著者
沖 忠親 田岡 智志 渡邉 敏正
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2010-AL-129, no.7, pp.1-8, 2010-02-26

2 部グラフの k 辺連結化問題 (以下,UW-Bipartite- (k+1) ECA (*, MA) と略記) は以下のように定義される: 「無向 2 部グラフ G = (V + ∪V-,E) が与えられたとき,辺付加後のグラフ G' = (V + ∪V- ,E∪E') が (k + 1) 辺連結 2 部グラフであるような最小の付加辺集合 E' を求めよ.」本稿では,G が k 辺連結であるときに最適解を算出する高速アルゴリズムを提案し,k ∈ {1, 2} のとき線形時間で解けることを示す.
著者
森 津太子 Tsutako Mori
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-54, 2009-03-19

社会的判断や認知的判断を予測するモデルの多くは、判断時に想起する情報の内容のみに注目している。そのため、情報想起に伴って経験される主観的な経験がそれ自体で重要な情報源となっていることが見過ごされている。ここでいう主観的経験には、「検索容易性」「舌端現象」「親近感」「既知感」「知覚的流暢性」などが含まれる。このうち、情報再生時の容易さや困難さを表す「検索容易性/困難性」は、ここ20年程の間、特に社会的認知の領域で中もされてきた。本論文は、この検索容易性に焦点をあて、社会的判断や認知的判断においてこの経験がどのような役割を果たすかをレビューした。さらに、最後のセクションでは、他の認知的な主観的経験や感情的経験との統合の可能性について議論した。
著者
王 秀文
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-45, 1998-02-27

植物にまつわる民間伝承において、桃ほど古く、広く伝えられているものはあるまい。中国の『詩経』に収められている遠い周の時代の民謡、春秋戦国の時代から行われた諸儀式と年中行事、漢の時代に急に浮上してきた度朔山伝説、六朝時代から盛んに伝えられるようになってきた西王母の伝説や神仙説、さらに晋の陶淵明の「桃花源記」や明代に集大成された『西遊記』物語、および今もお正月に、門戸の両側に貼り付ける赤い紙切れの「春聯」など、至るところに、桃の伝承が浸透している。いっぽう、日本においても、記紀神話から平安時代の宮中の儀式まで、鬼門信仰から「桃太郎」の民話まで、桃の伝承は数多くみられる。
著者
鈴木 宏節
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.37-68, 2005-06

This article attempts to prove that a royal member of the Türks (Tujue 突厥), Ashina Simo 阿史那思摩 [583-647], was the great-grandchild of Yili 伊利 (Yili 伊力; O1d Türkic. Illig) Qaγan (Kehan 可汗) and the grandchild of Tabo 他鉢 (Daba 達抜; Sogdian. Tatpar) Qaγan, according to his epitaph and some Chinese sources. Moreover, it is shown that Ashina Simo in fact did succeed to the throne as Julu 倶陸 (Old Türkic. Küllüg) Qaγan [reg. 603-?]. The genealogical table of the first Turkic Qaγanate [552-630] is based on the following conclusions.At the end of the first Türks, the royal family of Ashina was divided to two main lines, namely Yixiji’s and Tabo’s, which politically opposed each other. Because of this conflict, the last three Qaγans from the dominant Yixiji line created the rumor that Simo was not a member of the royal clan in order to deprive him of a chance at re-enthronement. This controversy is what lay in the background of the well-known episode of his not being bestowed with the title of Sad (She 設), giving him military powers.His life history after the collapse of the Türks (630-) is said to have been strongly influenced by the ethnic situation between the Ordos and the Yinshan 陰山 region during the 7th century, because he had played an important role around Xiazhou 夏州, in the south central Ordos region, controlling not only a part of the abandoned Türkic people there, but also a part of Sogdians, who had been originally resided throughout Türks. The author considers such a condition to constitute a characteristic feature of the whole periphery of Central Eurasia, where a nomadic pastoral system and agricultural civilization had come into contact and coexisted.
著者
吉野 拓真 五十嵐 治一 川島 馨
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.16-21, 2020-11-06

選択探索の一種として,モンテカルロソフトマックス探索が提案されている.一般に,大規模ニューラルネットワークモデルによる評価関数を利用する場合,計算に時間がかかることから,αβ探索のような全幅探索よりは,選択探索の方が向いている. 特に,モンテカルロソフトマックス探索においては,兄弟ノード局面をまとめて評価する際に,GPU による並列計算を用いれば,評価関数が大規模なニューラルネットワークモデルであっても容易に並列化できる可能性がある.本研究では,dlshogi のソースコードを改変し,モンテカルロソフトマックス探索とニューラルネットワークモデルの評価関数を組み合わせたプログラムを作成した.特に,ニューラルネットワークモデルの入力層に提示する局面の特徴量表現を工夫することにより,GPU で兄弟局面を同時に並列計算する際の処理時間を短縮することを試みた.さらに,ノード選択方策にPolicy Network の出力値を取り入れることにより,探索精度の向上を試みた.
著者
曽我 量深
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-33, 1930-03
著者
日野克重
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.64(1984-SE-040), pp.73-78, 1985-02-07
著者
大塚 明子 森 恭子 秋山 美栄子 星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.41-52, 2015-03-01

本稿では「価値観 ・ 労働観 ・ ライフスタイル等に関する日本と北欧の比較調査研究」の第一次量的調査で取り上げた設問のうち、自尊感情 ・ 対人信頼感 ・ 文化的自己観の3つの心理尺度に焦点を当て、第二次質的調査のインタビューによってその解釈を深めることを試みた。共通して伺えたのは、スウェーデン人が自己及び周囲との相互作用というミクロな焦点化をおこなうのに対し、日本人は一般的な社会というマクロな視点から俯瞰する、という傾向であった。第一次量的調査ではスェーデン人の相互独立性と評価懸念の両立という、文化的自己観に関する先行研究と異なる結果が得られたが、それを整合的に解釈することができたのが最大の成果の1つと考える。なぜ社会人と比べて大学生の方がより「日本人らしさ」、つまり低い自尊感情 ・ 対人信頼感 ・ 相互独立性+高い相互協調性を示すのかについても、社会的に不利な立場が大きな要因であることが示唆された。
著者
目次 由美子
雑誌
研究報告ドキュメントコミュニケーション(DC) (ISSN:21888892)
巻号頁・発行日
vol.2016-DC-101, no.6, pp.1-3, 2016-03-17

ビジネスの現場でニーズが発生する 「産業翻訳」 においては,翻訳作業自体の効率化や迅速化が求められてきた結果として,「翻訳メモリツール」 などが普及してきた.一方,自らの翻訳作業に対する利便性を目的に翻訳者自身が独自に開発しているツールもある.その成果物が一般に公開され,フリーランス翻訳者間で多用され,翻訳実務におけるスキルとノウハウが幅広く翻訳業界に浸透するなど,相乗効果が得られている.本報告ではフリーランス翻訳者ならではの経験が活用されているツールに着目する.
著者
井手 広康
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2022-CE-163, no.14, pp.1-7, 2022-01-29

令和 4 年度から始まる「情報Ⅰ」の教科書に Python,JavaScript,VBA,Scratch の四つのプログラミング言語が使用されたことから,多くの学校がいずれかのプログラミング言語を使用して授業を行うことになる.本研究では,クラスごとに四つのプログラミング言語を使い分けて同じ内容でプログラミング教育を実践し,最後に大学入学共通テスト「情報」サンプル問題の第 2 問「プログラミング」を全員に解答させた.サンプル問題の解答結果や事後アンケートの結果から,どのプログラミング言語を授業で使用していても,共通テスト「情報」を解答する上で大きな影響がないことが明らかとなった.ただし,Scratch については他のプログラミング言語と比較して解答に時間を要することが予測されるため,共通テスト「情報」の DNCL に慣れるための演習が必要であると考える.
著者
古瀬 徳雄
出版者
関西福祉大学研究会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:13449451)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-9, 2007-03

教会音楽の制作に携わる作曲家にとって,教会暦に従った典礼の機会に応じて作品を創り上げることは使命であった。そこには,聖書にあるイエスの心身の治療,信仰による奇蹟の救済の幾多の事例が取り上げられ,これらの福音書を創造の泉とし,宗教音楽の幾多の名作を生みだした作曲家は多い。J.S.バッハ(1685~1750) もその一人である。彼が所属するルタ一派教会において,その日の礼拝で朗読する福音書の章句に基づいて牧師の説教を行った後,関連する歌詞に作曲し演奏していったのが「カンタータ」である。バッハは聖書にある,さまざまな病を持つ患者をどのように捉えていたのか,彼の巨大な作品群から,「ハンセン病」の患者に対する癒しに絞り,現存する約200曲以上の「カンタータ」を調べたところ,「Aussatz」の語句そのものが登場している曲が2曲あり,また福音書聖句との関連する曲は5曲見つかった。そこには歌詞の語りかける深い表現,作品の構造の分析を通して,独立声部と通奏低音の織り成す周到な生地に,「ハンセン病」への思いが「苦難の解放」として,人知れず縫い込まれていることが浮かび上がってきた。それは,手本なしに生み出された独自の創造物であり,バッハのまなざしは,すでにこの時から,遥か先の現代を見通していたのではないだろうか.