著者
奧野 憲司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.994-999, 2021-09-10

Point・脳外傷後急性期はせん妄や通過症候群を来し得るが,それら病態を理解して見極めることが重要である.・脳損傷で生じた興奮に対し,各種抗うつ薬(SSRI),気分安定薬(バルプロ酸,カルバマゼピン)の投与を考慮し,無効例には抗精神病薬の投与を考慮する.・抑制困難な症例に対しては精神科と協力して治療を行うことが勧められる.
著者
中村 南美子 萩之内 竹斗 浅野 陽樹 池田 充 龍野 巳代 赤井 克己 大島 一郎 中西 良孝 髙山 耕二
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 = Bulletin of the Faculty of Agriculture, Kagoshima University (ISSN:24321885)
巻号頁・発行日
no.71, pp.23-30, 2021-03-30

都市部でのニホンアナグマ(以下,アナグマ)の生息実態に関する基礎的知見を得ることを目的とし,地方都市における大学キャンパスでのアナグマの出現状況とそれによる農作物への被害発生状況について検討した。2019 年1~12 月に自動撮影カメラ4 台を教育学部実習地,農学部附属農場(研究圃場ならびに動物飼育棟)および植物園内に設置し,アナグマの出現状況については静止画,農作物への被害発生状況については動画でそれぞれ撮影した。自動撮影カメラで野生哺乳類は計302 枚撮影され,そのうちタヌキは147 枚(48.7%)と最も多く,次いでアナグマは113 枚(37.4%),ノネコは41 枚(13.6%)およびイタチは1 枚(0.3%)の順であった。場所別ではアナグマが教育学部実習地で最も多く観察された。月別にみたアナグマの撮影頻度指数は,5~7 月で高く,1~3 月および8 月で低かった。しかしながら,その出現は年間を通じて認められ,5 月には教育学部実習地でビワの実の採食被害が認められた。以上より,地方都市にある大学キャンパスでアナグマは年間を通じて生活しており,農作物の一部に採食被害が起きていることが明らかになった。
著者
嶋中 佳輝 Yoshiki Shimanaka
出版者
同志社大学文化学会
雑誌
文化学年報 = Annual report of cultural studies (ISSN:02881322)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.15-34, 2021-03

『今昔物語集』巻十九と巻二十は本朝仏法部と本朝世俗部を懸架する重要な位置にある。両巻の関係性を考えるにあたって、両巻の冒頭話群である出家説話と天狗説話の関係性に着目した。出家説話が世俗から仏法への展開を、天狗説話が世俗あるいは仏法から反仏法への展開を語ることで、冒頭話群は世俗における仏法的行為・反仏法的行為を導き出している。両巻は世俗において仏法が波及していく『今昔物語集』の構想を体現していると評価できる。

3 0 0 0 OA 甲斐国志

著者
松平定能 著
出版者
甲陽図書刊行会
巻号頁・発行日
vol.上, 1912
著者
高橋 工
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.139-160, 1995-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
110

本稿では5世紀以前の東アジアで出土した甲冑を検討対象とする。その目的は大きく分けて2つある。第1は,当時の東アジアの各民族・国家がもっていた甲冑にどのような特性が認められるかを明らかにすることである。第2は,わが国の古墳時代前・中期の甲冑が,年代的に,技術的に,あるいは政治的に,東アジアの甲冑の体系の中でどのように位置づけられるかを明らかにすることである。検討の手法としては,東アジアで出土する多様な甲冑をその基本設計の違いから,小札綴・小札縅・地板綴の3つの系統に大別する。そして,小札綴系統が漢民族と,小札縅系統が北燕や高句麗等の騎馬民族と,地板綴系統が朝鮮半島南部・日本の民族と,それぞれ深い係わりを有していたことを述べる。その後,甲冑の基本設計を規定する製作技術の検討から,各種甲冑の変遷,各系統間相互の影響と伝播を考える。その結果,特に3~5世紀代の甲冑の伝播において,騎馬民族国家が果たした役割が大きいことを指摘する。また,地板綴系統として一括される朝鮮半島南部と日本で出土する甲冑が,技術的に別系統として分離可能であり,日本から半島南部へもたらされた可能性が強いことを指摘する。日本では独自の様式の甲冑が生産され続けたが,同時に,甲冑製作技術が海外からうけた影響も大きい。その影響は,4世紀代には中国から完成品が輸入され,5世紀代には朝鮮半島南部から甲冑工人が渡来するといったように,時期によって内容に違いが見られる。そして,このような状況は当時の東アジアの政治情勢と密接に関係していたと考えられるのである。
著者
喜多田 久仁彦
出版者
国際言語平和研究所
雑誌
研究論叢
巻号頁・発行日
no.87, 2016-07-31
著者
佐川 英治 小宮 秀陵 河上 麻由子 小尾 孝夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度はまず6月に第3回の国内研究会を開き、研究分担者の河上麻由子『古代日中関係史』、研究協力者の河内春人『倭の五王』(ともに中公新書)の合評会をおこなうとともに、ビザンツ史の井上浩一大阪市立大学名誉教授を講師に招き「古代帝国の相続人―東西比較のために―」のテーマで講演していただき、ビザンツ史における古代末期論の意義ならびにローマ帝国と古代中国の比較に関する西洋史側からの視点について貴重な示唆を得た。続いて、9月に第4回の国内研究会を開き、小宮秀陵「6世紀中葉新羅の領土拡大と信仰」、河上麻由子「南北朝時代の王権と仏教」、小尾孝夫「六朝建康の仏教受容と寺院空間―梁代建康の全盛とその歴史的背景―」、佐川英治「漢帝国以後の多元的世界」の報告をおこない、これらの成果をもって10月にパリで開催された“Beliefs and Cultural Flows of East Asia in the Late Antiquity and Medieval Period” (College of France)に参加した。この会議は我々の知る限り、「東アジアの古代末期」をテーマに掲げた初めての国際学会であり、この会議において我々は、5~6世紀の東アジアの歴史的展開ならびにその意義を考えていくうえで、信仰とくに仏教の国際的な広がりや社会への浸透が重要な意味をもつことを明らかにした。また佐川英治は古代末期の議論を組み込んだ東部ユーラシアの視野からする新しい中国史の概説書『中国と東部ユーラシアの歴史』(杉山清彦・小野寺史郎と共著、放送大学出版会)を出版した。その他、研究代表者と分担者は、国内外での論文執筆や学会報告を通じて積極的に研究を推進し、その成果を広める活動をおこなった。
著者
山本 浩史 成田 卓也 山浦 玄武 石橋 和幸 山本 文雄 山本 浩史 千田 佳史 向井田 昌之
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成19年度の研究計画として(1)血流量と電磁誘導効果によって発電された電流量の研究(2)電磁誘導コイルの作製(3)電磁誘導コイルの挿入手技の開発とした。しかし進行の遅れと変更が生じた。誘導起電力が極めて小さく、蓄電およびペースメーカー電源としては不充分な電力しか得られないことが根本的な問題であった。また高冠動脈圧での大動脈圧の加速度的変動が起電力の源となるが、かなり高い大動脈圧では、冠動脈の圧力により心筋コンプライアンス(主として拡張機能)が大きく影響を受けることがわかってきた(coronary turgor effect)。さらに開心術中に心筋が受ける虚血再灌流傷害は、冠動脈内圧力が心筋に与える影響を増強するらしいこともわかってきた。そこで日常、遭遇する肥大心筋の場合はどうような影響を受けるかを調べることにした。これは高い圧力(高血圧)が加速度的に生じる場合の起電力評価の前に、心機能に与える影響を評価することを意味している。ラットの肥大心モデルを作成し、ランゲンドルフ摘出灌流とし、逆行性冠灌流の圧力を変化させた。左室内に留置したバルーンを用いて左室拡張末期圧(心筋コンプライアンスとしての指標)を虚血再灌流の前後で測定した。冠動脈内圧が100mcmH_2Oと150cmH_2Oおよび冠動脈遮断(0cmH_2O)下の左室拡張末期圧を測定した。冠動脈圧の変化は肥大心筋でより大きな影響を受けるが、特に虚血再灌流後ではその影響が著しく大きいことがわかった。電磁誘導を利用した起電力を得るための血圧の加速度的変化は高血圧下では心機能に悪影響を与える可能性が出てきた。
著者
力丸 祥子
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.127-188, 2019

フランスにおいては,2013年5月に同性婚が合法化され,同時に同性間カップルが子を持つ権利についても法律で認められた。そのため,現在ではその議論の中心は同性婚自体ではなく,同性間カップルが子を持つ権利に移っている。このように,2013年の法律においては,確かに子を持つ権利についても認められたものの,生命倫理法は,人工生殖をなし得るカップルは異性間カップルに限るという立場を打ち出しており,同性間カップルが子をもうける手段として人工生殖という手段を用いることはできなかった。 このような法律間の齟齬は最近まで続いたが,2017年の大統領選の際に,現大統領のマクロン氏が人工生殖を女性一般に広げることに好意的な見解を公約において示して以来,一挙に生命倫理法改正への動きとなったものである。国の倫理検討委員会(CCNE)は,色々と検討すべき点はあると述べており,委員の少数派はなお慎重であるべき,という見解を述べてはいるものの,総論としては女性一般に医療補助生殖を拡大することに好意的な立場を示している。対する代理出産に関しては,一貫して合法化する意図がないという姿勢を崩してはいない。 国民のうちにも賛否両論がある。すなわち,改正の方向に賛成する者がいる一方で,このように医療補助生殖を認める範囲を拡大するならば,配偶子の不足の可能性も生じ,その結果,現在前提としている無償性の原則が崩れる可能性があることを懸念する者,また,配偶子の提供については匿名性の原則が支配しているが,この原則と,子が自己の出自を知る権利との関係も問題になると指摘する者等さまざまである。 本稿においては,CCNEの報告書や他機関の報告書,民間調査会社の様々な統計の結果を参照しつつ,同性間カップルが子を持つ権利に関する問題に対する国や国民の見解を明らかにするとともに,予定される生命倫理法改正の方向性を明らかにすることをその目的とする。
著者
桂川 泰典 国里 愛彦 菅野 純 佐々木 和義
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-76, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
8

The present study developed a Japanese version of the Session Evaluation Questionnaire (J-SEQ), which was translated from the original version of the SEQ (Form 5), and examined its reliability and validity. The respondents were 103 counselors. Exploratory factor analysis (maximum likelihood estimation with varimax-rotation) and confirmatory factor analysis were used to examine the factorial structure of the J-SEQ. The results showed that the J-SEQ had substantial reliability (Cronbach's alpha) and factorial validity. The factorial structure, response tendencies, and the correlations of factors of the J-SEQ were consistent with the original SEQ (Form 5).
著者
佐々木 達也
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.4_401-4_413, 2020-10-01 (Released:2020-10-15)
参考文献数
9

In the J League, the number of clubs having a small business scale is increasing with the age of the league, resulting in a disparity in business scale. There is a certain correlation between the business scale and ranking. In professional sports, the ratio of personnel costs for players to the total cost is large, and the performance (rank) is determined by the ability of the players possessed by the club. It is arguable that the business scale is explained by the management ability of the club (organizational ability) or the ability of the management, and it is also explained in part by the change in rank. V-Varen Nagasaki was pushed to the point of management failure in 2017. Then the founder of a major mail order business took over the management of the tea, which was ranked second in J2, and decided that it would be promoted to J1 in the next year. In this study, we interviewed the president, directors, and captains. V-Varen Nagasaki's management philosophy is Action, Passion and Mission ; having the meaning of thoroughly improving the environment, building relationships of trust with players, and establishing and implementing basic policies. V-Varen Nagasaki overcame the management crisis because of the management of professional managers and the convenience model in J League, which is a business model for controlling and instructing clubs. This study shows that it is important for professional sports clubs, which are public entities, to have a proven professional manager participate in the management of the J club.
著者
羽野 健志 河野 久美子
出版者
日本環境毒性学会
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.47-51, 2020-08-06 (Released:2020-08-06)
参考文献数
9

This study was performed to investigate the occurrence of selected insecticides (seven neonicotinoid insecticides and their four metabolites and the phenylpyrazole insecticide fipronil) in Hiuchi-Nada (48 samples) and Osaka Bay (4 samples), Seto Inland Sea, Japan, in 2016 and 2017. Among the insecticides examined, dinotefuran was exclusively detected in both the bays. Its concentration (9.45 and 32.4 ng/L in Hiuchi-Nada and Osaka Bay, respectively) and detection frequency (68.8% and 75.0% in Hiuchi-Nada and Osaka Bay, respectively) were the highest in September, which were closely related to its agricultural application. Furthermore, we observed a higher concentration of the insecticide in the surface layer of the water column than in the bottom layer. Considering that the water temperature was constant through the water column in September, insecticides were transported to estuarine areas and were eventually distributed around the surface waters of the bays. Finally, we inferred that the ecological risks posed by dinotefuran in the bay areas were expected to be too low to cause adverse effects on the resident estuarine and marine crustaceans examined.
著者
大山 浩司 矢吹 芳教 伴野 有彩
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.277-284, 2019 (Released:2019-11-10)
参考文献数
29
被引用文献数
2 4

大阪府内の農業地帯を流下する河川, 下水処理水の寄与が大きい河川, 及び大阪府内各地域の主な河川において, ネオニコチノイド系農薬及びフィプロニルの実態調査を行った。その結果, ニテンピラムとチアクロプリドを除く農薬が全ての調査地点で検出された。イミダクロプリドの濃度は6月に, ジノテフランの濃度は8~9月に顕著に上昇しており, これらは水稲におけるそれぞれの農薬使用時期と一致した。今回の調査で検出された農薬濃度は, 農薬登録基準および環境中予測濃度 (PEC) よりも低かったが, 種の感受性分布 (SSD) を用いた生態系への複合影響評価を行ったところ, 農業地帯の河川では5月下旬から6月下旬にかけて, EU等で無影響の基準とされている5パーセントよりも一時的に高くなると算出された。