著者
間辺 広樹
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1126-1129, 2018-11-15

変化の激しい社会を生きていくために,高校生に求められる力も変化している.文部科学省は「今,求められる力」を「課題発見・解決能力」「論理的思考力」「コミュニケーション能力」とし,探究的な学習などを通して育成することを求めた.中でも研究活動は,「今,求められる力」の育成が期待できるとともに,その成果を用いて難関と言われる大学の推薦入試などで合格する可能性もある.本稿では,これまで高等学校にて研究指導してきた筆者の経験を元に,高校生が躓きやすいポイントを示した.また,個人の拘りの中にテーマを探すことや,情報技術を活用することなど,価値ある学習活動にするための考え方を示した.
著者
澤柿 教伸 神山 孝吉 Takanobu Sawagaki Kokichi Kamiyama
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.258-272, 2007-11

第47次南極地域観測隊では,昭和基地に整備されたLAN及びインテルサット衛星回線を活用して,Wiki(ウィキ)とよばれるシステムを試験的に導入・運用し,基地運営における情報共有システムを構築した.観測隊では本システムの下で基地情報を整理し,各隊員が互いに協調しながら基地の運営に携わった.運用の過程で日常の業務形態に合わせてWikiのカスタマイズを繰り返し,昭和基地運営に関する情報を隊員個人個人が容易に参照し,また入力可能なように最適化を進め,最終的には国立極地研究所のローカルネットワークにも公開した.スケジュール管理,野外行動予定と実行経過の周知,通信記録の参照,リアルタイムな気象情報提供などをWiki上のWebページ上で実施するとともに,外部のWebページにリンクを貼り,第47次観測隊昭和基地の情報ポータルとして位置づけた.このような情報共有システムを用いた基地運営マネージメントが有効であると感じた隊員も多く,特に夏期に情報の流れが複雑になった時など,隊員間や基地-国内間の情報共有体系に非常に有用であることが確認できた.
著者
黒木 邦彦
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.85-93, 2018-03-05

本稿では、西日本方言の否定過去動詞接尾辞-(a)naNda (e.g. 知らなんだ、上げなんだ) などが内包する-(a)naN- の起源を、東日本方言の否定動詞接尾辞{-(a)nap-} の同族に求める。-(a)naNda は、その音形と意味とを踏まえれば、-(a)naN- と-da {-(i)tar-} とに分析できよう。-(a)naN- の基底形は、テ形接尾辞に先行する動詞語幹の末尾子音n、m、b が東日本方言などにおいてN で実現することを考慮するに、{-(a)nan-}、{-(a)nam-}、{-(a)nab-} のいずれかであろう。これらのうち、{-(a)nan-} は、否定動詞接尾辞{-(a)n-} の連続体と見做しうる。しかし、このように考えるのであれば、種々の否定表現のうち、否定過去表現においてのみ否定接尾辞を重ねる動機や意義を説明せねばなるまい。一方、**{-(a)nam-, -(a)nab-} は、東日本方言の否定動詞接尾辞{-(a)nap-}に音形と意味との両面で類似するものの、その確例はどの時代・地域にも見当たらない。ただし、**{-(a)nam-, -(a)nab-} と{-(a)nap-} とについては、音声的・音韻的妥当性に富む派生関係を考えうる。更に、**{-(a)nam-, -(a)nab-}起源説は、「ナツタ」「ナムシ」とそれぞれ表記される、2 種類の否定過去動詞接尾辞の存在を説明するに良い。
著者
小山 雄将
出版者
奈良学園大学人間教育学研究会
雑誌
人間教育研究 = The Humanistic Education Journal (ISSN:24333832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.73-89, 2017-12-01

要旨:学校教育では、「あいさつ」の大切さが長らく語られ、実践が行われてきている。「あいさつ」は定型句として定型化されることによって日常習慣となりやすい側面があるがゆえに、形だけになってしまうという現象も起こしやすい。ここでは、「あいさつ」のもつ意味や効果を考察し、しっかりとした裏付けに基づいた人間教育としての「あいさつ」を記したい。また、学級づくり・関係づくりの基礎としての「あいさつ」についても考えることにより、所属感や自己受容を高めることで、多様な人々が共存する社会を生き抜く力につなげたい。
著者
箕輪 千佳
出版者
佐久大学看護学部
雑誌
佐久大学看護研究雑誌 = Saku University journal of nursing (ISSN:18836593)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.15-24, 2015-03

明治時代初めまで自由開業制だった医師制度に、政府は西洋医学に基づく医学教育と免許制度を導入し、医師の数と質の確保のため、明治から大正にかけて医師養成制度を大きく変化させた。荻原源吉は日露戦争で看護卒として従軍したことから医師を志し、小学校の教職に就きながら、東京で開催された夏季講習に通い医師検定試験に合格した。医師となり無医村だった三宅島で開業、郷里の佐久に戻っても無医村に出張診療を行い、貧しい人にも差別なく診療を行った。その時代、貧困者への医療支援は、皇室および政府や地方行政の経済的補助を受け、医師会や産婆会等様々な団体の医療支援として展開される一方、医療職者それぞれの博愛の精神に支えられたものであった。
著者
寺田 松昭 高木 悟 樫尾 次郎 安元 精一 伏見 仁志 中西 宏明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.219-227, 1985-03-15

近年計算機制御システムの大規模化が進み 計算機間のデータ転送性能の向上が強く求められている.筆者らは 先に前置処理装置(FEP)によって データ転送性能を向上する方式をとりあげ FEPの方式提案(FEP I)と性能向上度合の実験的評価とを行った.本論文では FEP Iで問題になったハード量を削減するため 新しいFEPの方式提案(FEP II)と実測およびシミュレーションによる性能評価とを行っている.(1)ハード量削減のため FEPを1台の高速マイクロコンピュータで構成し 多数のコマンドを同時に処理する.(2)性能を向上するため FEPのソフトウェア構造をコンパクトなスケジューラのもとで動くマルチタスク構造とし 処理の並列化を行う.(3)この方式を満たすFEPをビットスライスマイクロプロセッサを用いて開発し 性能をシミュレーションで求め マイコン1台でも十分な性能が得られることを確認している.
著者
吉田 文久
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.135, pp.23-40, 2017-03-31

本研究は,イングランドに残存する民俗フットボールの特徴,さらにそれらの変容について明らかにすることを目的とする. 筆者はこれまで,現地での調査をもとに,英国スコットランドに残存する民俗フットボールの特徴をその多様性と類似性の視点から整理し,公表してきた.そして,イングランドに残存する10 箇所のゲームを調査し終えたことから,本研究では,スコットランドのゲームの整理と同様の視点,手続きを用いて,イングランドに残存するゲームの多様性・類似性,そして,それらの変容について考察した. その結果,①イングランドに残存する民俗フットボールには,いくつかのゲーム間に類似部分はあるものの,スコットランドのような共通性は乏しく,その町や村に独自の形で存続している②メディアにも取り上げられ,プレイヤーも数百人に及ぶゲームがある一方で,セレモニーだけを残すという形骸化したゲーム,そして消滅の可能性を予期させるゲームがあり,存続のために担い手の確保が課題となり,そのための策に苦慮している ③スコットランド同様に,イングランドに残存するゲームは,過去のゲーム様式を存続させることに固執することなく,近代化に順応しながらゲームを変容させることで,生き残りを図っている ④ただし,ゲームは変容しながらも,従来の伝統的な様式を守り続けるゲームから近代的要素を多く取り入れたゲームまで存在することから,イングランドに残存する民俗フットボールは現在多様な姿で存続しているということが明らかになった.
著者
濱川 栄
巻号頁・発行日
2017

昨年選挙権年齢が18歳に引き下げられたが,若年層の投票率は相変わらず低い。文科省も主権者教育を重視しているが,若者に限らず,日本人の政治意識は低いままである。その原因の一つに,憲法とは権力者を縛るための法である,とする「立憲主義」の概念が学校教育の場で十分に教えられていない問題がある。実際,従来の学習指導要領にも次期の小・中学校社会科のそれにも「立憲主義」への言及はない。一方,中学校社会科公民的分野の教科書には概ね「立憲主義」の語句が見えるが,その概念が定着する近代までの歴史的経緯を踏まえた記述にはなっておらず,主権者教育の根幹として生徒に理解させられような状況にはなっていない。主権者教育の深化のためには,初等・中等教育の場において歴史的経緯を十分踏まえた形で「立憲主義」の概念が教えられるべきであり,それは現状の学習指導要領や教科書の下でも十分可能なはずである。
著者
鳴海 拓志 伴 祐樹 梶波 崇 谷川 智洋 廣瀬 通孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1422-1432, 2013-04-15

本研究では,拡張現実感を利用することで満腹感の手がかりとなる要因を操作し,同量の食事から得られる満腹感を操作する「拡張満腹感」システムを提案する.近年の心理学や行動経済学等の研究の進展により,食事から得られる満腹感は,食事そのものの量だけでなく,照明環境や環境音,盛りつけや見た目の量,一緒に食べる人数等,食事の際の周辺の状況に暗黙のうちに大きく影響を受けることが明らかになってきている.こうした知見に基づき,食事そのものを変更するのではなく,満腹感に寄与する要素に対する知覚を変化させることで,満腹感と食事摂取量の非明示的な操作が可能になると考えた.そこで,満腹感に影響を与える要素の1つである食品の見た目の量に着目し,リアルタイムに視覚的な食事ボリュームを変化させてフィードバックする拡張満腹感システムを構築した.このシステムでは,デフォーメーションアルゴリズムであるrigid MLS methodを利用して食品を握る手を適切に変形することで,手のサイズは一定のまま,対象となる食品のみを拡大・縮小することができる.実験により提案システムがユーザの食品摂取量に影響を与えるかを評価したところ,得られる満腹感は一定のまま食品摂取量を増減両方向に約10%程度変化させる効果があるという結果が得られ,提案システムが無意識的に満腹感を操作し,食品摂取量を変化させる効果があることが示唆された.