著者
勝藤 猛
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 = Bulletin of Morioka Junior College Iwate Prefectural University (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.5-13, 2001-03-01

After the breakdown of the Qin empire, there was a leader named Liu Bang (247-195 B.C.), who built the Han dynasty. Among his followers, three men were particularly efficient, and brought him to the throne. First, Zhang Liang was a staff-officer, so to speak, with female appearance. He gave his master valuable advice at the headquarters. Secondly, Xiao Ho was a well-educated paymaster in charge of supplying the front with personnel and provisions, searching and arranging documents from the destroyed Qin court. Finally, Han Xin, here under discussion, was an able army commander, good at intelligence service as well as tactics. The first two were in their sovereign's high esteem, while the last fell into disgrace and was killed in the end. Court chronicler Si-ma Qian writes a hundred years later, "One who has more courage than one's lord will be easily ruined. One whose success is above all will not be awarded". This is the destiny of Han Xin. The author tries to describe a hero of a tragedy.
著者
芦野 佑樹 山根 匡人 矢野 由紀子 島 成佳
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2017-CSEC-78, no.6, pp.1-8, 2017-07-07

インターネット上には一見すると影響がなく意図の不明なインターネットノイズと呼ばれる通信が存在する.かつて筆者らは,インターネットノイズの分類に基づいた内容を応答することで,高度な技術を有する組織的な活動が存在する可能性を示した.このようなインターネット上での活動がサイバー攻撃の初期段階と仮定すれば,インターネットノイズの分析は攻撃者の活動の推測を可能とし,過去の事例に基づく分析が中心であったサイバーセキュリティにおけるリスク分析の精度向上に期待できる.本論文では,180 日間に渡って観測されたインターネットノイズの調査を通じて,サイバー攻撃の初期段階を捉えることを目的としたインターネットノイズ発信源の分類方法を提案する.併せてインターネットノイズの分析をサイバーセキュリティ対策の検討に活用できる可能性について考察する.
著者
劉 暁苹
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.179-194, 2016-01-15

日本語では,未完結の形を通して表現することによって,様々な伝達の効果を目指すストラテジーの一つである未完結の発話が選好されている。本稿は,形式上は未完結でありながら,意味機能が完結しているような従属節のみで終わる発話を言いさし文と定義し,新たな構文としての言いさし文の形成過程と構文特徴を明確にする。 まず,先行研究に基づき,従属節のみで終わる発話の用語を整理した上で,言いさし文という表現の使用を規定し,その定義づけを行う。そして,構文形成の要因によって,言いさし文を「意味論的な省略による言いさし文」「語用論的な省略による言いさし文」「付加による言いさし文」の三種類に分けた上で,本稿の考察対象を「意味論的な省略による言いさし文」に限定する。 最後に,意味論的な省略による言いさし文は,表現の慣習化や文法化によって生まれたものが多いので,典型的な定型表現の例として,「なければならない/なくてはならない」の省略による「なきゃ/なくちゃ」言いさし文,「ないとならない/いけない/だめだ/困る」の省略による「ないと」言いさし文,「たら/ばどう」・「たらどうしよう」・「たら/ばよかった/いいのに」の省略による「たら/ば」言いさし文,「って言った/聞いた」の省略による「って」言いさし文を詳しく考察する。
著者
松田 実
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3+4, pp.154-161, 2016 (Released:2017-03-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【要旨】発語失行(AOS)について筆者が重要と考える事項について考察した。AOSの責任病巣が中心前回であることは多くの証拠が物語っているが、基底核から放線冠にかけての皮質下病変でもAOSにほぼ一致する病像を観察することがある。AOSと運動障害性構音障害、とくに失調性構音障害との鑑別は意外と難しく、AOSの特徴として従来から重要視されていた構音の誤りの非一貫性はAOSの決定的な特徴とは言えない。変性疾患のAOSの特徴を述べ、進行性非流暢性失語の経験からも、AOSは非流暢性発話の重要な要因ではあるが、その他の言語学的要因も非流暢性に関与していることを述べた。
著者
常石 英作
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.362, 2006-06-15 (Released:2007-06-15)
参考文献数
3
被引用文献数
1

カルノシンはβアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジン,アンセリンはヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである.筋肉中に高濃度に存在するが,図1に示す通り牛肉や豚肉では主にカルノシンが,鶏肉ではカルノシンも含まれているが,アンセリンが多い.ちなみに魚ではアンセリン,ウミヘビや鯨ではバレニン(βアラニル-3メチルヒスチジン)が多い.これらは,ヒスチジンの構成要素であるイミダゾールから,イミダゾールペプチドと呼ばれ,内因性抗酸化物質としての役割を果たしている.カルノシンを摂取したラットでは,筋肉中含量が上昇し,筋肉脂質の過酸化や蛋白の酸化が抑制される.これは生理的状況下におけるカルノシンの生体内での抗酸化性を示している.また,カルノシンは脂質酸化で生成される細胞毒素(不飽和アルデヒド)を消去する.カルノシンの抗酸化力は,グルタチオンやチオクト酸と比較すると劣るものの,筋肉中の含量が非常に多いため,生体内脂質酸化物の消去に重要な役割を果たしていると考えられている.生体内で発生する活性酸素には,呼吸によるエネルギー代謝の過程で生成する水酸化ラジカル,侵入異物の分解のための窒素系ラジカル,白血球による殺菌作用で生じる塩素系ラジカルがある.植物性食品のポリフェノールやビタミンEは水酸化ラジカルに,ビタミンCは窒素系ラジカルに,アンセリンやカルノシンは塩素系ラジカルに対して抑制作用を示す.カルノシンは1.0%で肉製品の褐色化を抑制し,銅イオンによるアスコルビン酸の酸化を阻害する.アスコルビン酸とともにカルノシンを肉製品に添加して用いると,品質保持や色調安定に効果的である.アンセリンやカルノシンにおける生体pHの緩衝能も知られている.過大な負荷のかかる運動を行った場合,筋肉中に乳酸が蓄積して酸-塩基バランスが酸性側に傾く傾向を示す.この乱れを防止し,運動の持続や疲労感の軽減に役立つ.アンセリンやカルノシンを豊富に含むチキンエキスをマウスに6日間経口投与したところ,遊泳持久力が有意に向上したという報告がある.緩衝能の向上に起因する効果であると考えられている.牛筋肉の筋線維タイプとの関連では,乳酸の蓄積しやすい解糖型筋線維数の多い筋肉部位でカルノシン含量が高い傾向があり,各筋肉部位の含量は図2の通りである.しかし,アンセリンについては筋線維型との関係は認められない.
著者
蔡 鳳書
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.263-277, 2002-04-30

これまでの中日古代文化交流歴史研究においては、文献記録の資料に主として依拠する場合が多かったが、戦後の五〇年間には中国、日本ともに考古学の研究成果が多い。この情勢により、両国の発掘調査の資料を利用し、中日文化交流史を研究することが必要になる。
著者
Takeru Tsunoi Koki Noju Takeshi Eto Hitoshi Suzuki
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
pp.20-00049, (Released:2021-05-15)
参考文献数
63

The melanocortin-1 receptor gene (MC1R) controls production of the pigments eumelanin and pheomelanin. Changes in MC1R lead to variation in coat color in mammals, which can range from entirely black (melanism) to yellowish. In this study, we report a case of a wild-caught Norway rat (Rattus norvegicus) from Sado Island, Japan with a yellowish coat color. Upon sequencing the whole coding region of the Mc1r gene (954 bp), we found a 1-bp deletion at site 337 (c.337del), indicative of a frameshift mutation, which was characterized as a severe loss-of-function or null mutation. A spectrophotometer was used to measure coat color, revealing that the rat had a distinctly lighter coat, based on lightness score, than mice with homozygous similar loss-of-function mutations. This implies that loss-of-function mutations can yield different phenotypes in murine rodents. The loss-of-function-mutant rat exhibited a contrasting coat pattern consisting of darker and lighter colors along its dorsal and ventral sides, respectively. Similar patterns have been observed in homozygous MC1R-deficient mutants in other mammals, implying that the countershading pattern can still be expressed despite the absence of MC1R in the melanocyte.
著者
山岸 潤也
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

Periplaneta fuliginosa densovirus(PfDNV)は、1993年に中国武漢市郊外でクロゴキブリがら分離されたウイルスで、パルボウイルス科,デンソウイルス亜科,デンソウイルス属に分類される。デンソウイルスは約5000塩基の小さなゲノムを有する一本鎖DNAウイルスで、数個の遺伝子しかコードしないことから、昆虫におけるウイルス増殖を分子生物学的に解析する対象として、非常に適していると考えられる。また、これまで分離されているデンソウイルスの多くが、その感染により宿主を死に至らしめ、同時に強い宿主特異性をもつことから、ウイルス農薬として害虫駆除に利用することが期待できる。本研究では、特にウイルス増殖の基幹を成す遺伝子発現制御機構に注目して解析をおこない、ウイルスの宿主特異性や増殖機構を明らかにすることで、ウイルス農薬としての有効かつ安全な利用への応用を目指している。PfDNVが属するデンソウイルス属には、ハチミツ蛾を宿主とするGalleria mellonella densovirus(GmDNV)や、Junonia coenia densovirus(JcDNV)など、鱗翅目を宿主とするものが存在する。これらのゲノム構造は非常に類似していることが報告されているが、ウイルス構成タンパク質をコードするORFがGmDNVやJcDNVでは1つであることに対し、PfDNVでは2つに分断されているといった相違がある。また、そのmRNAも、GmDNVやJcDNVでは1種類であることに対し、PfDNVでは選択的スプライシングにより少なくとも9種類が生成することを我々は明らかにしている。これらは、PfDNVでは、GmDNVやJcDNVと異なり、選択的スプライシングがウイルス構成タンパク質の発現制御に関与することを示唆していた。今回我々は、5種類あるPfDNVの構成タンパク質について、そのN末端アミノ酸配列をエドマン法により解析することで、PfDNVの構成タンパク質の発現制御に選択的スプライシングが関与することを明らかにした。また、非構成タンパク質をコードするmRNAをRT-PCRによって解析した結果、PfDNVだけでなくGmDNVにおいても、選択的スプライシングの関与が認められた。これらは、昆虫のパルボウイルスであるデンソウイルスの遺伝子発現制御には選択的スプライシングが関与しないというこれまでの通説を覆す、新たな知見であった。また、本研究の結果から、デンソウイルス属は、構成タンパク質の発現に選択的スプライシングが関与するグループ(鱗翅目を宿主としないもの)と、しないグループ(鱗翅目を宿主とするもの)の2つに細分化されることが示唆された。(以上はjournal of general virologyに投稿中です。)

3 0 0 0 OA 国際法講義

著者
前原光雄 述
出版者
金文堂書店
巻号頁・発行日
vol.下, 1940
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.487-495, 2005

日本の漢字情報処理における難題のひとつに,異体字処理の問題がある。当用漢字表およびそれに続く常用漢字表が,固有名詞を埒(らち)外としてしまった結果,人名における漢字と,地名における漢字が,それぞれ異なる字体を持つに至った,という現実が,この問題をさらに複雑なものとしている。この問題を解決するには,Unicodeのような「漢字統合」を主眼とする文字コードでは力不足であり,むしろ日本国内向けに特化された文字コードが望ましい。本稿で紹介するAdobe-Japan1-6は,Adobe Systems社が日本向けに開発した文字コードだが,日本市場でのニーズ,特に異体字処理を,非常に強く意識した文字コードとなっている。
著者
鶴田 尚美 TSURUTA Naomi
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.55-65, 2013-12

通常わたしたちは、死は人生において最大の悪だと考えており、短い生よりも長い生の方がよりよいと思っている。それでは、不老不死であったとしたなら、わたしたちの人生はよりよいものになるのだろうか。バーナード・ウィリアムズは、不死は本人にとって望ましいものではなく、不死の人間は必然的に人生に退屈すると論じている。本稿は、ウィリアムズの主張の根底にある人格概念をデレク・パーフィットの還元主義的人格概念と比較しつつ、ウィリアムズの議論を批判的に検討する。In 'The Makropulos case: reflections on tedium of immortality', Bernard Williams argued as follows: if death is a misfortune and a longer life is better than a shorter life, then death at any time is evil, and it is better to live than die. Then, it would be not only always better to live but also better to live always, that is, never die. However, an endless life must be meaningless, and we have no reason to want to live till eternity, because eternal life must be a life which is intolerably boring. According to Williams, a person has a certain character and his/her own conception of life and integrity, which is important for us as persons. In contrast, Derek Parfit suggests that personal identity in itself is not important. According to his 'reductionism' account, what really matters to us is not personal identity, but psychological connectedness or continuity (relation R) over time. In this paper, I will examine Williams' supposition that a person must have a fixed character, and then criticize his explanation that an immortal person necessary fails to boredom. Next, I will explain Parfit's theory of personal identity and point out that what matters in my survival is not identity over time, but relation R. Finally, I will conclude that Parfit's concept of person is more plausible to apply to our real human lives.
著者
渡辺 知恵美
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.e47-e51, 2021-05-15

新型コロナウイルス感染症の影響で2020年にはほとんどの学会や研究会がオンライン開催になりました.各会の運営の皆様のご尽力で多くの工夫が施されたオンライン開催.聴講者・発表者にとっては,そのおかげでこれまでより多くの発表をじっくり楽しめることができたように思います.私なりのオンライン開催の楽しみ方をまとめました.