡国家「満州国」が中華民国の東北地域に現れた。本稿で取り上げる満州の宗教結社在家裡(青幇)と紅卍字会は、いずれも満州社会に深く根を下ろし、「満州国」の政治統合のプロセスにおいて重要な位置を占めていた。
著者
遠藤 匡俊
出版者
社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.421-424, 2004-01-01

蝦夷地は2度にわたり幕府の直轄地となり,アイヌの風俗・習慣を和人風に変えるという同化政策が実施された。この同化政策によって,アイヌの個人名がアイヌ名(アイヌ語の名)から和名(日本語の名)に改名される和名化が生じた。これまで和名化は,幕府の同化政策によってアイヌ文化が変容する事例として注目されてきた。また,アイヌ社会には「近所に生きている人と同じ名をつけない」という個人名の命名規則が存在していた。個人名の命名にあたって,文字をもたなかったアイヌは,周囲の人々の名を思い浮かべて,同じ名とはならないように配慮したものと考えられる。しかし,従来の研究では,和名化の展開過程は明確ではなく,和名化と命名規則の関係についても必ずしも明確ではなかった。本研究の目的は,アイヌ社会における和名化の展開過程を示した上で,和名化と命名規則の関係について検討することである。
著者
黄 淵煕
出版者
東北福祉大学教育・教職センター特別支援教育研究室
雑誌
東北福祉大学教育・教職センター特別支援教育研究年報 (ISSN:21850275)
巻号頁・発行日
no.13, pp.3-10, 2021-03-31

遠隔授業の実施に伴って相談需要が増加したADHDのある学生の支援を中心に、相談件数及び相談内容の現状についてまとめた。また、相談内容に対して本学で行った支援について、他大学の支援を参考にしながら、今後の課題について考察した。
著者
井川 日出男 IKAWA Hideo
出版者
東京大学宇宙航空研究所
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1_C, pp.663-687, 1980-03

スペース・シヤトルのデビューに依って,将来の科学,商業,並びに軍事分野にわたる宇宙利用の研究と応用に画期的な変化がもたらされるであろう.再使用可能な宇宙運航船は,従来の使い捨てブースターで運搬できなかった容積及び重量のペイロードを打ち上げることに依り,低コストの宇宙運営を行うことができる.スペース・シヤトルの重要な点は,有人・右翼のオービター機の開発にある.使命飛行中,オービター機は,垂直打ち上げブースター,宇宙衛星,及び極超音速滑空機として活躍する.特に航空操縦性能を発揮し,極超音達哉の役割りを果すオービター機として,過去に存在しなかった唯一の宇宙船である.従って,オービター機は,降下中,弾道軌道を離れる他の着陸点を選ぶことができ,飛行機の如く着陸する.オービター機の開発に当り,最低100回の再使用及び着陸後二週間以内に再飛行準備を整えることが,二つの必須条件である.オービター機は,大気圏突入の際と極超音速飛行中に生じる苛酷な空力加熱環境に再度曝れることになる.従って,前述の条件に添う為に,オービター機のアルミ構造は完全に再使用可能な表面防熱装置で被覆され,苛酷な熱環境から保護されている.この防熱装置開発の大躍進に依って,今後,経済的宇宙運営及び日常的な宇宙利用が可能とされる.
著者
遠藤 匡俊
出版者
社団法人日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.601-620, 2001-01-01

文字を持たないアイヌ社会において,近所に生きている人やすでに死亡した人と同じ名を付けないという個人名の命名規則が,どの程度の空間的範囲に生活する人々に適用されていたのかは,これまで不明であった.アイヌ名の命名には,出生後初めての命名と改名による新たな命名があり,いずれもアイヌ固有の文化であったと考えられる.アイヌ名の改名は根室場所,紋別場所,静内場所,三石場所,高島場所,樺太(サハリン)南西部,鵜城で確認された.中でもアイヌ名の改名が最も多く生じていたのは,根室場所であった.根室場所におけるアイヌ名の改名は,結婚や死と関わって生じた事例が多かった.改名による新たな命名が多く生じていたにもかかわらず,同じ名を付けないという個人名の命名規則は,1848-1858(嘉永1-安政5)年の根室場所においては,集落単位のみならず根室場所全域ではぼ遵守されていた.根室場所は,アイヌの風俗の改変率が高いことから和人文化への文化変容が進んだ地域とみなされるが,アイヌ名の命名規則に関する限り,アイヌ文化は受け継がれていたと考えられる.