著者
海山 宏之
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.45-51, 2013-03

クリオニクスは、死体を冷凍保存し将来の科学による蘇生・治癒を期待する試みである。この技術は、復活を信じるという意味で宗教に似てはいるが、不死なるものが人間の中にあるという認識を欠き、宗教とは言い難い。また再現性のない技術に寄りかかる態度も科学的とは言えず、本質は賭けに他ならない。現在、生命倫理学において生の延長という倫理問題が話題になってきている。バイオテクノロジーにより人の老化を遅らせ寿命を延ばすという行為にも、死に向き合う気持ちを薄れさせたり、世代交代が阻害されたり、少子化につながったりするという危惧が考えられている。死者のみを扱うという点で狭義には葬送法としか言えないクリオニクスではあるが、死の運命を忌避し死すべき存在としての自分を考えないようにするという点で、生の延長の倫理問題の先鋭的な形と考えられ、広義にはこれも生命倫理的議論が必要なテーマであると言えるのである。
著者
中矢 大輝 遠藤 慎 佐鳥 新 吉田 功 三枝 信 伊藤 那知 加納 正城
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.99-101, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

発症初期における大腸癌の識別は,医師による定性的な判断により行われる.本研究では,北里大学の協力のもと,初期の4段階に分類された大腸癌のうち最も識別が困難であるとされる高度異形成と癌細胞の識別をハイパースペクトルカメラにより計測し,機械学習を用いて解析を行った.使用したハイパースペクトルカメラは,北海道衛星株式会社が開発したHSC1702である.分類に用いた手法は,K近傍法,サポートベクターマシーン,ランダムフォレストである.前処理として,細胞核より抽出されたハイパースペクトルデータを主成分分析により次元削減した.第三主成分までを考慮して3手法をトレーニングを行い予測させた結果,1100以上のサンプルに対し,K近傍法では96.0%,サポートベクターマシーンでは98.1%,そしてランダムフォレストでは98.2%の精度を得た.
著者
Yasuko Tomizawa
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.248, no.3, pp.151-158, 2019 (Released:2019-07-04)
参考文献数
38
被引用文献数
9

Japan is still a patriarchal society. There is an increasing number of female doctors who wish to follow a career path in surgery. This new generation of female surgeons need support not only in their career but also in work-life balance, especially after they have a family. We founded the Japan Association of Women Surgeons (JAWS) with the aims to advance females in surgery by providing networking and to develop leadership, mentorship, education, expertise and advocacy. This article describes our philosophy and activities, and our concept of role modeling. To find a single perfect role model is impossible in Japan, because lifestyle and family situations are quite different among individuals. Many young doctors in Japan find difficulties in identifying role models appropriate to their own situations. Our concept of remote role modeling is to identify multiple outstanding persons with excellent roles that one wishes to emulate; classify them by field of work, lifestyle, family situations, and others; then select the parts that one needs and assemble them to customize one’s own ideal role model. This type of role modeling is probably the most practical approach. While modern technology is good for communication, meeting role models in person at meetings and social occasions is important in building an ideal role model.
著者
葛原 憲治 井口 順太
出版者
愛知東邦大学
雑誌
東邦学誌 (ISSN:02874067)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.111-123, 2007-12
著者
小澤 悟 堀田 司 岩橋 誠 東口 崇 山上 裕機
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.3126-3129, 2007-12-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は61歳, 女性. 下腹部痛, 発熱を主訴に当院を受診した. S状結腸憩室炎による腹腔内膿瘍の診断のもとに緊急開腹術を施行した. 手術開始15分後より, 突然血圧およびSO2が低下し, 全身に発赤を認めた. アナフィラキシーショックと診断し, 加療により1時間程度で全身状態は回復した. 術中使用した麻酔薬や抗生物質の薬剤アレルギーを疑い検査を施行したがいずれも陰性であった. 問診より患者は天然ゴム手袋による痒みを自覚したことがあった. また, ラテックスに対する特異抗体価が0.56UA/mlと上昇しており, 結果として術者手袋に含まれるラテックスが原因のアナフィラキシーショックであることが示唆された. 天然ゴム製品を排除して根治術を行ったところ, アナフィラキシーショックは起こらなかった. 詳細な問診によりラテックスアレルギーの既往やハイリスク患者を割り出し, ラテックス除去環境での手術を行う必要があると考えた.

22 0 0 0 OA 埴輪集成図鑑

著者
帝室博物館 編
出版者
志村鋼平
巻号頁・発行日
vol.第9, 1944
著者
奥窪 朝子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.11-16, 1975-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4

家庭における有機溶剤を用いてのしみ抜きについて, 衛生学的見地からの検討を行った.1) アンケートの結果, 使用溶剤はベンジンが圧倒的に多いがCCl4やC6H6の使用もみられた.実施頻度の高い冬期, 換気に配慮して作業を行っている者は31%に過ぎなかった.また, しみ抜き作業時に頭痛, 吐気などを経験したことのある者が26%にみられた.2) 実態に基いて設定した標準的な作業条件で, 冬期, 窓を閉じた室内において, ベンジン, CCl4, C6H6など7種の溶剤を用いて作業した場合の気中溶剤ガス濃度は, C2H5OHを除き, 最高許容濃度 (MAC) を越える場合が多かった.CCl4やC6H6ではMACの約10倍の高濃度ガスが検出された.窓開放時は, ベンジンでは気中ベンジンガス濃度をMAC以下に保つことができたが, CCl4, C6H6ではMAC以下に低下できなかった.3) 自覚症状を, 冬期, 窓を閉じた室内でベンジンを用いてのしみ抜き時について調査した結果, 一過性ではあったが頭痛, 吐気などの訴えが25%の者にみられた.以上の成績から, 溶剤を用いてのしみ抜きに当っては, 衛生上の配慮が必要であるように思われる.毒性の強いCCl4やC6H6などの家庭における使用は, 絶対に避けるべきであると考える.
著者
辻 慶太 楳原 衣恵 木川田 朱美 原 淳之
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.594-608, 2010-03-01

本研究では近年急速に成長しているQ&Aサイトと公共図書館レファレンスサービスに同じ質問を行い,正答率などを比較した。前者には「教えて!goo」を,後者には首都圏近郊の32館を選び,60個の質問を行った。結果,直接的に完全な正答が与えられた割合は共に32%で,間接的に与えられた場合を含めても両者の正答率に大きな差はなかった。質問の主題別に見ても差はなく,答えが得られるまでの時間もQ&Aサイトの方が大きく劣ることはなかった。こうした状況を踏まえ公共図書館は新たなレファレンスサービスのあり方を検討する必要がある。
著者
新井 利明 関口 知己 佐藤 雅英 木村 信二 大島 訓 吉澤 康文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.2492-2504, 2005-10-15
被引用文献数
3

オペレーティングシステム(OS)はこれまでに多くのものが開発されているが,ユーザの要求が多様であり,すべての要求を満足するOS開発は不可能に近い.そこで,1台のマシン上に汎用OSと特定の目的を持つ専用OSを共存させ各々機能補完する仮想計算機機能のナノカーネルを提案し,実現した.豊富なソフトウェア資産を活用できる汎用OSと特殊機能を有する専用OSを1台のマシン上に共存させ,互いに機能補完させることができる.ナノカーネルは,上記の目的を達成するために,(1)複数OS共存オーバヘッドを削減するための資源分割機能,(2)OS間の機能補完を可能とするOS間連携機能,(3)OSの信頼性を向上させる障害監視,回復機能と擬似不揮発メモリ機能などで構成する.これらの限定した機能を実現することで,ナノカーネルは複数OSの共存を可能とし,補完環境をオーバヘッド2%以内で達成できることを確認した.また,汎用OSとリアルタイムOSの共存環境を構築し,汎用OS環境では不可能であったマイクロ秒単位の応答性を確保できることを確認し,ナノカーネルの持つOS間機能補完を実証した.さらに,専用の高信頼OSからの汎用OS障害情報の収集や汎用OSの再起動処理を実現し,システムの信頼性向上にも有効であることを確認した.Although various kinds of Operating Systems (OSs) have been developed so far, a user hardly finds the OS satisfying all the users' needs completely. We proposed and developed a kind of virtual machine called Nanokernel, which effectively enables a general purpose OS and a special purpose OS co-exist in one machine and complement each other. By complementing general purpose OS with rich software and special purpose OS with special function, Nanokernel realizes the environment which meets variety of users' needs effectively. We restrict Nanokernel functions to resource partitioning for lower overhead, communication between OSs for function complement between them, and failure detection and fast recovery for reliability, to achieve the purpose effectively. By restricting Nanokernel functions above, Nanokernel achieves the multi-OS co-existing environment less than 2% overhead. The Nanokernel environment with a general purpose OS and a realtime OS showed that Nanokernel relieves the lack of realtime property of the general purpose OS and establishes micro-second order response time. Moreover, even when the general purpose OS crashes, the realtime OS can survive, get the information for the failure from the general purpose OS and execute the general purpose OS restart process, so that Nanokernel is useful for enhancing system reliability.

22 0 0 0 OA 航空機用材料

著者
古田 敏康
出版者
社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会会報 (ISSN:00214426)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.505-512, 1983-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15
著者
石井 晃 奥村 和 有澤 光弘
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

担持型触媒として鈴木宮浦カップリング反応などに利用できるゼオライト担持Pd触媒と硫化金基板担持Pd触媒をターゲットに、計算物理学と実験の両面から研究した。USYゼオライトに担持させたPd触媒は鈴木カップリング反応を起こし、Pd0-PdO/USYを熱処理すると,PdOが活性種になることがわかった.硫化金基板Pd触媒も電顕・XAFS実験と計算からその構造が明らかになった。また、計算からNi触媒も可能であることが示唆され、試行実験を裏付けた。